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執筆者:菅原 利康

CLOに求められる5つのスキルと、実践すべき5つのアクションプラン

物流関係者の悲願ともいわれるCLO(Chief Logistics Officer)が、日本企業でも誕生し始めています。本記事では、CLOに求められる役割やリーダーシップ、実践すべきアクションプランについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。

まず、CLOの概要を理解されたい方は以下のバナーをクリックし、資料をダウンロードいただけると幸いです。

CLOに求められる役割と責任

CLOには、物流領域の部門最適、個社の最適、そして社会最適の推進が求められます。これは、従来の物流部長の役割を大きく超えるものです。

部門最適の推進

CLOは物流部門の効率化だけでなく、デジタル技術を活用したプロセスの高度化を主導します。例えば、AIやIoTを活用した在庫管理システムの導入や、自動化技術を用いた倉庫運営の効率化などが挙げられます。

個社最適の推進

CLOは企業全体のサプライチェーンを俯瞰し、部門間の壁を越えた最適化を図ります。これには、調達、生産、販売部門との密接な連携が不可欠です。例えば、需要予測の精度向上によるムダな在庫の削減や、生産計画と連動した効率的な物流ネットワークの構築などが含まれます。

社会最適の推進

CLOは自社の利益だけでなく、社会全体の持続可能性を考慮した戦略を立案し実行します。これには、CO2排出削減のための輸送手段の見直しや、ステークホルダーと協力した物流インフラの共同利用などが含まれます。

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CLOが注目すべき経営指標

CLOが見るべき重要な経営指標として、ROIC(投下資本利益率)が挙げられます。CLOには投下資本利益率の最大化を目指した運営が求められます。

以下に示されているように、ROICは売上高営業利益率と投下資本効率から構成されます。物流部門では従来、コスト効率にフォーカスされがちでしたが、CLOはさらに踏み込んで、投下資本効率を考えた運営が必要になります。 例えば、ロボットの導入や物流センターの変更、ネットワーク自体の見直し、店舗のバックヤード改革など、広い領域でのトータルROIC改善を考えます。

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CLOに求められる5つのスキル

そんな重要な役回りであるCLOを担う人材には、どのような能力が必要とされるのでしょうか。以下の5つのスキルが必要であると考えます。

経営者としての視座

CLOは経営戦略に深く関与し、重要な意思決定に参画します。全社的な視点から物流戦略を立案し、経営陣を巻き込んで実行に移す力が求められます。

デジタルトランスフォーメーションの牽引

最新テクノロジーを理解し、物流プロセスに適用する能力が不可欠です。AIやIoT、ブロックチェーンなどの技術を活用し、物流のデジタル化を推進する力が重要です。

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イノベーション志向

従来の物流の概念にとらわれず、新しいビジネスモデルを構築する創造力が必要です。業界の枠を超えた発想で、革新的な物流ソリューションを生み出す能力が求められます。

戦略的思考と実行力

中長期的視点で物流戦略を立案し、段階的に変革を推進する能力が重要です。ビジョンを描くだけでなく、具体的な施策に落とし込み、確実に実行に移す力が必要です。

組織横断的な影響力

部門の壁を超えて連携を促進し、社内外の関係者との信頼関係を構築する力が求められます。調達、生産、販売部門を巻き込み、サプライチェーン全体の最適化を図る能力が不可欠です。

物流クライシスに直面し、環境経営が求められる現代の日本において、個社の最適化に留まらず、社会最適を推進することがCLOが果たすべきミッションといえます。

CLOが実践すべき5つのアクションプラン

物流を強化し、企業競争力を高めるために、CLOが取り組むべき5つのアクションプランを解説します。

最新デジタル技術を理解した上でのスピーディーな物流DXの推進

物流の2024年問題は、労働時間の制限トラックドライバーの労働力不足、法規制の強化など、多様な要因が複雑に絡み合っています。これらの課題に対処するためには、デジタル技術の導入が不可欠です。

世界的なトレンドを見ても、機械化とデジタル化の推進は物流の革新に不可欠な要素となっています。倉庫内のプロセスを人力から機械へとシフトする中で、そのプロセスをタイムリーに管理することが求められます。正確なトランザクション管理は、その基盤となるのです。

