保管とは?役割や目的、基本的なプロセス、課題や効率化のポイントを解説

物流業務の中でも「保管」は、モノを一時的に保ち、次のプロセスに引き渡すまでの重要な役割を担っています。この業務は、単なる「モノを置いておく」ことではなく、効率的かつ安全に商品を管理し、企業の利益や顧客満足度に大きく影響を与える重要なプロセスです。本記事では、保管業務について物流DXパートナーのHacobuが解説します。
なお、Hacobuでは物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援する物流Xコンサルティング「Hacobu Strategy」を提供しています。物流業務の改善にお悩みがありましたら、以下をクリックしてご覧ください。
目次
保管業務の役割
保管業務の主な役割は、商品や資材を安全に保ち、必要なときに迅速かつ正確に取り出せる状態を維持することです。たとえば、大量の商品を抱える小売業では、在庫が切れないようにするために倉庫が必要です。一方で、製造業では部品を生産ラインに供給するための調整役として、保管業務が重要な役割を果たします。
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保管業務の目的
保管業務の具体的な目的としては以下のような点が挙げられます。
在庫を適切に管理し、供給の安定性を保つ
保管業務の主な目的は、在庫を正確に管理し、供給の安定性を確保することです。前述のとおり、製造業では、生産ラインに必要な部品をタイムリーに供給するため、在庫不足や過剰を防ぐ管理が重要です。一方、小売業では、店舗での売り切れを防ぐために適切な在庫を確保し、迅速に補充できる体制を整えます。こうした在庫管理により、売り逃しや無駄な在庫コストを抑え、効率的な物流を実現します。
商品の劣化や損傷を防ぎ、品質を維持する
保管中の商品を劣化や損傷から守ることは、顧客満足を左右する重要な要素です。食品では冷蔵・冷凍管理を徹底し、家電や精密機器では防塵や湿度管理を行います。また、適切な梱包や積み上げ方にも配慮し、輸送時の衝撃から商品を保護します。これらの対策により、商品クレームや返品のリスクを最小限に抑え、企業の信頼を維持します。
需要の変動に対応するためのクッションとして機能する
需要の変動に備えることも保管業務の重要な目的です。小売業では、年末年始やセール期間など需要が急増するタイミングに商品をあらかじめ保管します。製造業でも、急な注文に対応するため、一定量の部品や材料を在庫として確保します。これにより、供給不足を回避し、顧客のニーズに迅速に応える体制を構築できます。
これらの役割は、物流全体のスムーズな運用を支える基盤となっています。
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保管業務における基本的なプロセス
保管業務は、一連のプロセスを通じて行われます。それぞれのステップが密接に関連しており、どれか一つが欠けてもスムーズな運用は困難になります。
入庫作業
保管業務のスタート地点は「入庫」です。商品や資材が倉庫に到着し、正しく受け入れるための作業が行われます。この段階では、数量や品目の確認、受け入れ記録の作成などが行われます。
例えば、輸入品を取り扱う企業では、国際的な物流の流れの中で、税関での手続きを済ませた後に正確な検品を行い、入庫作業を完了させます。
在庫管理
入庫が完了した後、保管中の商品の状態を適切に管理するのが在庫管理です。これには、棚卸し作業や在庫の更新、消費期限の確認などが含まれます。
在庫管理の精度が低いと、顧客への納品遅れや、過剰在庫によるコスト増加といった問題が発生します。そのため、ITシステムを活用したリアルタイムの在庫管理が普及しています。
出庫作業
保管の最終段階は出庫です。顧客や生産現場のニーズに応じて、倉庫から商品を取り出し、梱包し、出荷準備を行います。このプロセスでは、正確さが特に重要で、誤出荷が発生すると顧客満足度が大きく損なわれる可能性があります。

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保管業務に必要な施設と設備
保管業務を効率的に行うためには、適切な施設と設備が不可欠です。以下では、具体的な倉庫の種類や設備について解説します。
倉庫
倉庫は保管する商品や目的によってさまざまな種類があります。
常温倉庫
一般的な商品の保管に利用される倉庫で、衣料品や日用品などが多く保管されます。
冷蔵・冷凍倉庫
