更新日 2026.09.01

ERPと基幹システムの違いとは?機能・費用・選び方を表で解説

ERPと基幹システムの違いとは?機能・費用・選び方を表で解説

基幹システムの刷新やERP導入を検討する際、情報システム部門や経営企画の担当者が最初に整理すべきなのは、自社の課題が特定部門の業務改善にとどまるのか、部門をまたいだデータ統合まで必要としているのかという点です。会計、販売、在庫、生産などのシステムが個別最適で積み上がると、現場では業務が回っていても、経営判断に必要なデータを集める段階で手作業や確認作業が発生しやすくなります。 本記事では、ERPの基本的な考え方から基幹システムとの違い、導入判断のポイント、物流システムとの連携によって見えるようになるデータまで、物流DXパートナーのHacobuが実務に即して解説します。

目次

ERPとは?

ERPは「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」の略称で、企業の持つ経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を統合的に管理し、経営の効率化を図るための統合基幹システムです。

ERPの概念

ERPは、企業の各部門で個別に管理されていた情報を一元化し、リアルタイムで共有・活用することを可能にするシステムです。具体的には、財務会計、人事・給与管理、販売管理、在庫管理、生産管理など、企業活動に必要な機能を統合的に提供します。

データを一元管理することで、部門間の情報の齟齬を防ぎ、経営の意思決定をスピーディに行うことができます。

ERPが登場した背景

また、2000年代に入ってからは、コンプライアンスの強化や内部統制の要請が高まり、より正確で透明性の高い経営管理の必要性が増していました。これらの課題を解決するために、統合的な管理システムとしてERPが普及していきました。

ERPと業務システムの違い

業務システムは人事システムや経理システム、営業支援システムなど、特定の部門や業務に特化したシステムを指します。ERPと業務システムには、いくつかの重要な違いがあります。

まず統合性の面では、ERPが複数の業務機能を統合的に管理するのに対し、業務システムは個別の機能に特化しています。データ連携においては、ERPではリアルタイムでの連携が標準機能として実装されていますが、業務システムでは他システムとの連携に追加の開発が必要となることがあります。

導入範囲についても大きな違いがあり、ERPは全社的な導入が基本となるのに対し、業務システムは必要な部門のみに導入することが可能です。また、カスタマイズ性においては、業務システムが各社の業務に合わせた細かいカスタマイズに対応できる一方で、ERPは標準的な業務プロセスに従う必要があるという特徴があります。

ERPと基幹システムとの違い

観点基幹システムERP
目的会計、販売、在庫、生産など、企業の主要業務を安定して処理すること企業全体の経営資源を統合し、データを一元管理して意思決定を支えること
対象範囲特定の業務領域や部門ごとに導入されることが多い会計、販売、購買、在庫、生産、人事など複数領域を横断して扱う
データの持ち方システムごとにデータやマスタを持つ場合がある共通マスタや統合データベースを前提に、全社で同じデータを参照する
導入の進め方既存業務に合わせて個別に構築・更新しやすい業務プロセスを標準化しながら、全社または複数部門で導入する
向いている企業規模特定業務の改善を優先したい中小企業や部門単位の導入に向いている部門横断の管理が必要な中堅企業、大企業、拠点や事業が複数ある企業に向いている

基幹システムは、企業の中核となる業務である会計、販売、在庫などを管理するシステムを指す広義の概念として位置づけられています。

これに対してERPは、基幹システムの発展形として考えられています。ERPの特徴として、まず全社的な情報の統合管理が挙げられます。また、リアルタイムでのデータ連携が可能であり、業務の標準化や効率化を促進する機能を備えています。さらに、グローバル標準に対応した機能を有しているERPもあり、海外展開を行う企業にとって特に有用なシステムとなっています。

