ERPとは?基幹システムとの違いや選び方、メリット・デメリットを解説

企業運営において、業務効率化やデータの一元管理は欠かせません。その実現を支えるツールとして注目されているのが「ERP(Enterprise Resource Planning)」です。本記事では、ERPの基本的な定義から、基幹システムとの違い、さらに導入を検討する際に役立つポイントやメリット・デメリットについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。ERPの導入を検討中の方や、自社に最適なシステム選びに悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
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ERPとは?
ERPは「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」の略称で、企業の持つ経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を統合的に管理し、経営の効率化を図るための統合基幹システムです。
ERPの概念
ERPは、企業の各部門で個別に管理されていた情報を一元化し、リアルタイムで共有・活用することを可能にするシステムです。具体的には、財務会計、人事・給与管理、販売管理、在庫管理、生産管理など、企業活動に必要な機能を統合的に提供します。
データを一元管理することで、部門間の情報の齟齬を防ぎ、経営の意思決定をスピーディに行うことができます。
ERPが登場した背景
また、2000年代に入ってからは、コンプライアンスの強化や内部統制の要請が高まり、より正確で透明性の高い経営管理の必要性が増していました。これらの課題を解決するために、統合的な管理システムとしてERPが普及していきました。
ERPと基幹システムとの違い
基幹システムは、企業の中核となる業務である会計、販売、在庫などを管理するシステムを指す広義の概念として位置づけられています。
これに対してERPは、基幹システムの発展形として考えられています。ERPの特徴として、まず全社的な情報の統合管理が挙げられます。また、リアルタイムでのデータ連携が可能であり、業務の標準化や効率化を促進する機能を備えています。さらに、グローバル標準に対応した機能を有しているERPもあり、海外展開を行う企業にとって特に有用なシステムとなっています。
ERPと業務システムの違い
業務システムは人事システムや経理システム、営業支援システムなど、特定の部門や業務に特化したシステムを指します。ERPと業務システムには、いくつかの重要な違いがあります。
まず統合性の面では、ERPが複数の業務機能を統合的に管理するのに対し、業務システムは個別の機能に特化しています。データ連携においては、ERPではリアルタイムでの連携が標準機能として実装されていますが、業務システムでは他システムとの連携に追加の開発が必要となることがあります。
導入範囲についても大きな違いがあり、ERPは全社的な導入が基本となるのに対し、業務システムは必要な部門のみに導入することが可能です。また、カスタマイズ性においては、業務システムが各社の業務に合わせた細かいカスタマイズに対応できる一方で、ERPは標準的な業務プロセスに従う必要があるという特徴があります。

ERPの主な機能
ERPは企業活動に必要な様々な機能を統合的に提供しています。以下では、多くのERPに備わっている機能の例を解説していきます。これらの機能は相互に連携しており、例えば販売情報は会計システムに自動的に反映され、生産計画は購買管理と連動するなど、部門を超えた効率的な業務運営を可能にします。
会計管理
会計管理機能は、企業の財務状況を正確に把握し、適切な経営判断を支援する重要な機能です。仕訳から決算処理まで一連の会計業務を自動化し、財務諸表の作成や管理会計にも対応できるものもあります。具体的には、総勘定元帳の管理、債権・債務管理、固定資産管理、予算管理などが含まれるERPもあります。また、国際会計基準にも対応しており、グローバル展開する企業の会計処理も効率的に行えるERPもあります。
販売管理
