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【2024年版】物流業界を取り巻く状況とは|抱える課題や対策を解説
物流業界が抱える課題は多く、社会問題と化しています。この記事では、物流DXパートナーのHacobuが、物流業界を取り巻く状況や課題・対策についてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 物流事業者は物流業界において重要な役割を担う
- 物流業界はさまざまな課題や、今後「運べなくなるリスク」を持っている
- 物流業界の課題解決には、荷主・物流事業者の意識改革、消費者の行動変容が必要
目次
物流業界における物流事業者の役割
物流事業者とは
物流事業者とは、荷主から荷物を預かり目的地まで運ぶ業務を行っている企業です。
荷主とは
荷主とは、荷物の所有者のことです。荷主はその名のとおり、荷物を送る側の発荷主と、受け取る側の着荷主に分けられます。物流事業者は、荷主からの依頼を受けて、輸送などの業務をすることになります。
物流事業者の業務内容
物流事業者の業務内容は主に以下の6つです。
- 輸送
- 保管
- 荷役
- 包装
- 流通加工
- 情報管理
詳細は以下の記事でも解説しています。
物流の基本を解説!今の課題やこれから求められることへの対応策も提案
スーパーマ…
2024.05.07
自家物流と委託物流
荷主が自社の荷物を直接運ぶことを「自家物流」と呼びます。これに対し、物流事業者に輸送などを委託することを「委託物流」と呼びます。
荷主が自社の競争優位性のために自家物流を行う例としてはAmazonなどがあげられますが、多くの荷主は委託物流を取り入れています。また、輸送だけ・保管だけといった一部業務の委託だけでなく、物流全体を委託していく流れになっています。
発荷主から着荷主へ荷物が届くプロセスには物流事業者の存在がなくてはならないといえます。
3PLとは(Third Party Logistics)
前述のような物流事業者が物流全体を受託するビジネスモデルが3PLです。荷主に代わって第三者(サードパーティー)が効率的な物流システム構築の提案を行い、物流業務の企画・設計・運営の全体を包括して請け負う業態で、日本国内の主要な物流事業者の多くはこの3PLを事業の柱にしています。
物流業界のプレーヤーと輸送手段
物流業界のプレーヤー
物流業界のプレーヤーとしては、陸運のメインであるトラック運送会社や鉄道会社、海運会社、航空会社だけでなく、倉庫業や港湾荷役業なども物流業界に含まれるといえます。
輸送手段別の割合
国内貨物輸送量を輸送重量(トンベース)で見ると、トラック輸送が9割以上を占めます。
物流業界には多くのプレーヤーがいますが、積み降しや最終配送先への輸送はトラック輸送になること、そして輸送手段として圧倒的にトラック輸送が多いことから、物流業界はトラック輸送を中心に成り立っています。
以降では、さまざまな観点で物流業界の現状を解説していきます。
市場規模から見る物流業界の現状
物流業界の総市場規模は、約32兆円と考えられています。
国際物流については、半導体不足が解消し自動車輸送などが好調に推移するほか、運賃などの物流費高騰で、市場規模は拡大する見込みです。
国内物流については、コロナ禍から徐々に回復してはいるものの、物価上昇による消費活動低迷の影響で、取扱物量は横ばい程度で推移するとみられます。しかし、運賃などの物流費の上昇で、市場規模自体は拡大する見込みです。
参考:物流17業種市場に関する調査を実施(2023年) | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
消費者動向から見る物流業界の現状
取り扱い個数は増加傾向
ECサイトでの購入増加、フリマアプリなど個人間の取引の活発化などが要因として、近年、宅配便の取扱量が増加しています。このように小口注文・小口配送が増えると、大口配送とは異なったオペレーションが必要になってきます。
迅速な配送が求められている
翌日配送の一般化はもちろん、当日配送を行うサービスも普及しました。これにより、物流事業者の負担は増大し、また、配達時間が遅延するようなことがあれば顧客満足度を低下させることになってしまいます。
再配達の負担が大きい
現状として、再配達が頻繁に発生しています。再配達の割合は年々減少してはいるものの、2023年の国土交通省の調査によると再配達率は11.1%と、およそ1割にも及んでいることがわかります。これが配送の大きな負担になっています。
ドライバーから見る物流業界の現状
ドライバーの有効求人倍率
ドライバーの有効求人倍率は、全産業平均に対し、約2倍高い水準となっています。高い求人倍率は、求人に対する求職者の数が少ないことを示しており、ドライバーの人手不足が深刻であることがわかります。
年齢構成
総務省によると、道路貨物運送業の労働者は若年層が少なく、中高年齢層が多いことがわかりました。特に15~29歳の割合が全産業平均より低く、40~54歳の割合が高くなっています。また、45歳以上の割合が60%を超えており、ドライバーの高齢化が見て取れます。