たとえば、販売管理システムでは受注情報を持ち、在庫管理システムでは在庫数を持ち、会計システムでは売上や請求情報を持っている場合、それぞれのデータが正しくても、部門間で突き合わせが必要になることがあります。ERPは、こうしたデータの分断を減らし、受注、在庫、出荷、請求、会計までを一連の流れとして管理しやすくします。
ただし、すべての企業が最初からERPを導入すべきとは限りません。特定の業務だけに課題が集中している場合は、既存の基幹システムを個別に更新するほうが現実的なこともあります。反対に、部門をまたいだデータ確認に時間がかかっている場合や、事業拡大に伴って拠点・商品・取引先の管理が複雑化している場合は、ERPによる統合管理を検討する意義が大きくなります。

参考:基幹システムの種類と役割

基幹システムとERP、どちらを選ぶべきかの判断基準

基幹システムとERPのどちらを選ぶべきかは、自社の課題が「個別業務の改善」なのか「全社データの統合」なのかで判断します。まず確認したいのは、部門をまたいだデータの突き合わせに手作業が発生しているかどうかです。たとえば、販売部門の受注データ、物流部門の出荷データ、経理部門の請求データをExcelで照合している場合、個別更新では根本的な解決が難しくなります。この状態に当てはまる企業は、ERPに統合するほうが向いています。

次に、システムごとにマスタが二重管理になっていないかを確認します。取引先名、商品コード、拠点情報などの元データが複数システムに分かれていると、表記ゆれや更新漏れが発生し、正しい数字を確認するまでに時間がかかります。マスタの不整合が頻繁に起きている場合は、共通マスタを前提にしたERPの導入が有効です。一方で、二重管理が限定的で影響範囲も小さい場合は、既存システムの改修で対応できる可能性があります。

最後に、今後3年で拠点や事業の増減が見込まれるかを確認します。拠点の新設、事業統合、海外展開、物流網の再編などが予定されている企業では、既存システムを個別に増改築すると、後からデータ連携や運用ルールの統一が難しくなります。将来的に組織や商流が変化する見込みがある場合は、ERPに統合して業務プロセスとデータ基盤を先に整えるほうが向いています。

ERPの主な機能

ERPは企業活動に必要な様々な機能を統合的に提供しています。以下では、多くのERPに備わっている機能の例を解説していきます。これらの機能は相互に連携しており、例えば販売情報は会計システムに自動的に反映され、生産計画は購買管理と連動するなど、部門を超えた効率的な業務運営を可能にします。

会計管理

会計管理機能は、企業の財務状況を正確に把握し、適切な経営判断を支援する重要な機能です。仕訳から決算処理まで一連の会計業務を自動化し、財務諸表の作成や管理会計にも対応できるものもあります。具体的には、総勘定元帳の管理、債権・債務管理、固定資産管理、予算管理などが含まれるERPもあります。また、国際会計基準にも対応しており、グローバル展開する企業の会計処理も効率的に行えるERPもあります。

販売管理

販売管理機能では、受注から出荷、請求、入金までの一連の販売プロセスを一元管理します。見積書や請求書の作成、在庫の引き当て、売掛金の管理などを自動化することで、販売業務の効率化も可能です。また、販売実績のリアルタイムな把握や分析が可能となり、営業戦略の立案や在庫計画の最適化にも活用できるものもあります。

購買管理

購買管理機能は、原材料や商品の発注から納品、支払いまでの購買プロセスを管理します。発注点管理や最適発注量の算出、取引先との価格交渉履歴の管理など、購買業務に関する様々な機能を提供しているERPがあります。また、承認ワークフローを設定することで、不正や誤発注を防止し、適切な購買管理も可能です。在庫金額の最適化や仕入先との取引条件の管理にも役立ちます。

生産管理

生産管理機能では、製造業における生産計画の立案から、材料調達、製造工程の管理、品質管理までをカバーします。需要予測に基づいた生産計画の策定、原材料の所要量計算、製造工程のスケジューリング、製造原価の計算などが可能です。また、生産現場の実績データをリアルタイムに収集・分析することで、生産効率の向上や品質管理の強化につながるERPもあります。

生産計画と在庫・出荷のデータがつながっていない場合、現場では作ったものが倉庫に滞留して過剰在庫になったり、必要な商品が足りずに欠品したりする可能性があります。さらに、出荷可能な数量やタイミングを正確に把握できないと、納品先への回答が遅れ、出荷遅れや配送計画の変更につながります。生産管理をERPで扱う場合も、倉庫側の実在庫や出荷実績と連携できるかを確認することが重要です。

