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実運送体制管理簿とは | 作成義務化の背景や対象、要件、項目などを解説
2025年4月に施行予定の改正貨物自動車運送事業法において、元請け事業者が特に理解しなくてはならないのが「実運送体制管理簿」です。
本記事では、実運送体制管理簿における作成義務化の背景や対象、要件、項目などについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。
この記事でわかること
- 実運送体制管理簿は、元請け事業者に作成義務がある
- 実運送体制管理簿は、貨物の運送単位で作成し、記載が必須の項目がある
- 実運送体制管理簿の作成は、非常に煩雑な作業だが、システムを使うことで簡易化できる
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目次
実運送体制管理簿とは
実運送体制管理簿とは、荷主(真荷主)から運送の委託を受けた元請け事業者に対し、その作成が義務化された、運送の実態について記載する管理簿のことです。管理簿には実運送事業者の名称や貨物の内容、運送区間、請負階層(実運送事業者は何次請けか)といった内容を記載する必要があります。
実運送体制管理簿の義務化の背景
ドライバー不足と物流の2024年問題
物流領域で常態化しているドライバー不足と、2024年4月から始まった時間外労働の法規制(物流の2024年問題)により、輸送力不足が懸念されています。輸送力不足を解消するには、ドライバー人口の増加が急務であり、そのためにはドライバーの所得改善が不可欠です。
多重下請け構造
一方で、物流領域では、多重下請け構造が一般化しています。国土交通省が実施したアンケートによれば、7割以上の物流事業者が他の事業者に運送を依頼しています。また、他の事業者に運送を委託する際の下請金額が請け負った金額の90%未満であるとの回答が相当数見られます。
出典:Hacobuセミナー「国交省と徹底解説 物流事業者が押さえるべき法改正と対応策」国土交通省 投影資料から引用
1次請け、2次請け、3次請けと下層になるほど報酬は減額され、労働に見合った賃金を収受できないこともあります。また、荷主や元請け事業者からすれば、何次請けの実運送事業者が荷物を運んでいるかを把握できていないということも少なくないでしょう。
貨物自動車運送事業法の改正
このような物流領域の多重下請け構造を是正し、実運送事業者が適正な運賃収受を図ることを目的とし、物流事業者の取引に対する規制的措置として、2024年5月に改正貨物自動車運送事業法が公布されました。法改正の要点は以下のとおりです。
利用運送の適正化への義務付け
- 物流事業者に対し、他の事業者への運送の利用(=下請けへの依頼)の適正化に関する努力義務
- 一定以上の規模の物流事業者に対し、運送利用管理者の選任・運送利用管理規程の作成を義務付け
運送契約の書面・交付等の義務付け
- 荷主・物流事業者に対し、役務の内容や対価を明記した運送契約の締結を義務付け
実運送体制管理簿の作成を義務付け
- 物流事業者のうち、元請け事業者に対し、実運送体制管理簿の作成を義務付け
流通業務総合効率化法の改正を含め、物流関連2法改正や政府の中長期計画の詳細は以下の記事もご覧ください。
物流関連2法改正・政府の中長期計画を解説。荷主・ 物流事業者は今何をするべきか。
2024年5月15日、…
2024.04.12
以下では、実運送体制管理簿の詳細について解説します。
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実運送体制管理簿の作成要件
作成の単位
元請け事業者は、荷主(真荷主)から引き受けた案件を「貨物の運送単位」で、実運送体制管理簿を作成する必要があります。
- 災害その他緊急やむを得ない場合を除く
- 政省令などで定める重量未満の貨物(混載便を想定)を除く
作成の方式
作成方式は、電磁的記録が認められています。膨大な配送案件をすべて紙媒体に手書きするのは困難であり、デジタル上のツールを用いて作成することが良いでしょう。
書類の様式
書類の様式に指定はありません。既存の配車表を活用する、または後述する実運送体制管理簿を簡易に作成できるシステムなど、各社が取り組みやすい形で作成すると良いでしょう。