機械化を進める際には、トラックがバースに到着する予定や実際に到着した時間といった情報をトリガーとして使用するため、デジタルで記録・管理することが不可欠となります。

Hacobuが提供するDXツール「MOVO」シリーズ、例えばトラック予約受付サービス「MOVO Berth」、動態管理システム「MOVO Fleet」、配車・受発注管理サービス「MOVO Vista」などは、2024年問題を背景に利用企業数や問い合わせ件数が急増しており、物流DXの推進が加速していることが伺えます。

物流関連2法への打ち手として、荷待ち時間の削減や、受発注の管理のデジタル化、輸送の最適化などにMOVO等の物流DXツールを活用していただくこともちろんですが、前述の通り、機械化・自動化への取り組みなど、将来的なデータ活用を意識しながら、デジタル化を推進していくことが重要です。

CLOと物流リーダーには、国内外の最新事例に触れつつ、デジタル技術の先に広がる物流の未来を構想し、その革新をリードする役割が求められています。

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中長期ビジョン立案・実行に向けた物流パフォーマンスの可視化

CLOや物流リーダーは、物流現場の実態を深く理解し、それを基に中長期的な物流戦略を立案・実行する責務を負っています。そのためには、物流の状態をデータで把握し、そのパフォーマンスを可視化することが第一歩となります。

例えば、現在使用している物流センターのキャパシティや、その稼働率を把握し、地域の消費動向に照らし合わせて、適切なキャパシティ運用ができているかどうかを議論し最適化することが必要です。

企業の物流DX推進を支援するコンサルティングサービス「Hacobu Strategy」では、物流をデータで捉え、改善提案を行っています。日本企業は、物流ネットワーク全体に対して物流センターの数が過剰であるケースが多い現状があります。労働力不足の状況下で、物流センターの集約化を進めつつ、全体のサービスレベルを維持するための戦略が求められるのです。 まずは、物流のデータ化によって全体のパフォーマンスを可視化し、データに基づいた中長期ビジョンの立案に着手することが重要です。

ロジスティクス変革による経営インパクトを立証し、攻めの物流投資を実現

物流のパフォーマンスを可視化したら、物流変革によるインパクトを経営数値で立証し、事業成長につながる物流投資を行うことがCLOや物流リーダーの次なるミッションです。

物流投資は、企業の成長フェーズや売上規模に応じて、適切なタイミングで実施されるべきです。競争に遅れることなく、また過剰投資を避け、バランスを取りながら投資判断を行うことが求められます。

物流において、投資利益率(ROI)が見えづらいという相談を受けることが多々ありますが、CLOや物流リーダーは、経営層と緻密な議論を重ね、物流投資の必要性を説き、予算確保に尽力する必要があります。

物流現場の想い・痛みを把握した上で、物流変革を主導する人材の選抜と育成

日本の物流現場を訪れると、その多くが困難な状況に直面していることがわかります。CLOや物流リーダーには、現場に足を運び、課題を直接観察し、スタッフの声に耳を傾けていただきたいです。特に、現場が最も忙しいタイミングでの対話は、貴重な課題発見の機会となるでしょう。

物流現場からは、部門の壁を超えた改革が強く求められています。物流には根強い商習慣が残っており、それが改革の障壁となることもしばしばです。

例えば、小売店で誤配が生じた際、すぐに補充を求める要望があり、商品をたった1つ運ぶために高額なトラックを手配して届けるといった非効率が存在します。CLOや物流リーダーは、こうした対応がビジネスにおいて利益貢献しているかを精査し、より良い選択肢を探る必要があります。さらに、企業全体の収益を最大化する観点から、物流部門に限らず、他部門を巻き込んでの議論が不可欠です。

これまでの商習慣や業界の常識を見直し、物流を新たな視点で再構築することも大きな使命です。これを実現するためには、高い視座で物流を捉え、リーダーシップを発揮できる人材の選抜と育成が急務です。 Hacobuでは、「物流DX」を推進する「デジタル人材」を育成する企業研修プログラム「Hacobu ACADEMY」を提供しています。これらのサービスも活用しながら、次世代の物流リーダーの育成に取り組んでいただきたいです。