参考:倉庫管理システム(WMS)とは

人事管理

人事管理機能は、従業員の基本情報管理から、給与計算、勤怠管理、人材育成まで、人事に関する幅広い業務をサポートします。従業員のキャリア情報や資格情報の管理、評価制度の運用、教育研修の計画・実績管理などを行えるERPがあります。また、労務管理機能と連携することで、残業時間の管理や有給休暇の取得状況の把握も容易になり、働き方改革に対応できるものもあります。

各ERP製品によって、解説した機能の有無や差があると考えられますので、詳細は各ERP製品をご確認ください。

ERPのメリット

ここからはERPの代表的なメリットを解説します。

社内のデータを一元管理できる

ERPを導入する最大の利点は、販売・在庫・会計など、組織内で分散していたデータをまとめて扱える点にあります。従来は部門ごとに異なるシステムやフォーマットで情報を管理していたため、重複入力や更新ミスが生じやすく、正しいデータを得るまでに時間がかかることもありました。ERPを活用すると、部門をまたいだ情報の整合性が高まり、関係者がリアルタイムに同じデータを参照しやすくなります。その結果、情報共有が円滑になり、意思決定の土台となるデータの信頼性も高まります。

業務効率・生産性が向上する

ERPは、受注から請求までの流れや、在庫管理から購買手続きまでのプロセスをシステム上で統合し、自動化の範囲を広げます。これにより、データの転記や集計といった手作業が減り、担当者の負担を軽減できます。また、ERP導入にあわせてワークフローを見直すことで、業務プロセス全体の最適化にもつながります。定型業務が効率化されると、従業員は顧客対応や改善活動など、より付加価値の高い業務に時間を使いやすくなります。

経営方針・戦略の意思決定が早くなる

ERPで一元化された情報は、経営判断の精度とスピードを高める材料になります。売上、在庫、原価、購買などの状況をリアルタイムに把握できれば、市場変化や需要変動に対して早く対応しやすくなります。また、部門横断のデータをもとに分析やシミュレーションを行うことで、経営会議でも共通の数字を前提に議論できます。断片的なデータを手作業で集める時間が減るため、リスク管理や新規施策の検討も進めやすくなります。

DXを推進できる

ERPは、企業がDXを進めるためのデータ基盤として機能します。社内のデータが統合されることで、分析、AI活用、外部クラウドサービスとの連携などに取り組みやすくなります。経済産業省も、DXを進めるうえでは既存システムの複雑化やブラックボックス化を解消し、データを活用できる状態にする重要性を示しています。ERPは単なる業務効率化の仕組みではなく、経営と現場のデータをつなぎ、新しい業務プロセスやサービス改善を支える基盤になります。

参考:物流DXの進め方

参考:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や事例、注目される理由をわかりやすく解説

ERPのデメリット

一方でERPを導入する際のデメリットにも留意しておく必要があります。

導入や運用にコストがかかる

ERPの導入には、システムのライセンス料やカスタマイズ費用、導入支援のコンサルティング費用など、多額の初期投資が必要です。また、導入後も保守・運用費用、バージョンアップ費用などのランニングコストが継続的に発生します。特に大規模な企業や、複雑な業務プロセスを持つ企業では、予想以上のコストがかかる可能性があります。

導入までに時間がかかる

ERPの導入プロジェクトは、要件定義から本番稼働まで通常6ヶ月から1年以上の期間を要します。現行の業務プロセスの見直し、システムのカスタマイズ、データの移行、ユーザーのトレーニングなど、多くの工程が必要となるためです。また、プロジェクトの進行中に新たな要件が発生したり、想定外の問題が生じたりすることで、さらに期間が延長される可能性もあります。