販売管理機能では、受注から出荷、請求、入金までの一連の販売プロセスを一元管理します。見積書や請求書の作成、在庫の引き当て、売掛金の管理などを自動化することで、販売業務の効率化も可能です。また、販売実績のリアルタイムな把握や分析が可能となり、営業戦略の立案や在庫計画の最適化にも活用できるものもあります。
購買管理
購買管理機能は、原材料や商品の発注から納品、支払いまでの購買プロセスを管理します。発注点管理や最適発注量の算出、取引先との価格交渉履歴の管理など、購買業務に関する様々な機能を提供しているERPがあります。また、承認ワークフローを設定することで、不正や誤発注を防止し、適切な購買管理も可能です。在庫金額の最適化や仕入先との取引条件の管理にも役立ちます。
生産管理
生産管理機能では、製造業における生産計画の立案から、材料調達、製造工程の管理、品質管理までをカバーします。需要予測に基づいた生産計画の策定、原材料の所要量計算、製造工程のスケジューリング、製造原価の計算などが可能です。また、生産現場の実績データをリアルタイムに収集・分析することで、生産効率の向上や品質管理の強化につながるERPもあります。
人事管理
人事管理機能は、従業員の基本情報管理から、給与計算、勤怠管理、人材育成まで、人事に関する幅広い業務をサポートします。従業員のキャリア情報や資格情報の管理、評価制度の運用、教育研修の計画・実績管理などを行えるERPがあります。また、労務管理機能と連携することで、残業時間の管理や有給休暇の取得状況の把握も容易になり、働き方改革に対応できるものもあります。
各ERP製品によって、解説した機能の有無や差があると考えられますので、詳細は各ERP製品をご確認ください。

ERPのメリット
ここからはERPの代表的なメリットを解説します。
社内のデータを一元管理できる
ERPを導入する最大の利点は、販売・在庫・会計など、組織内で分散管理されていた様々なデータをまとめて扱える点にあります。従来は各部門ごとに異なるシステムやフォーマットで情報を扱っていたため、重複入力や更新ミスが生じやすく、正しいデータを得るまでに時間がかかることも珍しくありませんでした。ERPの仕組みを活用することで、部門をまたいだ情報の整合性が向上し、リアルタイムに最新のデータを参照可能になります。これにより関係部門間の連携がスムーズになり、トラブルやミスが減少します。社内での情報共有が活性化され、意思決定の土台がより堅固になる点も大きな魅力です。
業務効率・生産性が向上する
ERPは、受注から請求までの一連のプロセスや、在庫管理から購買手続きに至るまでの流れをシステム上で統合し、自動化の範囲を広げます。これにより、データの転記や集計といった手作業のステップが削減され、担当者の負担が軽くなります。さらに、ERP導入に伴うワークフローの見直しが、業務プロセス全体の最適化につながるのも大きなメリットです。定型的な作業が効率化されることで、従業員は顧客対応や商品開発など、より価値を生む業務へリソースを集中できるようになります。結果として、部門を超えた協力体制が強化され、組織全体の生産性向上に寄与します。
経営方針・戦略の意思決定が早くなる
ERPで一元化された情報は経営層にとっても大きな武器になります。リアルタイムに会社の在庫状況や売上傾向を可視化できるため、市場変化への即応が可能となり、意思決定にかかる時間を短縮できます。また、統合されたデータを活用すれば、部門横断的な分析や将来予測のシミュレーションなど、より高度な経営戦略の策定がしやすくなります。これまで断片的なデータを手作業で集めていた作業が不要となり、経営会議などでも正確な数値をベースに議論が進行できます。リスク管理や新規ビジネスの検討にもスピーディに対応し、競争力のある組織体制を作り上げることができます。
DXを推進できる
昨今、デジタル技術の活用は企業の成長戦略に欠かせない要素となっていますが、ERPはまさにDXの土台として機能します。社内のあらゆるデータがシステム上に統合されることで、ビッグデータの分析やAIとの連携など、先進的な取り組みにスムーズに着手できます。さらに、外部のクラウドサービスやSaaSとのAPI連携も容易になり、協力会社や取引先との情報共有を高度化することが可能です。結果として、単なる業務効率化だけでなく、新たなビジネスモデルの創出やサービスの高度化につながり、企業全体のデジタル変革を後押ししてくれるでしょう。