温度管理が必要な食品や医薬品を保管します。
危険物倉庫
化学薬品や可燃物などの危険物を安全に保管するための専用倉庫です。
物流センター
物流センターにはTC(通過型センター)・DC(在庫型センター)などがありますが、保管という観点ではDCも保管業務を行う施設と言えます。
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2021.11.30
必要な設備
保管業務を支える設備には、以下のようなものがあります。
棚やパレット
商品を効率的に積み重ねて保管するための基本的なツール。
フォークリフト
重い商品を移動させるための機械。
温度・湿度管理装置
商品の品質を維持するために重要な設備。
これらの設備は、商品の特性や数量に応じて選ばれます。
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保管と輸送のトレードオフ
物流における輸送と保管はトレードオフの関係にあります。片方に最適化をかけると、もう片方にデメリットを生んでしまいます。
顧客への輸送の効率を上げるためには、顧客の近くに物流センターや倉庫があった方が合理的ですが、全国にいる顧客の近くに施設を構える必要があります。しかし、保管場所は集約し、まとめて在庫を持った方が保管効率は上がります。
このようにどこで保管するかは、物流における他の機能と統合して判断する必要があります。
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2025.01.17
保管におけるロケーション管理
物流における保管とは出荷をするために置いておくことであることから、保管は出荷作業をいかに効率よく行うかを最優先して考えることが原則です。
出荷を効率的に行うために、商品名や品番ではなく棚番などのロケーションナンバーで管理します。固定ロケーション・フリーロケーションというロケーションの2つのルールを用いながら、「よく出るモノは取り出しやすい場所に」保管計画を立てます。
固定ロケーション管理
1つの商品を決められた固定の1つのロケーションで管理する方法です。
フリーロケーション管理
商品の入荷日や同一ロット、賞味期限などの単位で、その都度、実際に格納したロケーションに保管登録する管理方法です。
先入れ先出し(FIFO)の原則
FIFOとは、First-In First-Outの略称で、先に入庫したもの(賞味期限が古いものなど)から先に出庫する保管における原則的なルールです。
保管業務の課題
保管業務には、多くの課題が伴います。たとえば、以下のような点が問題として挙げられます。
コストの増加
保管業務には、倉庫の賃貸料や設備の維持費、人件費、光熱費など、多岐にわたるコストが発生します。例えば、広大な倉庫を使用する場合、スペースを無駄なく活用しないとコスト効率が低下します。さらに、在庫が過剰になると商品の保管期間が延び、これもコスト増加の要因になります。
人手不足
物流業界全体で深刻化している人手不足は、保管業務にも大きな影響を及ぼしています。特に、入出庫作業や在庫管理には多くの人手を必要とするため、人員が不足すると業務効率が低下します。
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在庫管理の精度向上
在庫情報の不正確さは、企業に大きな影響を与える課題です。在庫不足が発生すれば顧客への納期遅延につながり、逆に在庫過剰は保管スペースの無駄遣いや資金の固定化を招きます。特に、多品種少量生産を行う企業では、在庫の追跡がさらに複雑になります。
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2021.12.04
保管業務の効率化のポイント
倉庫内レイアウトの見直し
倉庫内のレイアウトを見直し、保管効率を高めることで、限られたスペースを最大限活用できます。例えば、パレットラックやモジュール式の棚を導入することで、垂直空間を活用する方法があります。また、在庫回転率を高めてコスト効率を上げるためには、需要予測を基に在庫を適切に調整し、過剰在庫を防ぐ仕組みが必要です。
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2021.11.30
ユニット化
倉庫に商品をすべて収めるには、限られたスペースを余さず使い切ることが肝心です。倉庫に並ぶ品物は多様な形状をしていますが、これらをユニット化し、規格化されたサイズの収納スペースに当てはめることで、隙間を最小限に抑えられます。
