倉庫の積載荷重(床荷重)とは?基準一覧とタイプ別の強度、計算方法を解説
        「倉庫の『積載荷重1.5t/㎡』が自社の商材に適しているか分からない」「既存倉庫の床が荷物の重さに耐えられるか不安だ」といった悩みは、自社商材の保管先倉庫をお探しの物流担当者によくあるものです。
積載荷重は、保管物やフォークリフトの使用、倉庫の構造(平屋、多層階など)で変わる専門的な内容であり、一般的には知られていません。
本記事では、この積載荷重の定義、法基準の一覧、タイプ別の強度の目安、選定時の注意点までを網羅的に解説します。安全性を確保し保管効率を最大化する、倉庫選定やレイアウト見直しの参考にしてください。
もし、自社の荷物や運用に最適な倉庫スペックの判断をご自身で行うことに不安がある場合は、外部の専門家に相談するのも有効な手段です。「Hacobu Strategy」は、データに基づいた物流課題の解決を支援するプロフェッショナルです。Hacobu Strategyの概要は以下ページをご覧ください。
目次
倉庫の積載荷重(床荷重)とは
積載荷重とは、倉庫の床が安全に支えられる「1平方メートルあたりの最大重量」を示す値のことです。「床荷重」とも呼ばれ、通常「㎏/㎡」や「t/㎡」という単位で表されます。
たとえば、「プロロジスパーク」や「GLP」など、大型の多層階マルチテナント型倉庫であれば、「1階:2.5t/㎡、2階以上1.5t/㎡」程度が一般的です。
参考:https://www.prologis-reit.co.jp/ja/portfolio/detail.html?id=0021
参考:https://www.glp.com/jp/list/kenohgoka/
積載荷重は、建物の安全性を確保するため建築基準法に基づき、構造計算によって決まります。なお、法令や学術的な計算では、国際単位である「N(ニュートン)」が用いられます。それぞれの違いは以下のとおりです。
| 項目 | kg/㎡ | N/㎡ | 
| 性質 | 質量 | 力(荷重) | 
| 使用場面 | 実務・現場 | 法令・学術 | 
| 分かりやすさ | ◎ 直感的 | △ 専門的 | 
| 正式性 | △ 慣習的 | ◎ 国際標準 | 
本記事では、実務の現場感覚に合わせ「kg/㎡(t/㎡)」を主に用いて解説します。
倉庫の積載荷重(床荷重)の重要性
積載荷重は、倉庫の安全運用と効率運営に直結する重要な指標です。
- 安全性の確保:過積載は、床のたわみやひび割れ、最悪の場合は崩落といった重大事故を招きます。これは商品や設備だけでなく、作業員の安全にも関わります。
 - 法令遵守(コンプライアンス):積載荷重は建築基準法で定められており、基準を超える運用は法令違反にあたります。
 - 倉庫選定の基準(荷主にとって):自社の荷物、ラック、フォークリフト運用に対し、積載荷重が十分かを見極める必要があります。不足すると契約後に「荷物が置けない」といった問題が発生しかねません。
 
積載荷重の正しい把握は、安全確保と法令遵守、そして保管効率の最大化に不可欠です。
倉庫の積載荷重(床荷重)の基準【一覧】
積載荷重は、建築基準法施行令第八十五条に基づき、用途ごとに定められています。国土交通省の資料から、一般的な建築物における積載荷重の基準の一例を紹介します。
| 室名 | 床の構造計算 (N/㎡) | 大ばり・柱・基礎の構造計算 (N/㎡) | 地震力の計算 (N/㎡) | 
| 住宅の居室、寝室、病室 | 1,800 | 1,300 | 600 | 
| 事務室 | 2,900 | 1,800 | 800 | 
| 自動車車庫・自動車通路 | 5,400 | 3,900 | 2,000 | 
| 倉庫業を営む倉庫 | 実況に応じ計算。ただし最低3,900 | (規定なし) | (規定なし) | 
建築基準法上、「倉庫業を営む倉庫」は最低3,900N/㎡(約400kg/㎡)以上とされます。しかし、これは法律上の最低基準に過ぎません。飲料パレット1枚で1t近くなる実務において、この基準は全く不十分といえるでしょう。安全の目安にはならないため、法律上の規定としてのみ捉えるべきです。
倉庫の積載荷重(床荷重)の強度の目安
ここでは、倉庫の積載荷重の強度の目安として、以下の2つのパターンを解説します。
- 一般的な倉庫の場合
 - フォークリフトが走行する場合
 