年間所得及び労働時間
厚生労働省によると、ドライバーの年間所得は全産業平均よりも低く、一方で労働時間は全産業平均よりも長い傾向にあります。特に大型トラックのドライバーは年間労働時間が非常に長いといわれています。
物流事業者の経営状況から見る物流業界の現状
貨物自動車運送事業者数
日本国内でトラック輸送を行う企業は、2022年3月末時点で約5.8万社といわれています。(特定・霊柩業種を除く)また、約99%の物流事業者が中小企業といわれています。
倒産件数の増加
東京商工リサーチの全国企業倒産状況(年間)によると、2023 年の運輸業の倒産件数は416 件(前年比 28.4%増)となり、過去5年間で最も多い結果となりました。
要因としては、燃料費の高騰などによる物価高倒産、人手不足などの影響が大きいといわれています。
M&A の増加
近年、物流業界においてM&A(企業の合併・買収)が増加しています。
大企業はM&Aを通じてドライバーを確保したり、競争力向上のために事業規模を拡大して新たな市場に進出しています。一方、中小企業では、前述のような難しい経営状況から、単独での経営努力に限界があり、M&Aを選択しています。また、後継者不足により、事業継続のためにM&Aが必要とされています。
アナログな業務プロセス
物流業界は、アナログな業務プロセスを取ることが少なくありません。
例えば、配達状況の確認には電話、配送依頼書の送付にはFAXを用いることが多いです。また、物流センターはトラックが着いてから荷降ろしする荷物を知り、そこから保管先を検討することもあります。
ここまで物流業界の現状について解説してきました。このような現状は、物流業界で働く人々に大きな負担となっており、その対策としての法規制が進みました。
物流業界で働く人のための法規制と、物流の2024年問題
時間外労働の割増賃金率の引き上げ
2023年4月の労働基準法改正で、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が25%から50%に引き上げられました。割増賃金が倍となり、物流事業者は人件費高騰による利益低下が懸念されます。
改善基準告示の改正
ドライバーの長時間労働を防ぐため、拘束時間の上限や休息期間を定めた改善基準告示の改正が2024年4月1日から施行されました。
改善基準告示とは?荷主として1日13時間ルールを理解し、対策しよう
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2024.03.03
物流の2024年問題
ドライバーの労働時間が規制され、1人あたりの業務負担は軽減するとされる一方で、ドライバーの収入減、労働力の確保が困難になるといった新たな問題が浮上しています。
このような物流の2024年問題は、物流業界内だけではなく社会問題として広く注視されています。
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2023.05.25
物流業界が抱えている課題
ここでは、物流業界が抱えているさまざまな課題を解説します。
長時間の荷待ち
ドライバーは一運行あたり、1時間34分の荷待ち時間が発生しているといわれています。
この荷待ち時間は、ドライバーの長時間労働の要因の一つです。
トラックの積載効率の低下
多頻度少量の輸送が増えたことなどからトラックの積載効率は40%を切っているといわれており、トラック輸送には大きな非効率が発生しています。
不適正な運賃収受
国土交通省は「標準的な運賃の告示制度」として参考となる運賃を示していますが、標準的運賃と同等の金額を実際に収受できていると回答した物流事業者は15%程度といわれており、適正な運賃の収受ができている物流事業者はわずかです。
多重下請け構造
「多重下請け構造」は、物流業界では一般化しており、実際の輸配送を担っている3次請、4次請などの中小企業は、元請企業から安定的に仕事を受けることができるというメリットが存在する一方、委託が繰り返される過程で適正な運賃が細分化し、実際の運送事業者の取り分が低くなります。
物流業界が起こり得る「運べなくなるリスク」
日本の人口減少やドライバーの高齢化に伴い、ドライバーの数は今後減少していく可能性があります。このような中で前述の課題に対する改善が進まなければ、2030年には全国で荷物全体の3割超を運べなくなる恐れや、物流品質の地域格差が生じるかもしれません。
生活必需品や商品を迅速かつ安全に届けるための重要なインフラが崩壊する危機に、我々は直面しています。
物流業界の課題に対する行政の動き
前述のようなリスクを回避するため、行政も対策を取っています。
物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン
