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物流業界の働き方を変える「2024年問題」とは?物流が抱える課題を解決策や事例とともに解説

物流に関わる人だけでなく、全ての生活者にとって他人事ではない物流「2024年問題」。

働き方改革関連法の施行が目前に迫っており、具体的な対策についてお悩みの物流ご担当者様も多いのではないでしょうか。

2024年4月1日に施行される「働き方改革関連法」は、物流・運送業界に大きな影響を与えることが予想されています。これらの問題に対処するために、運送会社や荷主は人員効率化、中継輸送、在庫拠点の分散、積極的なITの活用等、具体的な改善策が求められることになります。

本記事では、物流・運送業界における「働き方改革関連法」の適用による影響と、業界全体での取り組みについて解説します。

働き方改革関連法が整備された背景

働き方改革関連法は、2018年に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」を指します。

生産年齢人口の減少や少子高齢化問題、働き方のニーズ多様化等の背景を受けて、政府は働き方改革関連の法律を制定・施行することとなりました。この法律では、労働時間の上限の規定や、年次有給休暇の取得を義務化する規定、育児や介護等のための柔軟な働き方の導入を推進する規定等が盛り込まれています。

長時間労働や過重労働を是正し、労働者の健康や働き方の問題に関することを解決することが目的とされています。 また、女性の社会進出や少子高齢化に対応するため、柔軟な働き方を導入することで、より多様なライフスタイルに対応することを目指しています。

改正事項によって時期は異なりますが、2019年4月より順次施行されています。

労働者にとって、労働環境や賃金が改善されるなどのメリットがある一方で、企業にとっては売り上げ減少や機会損失にもつながりかねないので事前に様々な対策を講じる必要があります。

物流業界の働き方を変える「2024年問題」とは

物流「2024年問題」とは、2018年に成立した働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、ドライバーの時間外労働の上限規制により発生する様々な課題のことを指します。

「2024年問題」によって、主に以下の3点が大きく変更となります。

  • 時間外労働の上限規制
  • 割増賃金の引き上げ
  • 同一労働・同一賃金の導入

時間外労働の上限規制

以前より物流領域では、ドライバーの時間外労働は課題のひとつとして認識されていました。働き方改革関連法に伴う「時間外労働時間の上限規制」は、労働者の長時間労働を是正し、負担を軽減することが目的で定められました。

現在、自動車運転業務の年間の時間外労働時間上限は1,176時間ですが、2024年4月1日以降は960時間を上限として規制されることになります。

ドライバーの場合、長時間の運転による疲労やストレスが原因で交通事故が発生する可能性があります。そのため、適切な時間外労働の管理が求められています。上限規制に違反した場合は、トラック運送会社に6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が罰則として科されることがあります。

割増賃金の引き上げ

働き方改革に伴い、時間外労働の割増賃金も引き上げられています。

2022年3月31日までは、月間60時間以上の時間外労働の割増賃金率について、大企業では50%である一方で、中小企業は25%とされていました。

2023年4月1日より、中小企業に関しても割増賃金の割合が大企業と同等の50%以上への引き上げが適用されています。

具体例を参考に見ていきましょう。

派遣社員として働いているトラックドライバーの平均時給は1,297円とされているため、時給1,300円のトラックドライバーを例にあげて計算します。

時給1,300円のドライバーが時間外労働を行う場合、これまでの割増賃金率は一律25%になるので、時給換算すると1,625円となります。

しかし、「月60時間超えの時間外労働の賃金アップ」が実施されたことで

時給1,300円のドライバーが時間外労働を行う場合、今後の割増賃金率は一律50%になるので、時給換算すると1,950円となります。

これまで免除されていた、月間60時間以上の時間外労働の割増賃金率が引き上げられることによって、中小企業は時間外労働のコストが増加するといえます。

参考:求人ボックス 給料ナビ

同一労働・同一賃金の導入

同一労働・同一賃金とは、同じ仕事内容をこなしている人は同様の待遇にする必要があると定めているルールです。

大企業においては2020年4月、中小企業では2021年4月よりすでに適用されています。

同一労働・同一賃金に対する法改正は、正規雇用と非正規雇用といった「雇用形態の違い」によって生じている不合理な待遇の格差の是正を目的として行われました。

物流領域では、非正規の形態でドライバーを雇用している企業も少なくありませんが、下記の2つのルールを遵守する必要があります。

  • 正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与等の待遇に不合理な差をつけてはならない
  • 非正規雇用労働者から求めがあった場合には、待遇の差に関して理由を説明する必要がある

