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デンソー・鴻池運輸が取り組む、「対話」による物流改善

トラックドライバーの労働時間短縮により輸送能力不足が懸念される「物流2024年問題」が課題となっています。この物流危機への対応のひとつとして「対話」に取り組んでいるのが、大手自動車部品メーカーの株式会社デンソーと物流事業者大手の鴻池運輸株式会社です。それぞれ、荷主企業、物流事業者として対話を進め、物流改善に取り組んでいます。

デンソー 生産管理部 物流改革室 国内物流購買課長の及川明彦氏と、鴻池運輸 東日本支店 営業革新部 グループリーダーの輪千雄一氏が、Hacobuが2024年2月22日に開催した物流DXツール「MOVO(ムーボ)」のユーザ向けイベント「MOVOユーザ・コミュニティ総会」に登壇し、それぞれの物流改善について語りました。

「荷主企業として物流事業者との対話を進める」デンソー

自動車部品大手のデンソーの物流部門は、デンソーとデンソーグループ各社の物流に関する企画・推進・統制の機能を担い、物流事業者との対話を進めながら、「物流の改善を進めていく主体者」としての取り組みを行っています。

「物流事業者に対しては、運行管理や輸送品質の維持・向上を期待しています。その一方で、日々の業務における課題、効率化の方法を荷主企業としてケアできる関係性でありたいと考えています」と、デンソーの及川氏は語ります。

物流事業者とのコミュニケーションの場が、毎年5月に開催される「年次総会」です。年次総会では、デンソーとしての年度の方針や重点活動、目標を説明しています。

年次総会の内容をもとに、物流事業者と定期的に打ち合わせを行い、目標に対する進捗確認や、意見交換を行っています。打ち合わせでは、倣うべき改善活動があれば互いに共有し、リスク対応についても話し合っています。

さらに、デンソーと物流事業者で年次面談を行い、安全面の取り組みの結果や課題、契約面に至るまでの意見交換を行っています。話し合いを踏まえて改善点を抽出し、年度方針・改善活動への還元を行っています。

物流事業者との関係性においては、「両者で役割と実態を正しく理解し、共に課題解決に取り組むこと」「方針や目標を共有し、忌憚なく会話しながら、PDCAサイクルを回していくこと」を重視しています。

物流効率化活動の変化

物流事業者との関係性もさることながら、ここ数年で、物流効率化活動そのものにも変化が起きているといいます。

以前は、物流費の多くを占める輸送費をいかに低減するかという視点で、改善活動が語られてきました。しかし、世の中の環境変化により、輸送費の低減だけでなく、工場や倉庫内の人の作業やCO2排出量の最小化など、取り組むべきことが増え、新しい視点での効率化が必要になります。

現在は、従来の「輸送費低減」を目的としながらも、輸送の前後で発生している「人の作業」の最小化や、大型倉庫への集約による「中継地点」の最小化など、輸送だけでなく、サプライチェーン全体で無駄をなくすという視点で効率化を考えるようになりました。

また、物流においては、「差別化」から、外の力も借りる「協調」へと方針の転換が行われたのも大きな変化です。

「みんなで効率化を進めるというマインドで活動を進めています」(及川氏)

これまで自社で個別にシステムを作っていたところから、バース予約システム「MOVO Berth(ムーボ・バース)」の導入のように、外部のサービスを活用することにも取り組んでいます。また、他社との共同配送など、物流アセットの共有にも積極的な考えを示します。

MOVO Berthに関しては、正確な荷役時間の把握を目的にデンソーの10工場で導入しており、24年度にはグループ生産会社での導入に拡大します。社外のシステムを利用することで、安価かつスピーディ・身軽にDXに取り組めています。

物流事業者や社外パートナーと手を取り合い、物流改善を進めているデンソー。今後の課題・今後の展望も示しました。

「物流効率化は自社の情報だけでは進めることはできません。取引先や物流事業者が運行管理をしていることもあって、積載率を高めたり作業時間を削減しようとしても、実態が正しく見えない。『私たちが改善しても、 次の納品先では待機が発生してしまっているのではないか』、そんな不安もあります。それぞれが課題を正しく把握するために、情報をみんなで集め、みんなに共有する。これにより、さらなる効率化を目指すといったサイクルを作っていきたい。」(及川氏)

