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物流DXの現場は甘くない!MOVO Berth 30拠点導入で直面した4つの課題とその打開策

更新日:2025年03月10日
会社
YKK AP株式会社
導入製品
MOVO Berth
導入拠点数
30拠点
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YKK AP株式会社は、YKKグループのAP(建材)事業を担い、住空間を創造する建築用プロダクトを取り扱っています。窓やドアをはじめとした製品を通じて社会を幸せにすることをパーパスに事業を展開しています。
YKK APは、長時間の荷待ち・荷役時間の解消によるトラックドライバーの負担軽減を目指し、トラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」を全国製造・物流30拠点に導入することを決定しました。しかし、導入の過程では沢山の苦労があったとお聞きします。今回はYKK AP株式会社 ロジスティクス部 物流DX推進室 米 健太郎様にお話をお伺いしました。

※本記事は「Hacobu Innovation Day 2025」での講演内容をまとめています。掲載内容は全て講演時(2025年1月)現在の情報に基づいています。

導入前の課題
  • トラックGメンから「働きかけ」があり、荷待ちへの対応が急務だった
  • 手書き集計の取りまとめに時間がかかり、改善活動が進まなかった
導入後の成果
  • 部署横断型の体制構築と運用フローの標準化により、短期間で導入を完了
  • 2時間以上の待機車両がほぼゼロに
  • 荷待ちに関する集計作業時間を8割削減
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Q. MOVO Berthを30拠点に導入拡大した理由を教えてください

トラック・物流Gメンから「長時間の荷待ちなどの疑いがあるので実態を調査してもらいたい」という指導があったことがきっかけです。実は従来、工場や物流拠点における車両の滞在時間に関する実情を把握できていなかったのです。
改正物流法の施行を前に、長時間荷待ちの実態を把握し、適切な対策を講じる必要があると即座に判断しました。対応策として予約システムの導入を掲げ、製造・物流30拠点への導入プロジェクトが発足しました。2023年12月にMOVO Berthのトライアルを開始してから約10カ月で30拠点への展開を完了させています。

当初は手作業で時間管理を行っていましたが、Excelへの転記作業に月53時間ほど要しており、改善活動の進みが遅くなっていました。さらに、手書き文字が読めない、抜け漏れが発生するといったトラブルもあり、予約システムの導入は急務であると考えました。

Q. 30拠点への導入プロジェクトについて教えてください

Hacobuのカスタマーサクセスチームの伴走のもと、本社主導で推進することで短期間に効率よく展開できると考え、プロジェクトチームを構築しました。
部署横断型プロジェクトチームを発足し、本部サポーターと拠点内サポーターの2つに分類しています。本部サポーターは、私の所属するロジスティクス部とIT統括部で構成し、MOVO Berth導入の舵を取りました。拠点内サポーターは30拠点の各導入担当者です。

(提供:YKK AP株式会社)

拠点への落とし込みは段階的に進めていきました。
まず2拠点でのトライアルを実施し、問題点の洗い出しや運用フローの標準化を進めました。運用フローは、契約形態や実務運用状況によって3つに集約し、他拠点への展開が効率よく行えると考えました。また、現場の導線に合わせたタブレットの設置位置・タイミングについてもシミュレーションしています。
これらを完了させた上で、残りの拠点にも順にMOVO Berthを導入していきました。

Q. MOVO Berth導入時に苦労したことを教えてください

苦労したことは以下4点です。

担当者任せによる進捗の偏り
各拠点に拠点内サポーターを配置し、彼らに自拠点へのMOVO Berth導入作業をリードしてもらおうと考えていました。しかし、実際には拠点内サポーターの理解度や推進力にばらつきがあり、軌道に乗っている拠点とそうでない拠点で大きな差が生じてしまいました。

拠点内サポーターへの説明会をオンラインから対面に切り替え、”フェイス ・トゥ・ フェイス”で会話するようにしたことで、彼らの行き詰まっているポイントや進捗が確認できるようになりました。軌道に乗っていなかった拠点のフォローを重点的に行うことで、問題は解消しました。

ステークホルダーへの情報伝達不足
MOVO Berthの使用方法や運用フローが、運送業者やドライバー、現場作業者まで十分に伝わっていないことが判明しました。対応策として、本部サポーターからの説明の実施、現場向けの詳細な説明資料の作成と配布を行いました。

ITリテラシーの格差への対応
タブレット端末やシステム操作に不慣れなドライバーや従業員が多く、抵抗感が強く現れていました。マニュアルの作成や担当者による1対1での使用方法指導などで、対応しました。

導入後の運用停滞
入退場管理や予約の不徹底など、MOVO Berthの運用が停滞するケースが発生していました。
現場の担当者とコミュニケーションをとっていく中で、システムを使うことに対する不満が溜まっていたことに気づき、解決する姿勢をとっていくことで解決に導きました。
また、現場からの要望とその対応策についてもご紹介します。

(提供:YKK AP株式会社)

ドライバーの負荷を軽減したい
オンライン受付機能が非常に効果的でした。ドライバーにタブレット設置場所まで移動してもらうことなく、携帯端末から受付ができる機能です。
荒天時や積雪時に特に好評で、受付の混雑緩和にも役立っています。

予約作成をより簡単にしたい
MOVO BerthにはCSVを取り込むことで、複数の予約を一気に作成できる機能があります。
しかし、MOVO Berthに取り込むためのデータ加工に苦労しているという話を聞き、各拠点に合わせたマクロを組んで提供しました。

集計フローを確立したい
入力の漏れやミスが全体の約10%ほど発生していました。このミスデータがデータ分析に再利用できるよう集計フローを構築しました。

入力の漏れやミスを防止したい
ドライバーごとの入場時間や荷役開始・終了時間を電光掲示板にリアルタイム表示させることで、記録漏れがあった時にすぐに気づけるようにしました。これにより、データ取得の精度が向上しています。

Q. MOVO Berth導入の成果や感想を教えてください


(提供:YKK AP株式会社)

苦労はありましたが、待機時間の削減や業務効率の向上において大きな成果を出せたと感じています。
予約作成率は95%を超え、2時間を超える待機車両はほぼゼロになりました。また、荷待ち・荷役時間の管理業務は手作業で行われていましたが、データ化により8割(月43.4時間)の業務削減を実現しました。1人あたりの業務時間で推定すると、業務時間の27.1%を削減したことになります。

今後もMOVO Berthで蓄積されたデータを活用し、時間帯別の入出荷量分析による人員配置の最適化や、車両滞在時間データを用いた構内レイアウトの改善など、データ駆動型の物流効率化に取り組んでいきたいと考えています。

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