「標準的な運賃」の時限措置が終了する

物流領域に働き方改革関連法による規制が適用されるまでは、「標準的な運賃」が適用されています。改正貨物自動車運送事業法に基づいて運賃の目安を示し、物流領域における労働条件の改善を図るのが主な目的です。標準的な運賃が適用されるのは2023年度末までであり、2024年度以降は他の業界と同じく働き方改革関連法に準拠する必要があります。

参考:一般貨物自動車運送事業に係る標準的な運賃の告示について

物流領域に与える影響

働き方改革関連法の適用に伴って様々な課題が懸念されており、これらを総称して、物流の「2024年問題」といいます。物流の「2024年問題」によって、具体的にどのような問題が起こり得るのかを見ていきましょう。

物流・運送会社の売上・利益減少

物流・運送業は 、売上がドライバーの労働量に大きく依存する「労働集約型産業」というビジネスモデルが元になっています。

現在、自動車運転業務の年間の時間外労働時間上限は1,176時間です。2024年4月1日以降に960時間を上限として規制されることになれば、会社全体で行う対応可能業務量も減少することが予想されます。それに伴い、結果的に売上も減少する可能性があるとされています。割増賃金の引き上げも実施されているので、繁忙期等ドライバーの残業代の負担が増加するとなると、企業の利益は大幅に減少する可能性があります。

ドライバーの収入減少

物流領域で働くドライバーは、時間外労働を行っている人が多い傾向にあります。

しかし、時間外労働が規制されることによって、従来受け取っていた残業代がなくなり収入が減少することが予想されます。これにより、さらなる人材不足が起こる可能性があります。

荷主が物流委託先に支払う運賃の上昇

2024年問題の影響により、物流会社は売上や利益の面でしわ寄せを受ける可能性があります。

そのため、物流会社が運賃を上昇させる措置をとる可能性も考えられます。売上の減少分を運賃をあげることでカバーする措置が取られる場合、荷主が支払う運賃が上昇し、物流にかけるコストが増加する恐れがあります。

2024年4月に迫るドライバーの時間外労働時間の制限に向けて、荷主や物流事業者はどのような取り組みを行なっているのでしょうか。詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

物流が抱える課題

世界中で急速に拡大するEC市場の発展に伴い、物流領域は大きな成長を遂げています。しかし、一方で、物流領域は多くの課題に直面しています。長時間労働、人材不足、ドライバーの高齢化等がその代表例です。これらの課題に取り組むために、物流領域は新たな取り組みを模索し、より効率的で持続可能な物流システムの構築に取り組む必要があります。ここでは、物流が直面している課題について解説します。

長時間労働の状態化

以前より物流領域では、ドライバーの時間外労働は課題のひとつとして認識されていました。

厚生労働省によると超過実労働時間は大型トラックドライバーで月35時間、中小型トラックドライバーで月31時間です。

出典: 厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」

トラックドライバーの平均的な時間外労働時間は、年間で換算すると約372時間〜420時間です。

2024年4月から適用される時間外労働時間の上限である960時間はクリアしていますが、一般的な働き方に適用される年間360時間の時間外労働時間の上限は超えています。

