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執筆者:菅原 利康

トラックGメンは、物流の「2024年問題」対応の一手になりうるか。荷主に求められる対策を解説

2024年4月からトラックドライバーの時間外労働における上限規制が960時間になり、改正改善基準告示が適用されました。これにより、輸送能力が不足し、さまざまな問題が起こることが懸念される、2024年問題への対応が荷主企業や元請事業者に求められています。

今、話題となっている「トラックGメン」についてご存知でしょうか。物流の「2024年問題」を解決するために、国土交通省が2023年7月21日に創設しました。

株式会社Hacobuでは「運ぶを最適化する」をミッションとして掲げ、物流管理ソリューション「MOVO」と、物流DXコンサルティングサービスを提供しています。本記事では、「トラックGメン」の発足の背景や具体的な取り組み内容に加えて、荷主に求められる対策について詳しく解説します。

(本記事は以下のリンクから資料として入手いただけます。)

目次

トラックGメンとは?

トラックGメンは、国土交通省がトラック運送における不適正な取引の監視を強化するために創設したものです。荷主や元請事業者への監視体制を強化していくことを目的に、全国の地方運輸局や運輸支局などに計162人のトラックGメンを配置しました。この取り組みは多くのメディアで取り上げられ、話題になりました。

トラック事業者に対して不適切な取引を強いる荷主や元請の情報を収集し、悪質な荷主や元請には改善を促し、改善が見られない場合は是正措置を要請します。国土交通省は、改善が見られない場合には勧告を出し、社名を公表することも明らかにしています。

トラックGメン162人のうち、80人は専従で担当し、82人は既存のトラック担当者が併任しています。

専従者の内訳は本省2人、地方運輸局19人、運輸支局59人であり、併任者は本省13人、地方運輸局16人、運輸支局53人となっています。

さらに、トラックGメンを統括する「トラック荷主特別対策室」(トラックGメン室)を本省内に設置し、自動車局貨物課長の小熊弘明氏が室長を兼任することも明らかにされています。(2023年7月時点)

出典:カーゴニュース 「トラックGメン」全国162人体制で発足=国交省

トラックGメン発足の背景

トラックGメン発足の背景には、物流の「2024年問題」があります。しかし、その根底には、トラックドライバーの「長時間労働」と「低賃金」という課題が存在しており、これらは「荷主に対するトラックドライバーの立場の弱さ」が原因とされています。

2019年に始まった働き方改革は、運送業界に5年間の猶予を与えましたが、2024年4月からは上限960時間/年の残業規制が施行されます。現状のトラックドライバーの労働時間は全職種の平均よりも2割以上長く、賃金は5〜15%低いとされています。

荷主起因の違反原因行為の最多は「長時間の荷待ち」

国土交通省は、「トラックドライバーと荷主との関係」の改善を目指し、ウェブサイト上に「目安箱」を設置し、情報収集を行い、悪質な荷主に対して是正を働きかけてきました。

目安箱に寄せられる情報の中で、最も多かったものは「長時間の荷待ち」で、4割強を占めています。

国土交通省が長時間の荷待ちに対して、荷主企業に働きかけを実施した後も、相談者から改善されていないという声が寄せられるケースに対して、国土交通省が調査やヒアリングを実施し、情報との整合性を確認した上で、要請を実施しています。

要請を受けた荷主の対応策として、以下のような事例が紹介されています。

○ 早朝時間帯以外への車両の分散化として一部時間指定を導入する対策を実施
○ ドライバーの入構時間を正確に管理するためのシステム導入に向けた検討をスタート

○ 一部運用にとどまっていた「トラック予約システム」を全車両に拡大
○ 入庫作業バースの拡張と荷卸し時間の拡大(荷卸し開始時間を1時間前倒し)

出典:国土交通省 トラックGメンの設置による荷主・元請事業者への監視体制の強化

荷待ち時間の解消は、物流2024年問題に向けた対応策として重要なテーマです。Hacobuが提供するトラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」は、物流拠点や港湾などで荷物の積み込みや降ろしの予約や受付をクラウド化することで、荷待ち時間の解消やバース運営の効率化を実現するサービスです。

次に多かったのは、「依頼になかった付帯業務が発生した」と「運賃・料金の不当な据え置き」という意見で、約12.2%という結果でした。「積荷の手卸し後、積荷の仕分けとラベル貼りまで、2~3時間かけてやらされるところもある。」、「仕分け作業料、積込料の負担をお願いしているが、支払ってもらえない。」といった声が寄せられました。