一般的な倉庫の場合
物流倉庫の積載荷重は、その物件の用途や構造(多層階か平屋かなど)によって大きく異なります。一般的な目安としては、以下のような数値がよく見られます。
| 積載荷重の目安 | 保管できる商材 | 備考 | 
| 1.0 t/㎡未満 | ・アパレル  ・紙製品 ・軽量日用品 など  | ラック等の設置には注意が必要です | 
| 1.5 t/㎡ | ・段ボール箱 ・一般貨物  | 最も一般的に採用される基準値です | 
| 2.0 t/㎡以上 | ・機械部品  ・鉄鋼材 ・重量物 など  | 平屋建て倉庫や、多層階倉庫の1階部分で採用されることが多い基準です | 
フォークリフトが走行する場合
フォークリフト使用時は、一般的な倉庫より強度が必要です。
必要な積載荷重(床荷重)の目安は?
目安としては1.5 t/㎡以上が望ましいです。とはいえ、安全確認で重要なのは「車両重量+積載物」という単純な足し算ではありません。 床の安全性を脅かすのは合計重量ではなく、荷物を持ち上げた際の「前輪にかかる集中荷重」と走行時の「衝撃」です。
計算に含めるべき要素は?
| 含める要素 | 参考値を使用した例 | 
| フォークリフト(1.5t)自重 | 2.5t | 
| 積載物重量 | 1.0t | 
| 衝撃係数 | ×1.3 | 
| 集中荷重 | 前輪2本への荷重集中 | 

【タイプ別】倉庫の積載荷重(床荷重)と特徴
次は、代表的な4つの倉庫タイプ別に、積載荷重の目安と特徴を解説します。
- 平屋建て倉庫(地上倉庫)
 - 多層階倉庫(2階建て以上の倉庫)
 - 立体自動倉庫
 - 高床倉庫
 
それぞれの特徴を理解し、自社の商材や運用に最適な倉庫を選定しましょう。
平屋建て倉庫(地上倉庫)の積載荷重(床荷重)
平屋建て倉庫は、建物の基礎が直接地面に接しているため、構造的に最も強度を出しやすいタイプです。
| 項目 | 詳細 | 
| 積載荷重目安 | 2.0 t/㎡~5.0 t/㎡またはそれ以上 | 
| 特徴 | 地面(土間)が床を支えるため高強度。重量ラックの設置や大型フォークリフトの走行、重量物(機械、飲料等)の保管に最適です。 | 
多層階倉庫(2階建て以上の倉庫)の積載荷重(床荷重)
多層階倉庫(マルチテナント型倉庫など)は、階層によって積載荷重が異なります。
| 項目 | 詳細 | 
| 積載荷重目安 | 1階:2.5 t/㎡  2階以上:1.5 t/㎡  | 
| 特徴 | 1階は地面に接するため高強度。2階以上は床を柱や梁で支えるため、強度は1階より低く設定されます。 | 
立体自動倉庫の積載荷重(床荷重)
立体自動倉庫は、高層ラックとクレーン等をコンピューターで制御し、荷物の入出庫を自動化するシステムです。
| 項目 | 詳細 | 
| 積載荷重目安 | 積載荷重という概念より「1区画あたりの耐荷重」で管理されることが多いです。 | 
| 特徴 | クレーンが自動で棚に格納。区画毎の耐荷重が重要で、積載荷重は建物全体の構造計算に含まれます。 | 
高床倉庫の積載荷重(床荷重)
高床倉庫は、トラック荷台の高さ(約1~1.5m)に床面を合わせた、プラットフォーム(バース)を有する倉庫です。
| 項目 | 詳細 | 
| 積載荷重目安 | 1.5 t/㎡~2.0 t/㎡ | 
| 特徴 | 荷捌き場はフォークリフトが頻繁に通るため、動荷重も考慮した強度が必要。保管エリアとプラットフォーム両方の強度確認が重要です。 | 
倉庫の積載荷重(床荷重)を証明する「検査済証」について
検査済証は、その建物が建築基準法などに適合していることを証明する、非常に重要な公的書類です。建物の完成後に行われる「完了検査」に合格した際に発行されます。
この書類には、設計図書(構造計算書)に基づいた法的な積載荷重が明記されています。 荷主企業が倉庫の強度を判断する上で、最も信頼できる根拠となるため、契約時や重量物設置の際には必ずこの書類で積載荷重を確認することが不可欠です。
検査済証には、主に以下のような内容が記載されています。
- 建物の所在地
 - 建築主(所有者)の氏名
 - 確認検査員の氏名
 - 確認年月日・番号
 - 検査年月日・番号
 - 対象建造物の概要
 