トラックドライバーの労働時間が長くなる理由としては、具体的に以下の3つの理由があげられます。

  • 荷待ち時間の発生
  • 道路状況による影響
  • 運転手の人手不足

人材不足

物流業界では人材不足が深刻化しています。トラックドライバーの有効求人倍率は、すべての職業を平均した有効求人倍率の約2倍の水準です。トラックドライバーの不足は、年を追うごとに悪化しています。その理由として、女性の割合が全職業平均の1割未満と低いことや、平均年齢が全職業平均と比較して約3~17歳高く、若年層が少ないことがあげられます。

参考:自動車運転業務の現状|国土交通省

ドライバーの高齢化

物流領域のトラックドライバーは高齢化が進んでいます。令和3年の調査によれば、トラックドライバーのうち45.3%が45~59歳です。ほかの職種と比較しても、トラックドライバーの平均年齢は高い傾向にあります。一方、29歳以下の若年層は、わずか10.0%しかいません。物流領域でトラックドライバーを確保するためには、長期的に働き続けられる若年層の確保に力を入れる必要があります。

参考:統計からみるトラック運転者の仕事 | 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト

EC市場の活性化に伴う物流量の増加

近年はEC市場が急激に活性化し、物流領域に対する依頼も増加しています。国土交通省が公表している資料によると、2018年には物販系分野のEC市場が9.3兆円の規模になっています。また、宅配便の取扱件数は、わずか5年間で18%も増加しました。少ない人手で多くの業務をこなす必要があり、トラックドライバーにさらなる負担がかかっています。

参考:トラック事業の概要|国土交通省

2024年問題を解決するための対策

目前に迫る2024年問題を解決するための具体的な対策について、運送会社、荷主それぞれの観点からご紹介します。

運送会社として行うべき対策

2024年問題を解決するべく、運送会社が行うべき対策は以下の4つがあげられます。

人材確保

前述のとおり、時間外労働の上限が設定されることにより、ひとりあたりの売上が減少すると予想されます。そのため、売上や利益を維持するためには人材を増やす必要があるといえるでしょう。

物流領域において人材確保が困難とされている中、企業はこれを確保していくための対策を考えることが重要です。

人材確保の方法として具体的には、

まず、労働環境や労働条件の見直しがあげられます。

長時間労働を是正し、時短勤務制度を取り入れるなど、柔軟な働き方を提供することがポイントです。住宅補助等の福利厚生の充実も、人材確保には効果的だといえます。

また、外国人労働者の採用・育成も人材確保の対策のひとつです。

日本において、少子高齢化が進んでいます。そのため、将来的にはトラック運転手の不足がさらに深刻化することが予測されます。外国人労働者の採用・育成によって、将来的なトラック運転手の不足を予防することができます。

中継輸送

トラックドライバーの時間外労働を削減するために、複数人のドライバーがリレー形式で運転する「中継輸送」を取り入れましょう。

ドライバーひとりが長距離輸送を行う場合、どうしても個人の労働時間は増加してしまいます。

しかし、複数のドライバーをアサインし、中継地点で交代して運転する方法を採用すれば、時間外労働を削減することが可能になります。

中継輸送は、時間外労働時間の削減というメリットがある一方で、中継地点での荷物を積み替えがスムーズに行えなかった際には、指定された配達日時に間に合わなくなることも起こり得ます。また、積み替え作業を焦って行うことによって荷物が破損するリスクもあるため、取り組む場合は注意が必要です。

荷主として行うべき対策

荷主として、2024年問題を解決するための対策は以下の2つがあげられます。

走行距離300㎞圏内の物流ネットワークを構築

2023年以降、トラックドライバーが時間外労働に費やせるのは1日3時間までとなりました。

運転時間が6時間30分程度であれば、走行できる距離は300kmが限度です。ただし、300km以上の距離の輸送においても、トラックは1~6割程度の割合を占めています。2024年問題に対応するためには、300km以上の長距離輸送についてほかの輸送手段の活用も検討すべきです。

具体的には、鉄道や航空・海上輸送等を活用するモーダルシフトを取り入れたり、中継輸送を導入したりする方法があります。走行距離を考慮し、無理なく輸送できる仕組みを構築しましょう。

