公開日 2021.11.30
更新日 2025.04.09

WMSとは?メリット・デメリット、ほかのシステムとの違い、導入事例なども解説

WMSとは倉庫管理システムのことをいいます。倉庫で行う業務のマネジメントを支援できるため、さまざまな業種の現場で活用されています。本記事では、物流業務の管理者や担当者向けに、WMSの定義や必要性、メリット・デメリット、導入事例などを、物流DXパートナーのHacobuが解説します。

なお、本記事では、倉庫内の効率化システムについて解説しますが、荷捌き場を効率化するバース予約システムについては以下の記事をご覧ください。

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WMS(倉庫管理システム)とは

WMS(Warehouse Management System)は、倉庫内の貨物や資材、商品の入出庫や在庫管理を効率化するためのシステムです。具体的には、商品の受け入れから出庫、棚卸し、在庫移動の追跡までをサポートし、正確な在庫状況をリアルタイムで把握できます。これにより、在庫の過不足を防ぎ、物流コストの削減や作業効率の向上が実現されます。

WMSの必要性

WMSは、作業工程の煩雑さや、現場の状況とデータのズレ、在庫管理の難しさといった問題を解決するために必要です。システムを導入することで、リアルタイムでの在庫状況の把握が可能になり、業務の効率化と正確なデータ管理が実現します。また、人的ミスを減らし、コスト削減にもつながるため、物流の安定稼働に不可欠です。

WMSの代表的な4つの機能

ここでは、WMSの代表的な4つの機能を解説します。

入荷管理機能

WMSの入荷管理機能は、倉庫に到着した商品を検品し、適切な場所に保管する作業を効率化します。入荷時に数量や期限を確認することで、在庫の正確性を保ちながら、出荷ニーズにも迅速に対応可能です。これにより、欠品や納期遅延を防ぎ、物流全体のスムーズな運営を支援します。

出荷管理機能

WMSの出荷管理機能は、出荷依頼に基づき、指定された場所から商品を取り出し、ルールに従って梱包・出荷を支援します。オーダーピッキングやトータルピッキングなど、作業方法を柔軟に選択できるため、作業効率の向上が可能です。これにより、出荷ミスを防ぎ、迅速かつ正確な出荷作業が実現されます。

在庫管理機能

WMSの在庫管理機能では、商品がどこにどれだけ保管されているかという基本情報に加え、期限やロット番号などの詳細情報を一元管理します。これにより、過剰在庫や品切れを防ぎ、在庫の最適化が可能となります。リアルタイムの在庫状況を把握することで、無駄を減らし、効率的な在庫管理を実現します。

棚卸管理

棚卸管理とは、倉庫内の在庫を確認し、実際の在庫数とシステム上のデータを照らし合わせる重要な作業です。自動化されたシステムを利用することで、棚卸時の誤差をすばやく検知し、差異があった場合には自動でリストや報告書が生成されるため、管理の効率化が図れます。こうした自動化により、物流部門の担当者は手間を省き、正確なデータに基づく意思決定が可能となります。

ほかのシステムとの違い

ここでは、WBSと基幹システムや在庫管理システム、バース予約システムなどとは何が異なるのかを解説します。

基幹システムとの違い

基幹システムは、企業全体の情報やお金の流れを管理するのに対し、WMSはモノの流れを管理します。両者は管理対象と目的が異なり、WMSは在庫や配送を最適化する役割を果たします。

OMS(受注管理システム)との違い

WMSは倉庫内の保管から発送までを管理するのに対し、OMS(受注管理システム)は注文から在庫情報までを管理します。管理する情報の範囲が異なります。

在庫管理システムとの違い

WMSは倉庫内の在庫管理に特化しているのに対し、在庫管理システムは自社の倉庫外も含めた広範囲な在庫管理を行います。両者の範囲と目的が異なります。

バース予約システムとの違い

WMSは格納やピッキングなどの「拠点内」の管理するのに対し、MOVO Berthのようなバース予約システムはバースや荷捌き場のような「拠点の出入り口」における積み降しの効率化を管理します。