その他に、「過積載運行の要求」、「運賃・料金の不当な据置」、「無理な配送依頼」、「異常気象時の運行指示」、「拘束時間超過」といったドライバーの切実な声が目安箱には寄せられています。
低賃金・労働環境の悪化によるトラックドライバー不足を解消するためには、物流領域に山積する課題を解決していかなければなりません。

本来は、トラックドライバーの待遇や労働環境を改善するための働き方改革がありますが、トラック事業者と荷主の関係性が改善しない限り、輸送能力が不足し、逆効果な結果をもたらす可能性があります。このような背景から、国土交通省は荷主とトラックドライバーの関係性を改善するため、トラックGメンが創設されたのです。

トラックGメンの取り組み

トラックGメンの活動

トラックGメンは、荷主や元請事業者による不正な取引を監視する役割を担っています。

各担当は一人あたり数千から数万単位の事業者に1件ずつ電話をかけ、長時間の荷待ちや運賃・料金の不当な据え置きがないかなど、ヒアリングを行っています。

また高速道路のサービスエリアでトラックドライバーに対する聞き取り調査を行うなど、プッシュ型の情報収集も行っています。

荷主に対し、アポなしで訪問してヒアリングを行うこともあるそうです。

トラックGメンの活動実績

国土交通省によると、トラックGメン発足から約3カ月の活動実績は、貨物自動車運送事業法に基づく「働きかけ」が166件、「要請」が6件でした。

2022年度の1年間の実績は、要請が3件、働きかけが26件であり、トラックGメン発足からわずか3カ月で昨年度の4倍を超え、荷主企業・元請事業者に対する取り締まりが大幅に強化されていることが明らかです。

出典:国土交通省 トラックGメンによる荷主等への監視体制をさらに強化~「集中監視月間」スタート!~(参考2)働きかけ・要請実施件数(令和5年10月末時点)

2023年11月7日に国土交通省が発表したトラックGメンの要請事例によると、違反原因行為は重複を含めて全10件であり、その内訳は「長時間の荷待ち(7件)」「契約にない附帯業務(1件)」「無理な配送依頼(1件)」「過積載の指示(1件)」でした。

長時間の荷待ちについては、10時間に及ぶ事例もあり、業態や発生場所も多岐に渡ります。

出典:国土交通省 トラックGメンによる荷主等への監視体制をさらに強化~「集中監視月間」スタート!~ (参考3)「要請」事例

省庁や関係機関から調査が入った事例

実際に荷主や運送事業者に調査が入った際の内容を紹介します。

某製紙メーカーの物流子会社

  • 労働基準監督署の担当者が抜き打ちで来訪
  • 荷待ちのプロセスを細かくヒアリングされ、改善要請を受ける
  • 改善案として、バース予約受付システムを入れるように親会社から働きかけ

某飼料メーカー

  • 工場へ入場しているドライバーよりトラックGメンへ荷待ち発生の連絡があり、該当月の実績報告を求められる
  • 早朝や夜間の対応も始めたが荷待ち削減ができず、バース予約受付システムを導入

某建築・建材メーカー

  • 2拠点でトラックGメンからの指摘を受ける
  • 全拠点の荷待ち状況の報告を求められる

某海運系輸送会社

  • 国交省から荷待ち改善要請の文書を送付する旨の通知があった
  • 同社に運送依頼をしている荷主に対し、ドライバーより荷待ちが多いとタレコミがあり

2023年11月より国土交通省が荷主への執行力を強化

改正改善基準告示の適用まで100日を切る中、国土交通省は2023年11月、12月を「集中監視月間」と位置付け、「悪質な荷主などの監視強化」「関係行政機関との連携強化」「情報収集の強化」の3つについて、重点取り組みすることを発表しています。

出典:国土交通省 トラックGメンの「集中監視月間(11月・12月)」における取組と最近の活動実績

11月から年末にかけて、「ブラックフライデー」と呼ばれるセールを皮切りに、クリスマス、ボーナス商戦が年末にかけて行われるため、物流の取引量が増加することが予想されます。