業務に適応するまで生産性が下がる可能性がある

新しいシステムの導入直後は、従業員が操作に慣れるまでの間、一時的に業務効率が低下することがあります。特にERPは業務プロセスの標準化を前提としているため、これまでの業務の進め方を大きく変更する必要がある場合もあります。また、システムの不具合や想定外の運用課題が発生した場合は、その対応に時間を要し、さらなる生産性の低下を招く可能性があります。

ERPの提供形式

ERPシステムは、企業の規模や要件に応じて最適な形式を選択することができます。主な提供形式として、クラウド型、オンプレミス型、そしてそれらを組み合わせたハイブリッド型の3つがあります。

クラウド型

クラウド型ERPは、インターネットを通じてサービスを利用する形式です。サーバーやソフトウェアの管理はベンダー側が行うため、企業側のIT管理負担を大幅に軽減することができます。初期投資を抑えられることも大きな特徴で、利用料は月額や年額での従量課金制が一般的です。

また、システムのアップデートも自動的に行われ、常に最新の機能を利用できます。場所を問わずアクセスできる点も、テレワークの推進やグローバル展開を行う企業にとって大きなメリットとなります。一方で、カスタマイズの自由度は比較的低く、インターネット環境に依存するというデメリットもあります。

参考:クラウドとは

オンプレ型

オンプレミス型は、自社でサーバーを保有し、システムを運用する従来型の形式です。システムを完全にコントロールできるため、企業独自の要件に合わせた細かいカスタマイズが可能です。また、重要なデータを自社で管理できるため、セキュリティ面での懸念が少ないことも特徴です。

ただし、サーバーの導入や保守管理に多額のコストが必要となり、システムの更新やバージョンアップにも追加投資が必要です。また、災害対策やセキュリティ対策も自社で行う必要があるため、専門的な知識を持つIT人材の確保も重要になります。

ハイブリッド型

ハイブリッド型は、クラウド型とオンプレミス型を組み合わせた形式です。例えば、基幹業務はオンプレミスで運用しつつ、グループウェアや人事管理などの比較的セキュリティ要件の低い機能はクラウドで利用するといった使い分けが可能です。

この方式により、セキュリティと利便性のバランスを取りながら、段階的にクラウド化を進めることができます。また、既存のオンプレミスシステムへの投資を活かしながら、新しい機能を柔軟に追加できるというメリットもあります。ただし、2つのシステムを連携させる必要があるため、システム間の整合性の維持や運用管理が複雑になる可能性があります。

ERPの選び方

ERPの導入は企業にとって大きな投資となるため、慎重な選定が必要です。以下では、ERPを選ぶ際の重要なポイントについて解説します。

自社の業務要件に合うか確認する

まずは自社の業務プロセスを詳細に分析し、必要な機能を明確にする必要があります。業界特有の商習慣や業務フローに対応できるか、法令や規制に準拠しているかなどを確認します。また、将来的な事業拡大や業務変更にも対応できる柔軟性があるかも重要なポイントです。現場の声を丁寧に集め、実際の業務に即したシステムを選定することで、導入後のトラブルを防ぐことができます。

カスタマイズや拡張性を確認する

ERPパッケージの標準機能だけでは対応できない業務要件がある場合、カスタマイズが必要となります。この際、どの程度のカスタマイズが可能か、また追加開発にかかるコストや期間を事前に把握することが重要です。さらに、他のシステムとの連携や新機能の追加など、将来的な拡張性についても検討が必要です。ただし、過度なカスタマイズはコストの増大やバージョンアップの際の障害となる可能性があるため、できるだけ標準機能の活用を検討すべきです。

提供形式を検討する

クラウド型、オンプレミス型、ハイブリッド型それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、自社に最適な提供形式を選択します。システムの運用体制、セキュリティ要件、コスト、導入スピードなどを総合的に評価し、判断することが重要です。また、現在の IT インフラとの親和性や、将来的なシステム構成の変更可能性についても考慮する必要があります。

セキュリティ対策や機能を確認する

取り扱う情報の機密性に応じた適切なセキュリティ対策が実装されているか確認します。アクセス権限の設定、データの暗号化、監査ログの取得など、具体的なセキュリティ機能を精査します。また、システムの可用性や障害対策、バックアップ体制なども重要な確認ポイントです。特にクラウド型の場合は、データセンターのセキュリティ認証取得状況やデータの保管場所についても確認が必要です。

