更新日 2025.06.13

【2025年6月成立】貨物自動車運送事業法の改正内容の要点を解説

【2025年6月成立】貨物自動車運送事業法の改正内容の要点を解説

2025年6月、貨物自動車運送事業法の改正が成立しました。本記事では、貨物自動車運送事業法の改正内容の要点について、物流DXパートナーのHacobuが解説します。

要点は以下のリンクより、資料としてもダウンロードいただけます。

実運送体制管理簿の作成義務対象が拡大

2025年4月施行の改正では、真荷主から貨物の運送を受託し、利用運送を行う最上位の一般貨物自動車運送事業者(元請け事業者)に対して実運送体制管理簿の作成義務が課せられており、貨物利用運送事業者が真荷主である場合の当該貨物利用運送事業者は実運送体制管理簿の作成義務の対象外でした。

真荷主の範囲変更

今回の改正により、真荷主の範囲が見直されました。真荷主は、自らの事業(製造や小売など)に関して運送事業者へ貨物の運送を委託する者であり、貨物自動車運送事業者・貨物利用運送事業者ではない者と定義されました。これにより、現行上、真荷主が貨物利用運送事業者である場合は、改正後は真荷主に該当しないことになります。

実運送体制管理簿作成の規定準用

特定貨物自動車運送事業者、貨物軽自動車運送事業者、第一種貨物利用運送事業者、第二種貨物利用運送事業者にも実運送体制管理簿に関する規定が準用されました。

以上に伴い、荷主から貨物の運送を受託し、利用運送を行う貨物利用運送事業者には実運送体制管理簿の作成義務が課せられることになります。

荷主は請負階層を確認しやすくなる

真荷主は、貨物の運送を委託した元請け事業者に対し、その業務取扱時間内であればいつでも実運送体制管理簿の閲覧・謄写を請求できます。ただし、従来は貨物利用運送事業者に作成義務がなかったため、閲覧・謄写の請求が可能な案件は限られていました。

今回の改正で貨物利用運送事業者にも作成義務が課されるため、荷主はあらゆる案件で請負階層を把握しやすくなります。

参考:https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/youkou/g21705033.htm

2次請以内に制限する努力義務

元請け事業者は、真荷主から引き受けた貨物の運送について、下請け構造を2次請以内に収める努力義務が課せられます。現時点では努力義務にとどまりますが、行政の実態調査によっては3次請け以降の禁止(努力義務から義務への移行)が検討される可能性も否定できません。まずは実運送体制管理簿を活用して請負階層を正確に把握することが求められます。

適正原価の告示

運送業は過当な価格競争が起こりやすく、実運送事業者が持続的に事業を行うために「標準的な運賃」が設定されていました。しかし強制力が弱く、標準的な運賃を用いた交渉で荷主の理解を得られたのは全体の4割程度にとどまっていました。

そこで国土交通大臣が、運賃・その他料金について事業運営に必要な費用を「適正原価」として定め、一般貨物自動車運送事業者は運賃・料金を適正原価未満で受託できなくなります。

運賃が上昇する流れの中で、多重下請け構造が残る運送案件は、最終的に荷主が負担する物流費が増える可能性があります。荷主主導で実運送体制管理簿を確認し、請負階層を可視化したうえで、多重下請け構造の改善に取り組むことが不可欠です。

事業許可は「終身」から 5 年ごと更新制へ

これまで一般貨物自動車運送事業は、一度許可を取得すれば終身有効であったため、経営状況が悪化したり、安全対策や法令遵守が不十分な状態でも事業を継続できてしまうケースが散見されています。

今回の改正により、終身許可制から「5年ごと」の更新制へ変更になることで、運送事業者は定期的に安全管理、財務状況、法令遵守の内部監査を強化し、その健全性を維持・向上させる責任がより一層求められます。

無許可業者への委託禁止と荷主への罰則

無許可の事業者、いわゆる「白トラ」への運送委託が明確に禁止され、これに違反した荷主企業にも罰則が科されることになります。現行では行政指導が中心でしたが、今後は100万円以下の罰金などが科される可能性もあります。

この改正は、無許可業者の不法な運送行為を根絶し、適正な競争環境を確保するとともに、事故やトラブル発生時の責任の所在を明確にする狙いがあります。

労働者処遇の明確化

改正法では「能力に対する公正な評価に基づく適正な賃金の支払・処遇」が運送事業者に明確に求められることになります。運送事業者がドライバーの知識、技能、その他の能力を公正に評価し、その評価に基づいた適正な賃金の支払いなど、適切な処遇を確保することが義務付けられます。

この改正は、ドライバーのモチベーション向上、離職率の低下、そしてひいては物流業界全体のイメージアップにも繋がるものでしょう。

貨物自動車運送事業法の改正スケジュール

貨物自動車運送事業法の改正は段階的に施行されていきます。

まず、2026年度に以下の施行が始まります。

  • 貨物利用運送事業者に対する実運送体制管理簿の作成義務
  • 2次請け以内に制限する努力義務

そして2028年度までに以下が施行されます。

  • 事業許可更新制度
  • 無許可業者への委託禁止と荷主への罰則
  • 労働者処遇の明確化

改正法の具体的運用に向け、国土交通省や全日本トラック協会はガイドライン整備や周知活動を急ピッチで進めるでしょう。荷主・運送事業者いずれも、既存の取引構造や業務フローを早期に点検し、対応を進めなければなりません。こうした取り組みがドライバー不足の緩和と多重下請け構造の是正を後押しし、安全で持続可能な物流網の確立につながることが期待されます。

本記事の要点は以下のリンクより、資料としてもダウンロードいただけます。

参考:https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/217/pdf/t0902170332170.pdf

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。 >>プロフィールを見る

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