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改善基準告示とは?荷主として1日13時間ルールを理解し、対策しよう
物流「2024年問題」───。2024年4月よりトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用されたことにより、労働時間が短くなることによって輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」可能性が懸念されています。これは、物流に携わる方だけではなく、生活者全てに影響を及ぼす社会全体の問題です。
荷主都合による長時間の荷待ちが発生しているにもかかわらず改善基準告示が守れないという状況にある場合、荷主に対して労働基準監督署から改善に向けた要請が行われます。またドライバーの過労運転について、荷主の主体的な関与が認められる場合、国土交通省から荷主勧告書が発出され、荷主名及び事案の概要が公表されます。そのため、今回の改善基準告示の改正は荷主にとっても、他人事ではないのです。
今こそ、荷主・元請け事業者・実運送事業者・ドライバーが一丸となって、改善基準告示遵守に向けて改善に取り組んでいくことが求められています。
本記事では、改善基準告示の適用によって、ドライバーの勤務体系にどのような変化が起きるのか、また、それによる荷主への影響について詳しく解説します。
※記載の情報は2024年2月時点の内容です。
改善基準告示の1日13時間ルールについて解説した資料はこちらからダウンロードいただけます。
目次
改善基準告示とは
改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)のことで、トラック、バス、ハイヤー・タクシー等の自動車運転者について、労働時間などの労働条件の向上を図るため拘束時間の上限、休息期間についての基準などを定めたものを指します。
運輸業・郵便業は、全業種において脳・心臓疾患による労災支給決定件数が最も多い業種であり、2021年度は59件(うち死亡の件数は22件)に上り、長時間・過重労働が課題となっています。
また、自動車運転者の過重労働を防ぐことは、労働者自身の健康確保のみならず、国民の安全確保の観点からも重要です。
改善基準告示は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた1997年以降、改正は行われていませんでしたが、2022年12月に自動車運転者の健康確保などの観点により見直しが行われ、拘束時間の上限や休息期間などが改正され、2024年4月1日より施行されました。
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運転者の拘束時間や休息期間
2024年4月1日より施行された改善基準告示において、理解しておくべきポイントとして以下の2点が挙げられます。
・運転者の拘束時間
・運転者の休息期間
本項では、運転者の拘束時間と休息期間について詳しくご紹介します。
運転者の拘束時間
拘束時間とは、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む)の合計時間、すなわち、始業時刻から終業時刻までの使用者に拘束される全ての時間を指します。
運転者の休息期間
休息期間とは、運転者が使用者の拘束を受けない期間のことを言います。つまり、勤務と次の勤務との間にあって、休息期間の直前の拘束時間における疲労の回復を図るとともに、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、その処分が労働者の全く自由な判断に委ねられる時間を指します。休憩時間や仮眠時間などとは本質的に異なるため、注意が必要です。
出典:厚生労働省 労働時間等の改善基準のポイント
運転者の1年、1か月の拘束時間における変化のポイント
2024年4月から、自動車運転業務の時間外労働の上限は月45 時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間(休日労働を含まない)と定められています。
しかし2024年4月より施行される働き方改革を踏まえたトラック運転者の改善基準告示においては、現行年単位では3,516時間の拘束時間の上限が3,300時間となるため、216時間が削減されることになります。
月単位での拘束時間の上限は、現行原則293時間が284時間となり9時間の削減、最大時320時間が310時間となり10時間削減されます。
ただし労使協定により、1年の拘束時間が3,400時間を超えない範囲で、1か月310 時間以内で年6回まで延長が可能です。ただし、次の2点を満たすことが必要となります。
・284時間を超える月が3か月連続しないこと
・月の時間外・休日労働が100時間未満となるよう努めること
出典:厚生労働省 (改正後全文)自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第7号)
運転者の1日の拘束時間や休息期間における変化のポイント
自動車運転者の1日の拘束時間は、以下のように定められています。
・13時間を超えないものとし、当該拘束時間を延長する場合であっても、1日についての拘束時間の限度(以下「最大拘束時間」という。)は16時間とする。
※この場合において、1日についての拘束時間が15時間を超える回数は、1週間について2回以内とする
出典:https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/001383159.pdf
