更新日 2025.07.31

マーシャリングとは?メリットや効率化のポイント、自動化・デジタル化の最新動向などを解説

マーシャリングとは?メリットや効率化のポイント、自動化・デジタル化の最新動向などを解説

「マーシャリング」は、ライン供給や出荷準備の効率化に欠かせない重要な工程です。本記事では、マーシャリングの定義から基本作業の流れ、メリット、効率化のポイント、自動化・デジタル化の最新動向などについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。

マーシャリングの定義と役割

マーシャリング(Marshalling)とは、必要な部材・商品を一か所に集約し、次工程に向けてまとめる作業工程を指します。製造現場では主に組立ラインに供給する部品を一式揃えて準備する工程などに用いられ、物流現場では出荷前のオーダー単位での集約作業などに該当します。

マーシャリングの基本的な作業フロー

マーシャリングは、次工程へのスムーズな供給や出荷のスループット向上を実現するため、いくつかの段階に分かれて進められます。以下では、基本的な作業フローを3つのステップに分けて解説します。

1. 作業指示とリスト準備

マーシャリングはまず、対象となるオーダーや生産計画に基づいて必要品目のリストを作成するところから始まります。ピッキングリストやマーシャリングリストとして現場に配布され、誰が、どの順番で、どのエリアから品物を集めるかが指示されます。ここでの精度が後工程の品質に直結します。

2. 集品(ピッキング)と集約

次に、指示に従って倉庫内または部材置き場から品目を集品し、マーシャリングエリアへ運び込みます。集品された品物はオーダー単位や組立単位で一か所にまとめられ、欠品や間違いがないか確認されます。エリア内は区画ごとに整理され、混載防止やトレーサビリティ確保が求められます。

3. 検品と仕分け・仮置き

最後に、集約された品物について数量や品番の最終確認(検品)を行い、必要に応じて仕分けやラベル貼付を実施します。検品が完了したものは、次工程への供給順や出荷時間に合わせて仮置きされ、準備完了状態にします。こうして整えられた品物は、ラインサイドや出荷ゲートへ効率的に搬送されます。

マーシャリングのメリット

マーシャリングは、現場業務の効率や品質を大きく向上させる重要な工程です。ここでは、代表的なメリットを3つの観点から詳しく解説します。

作業効率の向上

必要な部材や商品をあらかじめ一か所にまとめて準備しておくことで、次工程の担当者が探し回る必要がなくなり、すぐに作業を開始できます。これにより生産現場ではラインの停止リスクが低減し、出荷現場では荷役時間が短縮できます。特に多品種少量生産やオーダー別ピッキングが求められる現場では、無駄な動きを削減し全体のスループット向上に貢献します。また、担当者ごとに必要な品物が明確に区分されるため、混乱や取り違えも防げます。

品質・正確性の向上

マーシャリングエリアでオーダー単位に集約し、検品までを行うことで、品番違いや数量不足といった出荷ミスを未然に防ぐことができます。次工程に渡す前に二重チェックが可能になるため、最終納品品質の安定につながります。ミスが減ることでクレーム対応の負担も軽減します。

現場管理性と視認性の向上

マーシャリングによって品物が整然とまとめられ、エリア内で区画管理されることで、現場全体の視認性が向上します。進捗状況が一目で分かり、管理者が状況把握しやすくなるだけでなく、在庫管理やトレーサビリティの精度向上にも寄与します。特に繁忙期や臨時対応時など、混乱しがちな現場でも秩序を保てるのは大きなメリットです。

マーシャリングの課題

スペースと人員負担の問題

マーシャリングは効率化に役立つ一方で、エリア確保や人手の負担が大きい点が課題です。特に繁忙期には作業が集中し、スペースが不足したり混雑が発生しやすく、管理が難しくなる傾向があります。また、品種やオーダー数が多い現場では、集約・検品作業がボトルネックとなり、全体のリードタイムを圧迫する場合もあります。人的作業に頼る部分が大きく、ミスや負担軽減の取り組みが必要です。

出荷工程特有のタイミングのズレ

生産現場では、計画に基づいて比較的スムーズにマーシャリングが行われているケースが多い一方で、出荷工程では課題が残ることもあります。出荷計画自体は細かく立てられていても、トラックの到着時間と完全に同期させるのは容易ではありません。運送会社からは、その日に到着予定のトラックのおおよその時間は共有されることが多いものの、「どのトラックが、何時に、どの順番で到着するのか」という具体的な情報までは十分に得られない場合が少なくないのです。

仮置き場の逼迫と混雑

出荷現場では、トラック到着のタイミングが不明確なため、すべての出荷品を仮置きして待つ運用になりがちです。その結果、仮置きスペースがすぐに埋まり、現場が混雑して効率が低下します。荷物の置き場が錯綜し、誤出荷のリスクや作業時間の増加を招くケースも多く、改善が求められるポイントです。

マーシャリング業務を効率化するには?