手待ち・荷役時間の削減

トラックドライバーが働ける時間が現在よりも限られるため、無駄な時間を削減することも重要です。

手待ち時間や荷役時間を削減できれば、運転時間を8時間程度確保できる可能性があります。この場合、走行距離の上限は400kmに増加します。

手待ち時間や荷役時間の削減についても、システムを活用するとスムーズに進められるでしょう。トラック予約受付システムを導入すれば、トラックの手待ち時間の短縮につながります。また、荷役時間を削減するには、パレット(荷役台)や荷物の外装サイズを統一したり、スワップボディコンテナを活用したりすると効果的です。

在庫拠点の分散

配送効率の向上やコスト削減を目的とし、在庫拠点を分散させることも対策のひとつとしてあげられます。

万が一災害等が起きた場合でも、在庫がひとつの場所に集約されていないことによって、配送業務を継続することが可能になります。

しかし、拠点を増やすことによって維持費や管理コストが増加してしまうため、適切な拠点配置や物流ネットワークの最適化、在庫管理の効率化等に取り組むことが重要です。

積極的なITの活用・物流DXの推進

トラックドライバーの時間外労働の上限が設定されることにより労働時間が限られるため、さらなる業務の効率化が求められます。業務のDX化を進めることで、荷待ち時間の短縮やトラックの稼働率向上といった業務効率を高めることができます。

たとえば、トラック予約受付システム「MOVO Berth(ムーボバース)」を導入した企業は、平均待機時間が42分から12分へと削減され、1時間以上待機の発生率は3%台にまで改善されました。

また、トラック車両の動態管理システムである「MOVO Fleet(ムーボフリート)」の導入によって、車両の回転率が25%アップしたという事例もあります。

2024年問題への取り組み事例

2024年問題の対策として、物流DXの推進は必然といっても過言ではありません。

ここでは、ITの活用によって解決された物流領域の課題に関する取り組み事例をご紹介します。

待機時間の削減と、入出荷作業の効率化に成功

菓子食品総合商社のコンフェックス株式会社様では、入荷トラックの長時間待機と非効率な入出荷作業が導入前の大きな課題でした。

そこで2021年4月にDX本部を立ち上げ、DX推進の一環として「MOVO Berth」を導入いただきました。その結果として、入荷トラックの待機時間が1時間30分から30分へと大幅に短縮されました。

「何を積んだトラックが来場するのか」という入荷車両の情報を事前に把握できるため、事前準備が可能となりました。また、イレギュラーが起きた際にもスムーズに対応ができるようになり、入出荷作業を効率化することができました。

あるセンターでは、例年朝から17時まで入荷業務をしていましたが、MOVO導入後は15時には業務終了の目途がたっており、約2時間の時間短縮になったとのこと。庫内業務には100名程度が従事しており、約2時間の短縮は大幅なコストダウンにもつながっています。

入荷に来るドライバーの方からも、ほかの配送センターにも導入して欲しい、という声があがっています。

導入事例を見る>>コンフェックス株式会社

配送ルートの再編で8台のトラック減便を実現

業務用食品卸企業である株式会社サトー商会様では、<strong>お客様の要望や納品条件に応える配送を維持してきたことによって配送効率が下がり、年々物流費が上昇していたこと</strong>が導入前の課題でした。

そこでDX推進の一環として、「MOVO Fleet」を導入いただきました。

営業と実績データを元に会話し配送ルートの再編を行ったことで、8台のトラック減便を実現しました。車両コストと人件費を合計したところ、年間約5,000~6,000万円のコスト削減につながりました。

導入事例を見る>>株式会社サトー商会

待ったなし!の物流「2024年問題」

2024年問題は、働き方改革関連法による「ドライバーの時間外労働時間の上限規制」によって発生する様々な課題であり、しっかりとした対策を行うことが重要です。

2024年問題を解決するために、積極的にITを活用し、業務の効率化を図りましょう。

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