経済産業省、農林水産省、国土交通省の連名で、発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者が早急に取り組むべき事項をまとめた「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を策定し、2023年6月2日に発表されました。
ここでは物流事業者が取り組むべき内容が明記されており、以下に抜粋します。
実施が必要な事項
- 共通事項
- 業務時間の把握・分析
- 長時間労働の抑制
- 運送契約の書面化
- 個別事項(運送モード等に応じた事項)
- 荷待ち時間や荷役作業等の実態の把握
- トラック運送業における多重下請構造の是正
- 「標準的な運賃」の積極的な活用
実施することが推奨される事項
- 共通事項
- 物流システムや資機材(パレット等)の標準化
- 賃金水準向上
- 個別事項(運送モード等に応じた事項)
- 倉庫内業務の効率化
- モーダルシフト、モーダルコンビネーションの促進
- 作業負荷軽減等による労働環境の改善
詳細は以下記事でも解説しています。
物流革新に向けた政策パッケージとガイドラインとは。荷主・物流事業者が取り組むべき対応を解説
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2023.10.16
【最新】流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法の改正
2024年5月、改正流通業務総合効率化法・貨物自動車運送事業法が公布されました。物流の2024年問題への対応、そして物流の持続的成長を図るのが目的で、特に重要な点を抜粋します。
荷主・物流事業者に対する規制 【流通業務総合効率化法】
- 一定規模以上の荷主・物流事業者に対し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、中長期計画に基づく取組の実施状況が不十分の場合、勧告・命令を実施。
荷主勧告制度とは?荷主勧告を受ける荷主の行為、企業に求められる対応などを解説
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2024.10.30
トラック事業者の取引に対する規制 【貨物自動車運送事業法】
- 元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成を義務付け。
- 荷主・トラック事業者・利用運送事業者に対し、運送契約の締結等に際して、提供する役務の内容やその対価などについて記載した書面による交付等を義務付け。
- トラック事業者・利用運送事業者に対し、他の事業者の運送の利用の適正化について努力義務を課すとともに、一定規模以上の事業者に対し、当該適正化に関する管理規程の作成、責任者の選任を義務付け。
詳細は以下記事でも解説しています。
物流関連2法改正・政府の中長期計画を解説。荷主・ 物流事業者は今何をするべきか。
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2024.04.12
物流事業者が取り組むべき対策
このような行政の動きを踏まえ、物流事業者が取り組むべき対策は何でしょうか。
まずは、前述のガイドラインに明記されている取り組みを推し進めるのが良いでしょう。取り組みを推進する上で重要な点を以下にて補足します。
業務プロセスのデジタル化
前述の通り、物流業界ではアナログな業務プロセスを用いることが多いですが、アナログな業務プロセスは業務時間の把握や効率化が難しいといえます。
業務プロセスをデジタル化することで、データ収集と共有が容易になります。これにより、業務時間の正確な把握や、作業の進捗状況をリアルタイムで把握することができます。また、手作業で行っていた業務をシステム化することで、手間と時間が大幅に削減され、効率化できます。
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2021.11.29
例えば物流センターにおいては、トラック入退場管理のデジタル化が有効です。トラック予約受付サービスのMOVO Berth(ムーボ・バース)は、荷待ち・荷役時間を把握できるだけでなく、入退場時間の分散や、事前に作業計画を立てられるようになることで、荷待ち・荷役時間を削減できます。
MOVO Berthの資料は以下リンクからダウンロードいただけます。
人事制度の改革
ガイドラインにも長時間労働の抑制や労働環境の改善に取り組むべきと明記されているとおり、これらの取り組みは急務です。そして取り組むためには、人事制度の改革が必須です。
労働時間の管理を徹底することはもちろん、時短勤務やフレックスなどの柔軟な働き方への対応をしましょう。給与体系の見直しやインセンティブ制度の導入を検討することも有効です。これにより、従業員のモチベーションを高め、離職率の低下につなげることができます。さらに、定期的な健康診断やメンタルヘルスケアの実施も、従業員の健康を維持するために重要です。
協力会社と一体になって改善に取り組む