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ERPのデメリット
一方でERPを導入する際のデメリットにも留意しておく必要があります。
導入や運用にコストがかかる
ERPの導入には、システムのライセンス料やカスタマイズ費用、導入支援のコンサルティング費用など、多額の初期投資が必要です。また、導入後も保守・運用費用、バージョンアップ費用などのランニングコストが継続的に発生します。特に大規模な企業や、複雑な業務プロセスを持つ企業では、予想以上のコストがかかる可能性があります。
導入までに時間がかかる
ERPの導入プロジェクトは、要件定義から本番稼働まで通常6ヶ月から1年以上の期間を要します。現行の業務プロセスの見直し、システムのカスタマイズ、データの移行、ユーザーのトレーニングなど、多くの工程が必要となるためです。また、プロジェクトの進行中に新たな要件が発生したり、想定外の問題が生じたりすることで、さらに期間が延長される可能性もあります。
業務に適応するまで生産性が下がる可能性がある
新しいシステムの導入直後は、従業員が操作に慣れるまでの間、一時的に業務効率が低下することがあります。特にERPは業務プロセスの標準化を前提としているため、これまでの業務の進め方を大きく変更する必要がある場合もあります。また、システムの不具合や想定外の運用課題が発生した場合は、その対応に時間を要し、さらなる生産性の低下を招く可能性があります。

ERPの提供形式
ERPシステムは、企業の規模や要件に応じて最適な形式を選択することができます。主な提供形式として、クラウド型、オンプレミス型、そしてそれらを組み合わせたハイブリッド型の3つがあります。
クラウド型
クラウド型ERPは、インターネットを通じてサービスを利用する形式です。サーバーやソフトウェアの管理はベンダー側が行うため、企業側のIT管理負担を大幅に軽減することができます。初期投資を抑えられることも大きな特徴で、利用料は月額や年額での従量課金制が一般的です。
また、システムのアップデートも自動的に行われ、常に最新の機能を利用できます。場所を問わずアクセスできる点も、テレワークの推進やグローバル展開を行う企業にとって大きなメリットとなります。一方で、カスタマイズの自由度は比較的低く、インターネット環境に依存するというデメリットもあります。
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オンプレ型
オンプレミス型は、自社でサーバーを保有し、システムを運用する従来型の形式です。システムを完全にコントロールできるため、企業独自の要件に合わせた細かいカスタマイズが可能です。また、重要なデータを自社で管理できるため、セキュリティ面での懸念が少ないことも特徴です。
ただし、サーバーの導入や保守管理に多額のコストが必要となり、システムの更新やバージョンアップにも追加投資が必要です。また、災害対策やセキュリティ対策も自社で行う必要があるため、専門的な知識を持つIT人材の確保も重要になります。
ハイブリッド型
ハイブリッド型は、クラウド型とオンプレミス型を組み合わせた形式です。例えば、基幹業務はオンプレミスで運用しつつ、グループウェアや人事管理などの比較的セキュリティ要件の低い機能はクラウドで利用するといった使い分けが可能です。
この方式により、セキュリティと利便性のバランスを取りながら、段階的にクラウド化を進めることができます。また、既存のオンプレミスシステムへの投資を活かしながら、新しい機能を柔軟に追加できるというメリットもあります。ただし、2つのシステムを連携させる必要があるため、システム間の整合性の維持や運用管理が複雑になる可能性があります。

ERPの選び方
ERPの導入は企業にとって大きな投資となるため、慎重な選定が必要です。以下では、ERPを選ぶ際の重要なポイントについて解説します。
自社の業務要件に合うか確認する
まずは自社の業務プロセスを詳細に分析し、必要な機能を明確にする必要があります。業界特有の商習慣や業務フローに対応できるか、法令や規制に準拠しているかなどを確認します。また、将来的な事業拡大や業務変更にも対応できる柔軟性があるかも重要なポイントです。現場の声を丁寧に集め、実際の業務に即したシステムを選定することで、導入後のトラブルを防ぐことができます。