費用対効果を試算する

導入コストだけでなく、運用コストや保守費用も含めた総所有コスト(TCO)を算出し、投資対効果を慎重に検討します。また、業務効率化による人件費の削減、ペーパーレス化による経費削減、在庫の最適化によるコスト削減など、期待できる効果を具体的な数値で見積もります。導入後3〜5年程度の中期的な視点で、投資回収の見通しを立てることが重要です。

ERPの費用を検討する際は、初期費用、月額または年額のライセンス費、保守運用費、社内の教育コストを分けて確認する必要があります。初期費用には要件定義、設定、カスタマイズ、データ移行、外部システム連携などが含まれることが多く、ライセンス費は利用人数や機能範囲によって変動します。保守運用費には問い合わせ対応、障害対応、バージョンアップ対応などが含まれます。 社内決裁で抜けやすいのは、現場担当者への教育コストや、導入後に運用を定着させるための社内工数です。新しいERPを入れても、現場が正しく入力・確認できなければ、期待した効果は得られません。具体的な金額はベンダーや導入範囲によって幅が大きいため、相場を前提に断定するのではなく、自社の業務範囲と運用体制に合わせて見積もることが大切です。

サポート体制や導入実績を確認する

ベンダーのサポート体制や導入実績は、システムの安定運用に大きく影響します。導入支援の体制、トラブル発生時の対応体制、保守サービスの内容などを詳しく確認します。また、同業他社での導入実績や成功事例を参考にすることで、自社での導入イメージをより具体的に描くことができます。ベンダーの財務状況や事業継続性についても考慮し、長期的なパートナーとして信頼できるかを評価することが大切です。

外部システムとの連携の柔軟性

ERPを導入して自社内の情報を集約することは、DX推進の大きな一歩です。しかし、実際の業務の流れを考えると、協力会社や社外ステークホルダーとのやり取りも含めた全体最適を図る必要があります。

たとえば、製造業では完成品を工場から出荷する際に、外部の運送会社に出荷指示を出し、トラックを手配してもらうケースが一般的です。出荷に関する社外とのコミュニケーションをDX化する仕組みをERPで構築すると、要件定義に時間やコストがかかりすぎるリスクがあります。

そこでおすすめなのが、すでにSaaSとして提供されている外部連携サービスを活用する方法です。配車システムバース予約システム倉庫管理システム(WMS)は、数多くの実績があり、必要な機能を低コストかつ短期間で導入しやすいという利点があります。社内の生産管理機能はERPで一元管理しつつ、これらのSaaSをAPI連携させれば、双方のシステム間で情報を自動的に共有できます。結果として、社内外での情報伝達がスムーズになり、業務効率の向上につながるでしょう。

外部システムとの連携では、方式によって運用負荷が大きく変わります。API連携はシステム同士が自動でデータを受け渡しできるため、リアルタイム性が高く、手作業を減らしやすい方法です。CSV連携は比較的導入しやすい一方で、ファイルの出力・取り込みのタイミングや形式管理が必要になります。手作業での取り込みは初期対応こそ簡単ですが、件数が増えるほど入力ミスや確認工数が増えます。ERPを選ぶ際は、現在必要な連携だけでなく、将来どの業務を自動化したいかまで見据えて確認することが重要です。

基幹システムと物流システムの連携は、標準機能どうしをつなぐだけで完結しないことが少なくありません。出荷指示のデータ項目、拠点コードや取引先コードの持ち方、協力会社への連絡フローなどは企業ごとに異なるため、既製のパッケージ機能だけでは要件を満たしきれない場合があります。こうしたケースでは、物流領域に特化したシステムインテグレーションを組み合わせる方法が有効です。物流DXシステムインテグレーション・AI導入支援サービス「Hacobu Solution Studio(ハコブ・ソリューションスタジオ)」(Hacobu提供)は、ERPや基幹システムと、バース予約システム「MOVO Berth」や配車受発注・管理サービス「MOVO Vista」などのクラウド物流システムをつなぐAPI連携・個社開発を、要件定義から実装・運用まで一貫して支援します。