宿泊を伴う長距離貨物運送の場合は16時間まで延長が可能ですが、こちらも週2回までとされています。また、「休息期間」については、現在は継続8時間以上と定められていますが、継続11時間以上を基本とし、下限が9時間に変更されます。
例外として、宿泊を伴う長距離貨物運送の場合は、週2回に限り、継続8時間以上とすることができます。1運行中の休息期間のいずれかが9時間を下回る場合は、運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与える必要があります。
出典:厚生労働省 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
運転時間は1日平均で9時間、週あたりの運転時間は平均44時間までが限度(改正なし)
1日の運転時間は2日間を平均して1日あたり9時間が限度、1週間の運転時間は2週間ごとの平均で44時間が限度となります。本項については改正がありません。
仮に毎日の運転時間を9時間とし、週5日勤務した場合、
5 日 × 9時間 × 2週間= 90時間 ÷ 2週間= 45 時間 / 週
となり違反になってしまいますので、見直しが必要です。
継続運転時間は4時間が限度
継続運転時間は4時間が限度とされており、運転4時間ごとに合計30分以上の休憩などの運転の中断が必要です。30分以上の休憩などは分割が可能ですが、1回10分以上と定められています。
出典:厚生労働省 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
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ドライバーの1日に関する法定労働時間と現状
労働基準法で定められているドライバーの1日に関する法定労働時間は、1日8時間、1週40時間です。休日は毎週少なくとも1回はとり、時間外労働(残業)は月45時間以内とされています。
これは、月の勤務日を22日として1日あたりで換算すると、1日あたり約2時間の残業時間ということになります。
ドライバーの約2割が時間外労働上限規制への対応が困難
2015年に厚生労働省と国土交通省が行った実態調査によると、1か月あたりの残業時間は日帰りで平均45時間超え、泊付きの場合は60時間超えであったことが発表されています。
出典:https://www.mlit.go.jp/common/001128767.pdf
また、厚生労働省が公表している別の調査結果においては、通常期(繁忙期ではない期間)における時間外労働時間について、「1日あたり4時間超~7時間以下」と回答したトラックドライバーは14%、「7時間超」と回答したトラックドライバーは4.3%も存在したことが明らかになっています。
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000883737.pdf
トラックドライバーの18.3%が、1日あたりの時間外労働時間が4時間を超えている計算です。そのため、約2割のトラックドライバーは、現状のままでは時間外労働時間の上限規制に対応できないということを表しています。1日あたりの時間外労働時間が4時間以下でも、労働基準法の時間外労働上限の月45時間を1日あたりに換算した2時間を超えているトラックドライバーや、繁忙期における残業の増加を考慮すると、さらに多くのトラックドライバーは時間外労働上限規制への対応が困難であると予想できます。
出典:有限責任監査法人トーマツ 自動車運転者の労働時間等に係る実態調査事業 報告書 令和3年3月
ドライバーは長時間拘束、休息期間は短い
2015年に厚生労働省と国土交通省が行った実態調査によると、休息期間8時間未満の運行は全体では15.8%と発表されており、車種別では大型が20.2%、中型が8.9%、普通が4.2%となっています。
出典:https://www.mlit.go.jp/common/001128767.pdf
また、走行距離帯別にみたドライバーの1運行の拘束時間においては、16時間超は長距離で43.1%、短・ 中距離で5.3%となっており、特に大型・長距離のドライバーは、拘束時間と継続運転時間が長く、休息が短いことがよくわかります。現状として、休息期間を継続8時間すら取れていないトラック運転手が、全体で15.8%も存在していることも明らかになっています。
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000510277.pdf
すなわち、休息期間は継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らないとするという新たな基準を達成できない可能性は大きいといえるでしょう。
荷待ち時間は平均1時間34分
国土交通省が2021年に調査した内容によると、平均で1時間34分の荷待ち時間が1回の運行で発生しています。(荷待ち時間がある運行における平均)
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/000462130.pdf
荷待ちが発生する運行の平均拘束時間は12時間26分で、1日の上限である13時間に急迫しています。荷待ちが発生しない運行の平均拘束時間は10時間38分と、13時間まで2時間半程度の余裕があります。車種別に拘束時間を見ると、大型・トレーラ車両では、20%前後の運行で13時間以上の拘束が発生しています。
これらを踏まえると、トラックドライバーの労働時間の現状と法改正後においては、大きなズレがあることは明らかです。