カスタマイズや拡張性を確認する
ERPパッケージの標準機能だけでは対応できない業務要件がある場合、カスタマイズが必要となります。この際、どの程度のカスタマイズが可能か、また追加開発にかかるコストや期間を事前に把握することが重要です。さらに、他のシステムとの連携や新機能の追加など、将来的な拡張性についても検討が必要です。ただし、過度なカスタマイズはコストの増大やバージョンアップの際の障害となる可能性があるため、できるだけ標準機能の活用を検討すべきです。
提供形式を検討する
クラウド型、オンプレミス型、ハイブリッド型それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、自社に最適な提供形式を選択します。システムの運用体制、セキュリティ要件、コスト、導入スピードなどを総合的に評価し、判断することが重要です。また、現在の IT インフラとの親和性や、将来的なシステム構成の変更可能性についても考慮する必要があります。
セキュリティ対策や機能を確認する
取り扱う情報の機密性に応じた適切なセキュリティ対策が実装されているか確認します。アクセス権限の設定、データの暗号化、監査ログの取得など、具体的なセキュリティ機能を精査します。また、システムの可用性や障害対策、バックアップ体制なども重要な確認ポイントです。特にクラウド型の場合は、データセンターのセキュリティ認証取得状況やデータの保管場所についても確認が必要です。
費用対効果を試算する
導入コストだけでなく、運用コストや保守費用も含めた総所有コスト(TCO)を算出し、投資対効果を慎重に検討します。また、業務効率化による人件費の削減、ペーパーレス化による経費削減、在庫の最適化によるコスト削減など、期待できる効果を具体的な数値で見積もります。導入後3〜5年程度の中期的な視点で、投資回収の見通しを立てることが重要です。
サポート体制や導入実績を確認する
ベンダーのサポート体制や導入実績は、システムの安定運用に大きく影響します。導入支援の体制、トラブル発生時の対応体制、保守サービスの内容などを詳しく確認します。また、同業他社での導入実績や成功事例を参考にすることで、自社での導入イメージをより具体的に描くことができます。ベンダーの財務状況や事業継続性についても考慮し、長期的なパートナーとして信頼できるかを評価することが大切です。
外部システム連携との柔軟性
ERPを導入して自社内の情報を集約することは、DX推進の大きな一歩です。しかし、実際の業務の流れを考えると、協力会社や社外ステークホルダーとのやり取りも含めた全体最適を図る必要があります。
たとえば、製造業では完成品を工場から出荷する際に、外部の運送会社に出荷指示を出し、トラックを手配してもらうケースが一般的です。出荷に関する社外とのコミュニケーションをDX化する仕組みをERPで構築すると、要件定義に時間やコストがかかりすぎるリスクがあります。
そこでおすすめなのが、すでにSaaSとして提供されている外部連携サービスを活用する方法です。配車システムやバース予約システム、倉庫管理システム(WMS)は、数多くの実績があり、必要な機能を低コストかつ短期間で導入しやすいという利点があります。社内の生産管理機能はERPで一元管理しつつ、これらのSaaSをAPI連携させれば、双方のシステム間で情報を自動的に共有できます。結果として、社内外での情報伝達がスムーズになり、業務効率の向上につながるでしょう。
まとめ
ERPシステムは、企業の経営資源を効率的に管理し、経営の効率化を実現する重要なツールです。導入には慎重な検討と準備が必要ですが、適切に選定・運用することで、業務効率の向上や経営判断の迅速化など、大きな効果が期待できます。
自社の業務要件やコスト、運用体制を十分に検討し、将来の事業展開も見据えた上で最適なERPを選択することが重要です。まずは自社の課題を明確にし、段階的な導入を検討することをおすすめします。
なお、Hacobuでは「運ぶを最適化する」をミッションとして掲げ、物流DXツールMOVO(ムーボ)と、物流DXコンサルティングサービスHacobu Strategy(ハコブ・ストラテジー)を提供しています。
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