「荷主企業と共同で物流改善に取り組む」鴻池運輸

鴻池運輸は、1880年創業の老舗物流事業者です。

物流工程だけでなく生産・サービス工程のあらゆる請負業務まで一貫して担っているのが特長で、全国に70拠点以上の倉庫拠点を持っています。

ICT戦略の一環として現場の作業軽減に向けMOVO Berthの導入を推奨しており、現在全国27拠点で実際に導入し、計画的な庫内作業による労働時間削減に取り組んでいます。

また、国立流通センターでは、業務のデジタル化による生産性向上を目的として、配送案件管理サービス「MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)」を活用しています。

輪千氏は、荷主企業の物流課題解決をサポートする立場であり、また、DXプロジェクトのメンバーとして社内のICT戦略の推進を担当しています。日頃から第一線で荷主企業と接する輪千氏に「対話」による物流改善について聞きました。

荷主との関係性においては、「荷主企業には改善に向けて主体的に動いていただき、我々はそれに対して、安全・品質を担保しつつ応えていく関係性がよいのではないか」と語ります。

そのために輪千氏が日頃から意識しているのが、荷主企業に実態を認識してもらうこと、お互いが目線を合わせて話ができる環境を作ることです。

今まさに取り組んでいるのが、時間帯によって発生するセンターでの車両の滞留を、輸送の繁閑を平準化し解決することです。輸送の繁閑が時間帯によって偏っていると、忙しい時間には車両が滞留してしまうことになります。時間帯による輸送の偏りをなくすことで、車両の滞留を解決することを目指します。輸送を変更することは荷主企業の協力無しには実現できません。今回、荷主の倉庫担当と輸送担当の理解を得ることができ、実現に向けて進みつつあると言います。

これも、滞留の状況を荷主企業と共有し、認識を合わせたことから始まりました。荷主側でも倉庫担当と輸送担当が連携する動きがとられたことで、具体的に動き出しました。

荷主企業の中には、倉庫と輸送で担当部署が分かれ、うまく連携がとれないケースも多くあります。

荷主企業内でも目線を合わせて話ができているかは、物流改善を進める上で、重要なファクターとなります。改善をスピーディに進めるため、荷主企業内での連携の動きを促すことを意識した「対話」を行っていきたいと話します。

さらに荷主企業との関係値を高める上で大事にしていることは?との問いに対し、「物流事業者として、荷主企業の期待に応えることが一番。一方で、実現不可能な荷主企業の要望に対しては『できない』と伝えることも関係値を高めるためには必要です」(輪千氏)

「物流2024年問題」に対し、荷主企業は、どう取組んでいくべきか、効果はあるのかと悩まれていることが多い。我々も手探りであり課題も多いですが、率直な「対話」を続けることで前進させ、共に乗り越えていきたい、と締めくくりました。

会場からは、「荷主として、現場に入り込んで一緒に改善しようとしているが、物流事業者にとっては競争領域のため、あまり荷主に踏み込んで欲しくないのではないか」「物流事業者が実態の開示に消極的な場合がある。実態の開示をどこまで求めるかの線引きが難しい」との意見がでました。

輪千氏は、これらの意見に共感し「難しい点である」とした上で、「荷主企業の物流機能の一部だけを請けている状態だと、情報量も限られ、できることも限られてくる。任せていただける範囲を拡げることで、我々も荷主企業と同じ目線に近づき、お互いにとって良い結果を生むことができるのではないか。そうなるよう努力していきたい」と、ひとつの解決の方向性を示しました。

荷主企業・物流事業者は、物流をともに進めていくパートナーです。
デンソーや鴻池運輸のような荷主企業・物流事業者の垣根を超えた物流改善が、今まさに求められています。

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