以下のリンクからおすすめのバース予約システムの資料をダウンロードいただけます。

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TMS(輸配送管理システム)との違い

WMSは倉庫内の在庫や作業を管理するのに対し、TMS(輸配送管理システム)はトラックの配車や輸配送の進捗を管理します。両者は管理対象が異なります。

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WMSの5つのメリット

ここでは、WMS導入の5つのメリットを解説します。

ヒューマンエラーの低減

倉庫業務は単調な作業が多く、注意力が低下しがちです。しかし、WMSを導入することで、商品とロケーションを確認しながら作業を進めるため、ヒューマンエラーを大幅に低減できます。

業務効率化の向上

返品対応は出荷履歴や在庫修正で作業が複雑になりますが、WMSの返品管理機能を使えば、これらの対応を短時間で効率よく処理できます。業務効率が大幅に向上します。

リアルタイムで情報を可視化

WMSを導入すれば、倉庫内の商品の状況をリアルタイムで把握でき、作業進捗や棚卸管理も容易に行えます。また、他の倉庫や取引先との情報共有もスムーズに進められます。

省スペース化の実現

WMSを使うことで、倉庫内のロケーション管理が簡単になり、効率的にスペースを活用できます。ロケーション変更も柔軟に行えるため、無駄なスペースを削減し、省スペース化が実現します。

人件費の削減

WMSを導入することで、これまで人が手作業で行っていた業務を自動化でき、人員を削減することが可能です。その結果、人件費の大幅な削減が期待できます。

WMS導入の3つのデメリット・注意点

ここでは、WMS導入の3つのデメリットを解説します。

導入コストがかかる

WMS導入時にはシステム費用が発生します。そのため、導入コストに見合う効果が得られるかを事前にシミュレーションし、慎重に検討することが重要です。

導入~稼働までの準備が必要

WMS導入には社内承認と関連書類の準備が必要です。また、現場作業の変更に伴い、従業員向けの教育や新しい作業マニュアルの整備も不可欠です。

導入目的を明確にしないと期待する効果が得られない

WMSにはさまざまな機能が搭載されているため、企業によって必要な機能は異なります。そのため、導入するにあたって目的を明確にしていないと期待する効果が得られない場合もあります。目的を明確にしていなければ、必要な機能が搭載されていないシステムを導入してしまう可能性もあるので注意しましょう。

WMSを導入することで、どういった効果を得たいのかを最初に確認しておくことが重要です。

WMSを選ぶ際に確認すべきポイント

ここでは、WMSを検討する際に考慮すべき点を解説します。

提供形態が何か

WMSには大きく3つの提供形態があります。パッケージ型はソフトウェアをインストールして使用するタイプで、オンプレミス型は自社サーバーを用意しシステムを運用します。一方、クラウド型はクラウドサーバー上にシステムが存在し、ネット経由で利用可能です。自社の環境や運用コストを考慮し、どの提供形態が最適かを検討することが重要です。

必要な機能が揃っているか

WMSを選ぶ際、まず自社の業務に必要な機能が揃っているかを確認することが重要です。基本的な在庫管理や入出荷管理の他に、業界特有の要件にも対応できるかをチェックしましょう。例えば、食品業界では賞味期限の管理が必要ですし、eコマースでは多チャネル在庫の同期が求められます。また、リアルタイムでの在庫状況の可視化やデータ分析機能も、意思決定に役立ちます。自社の課題に合ったWMSを選びましょう。

対象規模や業種・業界が自社に適しているか

WMSは提供企業によって、対応可能な規模や特化している業種・業界が異なります。たとえば、大規模な倉庫に対応したものから、中小規模の事業に特化したものまでさまざまです。また、業界によって必要な機能も異なるため、自社の業種や業界、規模に合ったWMSを選択することが重要です。導入効果を最大限に引き出すためにも、適切な選定が鍵となります。