物流人材育成の事例

物流人材育成の成功事例をご紹介すると、株式会社サトー商会では、物流構造改革に向けて全社横断プロジェクトを結成し、「Hacobu ACADEMY」を導入しました。 各部門が独自の視点にとらわれ、物流改革が進まないという課題が浮き彫りとなりました。物流DXの理解を深め、「物流は経営戦略である」との共通認識を持った上で、全社的に事業計画を策定し、経営層との合意形成に成功した好例です。

サトー商会の事例詳細は以下からご覧いただけます。

組織横断チームで踏み出した物流の経営アジェンダ化への第一歩

個社最適から企業の枠を超えた社会最適への物流変革の主導

物流には、「パンドラの箱」が存在します。物流業務に携わるスタッフは、その存在に気づいていても、対処が困難であるがゆえに開けることを躊躇しがちです。 しかし、CLOや物流リーダーには、勇気を持ってその箱を開き、その中に潜む課題に取り組んでいただきたいです。

多重下請け構造の是正

その一例が、多重下請け構造です。この構造に依存している現状は理解されていますが、その詳細を把握し、改善に向けた議論を深めている企業は少ないでしょう。協力会社との取引内容を正確に把握し、適切に管理することで、最適な解決策を見出すための議論を可能にします。

このような構造下で元請事業者から下請け会社まで様々な情報のやりとりが行われるわけですが、デジタル化の遅れから、配送依頼や応諾確認、ドライバーや車両情報の収集、配送後の請求書発行といった業務が、未だに電話やFAX、メールで行われているのが実状です。

MOVO Vistaは、元請事業者と運送事業者がクラウド上で互いの情報をリアルタイムで共有できるため、作業効率が大幅に向上し、物流業務が改善したという声を多く頂いています。このように企業の枠を超えて情報連携が可能になれば、企業競争力の強化にも繋がります。

パンドラの箱を開け、商習慣を見直し、個社最適を実現したならば、次に取り組むべきは社会全体の最適化です。

共同輸配送

現在、Hacobuが提供するMOVOを活用し、積載効率を数値化、そのデータを企業間で共有し、車両を効率的に活用する「共同輸配送」の取り組みが進行中です。

2024年8月には、物流の社会課題解決を目指し、企業間で物流データを共有する「物流ビッグデータラボ」の創設を発表しました。物流ビッグデータラボは、個社や業界の垣根を超えたデータ共有を通じて、共同輸配送の実現を目指しています。この取り組みは、物流全体の効率化と社会全体の課題解決に向けた重要な一歩となるでしょう。

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物流の経営アジェンダ化を目指して

「CLO」の設置は、物流の専門家や知見を有する方々にとって長年の悲願です。CLOや物流リーダーは、自社内に留まらず、着荷主・発荷主側の物流責任者とネットワークを構築し、様々な議論をしていただきたいと考えています。

今こそ、国が物流革新を後押ししているこの好機を捉え、物流の経営アジェンダ化に尽力してください。

物流が経営に近づけば、物流投資が現実のものとなり、それが物流革新を促進する原動力となります。結果として、企業のみならず日本全体の競争力も向上します。

CLOや物流リーダーを担う皆さんには、データに基づく冷静な判断と正直さを持ち合わせ、最良の選択肢を議論し、物流革新を先導する責任者としての役割を果たしていただきたいと願っています。

物流改革には物流DXコンサルティングが有効

CLOが自社の物流改革を進める際、物流DXコンサルティングを活用することは、効率的かつ効果的な改革を実現する鍵となります。専門家の知見を活用することで、最新のテクノロジーや業界トレンドに基づいた最適な戦略を構築可能です。また、物流業務の可視化やデータ活用の推進により、コスト削減やサービス向上が期待できます。さらに、社内リソースの限界を補い、スムーズなプロジェクト推進を支援するため、CLOにとって重要なパートナーとなるでしょう。

物流DXコンサルティングなら Hacobu Strategy

Hacobu Strategyは、物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援します。

詳細は以下をクリックしてご覧ください。

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著者プロフィール / 菅原 利康

株式会社Hacobuのマーケティング担当

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