保管期間
引き受けた貨物の運送が完了した日から1年間、営業所で保管しておく必要があります。すべての管理簿を紙媒体で保管するためのスペース確保だけでなく、必要な管理簿をすぐに探し出すことも難しいため、デジタル上に保管しておくのが良いでしょう。
実運送体制管理簿を作成する必要がある対象
実運送体制管理簿は、すべての元請け事業者が作成する必要があります。この際の元請け事業者とは、一般貨物自動車運送事業者として利用運送を行う一番上位の事業者を指します。以下の図は作成義務の要不要をパターン化したものです。
両運送事業の許可を有している場合
自社が一般貨物自動車運送事業・貨物利用運送事業の両方の許可・登録を有している場合は、その運送がどちらの事業に基づき契約を締結しているかで判断することを国土交通省は推奨しています。
しかし実務的には、運送契約に上記を明記していることは少ないでしょう。そのため、「貨物利用運送事業としてしか登録されていない営業所の輸送」以外は、実運送体制管理簿を作成しておくことが法令遵守の観点では安全と言えます。
荷主(真荷主)による開示請求
荷主(真荷主)は、貨物の運送を委託した元請け事業者に対して、その業務取扱時間内は、いつでも実運送体制管理簿の閲覧・謄写を請求することができます。
ここで言う荷主(真荷主)とは、一般貨物自動車運送事業者として利用運送を行う一番上位の事業者に「直接」運送の委託をしている事業者のことです。詳細は以下の図をご覧ください。
荷主と一般貨物自動車運送事業者との間に貨物利用運送事業者が介在する場合、法令上、その荷主は実運送体制管理簿の開示請求はできません。一方で、貨物利用運送事業者は開示請求ができます。そのため、こ場合は荷主・貨物利用運送事業者2社間のビジネス上の判断で、荷主に開示するか検討することになります。
荷主としては、自社の荷物が適正な請負階層のもとに配送が行われ、適正な運賃を請求されているかを把握するためにも、実運送体制管理簿を確認することが重要でしょう。
貨物利用運送事業者の作成義務
貨物利用運送事業者に実運送体制管理簿の作成義務はありません。荷主が実運送体制管理簿の確認を求めた場合、下請け事業者(一般貨物自動車運送事業者)が作ってなかったから出せないという返答は、「法的には」問題ありません。
しかし実務上、荷主から直接案件を受託するのは貨物利用運送事業者です。ビジネス的には上記の返答はしづらいでしょう。
法令上の作成義務にかかわらず、荷主に対する説明責任として実運送体制管理簿を作成・保管することが求められると言えます。
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実運送体制管理簿に記載が必要な項目
以下の内容は記載が義務付けられた事項です。
- 実運送事業者の称号または名称
- 貨物の内容
- 運送区間
- 請負階層
- その他国土交通省令で定める事項
出典:Hacobuセミナー「国交省と徹底解説 物流事業者が押さえるべき法改正と対応策」国土交通省 投影資料から引用
請負階層とは
請負階層とは、その実運送事業者が元請け事業者から何次請けに該当するのかを示す階層のことです。次数の数え方は以下のようになります。
必要な情報の通知フロー
元請け事業者から1次請け事業者
元請け事業者は委託をする1次請け事業者へ、以下の「元請け連絡事項」を通知します。
- 自社の連絡先
- 荷主(真荷主)の名称
1次請け事業者から実運送事業者
1次請け事業者(または以降も再委託する事業者は)下位の事業者に対し、元請け連絡事項に加え、自社の請負階層を通知します。これにより、最終的に実運送事業者は元請け連絡事項と自身の請負階層を認識します。
実運送事業者から元請け事業者
実運送事業者は元請け事業者に対し、以下を直接通知します。
- 自社の名称
- 運送区間
- 貨物の内容
- 請負階層
元請け事業者は上記の内容を取りまとめ、管理簿にする必要があります。非常に煩雑な対応が義務化されたことがご理解いただけるでしょう。
出典:Hacobuセミナー「国交省と徹底解説 物流事業者が押さえるべき法改正と対応策」国土交通省 投影資料から引用
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実運送体制管理簿を簡易に作成する方法
通知フローについて前項で解説したとおり、実運送を行う各事業者から情報を取りまとめ、管理簿に集約するのは非常に煩雑な作業です。