こうした時期に集中監視を行うことで、繁忙期でも適正な取引が行われるよう促しているとみられます。

さらに、国土交通省はトラックGメンに加え、厚生労働省 都道府県労働局の「荷主特別対策担当官」などと連携し、合同ヒアリングの実施を予定しています。

トラックドライバーは、物流において不可欠な存在です。トラックGメンの取り組みにより、長時間の荷待ちや契約外の業務などが解決されるだけでなく、「トラック事業者と荷主の関係性の改善」も期待されます。

出典:国土交通省 トラックGメンの設置による荷主・元請事業者への監視体制の強化

「荷主対策の深度化」と「標準的な運賃」の2つの制度の期限を「当分の間」延長することが決定

国土交通省はこれまでも貨物自動車運送事業法に基づく荷主への「働きかけ」「要請」などによる是正措置を講じてきました。

2024年4月からの時間外労働の上限規制を見据えて、平成30年の議員立法において時限措置として創設された「荷主対策の深度化」と「標準的な運賃」の制度について、令和5年6月16日に法改正されました。

本改正で、2024年3月までの期限付きではなく、「当面の間」の措置へと変更するとしています。

つまり、2024年4月以降もトラックGメンによる取り締まりを継続し、執行力を強化していくことが見て取れます。

出典:国土交通省 貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和5年法律第62号)について

厚生労働省も国土交通省と連携強化し荷主に働きかけ

物流の2024年問題へ向けて対策を講じているのは、国土交通省だけではありません。

厚生労働省 都道府県労働局は2022年12月に「荷主対策特別チーム」を発足し、国土交通省との連携を強化することを発表しました。荷主への配慮要請時に「標準的な運賃」の周知を行うなど、労働条件の改善と取引適正化を促進する取り組みも行われます。

荷待ちを発生させている疑いがあることを労働基準監督署が把握し、「荷主への要請」を実施した荷主の情報を国土交通省に提供し、「トラックGメン」による「働きかけ」等の対象選定に活用することがわかっています。

トラックGメンの設置に伴う国土交通省との連携強化の概要をご紹介します。

発着荷主等の情報を国土交通省に提供

トラックGメンによる働きかけ等の対象選定に活用されるよう、厚生労働省ホームページ「長時間の荷待ちに関する情報メール窓口」に寄せられた発着荷主等の情報や労働基準監督署が監督指導時に把握した情報に加え、労働基準監督署が要請を実施した発着荷主等の情報を、広く国土交通省に提供します。

労働基準監督署は発着荷主等への要請の際に「標準的な運賃」も周知

労働基準監督署が、発着荷主等に対する要請の際、標準的な運賃も併せて周知します。

「荷主特別対策担当官」がトラックGメンによる「働きかけ」等に参加

地方運輸局のトラックGメンが、長時間の恒常的な荷待ちを発生させていること等が疑われる発着荷主等に対して実施する働きかけ等に、都道府県労働局の荷主特別対策担当官も参加します。

出典:厚生労働省 「トラックGメン」設置に伴う国土交通省との連携強化( 令 和 5 年 10 月 ~ )

集中監視月間の取り組み結果と初めての「勧告」

国土交通省は2024年1月26日に、集中監視月間(2023年11月、12月)での取り組み結果を発表し、164件の「要請」と47件の「働きかけ」を実施し、さらに初めて2件の「勧告」を実施したことを明らかにしました。

取り組み結果

トラック事業者への全数調査や、トラックGメンによる関係省庁と連携したヒアリング等により入手した情報に基づき、悪質な荷主や元請事業者等に対し、164件の「要請」(荷主 82件・元請事業者 77件)、及び47件の「働きかけ」(荷主26 件・元請事業者19 件)を実施し、違反原因行為の早急な是正を促しました。「要請」等の月当たりの平均実施件数は106.5 件となり、トラックGメン発足前の1.8 件から大幅に増加しています。

違反原因行為として確認されたのは、「長時間の荷待ち」が圧倒的に多く、全体の62%でした。そのほか、「運賃・料金の不当な据え置き」(14%)、「契約になかった付帯業務」(13%)、「無理な運送依頼」(7%)、「過積載運行の要求」(3%)、「異常気象時の運行指示」(1%)となっています。

勧告の詳細と、今後の影響

また要請を過去に受けたにもかかわらず、改善が見られない場合に行う勧告・公表として初めて、2社に勧告・公表を行いました。内訳は荷主1件・元請事業者1件で、いずれも長時間の荷待ち等が違反原因行為として要請を受けていましたが、依然として違反原因行為に係る情報が相当数寄せられ、要請後もなお違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由があると認められ、勧告・公表に至ったようです。