現場におけるマーシャリングは、人手による作業が中心である一方、改善余地が大きい工程です。ここでは実際の改善事例を踏まえて、効率化の手法を解説します。

エリアレイアウトと動線設計

作業者の無駄な動きや距離を削減するには、マーシャリングエリアを最適な位置に配置することが重要です。ピッキング→マーシャリング→積込みが直線的に行えるレイアウトが理想です。

ピッキング方法の工夫

バッチピッキングとシングルピッキングを組み合わせ、マーシャリングでの仕分けを最小限に抑える設計が求められます。

5S活動と標準化

定位置管理、目印ラベルの徹底、マニュアル化など、5S活動による作業品質の平準化が重要です。

WMSの導入

WMS(倉庫管理システム)を使えば、引当や進捗状況の可視化、出荷順の最適化などが可能となり、属人的な作業を削減できます。

トラック予約受付システムの導入

トラック予約受付システムを導入すると、出荷計画に合わせてトラックの到着順を調整できます。トラックの到着順が確定すると、マーシャリングエリアで事前に荷物を到着順に荷揃えが可能です。トラックが積み込み場に到着したら、その順に積み込むことで効率化できます。トラックが到着してから荷揃えするという無駄な作業を削減できます。

さらにトラックの到着時間を時間帯ごとに分散できるため、過度なトラック集中による物流現場の混乱を回避でき、結果的に積み込み完了までのリードタイムが安定します。

庫内スタッフは予約情報を見ながら前倒しで作業を始められ、物量変動にも柔軟に対応できます。

マーシャリング工程における自動化・デジタル化の最新動向

マーシャリング工程では近年、作業の効率化やヒューマンエラー防止を目的に、自動化・デジタル化の取り組みが急速に広がっています。ここでは、生産ラインと出荷工程それぞれの最新事例をご紹介します。

AGV(無人搬送車)による部材搬送の自動化

生産ラインでは、マーシャリングエリアで揃えた部品をAGVが自動搬送する仕組みが普及しています。これにより人手による運搬作業が不要になり、最適なタイミングでラインに部品を供給することが可能になります。ジャストインタイム生産を実現し、ライン停止のリスク低減に貢献します。

画像認識AIを活用した高精度検品

検品工程には、カメラ画像とAIを組み合わせた自動検品システムが導入されています。重量センサーとの併用により、品番違いや数量ミスといったヒューマンエラーを防ぎつつ、高速かつ高精度な検品を実現します。熟練者に依存しない仕組みが構築できます。

自律型ロボットによる仕分け作業の自動化

マーシャリングエリア内の仕分けには、自律型ロボットの導入が進んでいます。複数オーダーを自動的に仕分け、決められたエリアに配置することで、作業者の判断負担を減らし、安定した仕分け精度と生産性向上を実現します。

デジタルピッキングシステム(DPS)の活用

多品種少量生産の現場では、DPS(デジタルピッキングシステム)の活用も効果的です。棚のランプやディスプレイが作業者に次のピッキング位置や数量を案内し、スムーズで正確なピッキングが可能に。作業スピードの向上と誤出荷防止につながります。

トラック予約受付システムのAPI連携による出荷自動化

出荷工程では、トラック予約受付システムをWMS・WCSやAIカメラとAPIで連携する事例が注目されています。予約情報と実車データがリアルタイムで同期され、ゲート開閉、荷揃え、ドライバー呼び出しまでが自動化されます。

たとえば花王 豊橋工場では、トラック予約受付システム MOVO Berthを活用してトラックの到着とマーシャリング工程を完全に同期し、出荷作業の自動化・省人化とトラックの場内滞在時間短縮を実現しています。

完全自動化倉庫×バース予約システムで実現するホワイト物流 API連携で実現する、トラックの場内時間の最小化

現場改善の第一歩はマーシャリングの見直しから

マーシャリングは、生産ラインや出荷工程の効率を支える重要な工程です。部材や商品を一か所に集約し、次工程へスムーズに渡すことで、ラインの停止や出荷遅延を防ぎ、品質や作業効率を高める役割を担っています。その一方で、スペースの逼迫や作業負担、トラック到着時間との不一致など、現場ならではの課題も少なくありません。

こうした課題解決の鍵となるのが、自動化・デジタル化の取り組みです。AGVや自律型ロボット、AI検品などの先進技術を活用することで、現場の省人化や安定稼働が可能になります。さらに、出荷工程においてはトラック予約受付システムの導入・API連携によって、車両到着と出荷準備のタイミングを同期し、省人化や荷待ち削減を実現する事例も増えています。

マーシャリングの効率化は、現場全体の生産性を高めるために欠かせません。現状の課題を見つめ直し、自社に合った最適な仕組みを検討することが、これからの物流・生産現場の競争力強化につながります。

トラック予約システムでマーシャリングを効率化するならMOVO Berth

MOVO Berthは、5年連続でシェアNo.1を誇るトラック予約受付システムです。 車両集中を計画的に分散できるほか、豊富なAPI連携により自動化の範囲を広げられるのが特長です。さらにWMSやWCSとの連携実績も多く、マーシャリングで揃えた荷物をタイムリーに積み込む効率化を実現するための最適な選択肢と言えるでしょう。

MOVO Berthの資料は以下よりダウンロードいただけます。

*出典 デロイト トーマツ ミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2024年度版】』 https://mic-r.co.jp/mr/03240/ バース管理システム市場の売上高および拠点数におけるシェア

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。 >>プロフィールを見る

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