実運送体制管理簿を簡易に作成するには、下請け事業者との受発注をシステム化することが有効です。配車受発注・管理サービスのMOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)は、配車における下請け事業者とのコミュニケーションに特化したシステムで、実運送体制管理簿を簡易に作成する機能を備えています。
MOVO Vista上で下請け事業者に配送案件を発注した後、下請け事業者から車番など実運送事業者の情報を同様にMOVO Vista上で返信していただくことができます。
その際に、請負階層なども付与して返信していただくことで、MOVO Vista上に実運送体制管理簿の作成に必要な情報が集約されます。
集約された情報は1クリックで実運送体制管理簿としてダウンロードすることが可能です。
MOVO Vistaの詳細をまとめた資料は以下リンクからダウンロードいただけます。
実運送体制管理簿はいつから作成する必要があるか
改正貨物自動車運送事業法は、2025年4月に施行予定です。元請け事業者は、2025年4月以降、実運送体制管理簿の作成が必須です。
2025年4月からいきなり作成を開始することは難しく、下請け事業者への運用周知や移行期間を設ける必要があります。2025年4月に向けて、早々に対応を進めるのが安全でしょう。
なお、MOVO Vistaはクラウド型のシステムであるため、契約後からすぐに利用いただけます。同様のシステムを自社開発する場合、開発に時間がかかりますので、スケジュールにはご注意ください。
実運送体制管理簿に関する罰則
実運送体制管理簿の作成や備え付けに違反した際の罰則は、2024年8月時点で法令や政省令でも規定されていませんが、行政処分の対象になる可能性も示唆されています。
実運送体制管理簿を作成する義務を果たさなかった元請け事業者、元請連絡事項や実運送情報を正しく伝える義務を果たさなかった1次請け以下、いずれも処分の対象になる見込みです。
処分はまず、注意や指導を行い、これに従わない場合に業務停止等の処分を行うものと想定されます。
また行政処分の対象になることから、トラックGメンのチェックが端的に行いやすくなると考えられます。
一方で、一般貨物自動車運送事業者には、以下の健全化措置が努力義務として求められます。
- 実運送事業者に委託する概算費用を把握し、その額を考慮して発注する
- 荷主から提示された費用などが、上記よりも下回る場合は、荷主に対して費用の引き上げを交渉する
- 2段階以上の下請け利用に制限をつける
また、特別一般貨物自動車運送事業者に対しては、運送利用管理者の選任・運送利用管理規程の作成が義務化され、取り組みが不十分な場合には勧告や公表のリスクが発生します。
健全化措置に取り組むには、まず多重下請け構造を把握する必要があり、実運送体制管理簿の作成が求められます。特別一般貨物自動車運送事業者において、実運送体制管理簿の作成ができていない体制ということは、健全化措置に取り組みが不十分として、前述のようなリスクにつながるでしょう。
まずは実運送体制管理簿の作成を準備しよう
本記事では、元請け事業者に実運送体制管理簿の作成が義務化されたことを解説しました。
実運送体制管理簿の作成は、実運送事業者が適正な運賃収受を図るためのものであり、輸送力不足の解消につながります。
しかしながら実運送体制管理簿の作成は、非常に煩雑な作業です。MOVO Vistaのように簡易に作成するシステムの導入が効果的でしょう。
MOVO Vistaは実運送体制管理簿の作成だけでなく、配車における以下のような業務を効率化できます。
- 配送依頼書の作成
- 受領、車番連絡
- 請求突合作業
この機会に、実運送体制管理簿の作成だけでなく配車業務全体の効率化も検討してみてはいかがでしょうか。
MOVO Vistaの詳細をまとめた資料は以下リンクからダウンロードいただけます。
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2021.11.29
著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuのマーケティング担当
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