ラックに置く場合もユニット化
パレット単位で置く場合はパレット自体が1ユニットとなりますが、棚に直接置く場合でも同様に、商品ごとに「1ユニット」を適正に設定することが、空間を有効活用するカギです。
こうしたユニット化のルールを設定して守り続けること、また、必要に応じて棚板の高さを調整することが重要です。
自動化技術やデジタルツールの活用
人手不足の解消には、自動化技術やデジタルツールの活用が不可欠です。例えば、ピッキングロボットを導入することで、人手を補完し、作業効率を大幅に向上させることができます。また、従業員の教育や業務プロセスの見直しを通じて、作業効率を高める方法も有効です。
管理システムの導入
在庫管理の精度を向上させるには、デジタル技術を活用した在庫管理システムの導入が効果的です。具体的には、バーコードスキャナーやRFIDタグを使用することで、在庫の追跡や情報更新をリアルタイムで行うことが可能です。また、需要予測ツールを活用し、在庫量を最適化することで、過剰在庫や欠品を防ぐことができます。さらに、定期的な棚卸しを実施し、在庫データの正確性を維持することも重要です。
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保管業務の新たなトレンド
保管業務は技術革新によって進化を続けています。今後、以下のようなトレンドがさらに広がると予想されます。
完全自動倉庫
AIやロボットを活用した完全自動倉庫の実現が近づいています。これにより、人手不足の解消だけでなく、作業精度の向上やコスト削減が期待されています。
サステナブルな保管
環境に配慮した保管業務が求められる時代です。例えば、エネルギー効率の高い設備を導入したり、再生可能エネルギーを活用した倉庫が増えています。
データ活用の高度化
IoT技術を利用して倉庫内の状況をリアルタイムで把握し、最適な在庫管理や保管配置を実現する試みが進んでいます。
バース予約システムの活用
保管業務のプロセスには、最初と最後に入庫・出庫が存在することは前述しました。この入庫・出庫の計画を事前に把握し、保管業務の効率化を図るのが新たなトレンドです。
具体的には、トラックの入退場時刻や予約バース、トラック到着情報を持つバース予約システムと、商品のピッキング情報を持つWMS(倉庫管理システム)をAPI連携させます。これにより、トラックの到着状況に合わせて庫内作業の段取りを組むことが可能です。また、トラックの到着状況をリアルタイムで同期させることで、臨機応変に作業を軌道修正させることも可能です。
バース予約システムの代表例には、MOVO Berth(ムーボ・バース)が挙げられます。ご興味のある方は、以下のページもご覧ください。
まとめ
保管業務は、企業間物流を支える重要な役割を果たしています。効率的な保管を実現するためには、設備や技術の選択だけでなく、日々の業務改善が欠かせません。今後の物流業務の改善のために、ぜひ参考にしてください。
なお、Hacobuでは「運ぶを最適化する」をミッションとして掲げ、物流DXツールMOVO(ムーボ)と、物流DXコンサルティングサービスHacobu Strategy(ハコブ・ストラテジー)を提供しています。
物流現場の課題を解決する物流DXツール「MOVO」の各サービス資料では、導入効果や費用について詳しくご紹介しています。
トラック予約受付サービス(バース予約システム) MOVO Berth
MOVO Berth(ムーボ・バース)は、荷待ち・荷役時間の把握・削減、物流拠点の生産性向上を支援します。
動態管理サービス MOVO Fleet
MOVO Fleet(ムーボ・フリート)は、協力会社も含めて位置情報を一元管理し、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。
配車受発注・管理サービス MOVO Vista
MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)は、電話・FAXによるアナログな配車業務をデジタル化し、業務効率化と属人化解消を支援します。
物流DXコンサルティング Hacobu Strategy
Hacobu Strategyは、物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援します。
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