自社の課題を改善できるか

課題を改善できるか、も選ぶポイントです。システムを導入する際は課題を明確にし、それを解決できるシステムを選ぶことが重要になります。そのため、自社の課題を解決し、改善できるシステムかの見極めが必要になります。

情報セキュリティ対策は万全か

WMSを導入する際は、情報セキュリティ対策が万全か確認する必要があります。

検討しているシステムの信頼性をチェックし、アクセス権限管理が可能なもの、パスワード間違いによるIDロックなどが搭載されたものを選ぶと良いでしょう。

サポート体制は手厚いか

初めてWMSを導入する場合、導入後のサポート体制が充実している企業を選ぶことが重要です。システムトラブルが起きた際にエンジニアへ迅速に相談できるか、また、倉庫管理に関するコンサルティングや具体的なアドバイスを提供してもらえるかも確認するポイントです。サポートが手厚いことで、スムーズな運用が可能になり、トラブル発生時も迅速な対応が期待できます。

外部システムと連携できるか

WMSの効果を最大化するためには、ほかのシステムとの連携が不可欠です。

基幹システムや販売管理システム、会計システム、バース予約システムなどとのデータ連携がスムーズに行えると、シームレスな連携によってデータの一貫性を保て、業務プロセスを効率化できます。また、APIの提供やカスタマイズの柔軟性も、システム連携の観点から重要な要素です。外部システムと連携できるかどうか、連携方法はどんなタイプか(APIなど)を確認することが重要です。

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使いやすいか

WMSのユーザーインターフェースの使いやすさは、日々の業務効率に大きく影響します。直感的で理解しやすいデザイン、簡単な操作性(目的までに必要なステップ数の少ないもの)、必要な情報へのアクセスの容易さなどが重要です。

【業種別】WMSの導入事例

ここでは、業種別のWMS活用方法を解説します。

製造業の事例

WMSを導入することで、部品や原材料の在庫管理が効率化され、生産計画に基づいて必要な材料を確実に供給できます。これにより、生産ラインの停止を防ぎ、安定した稼働が可能になります。

小売業の事例

WMSを導入することで、小売業では在庫管理や受発注、出荷業務が効率化されます。店舗やECサイトの在庫をリアルタイムで把握し、迅速かつ正確な受注処理と出荷が可能になります。

物流業の事例

WMSは物流業での輸送プロセス効率化に貢献します。倉庫内の商品配置を最適化し、ピッキングや梱包作業を効率化することで、迅速な出荷と物流コストの削減が実現します。

今後のWMSに求められること

今後のWMSには、物流業界の変化に柔軟に対応し、業務が属人化しないシステムが求められます。具体的には、ロボットやAIなどのデジタル技術を活用し、作業の自動化や効率化を進めることが必要です。これにより、従来の手作業に頼らず、安定した業務遂行が可能になります。また、需要の変動や外部環境の変化にも柔軟に対応できるシステム設計が、これからの物流業務において重要な役割を果たすでしょう。

WMSの導入費用

WMSの導入費用は、提供形態によって異なります。クラウド型は月額利用料を支払う形で導入コストが抑えられますが、継続的な支払いが発生します。パッケージ型は一括払いと定期的な更新料が必要です。オンプレミス型は自社サーバーを用いるため、高額な一括払いが発生しますが、長期的にはコストメリットが得られる場合もあります。

まとめ

WMSは倉庫で行うマネジメント業務を効率化できます。すでにさまざまな業種で導入されており、成果も出ています。具体的には、入出庫に伴う在庫の変動やローテーション管理、納品書の作成などを行うことができ、人件費の削減や全体のコスト削減にもつながります。WMSを導入する際はいくつかポイントがありますので、本記事の内容を参考にしてください。

また、WMSに関連して、下記の記事もぜひ参考にしてください。

物流システムエンジニアリング「株式会社APT」のWMS(倉庫管理システム)はこちら

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

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