Q. 花王様のロジスティクス活動やデジタルサプライチェーンの実現に向けた取組について教えてください
花王の特長として、生産工場から卸へ配送する「メーカー物流」に加え、小売店まで配送する「卸物流」を自ら管理・運営していることが挙げられます。全国10工場、31物流拠点を持ち、全国に物流ネットワークを構築しています。
弊社ネットワークは広く輸送能力の確保が必要なため、物流2024年問題は重要な社会的課題であり、輸送能力の不足などこれから起こる可能性のある問題に対して、ホワイト物流推進の活動を行っています。

(出典:花王提供)
Q. 豊橋工場での取り組みについて教えてください
スキンケアやヘアケア製品の供給拠点である豊橋工場の特徴は「少量多品種生産」です。これまで柔軟で効率的な生産体制を構築してきましたが、新たな工場モデルとして「コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」というコンセプトのもと、豊橋工場を生産・物流機能一体型の拠点へ変革させる取り組みを開始しました。
その中心として、工場内に完全自動化した次世代新倉庫を建設するプロジェクトが発足しました。それと同時に我々のチームの目指すべき姿のひとつとして、「トラックが入ってくるところから出ていくところまで効率的に自動でオペレーションできないか」という「場内トラック管理のスマート化」構想の検討を開始しました。
トラック誘導と出荷指示の自動化により、滞在時間を削減


(出典:花王提供)
Q. 「場内トラック管理のスマート化」について詳しく教えてください
従来のトラックの管理や誘導には人を介することが一般的で、受付簿などの紙を使ったアナログな運用もよく用いられています。これらを解消し、トラック誘導の無人化と滞在時間の削減の両方を解決したいと考えました。
トラック予約受付サービス・車両ナンバー認証システム・WCSとのAPI連携により、「場内トラック管理のスマート化」が実現できるのではないかと考え、Hacobuとの取り組みを開始しました。
HacobuのMOVO Berthは、以前から別の工場や倉庫で採用していました。以前から弊社からの要望にもスピーディに対応していただいていたため、今回のプロジェクトでも力になってくれるだろうと考えました。
まず、システム間を組み合わせることで、トラック誘導の自動化ができると考えました。
車両ナンバー認証システムが入場車両のナンバーを読み取り、MOVO Berthの予約情報を確認。予約の有無やバースの空き状況を考慮して、入場ゲートに設置したサイネージにトラック誘導メッセージを表示させる、といった形です。前のトラックが作業中で混みあっている場合は自動で一旦待機場所へ案内することも可能です。
退場時も同様に、カメラで認識したナンバープレートの情報をもとにMOVO Berth上で対象車両の退場処理を行います。
MOVO Berthと庫内制御システム(WCS)を連携させることで、次に出庫すべき貨物を自動的に判断・実行させることも実現しています。
WCSがリアルタイムにMOVO Berth上の到着状況や予約バース情報を把握し、次に出庫すべき貨物を自動的に判断・実行します。荷揃えを開始すると同時に、MOVO Berthからドライバーのスマートフォンに着車するようSMSを送信します。これにより、車両が指定バースに着車した際には既に貨物を積み込むことが可能な状態となり、トラックの滞在時間の削減につながります。
今回のプロジェクトで肝になっていた3つのシステムは、全て既存の仕組みです。MOVO Berthが各システムとのハブとなることで、誘導を自動化できたことに加え、事前の荷揃えにより待機時間を短縮することも実現できました。汎用システムの組み合わせなので他の企業でも導入しやすいのではと思っています。

※ API連携機能について
予約検索API
車番認証システムが、カメラで認識したナンバープレートの情報をもとに対象車両の予約についてMOVO Berth上で入場処理を行い、バースの空き状況をもとに車両誘導メッセージをサイネージに表示します。
更新情報連携Webhook
倉庫制御システム(WCS)が、リアルタイムにMOVO Berth上の予約の作成・更新・取消について把握し、空きバースに対して次に出庫すべき貨物の荷揃えを自動的に判断・実行します。
車両呼出API
倉庫制御システム(WCS)が、出庫貨物の荷揃えを開始すると同時に、待機しているドライバーに対して呼出APIでMOVO Berth上でSMSを送信することで着車するよう指示します。
入退場処理API
退場時も同様に、車番認証システムがカメラで認識したナンバープレートの情報をもとにMOVO Berth上で対象車両の予約の退場処理を行います。
Q. 導入効果はいかがでしょうか
従来のようなアナログな運用であればトラックが入場してから出ていくまで1時間ほど必要でしたが、最適化を図ったことで20〜30分程度に短縮できました。
また、トラック入出場管理を自動化することで、受付が不要になりました。また、電子データとして自動で記録されるので、システムへの入力ミス等もありません。
物流関連2法で求められる「荷待ち・荷役時間の把握」についても、この仕組みでしっかりと管理できています。ドライバーだけでなく、管理面においても、シームレスに自動で入退場の記録が取得できているので、ストレスがありません。

Q. 今後、花王様が目指すロジスティクスの姿について教えてください
今後もデータドリブンでの最適な意思決定と自動化技術の活用により、効率的で持続可能な物流の実現を目指しています。また、他社との共同物流やリソースの共有化も視野に入れ、社会全体の課題解決に貢献していきたいと考えています。