参考:Hacobu Solution Studio

参考:API連携とは

ERPと物流システムを連携させると何ができるか

ERPと物流システムを連携させると、経営上の数字と物流現場の実態をつなげて把握しやすくなります。ERPは受注、売上、在庫、購買、会計などの業務データを統合する仕組みですが、トラックの到着時刻、荷待ち時間、実際の配送実績といった物流現場の細かなデータまでは持っていないことが一般的です。そのため、ERP上では在庫があるように見えても、実際には入荷が遅れていたり、出荷作業が滞っていたりすることがあります。

物流システムと連携すると、まず在庫データと実際の入出荷のズレを減らしやすくなります。倉庫での入荷、保管、ピッキング、出荷の実績がERP側の受注・在庫情報とつながることで、販売部門や生産部門もより正確な在庫状況を確認できます。物流管理の全体像を理解するには、物流管理の基本も参考になります。

次に、配送コストを製品別・取引先別に把握しやすくなります。ERP上の売上や原価のデータに、実際の配送距離、車両手配、積載効率、追加作業などの物流データを組み合わせることで、どの製品や取引先で物流コストが高くなっているのかを分析できます。輸配送の仕組みについては、輸配送管理システム(TMS)とはで詳しく解説しています。

さらに、荷待ち時間などの現場の実態を経営数値と結びつけられるようになります。国土交通省は、物流DXについて、サプライチェーン全体で情報やコストを見える化し、作業プロセスを単純化・定常化する取り組みとして示しています。ERPと物流システムの連携は、単にデータをつなぐだけでなく、現場で発生している待機、遅延、積載効率の低下といった課題を、経営として改善すべきコストやリスクとして捉えるための基盤になります。

これらの連携を実現するうえで論点になるのが、「どこまでを既存システムの設定で対応し、どこからを個別開発で埋めるか」という線引きです。ERPの標準機能で吸収できる範囲を整理したうえで、残る差分をAPI連携やサブシステムで補うと、過剰なカスタマイズを避けながら現場データを取り込めます。物流DXシステムインテグレーション・AI導入支援サービス「Hacobu Solution Studio」(Hacobu提供)は、MOVOシリーズを自社開発してきたメーカーとしての現場知見をもとに、基幹システムと物流システムの間に生じるデータの分断を、連携設計と個社開発で解消する支援を行っています。

ERPに関するよくある質問

ERPを検討する際は、基幹システムとの違いや関連する用語の意味を整理しておくことが重要です。ここでは、情報システム部門や経営企画の担当者が初期検討の段階で疑問に持ちやすい項目について、要点を絞って解説します。

基幹システムとERPの違いは何ですか?

基幹システムとERPの違いは、個別業務を支える仕組みか、全社の業務データを統合する仕組みかにあります。基幹システムは会計、販売、在庫、生産などの主要業務を支えるシステムの総称です。一方、ERPはそれらを横断してデータを一元管理し、経営判断や業務標準化に活用するための仕組みです。

基幹システムとは何ですか?

基幹システムとは、企業の主要な業務を支えるシステムの総称です。具体的には、会計管理、販売管理、購買管理、在庫管理、生産管理、人事管理など、事業を継続するうえで欠かせない業務を処理する仕組みを指します。業種や企業規模によって必要なシステムは異なるため、自社の業務フローに合わせて整理することが大切です。詳しくは、基幹システムの種類と役割をご覧ください。

SAPは基幹システムですか?

SAPは、代表的なERPパッケージを提供する企業名であり、同社が提供する製品名として使われることもあります。基幹システムという言葉は、会計、販売、在庫、生産など企業の中核業務を支えるシステム全般を指す、より広い概念です。そのため、SAPのERP製品が基幹業務を支える仕組みとして使われることはありますが、基幹システムそのものをSAPだけに限定して考える必要はありません。

EPMとERPの違いは何ですか?