輸送などを協力会社に委託している場合は、自社だけでなく協力会社と一体になって改善に取り組みましょう。
例えば、動態管理サービスのMOVO Fleet(ムーボ・フリート)は、自社の車両だけでなく協力会社の車両の稼働時間を取得・分析することができ、法令に反する可能性がある運行が行われていないかを自社で確認できます。
配車受発注・管理サービスのMOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)は配送依頼や車番連絡といったプロセスを協力会社側も効率化できます。
MOVO Fleetの資料は以下リンクからダウンロードいただけます。
MOVO Vistaの資料は以下リンクからダウンロードいただけます。
荷主が取り組むべき対策
物流業界の課題解決には、荷主自らの意識改革が不可欠です。
有責待機の把握・削減
物流拠点で発生する荷待ち時間のうち、ドライバー都合で発生する荷待ち時間ではなく、物流拠点が起因の荷待ち時間をHacobuでは「有責待機」と定義し、荷待ち時間の把握・削減のために重要な指標として、その概念を提唱しています。
自社の工場や物流センターが起因の荷待ち時間を把握・削減することは荷主の責務です。
有責待機とは?バースの予約運用で本質的な荷待ち時間削減に取り組もう
目次1 有責待機&…
2024.05.15
パレチゼーション
パレットの導入状況は、荷主の業界や商品特性によって異なる傾向があります。利用できる場合に限ってパレットを活用するというスタンスではなく、積極的な導入を検討する必要があります。パレット化により荷役時間を大幅に削減することが期待できます。
納品リードタイムの確保
発着荷主間の商慣習の改善、特に納品リードタイムに余裕を持たせることが重要です。現在のタイトなスケジュールでは、物流事業者は無理な納品を強いられ、結果として労働環境が悪化しています。納品リードタイムを見直し、余裕を持たせることで、物流事業者の負担を軽減し、効率的な配送が可能になります。
荷主・物流事業者が共同で取り組むべき対策
荷主・物流事業者それぞれが対策に取り組むだけでなく、共同で取り組みを進めることが重要です。
運送契約の協議・適正化
物流事業者は適正な運賃や運送以外に発生する料金の収受を荷主に申し入れ、荷主は協議に応じ、運賃・料金に適切に転嫁することが必要になります。実運送会社やドライバーが適正な利益・給料を得ることが、倒産やドライバー不足を食い止めることに直結します。
データをもとに対話する
荷主・物流事業者それぞれが歩み寄り、対話により改善策を見つけていくことが重要です。例えば、荷主のデンソーや物流事業者の鴻池運輸は、それぞれのカウンターパートとの対話を重要視し、一体となって物流改善に努めています。
詳細は以下の記事もご覧ください。
デンソー・鴻池運輸が取り組む、「対話」による物流改善
トラックド…
2024.04.22
対話する際に重要なのが、データをもとに議論することです。
例えば、荷主・物流事業者は物流拠点における荷待ち時間の認識にギャップがあることも少なくありません。各種データを取得し、認識を合わせた上で改善点を議論すると良いでしょう。
消費者が取り組むべき対策
物流業界の課題は、消費者の生活にも影響します。そのため、消費者1人ひとりが意識を変えて対策する必要があります。以下で具体的な対策を解説していきます。
再配達を減らす
少しずつ減少しているとはいえ、再配達は依然として1割もあるのが現状です。これに対して消費者からも、置き配を指定する、宅配ボックスを設置するなど、再配達防止の取り組みをしていきましょう。
国土交通省では以下の3つを推奨しています。
- 時間帯指定の活用(ゆとりある日時指定)
- 各事業者の提供しているメール・アプリなどの活用
- コンビニ受取や駅の宅配ロッカー、置き配など、多様な受取方法の活用
物流業界の課題解決ならHacobu
この記事では物流業界の現状や課題を解説しました。
Hacobuでは、物流業界の課題を解決するさまざまなソリューションを提供しています。
トラック予約受付サービス MOVO Berth
荷待ち・荷役時間の把握・削減、物流拠点の生産性向上を支援します。
動態管理サービス MOVO Fleet
協力会社も含めて位置情報を一元管理し、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。
配車受発注・管理サービス MOVO Vista
電話・FAXによるアナログな配車業務をデジタル化し、業務効率化と属人化解消を支援します。
物流DXコンサルティング Hacobu Strategy
経営戦略策定からテクノロジーを活用した実装まで、一気通貫で物流DXを支援します。
また、ITサービスに関しては以下で発信されている情報もご参考になるかもしれません。
著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuのマーケティング担当
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