検査済証が発行されるまでの流れ
検査済証が発行されるまでの流れは、まず工事着工前に「建築確認」を受け、建物が完成した後に「完了検査」が実施されます。この検査で「設計図面通りに建てられている」と認められた場合に、検査済証が交付される仕組みです。
- 建築の計画と設計
 - 建築確認の申請手続き
 - 建築確認の審査と「確認済証」の交付
 - 建設工事の着工と建物の完成
 - 建物の「完了検査」の実施
 - 完了検査合格と「検査済証」の交付
 
新倉庫の契約時や重量ラック導入の際、この検査済証を使い、「設計上の積載荷重」が自社の運用計画を満たしているかを必ず確認する必要があります。

倉庫の積載荷重(床荷重)の計算方法
倉庫の積載荷重は、単純な面積計算では求められません。実際には建築士などの専門家が、以下を基準に安全性を詳細に計算して算出します。
- 固定荷重の計算:建物そのものの自重(床、壁、柱、梁、屋根、仕上げ材など、動かせない部分の重さ)を算出します。
 - 可動荷重(積載荷重)の計算:倉庫内に置かれる荷物、ラック(棚)、マテハン機器など、後から配置・移動されるものの最大重量を算出します。これが一般に「積載荷重」と呼ばれるものです。
 - 衝撃荷重の計算:フォークリフトの急停止や荷物の落下など、突発的・動的にかかる力の大きさを考慮します。特にフォークリフトが走行する床では重要な計算項目です。
 - 荷重の分布の計算:上記で算出した各荷重が、床から梁、柱、そして基礎へとどのように伝わり、分散されるかを計算します。
 - 構造要素の強度計算:荷重が伝わる各部材(床板、梁、柱など)が、その力に耐えられる十分な強度(曲げ強度、せん断強度など)を持っているかを計算します。
 - 安全係数の適用:計算された強度に対し、予期せぬ事態や材料のばらつきを考慮した「安全係数」を掛け合わせ、最終的な安全性を確保します。
 
荷主企業の担当者がこれらの計算を自ら行うことはありませんが、積載荷重がこうした厳密な計算に基づいて設定されていると理解しておくことが重要です。
倉庫を選定する際の注意点
自社の商材を預ける倉庫を選定する際、積載荷重に関して特に注意すべき点は以下の4つです。
- 保管する荷物の種類と重量を把握する
 - 将来的な荷物の増減を考慮する
 - 倉庫の構造を確認する
 - 動荷重を考慮する
 
保管する荷物の種類と重量を把握する
保管する荷物の重量とレイアウト(ラック段数など)を明確にします。その際、床全体の平均荷重(t/㎡)だけでなく、ラックの脚など「点」でかかる「集中荷重」も重要です。床の突き抜けを防ぐため、必ず確認してください。
将来的な荷物の増減を考慮する
倉庫契約は中長期にわたるため、将来の物量増加や重量商材への変更も考慮しましょう。スペックがギリギリだと事業拡大に対応できません。ある程度の余裕を持たせた物件選定が重要です。
倉庫の構造を確認する
積載荷重は平屋か多層階かで大きく異なります。特に多層階倉庫の場合、1階と2階以上(基準階)では強度が違うため注意が必要です。基準階(例:1.5t/㎡)を平屋(例:2.0t/㎡)と同じ感覚で設計すると、荷重オーバーの危険があります。
動荷重を考慮する
積載荷重は、静止した荷物(静荷重)だけでなく、フォークリフト運用時の衝撃(動荷重)も考慮しなければなりません。使用エリアの床が走行に耐えられる設計か必ず確認しましょう。静荷重のみのスペックでは、運用が制限されることがあります。
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まとめ
本記事では、倉庫の積載荷重について、その定義から法基準、タイプ別の強度の目安、選定時の注意点までを詳しく解説しました。積載荷重は、倉庫の安全運用と効率的な保管を実現するための重要な指標です。自社の商材や運用に合った倉庫を選定する際は、検査済証で積載荷重を確認し、将来的な物量増加も見据えた余裕のあるスペック選定を心がけましょう。
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