EPMとERPの違いは、主に扱う目的とデータの種類にあります。EPMはEnterprise Performance Managementの略で、経営計画、予算管理、業績管理など、経営の計画と管理に特化した仕組みです。一方、ERPは受注、購買、在庫、生産、会計など、日々の業務で発生するデータを統合して管理する仕組みです。ERPが日常業務の実績データを支え、EPMがそのデータをもとに経営計画や予算管理を行う関係として整理できます。

ERPと物流システムはどのように連携させればよいですか?

ERPと物流システムの連携は、①連携する業務とデータ項目の特定、②連携方式(API連携かCSV連携か)の決定、③マスタとコード体系の整合、④テスト運用と運用ルールの整備、という順で進めるのが基本です。自社に開発リソースがない場合や、既存の基幹システムの仕様が複雑な場合は、物流領域に特化した開発パートナーの活用が現実的です。Hacobuでは、物流DXシステムインテグレーション・AI導入支援サービス「Hacobu Solution Studio」で、基幹システムとMOVOシリーズをつなぐ連携開発を支援しています(2026年8月時点)。

まとめ

ERPと基幹システムの違いは、個別業務を支えるか、全社の業務データを統合して扱うかにあります。既存の基幹システムを個別に更新すべきか、ERPに統合すべきかは、部門間のデータ突き合わせ、マスタの二重管理、今後の拠点や事業の変化を基準に判断することが重要です。

また、物流を伴う企業では、ERPだけで現場の実態をすべて把握できるわけではありません。物流システムと連携することで、在庫と入出荷のズレ、配送コスト、荷待ち時間などを経営数値と結びつけて確認しやすくなります。ERP導入を検討する際は、自社の業務範囲だけでなく、物流データとの連携まで見据えてシステム全体を設計することが大切です。

基幹システムと物流システムの連携に個社固有の要件が多い場合は、物流DXシステムインテグレーション・AI導入支援サービス「Hacobu Solution Studio」(Hacobu提供)のように、物流業務に精通した開発パートナーと連携設計から進める方法もあわせて検討することをおすすめします。

物流データの一元化を支援するHacobuのサービス

ERPで社内の業務データを統合しても、物流現場の到着時刻、荷待ち時間、配送実績、協力会社とのやり取りまでを一元的に把握するには、物流領域に適した仕組みが必要です。Hacobuでは、「運ぶを最適化する」をミッションに、物流DXツールMOVOと物流DXコンサルティングサービスを提供し、荷主企業や物流事業者のデータ活用を支援しています。

トラック予約受付サービス(バース予約システム) MOVO Berth

MOVO Berth(ムーボ・バース)は、荷待ち・荷役時間の把握・削減、物流拠点の生産性向上を支援します。

動態管理サービス MOVO Fleet

MOVO Fleet(ムーボ・フリート)は、協力会社も含めて位置情報を一元管理し、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。

配車受発注・管理サービス MOVO Vista

MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)は、電話・FAXによるアナログな配車業務をデジタル化し、業務効率化と属人化解消を支援します。

物流DXコンサルティング Hacobu Strategy

Hacobu Strategyは、物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援します。

物流DXシステムインテグレーション・AI導入支援 Hacobu Solution Studio

Hacobu Solution Studio(ハコブ・ソリューションスタジオ)は、ERPや基幹システムとMOVOシリーズをつなぐAPI連携・個社開発から、データ統合とAIを活用した分析・可視化までを一貫して支援します。MOVOを自社開発してきたメーカーならではの現場解像度を活かし、標準SaaSだけでは届かない個社要件を、構想から実装・運用まで伴走して形にします。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営し、物流の基礎知識や法律を分かりやすく解説するメディア「ハコブログ」編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

クラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」のマーケティングを管掌し、荷主企業や物流事業者の業務デジタル化(DX)を推進。専門知識を活かし、ロジスティクス分野の専門誌への寄稿や、様々な業界団体での講演活動にも登壇。「最新ツールの普及」と「分かりやすい情報発信」の両面から、物流業界の課題解決に現場目線で取り組んでいる。 >>プロフィールを見る

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