国土交通省は今回「働きかけ」「要請」「勧告」の対象となった荷主等についてはフォローアップを継続し、改善が図られない場合は更なる法的措置の実施も含め厳正に対処するとしています。

これまで要請・働きかけを受けた企業はいよいよ本格的に下請け事業者に寄り添った待遇改善に取り組む段階になったと言えるでしょう。

荷主に求められる対応

トラックGメンの取り組みは既に大きな成果を上げています。長時間の荷待ちや契約外の業務など、これまで解消されなかった問題について、荷主は迅速に対処する必要があります。

具体的には、2023年6月に公表された「我が国の物流の革新に関する政策パッケージ」に合わせて策定された「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(国土交通省が経済産業省・農林水産省と3省で発表)を参考に対処するのがおすすめです。

以下では特に重要な箇所を抜粋しています。

詳しく知りたいは、お役立ち資料「法制化前に知りたい物流革新政策パッケージの全貌」をダウンロードしてご覧ください。

発荷主事業者必見!実施が必要な事項

■物流業務の効率化・合理化

  • 荷待ち時間・荷役作業等にかかる時間の把提
  • 荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール/1時間以内努力目標
  • 物流管理統括者の選定
  • 物流の改善提案と協力

(発荷主のみ)

  • 出荷に合わせた生産・荷造り等
  • 運送を考慮した出荷予定時刻の設定

■運送契約の適正化

  • 運送契約の書面化*
  • 荷役作業などに係る対価*
  • 運賃と料金の別建て契約*
  • 燃油サーチャージの導入・燃料費などの上昇分の価格
    への反映*
  • 下請取引の適正化(下請に出す場合、*の項目について対応することを求める)

■輸送・荷役作業等の安全の確保

  • 異常気象時等の運行の中止・中断等

着荷主事業者必見!実施が必要な事項

■物流業務の効率化・合理化

  • 荷待ち時間・荷役作業等にかかる時間の把提
  • 荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール/1時間以内努力目標
  • 物流管理統括者の選定
  • 物流の改善提案と協力

(着荷主のみ)
・ 納品リードタイムの確保

■運送契約の適正化

  • 運送契約の書面化*
  • 荷役作業などに係る対価*
  • 運賃と料金の別建て契約*
  • 燃油サーチャージの導入・燃料費などの上昇分の価格への反映*
  • 下請取引の適正化(下請に出す場合、*の項目について対応することを求める)

■輸送・荷役作業等の安全の確保

  • 異常気象等の運行の中止・中断等

法制化で想定される規制的措置への対応を支援

Hacobuでは、規制的措置が導入されそうな項目について、物流DXツール「MOVO」を活用した解決策をご提案しています。

■規制的措置が導入されそうな項目

・荷待ち・荷役時間の把握・削減(いわゆる2時間以内ルール)

<解決できるHacobuのサービス>
トラック予約受付サービス「MOVO Berth」
【導入効果】平均63分(※)の待機削減実績

資料をダウンロードする

(※)出典:株式会社Hacobu独自調査 「物流DX実態調査リポート〜2024年問題対策の実態と課題」より抜粋(2023年2月)

・運賃と料金の別建て契約(物流の担い手の賃金水準の向上のため適正運賃収受・価格転嫁を円滑化する)

<解決できるHacobuのサービス>
動態管理サービス「MOVO Fleet」
【導入効果】配送先での荷役時間の把握

資料をダウンロードする

・多重下請構造の是正に向け、実運送事業者を把握できるような台帳作成、および運送契約の書面化

<解決できるHacobuのサービス>
配送案件管理サービス「MOVO Vista」
【導入効果】デジタル受発注で契約を電子化

資料をダウンロードする

・荷主企業において、役員クラスで物流管理統括者(いわゆるCLO:Chief Logistics Officer)を選定。販売部門、調達部門など他部門との交渉・調整を行い、物流改善・改革に取り組む

<解決できるHacobuのサービス>
物流DXコンサルティング「Hacobu Strategy」
【支援内容】物流DX戦略の立案、物流DX人材育成

資料をダウンロードする

今まさに、荷主企業の意識、行動の変化が求められているのです。トラックGメンの取り組みへの協力、政策パッケージへの対応にお困り事があれば、お気軽にお問い合わせください。

著者プロフィール / 菅原 利康

株式会社Hacobuのマーケティング担当

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