法改正後も安定してモノを運ぶためには、ドライバーの拘束時間を短縮しなくてはなりません。
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ドライバーの拘束時間を短縮させるためにすべきこと
2024年問題は「1日単位」で考える
改善基準告示の改正後には、ドライバーの1日における業務や休憩の時間を細かく把握し、短縮できる時間は短縮していく必要があります。2024年問題というと年間の上限規制を頭に浮かべやすいですが、年間といった大枠で捉えても、拘束時間短縮への解決策は浮かび上がりません。1日の内訳を見ていくことで短縮できるところはないか探す「打ち手」が見えてきます。
ドライバーの拘束時間を短縮するポイント
拘束時間を短縮するためには、どのような対策をすれば良いのでしょうか。
拘束時間の内訳にポイントがあります。そもそも、拘束時間=労働時間+休憩時間であり、そのうち、労働時間=作業時間(運転、整備、荷役など)+ 手待ち時間(荷待ちなど)となります。このうち運転時間と休憩時間を削減することはできません。整備など安全に関わる作業も単純に短縮することは難しいでしょう。そうなると自ずと荷待ち・荷役時・付帯作業の時間削減がポイントとなります。
物流事業者だけでなく荷主が主体となる
発荷主や着荷主がそれぞれの依頼内容や要望内容を見直し、関係者全員が一丸となって取り組まなければ拘束時間を短縮させることはできません。ドライバーの拘束時間を短縮させる鍵は荷主である理由や、労務改善に取り組まないことによる荷主のデメリットを以降で詳細に説明します。
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ドライバーの拘束時間短縮に対する荷主の責任
ドライバーの拘束時間に対する責任は実運送事業者だけでなく、元請はもちろん荷主にもあることを忘れてはいけません。荷待ち・荷役・付帯作業に関わる時間は物流事業者が生み出すものではなく、輸配送を依頼する発荷主・着荷主が生み出すものだからです。荷主側がこれらの時間削減に意識を向けなければ、ドライバーの拘束時間を削減することは不可能です。荷主としてドライバーの拘束時間の実態を把握することから始めましょう。
「違反をしても自社が罰則を受けるわけではない」と考えてしまうかもしれませんが、ドライバーの労務改善に荷主として取り組まないことは自社にとっても大きなデメリットがあります。
改善に取り組まない荷主に起こりうるデメリット
荷主勧告制度により社名が公表される
物流事業者が行った過労運転防止違反等について、荷主都合による荷待ちを一方的に強制する・荷主が指示する等、荷主の主体的な関与があった場合に、国土交通省が当該荷主に対して是正措置を勧告し、勧告を受けた荷主は名称が公表されます。昨今勢いを増しているトラックGメンの取り組みによって、働きかけや要請の数は増えています。そして勧告を受け、社名公表されるケースも発生しました。自社名が不適切な形で公表されることがないよう、主体的にドライバーの労務改善に荷主として取り組みましょう。
物流コストの高騰
今後はドライバー人口の減少を食い止めるためにも、ドライバーの給与上昇が見込まれます。そうなると、その上昇分は運賃に上乗せされて荷主に請求されます。その結果、荷主における物流コストは高騰し、利益にも影響してきます。
しかし物流コストの高騰を防ぐこともできます。ドライバーの給与が上昇したとしても、現状よりも効率的な輸配送を行い、1ドライバーあたりの配送量を増やすことで給与上昇分を分散することができます。一般的にはまだ平均の積載率は低いと言われており、さらなる効率化の余地があるでしょう。
発荷主側の物流コストの上昇は着荷主側のコスト上昇
発荷主側でこれらのコストが上昇すると、そのコストは価格転嫁の形で最終的な商品やサービスの価格に反映せざるを得ません。複数の車両で走ってる現状を1つにまとめることで、1案件あたりの工数を削減し、1日あたりの配送数を増やすことが可能です。
物流事業者の撤退
改善基準告示の改正でドライバーの拘束時間に更なる制限がかかることで、荷主・物流事業者間パワーバランスに変化が発生すると言われています。収益改善が見込めない荷主に対して業務撤退する物流事業者も少なくありませんが、今後は限られた時間内で更なる生産性を求められることから、この動きは加速していくでしょう。緊急オーダーの頻発や無理な納期指定、ドライバーの付帯作業などがない「旨みがある」案件を物流事業者が選んでいく、そうでない荷主はお断りされてしまうパワーバランスになった場合、そもそも自社の製品・商品を顧客に提供できなくなります。
つまり法的罰則云々ではなく、企業の経済活動にネガティブ要素を生むといっても過言ではありません。
ドライバーの拘束時間短縮へ着荷主・発荷主としてすべきこと
荷主としてドライバーの1日の拘束時間を削減に取り組むべき理由は、法規制に対して社会的責任の一環として取り組むためだけでなく、コストや物流網の安定という競争優位性の観点でも明確であることがわかりました。それでは具体的に荷主は何に取り組めばいいのか、着荷主・発荷主双方の観点で解説します。
着荷主に求められる意識改革
着荷主としては物流センター・工場など自身が管掌する物流拠点における荷待ち・荷役時間の削減を行いましょう。長時間の荷待ちが発生しているのであれば、すぐにでも荷待ち時間の削減に着手することはもちろんですが、短時間の荷待ちであっても、削減に取り組むことが求められます。これらの時間を削減するにはMOVO Berthのようなバース予約システムの活用が有効です。
トラック予約受付サービス「MOVO Berth」とは?
国内シェアNo.1(※1)のバース予約システムです。トラックの入場予約・受付をクラウド上で行い、入出荷業務の作業計画を事前に策定することで業務効率化を実現します。
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発荷主として取り組むべき対策
発荷主としては意識すべき視点は、以下の2つです。
- 各配送先における滞在時間
- 車両別の走行ルート実績
配送先における滞在時間はどうしても見えにくいものです。拘束時間の短縮に取り組んでいくためには、配送先において車両がどれだけ滞在しているかの把握が第一歩です。配送先で長時間滞在している場合は荷待ちが発生している可能性があり、着荷主側に改善を求めるべきです。配送先での滞在時間が短縮することで、1運行あたりの配送先を増やすことが期待できます。
また各車両の走行ルートの実績も調べましょう。近いエリアで複数の車両が配送していることがわかれば、1台の車両に集約できる可能性があります。より少ないドライバー数で同じだけの配送効率を維持でき、生産性が向上します。
上記のような取り組みの一つとして、物流事業者からの情報提供などによって現在の状況を把握することができます。しかし、元請け事業者を通じて複数の実運送事業者に依頼している場合、多方面から情報を収集しなければならず、集計なども生じるため複雑化することが懸念されます。
目前に迫る改善基準告示への対応として、自社の輸配送の実態を把握するためには自社としてデータが管理・分析しやすい仕組みにすることが大切です。そのためには動態管理サービスがおすすめです。
<発荷主におすすめ>動態管理サービス MOVO Fleet を活用して自社の輸配送の実態を把握
Hacobuが提供している動態管理サービス「MOVO Fleet」は、専用端末を協力会社の車両に取り付けるだけ(工事不要)で、荷主でも自社の荷物の配送状況がリアルタイムで把握できます。また配送状況は着荷主にも共有することができ、電話での到着確認が不要になります。リアルタイムで取得したデータは蓄積され、走行ルートや速度、CO2排出量などの走行履歴を見返し、分析することが可能です。
地点滞在時間分析
地点別の滞在時間を可視化し、非効率な配送をしている地点を特定することが可能です。
車両の稼働時間分析
車両ごとの走行時間・停留時間・配送地点での滞在時間(着荷時間)、およびそれらをあわせたドライバーの拘束時間を一覧で表示し、拘束時間の超過有無や適切に休憩が取れているかなどを一目で確認することができます。ドライバーの手入力によるデータではなく、GPSによる位置情報をもとにしているため、客観的なデータに基づいた分析を実現します。
動態管理サービス「MOVO Fleet」とは?
自社はもちろん、協力会社も含めた車両の一括管理を実現、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。
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荷主としてドライバーの拘束時間短縮に取り組み、ドライバーの安全を守りながら2024年問題を切り抜けましょう。
※1 出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2023年度版】』https://mic-r.co.jp/mr/02960/ バース管理システム市場の売上高および拠点数におけるシェア
物流DXとは?メリットや推進する上での課題、解決策、事例について解説
近年、さま…
2021.11.29
著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuのマーケティング担当
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