公開日 2024.10.23
更新日 2025.02.05

「CLO実態調査リポート2024」から読み解く、荷主企業の課題と対策

日本の物流は深刻な岐路に立たされています。人手不足や環境負荷の増大など、山積する社会課題の解決は急務です。これらに効果的に対処するには、企業が物流を重要な経営課題として捉え直す「物流の経営アジェンダ化」が不可欠です。

2024年5月、改正物流関連2法が公布され、特定企業に「物流統括管理者」の選任が義務付けられました。この改正では、「物流の持続的成長」を目指し、具体的なKPIも設定されています。例えば、荷持ち・荷役時間を年間で1人当たり125時間削減することや、積載率向上により輸送能力を16%増加させることなどが挙げられます。

この法改正の狙いは「持続可能な社会と企業価値の向上」の実現です。物流統括管理者には、物流領域の部門最適、個社の最適、社会最適の推進が求められます。これは従来の物流部長の役割を大きく超え、CLO(Chief Logistics Officer)が担うべき役割と考えられます。一方で、全てのミッションをCLO一人が担うとかなりの業務量になるため、CLOと物流統括管理者をそれぞれ置き、役割分担をする企業も出てくると予想しています。

Hacobuでは、物流統括管理者選任義務化の対象となる一定規模以上の荷主企業を対象に、物流効率化およびCLO設置に向けた取り組みの実態や課題を把握するアンケートを実施しました。その結果を基に、日本企業における物流の経営アジェンダ化を推進し、CLOや物流リーダーたちの具体的なアクションにつながるヒントを提供するリポートを作成しました。

本記事では、「CLO実態調査リポート2024」の調査結果から、荷主企業が今後取り組むべき課題と対策についてご紹介します。

CLOに求められる5つのスキルと、実践すべき5つのアクションプラン

物流関係者…

2025.01.06

目次

本調査について

本調査は、2024年7月31日〜8月15日の期間で、従業員数1000名以上規模の荷主企業(物流子会社を含む)の方に対して、Hacobuのニュースレター登録者を中心に告知し、146名の方に回答いただきました。

一部をご紹介すると、旭化成、オムロン、クボタ、コカ・コーラ ボトラーズジャパン、サントリー、シオノギファーマ、敷島製パン、J-オイルミルズ、JFEエンジニアリング、昭和産業、大和ハウス工業、デンソー、東芝、TOTO、日産自動車、日水物流、日本触媒、日本トイザらス、日本製紙、パナソニック、日野自動車、ファミリーマート、フジッコ、本田技研工業、三井物産スチール、Mizkan、三菱食品、三菱倉庫、三菱重工業、森永乳業、ヤンマー、吉野家ホールディングス、LIXIL、ローソン など多くの企業に回答いただいています。(敬称略)

調査概要:

調査タイトル:「物流効率化」及び「CLO設置」に関するアンケート
調査期間:2024年7月31日〜8月15日
調査方法:インターネット調査
調査対象:従業員数1000名以上規模の荷主企業(物流子会社を含む)の方に対して、Hacobuのニュースレター登録者を中心に告知
有効回答数:146名

物流関連2法について、約4割が内容を把握していない

Q.「物流関連2法」(物流総合効率化法・貨物自動車運送事業法)について知っていますか?

2024年5月、改正物流関連2法が公布され、一定規模以上の荷主企業に「物流統括管理者」の選任が義務付けられました。 これにより、経営としての物流リーダーであるCLOの重要性が急速に高まっています。 CLOは経営にコミットしながら、中長期計画の策定をはじめ、物流効率化に向けたKPI達成が求められるため、その役割は非常に重要です。

最も対応が進んでいるのは「荷待ち・荷役時間の把握(68.5%)」「CLOの設置」を7割超が実施・検討している

Q.「物流関連2法」に伴う物流効率化の取り組みについて、貴社の対応状況をお答えください。

物流関連2法の改正により、一定規模以上の荷主企業に求められる物流効率化について、各社の対応状況を聞いたところ、企業で対応の有無が分かれる結果となりました。全項目のうち、対応済み・推進中と答えた人が最も多かったのは、「荷待ち・荷役時間の把握(68.5.%)」でした。「CLOの設置」については、対応済みと答えた人は2割弱でしたが、推進中・検討中を合わせると7割超となりました。

4人に1人が「費用対効果を得にくい(26.0%)」と回答

Q.物流効率化を進める上で、最も大きな課題は何だと思いますか?

物流効率化を進める上での課題として、最多となったのは、「費用対効果を得にくい(26.0%)」でした。次いで、「取引先からの理解が得られない(13.0%)」、「ノウハウを持った人材がいない(11.0%)」が選ばれました。

「トラック予約受付システム等の導入(43.2%)」が最多

Q.荷待ち時間、荷役時間の削減に向けて取り組んでいることを教えてください。(複数選択可)

荷待ち時間・荷役時間の削減に向けて取り組んでいることとして、第1位は「トラック予約受付システム等の導入(43.2%)」でした。続いて、「荷主と運送事業者間の協力体制の構築(41.8%)」、「パレット等を活用した荷役時間の削減(40.4%)」、「倉庫内作業と輸配送の連携強化(40.4%)」などについても、4割を超える企業が取り組んでいることがわかりました。

5割超が「荷主と運送事業者の連携による積載効率の向上」に取り組んでいる

Q.積載効率向上に向けて取り組んでいることを教えてください。(複数選択可)

積載効率向上に向けた取り組みとして、「荷主と運送事業者の連携による積載効率向上」に取り組んでいる企業は50.7%となりました。物流効率化において、単独の取り組み以上に、企業間での連携強化が積載効率の向上の鍵となると言えそうです。

物流効率化の推進に期待する効果、過半数が「業務効率の向上(60.3%)」と「コスト削減(51.4%)」

Q.物流効率化の推進により、どのような効果を最も期待していますか?(3つまで選択可)

物流効率化の推進に期待する効果として、過半数が「業務効率の向上(60.3%)」と「コスト削減(51.4%)」と回答しました。CLOに期待される役割でもある、「個社の枠を超えた社会最適の実現」や、「既存の商習慣の破壊、転換」も選ばれました。

8割超がCLOの名前を聞いたことがあり、過半数が役割を理解をしている

Q.CLO(Chief Logistics Officer)について知っていますか?

以前はCLOという言葉はほとんど浸透していませんでしたが、本調査では、過半数が認知しているという結果となり、CLOの認知が広がっていることがわかりました。

社内の物流部門からの登用が全体で1位

部門別に見ると、現場は外部から起用してほしいとの声も高いです。

Q.CLOにふさわしい人材はどのような方だと考えますか?

CLOの登用について、社内の物流部門からCLOを登用するケースが全体の中で最も多い結果となりました。特に本社からの回答では43.5%と高い数値となりました。CLOに対して物流に関する深い理解と専門知識が求められることから、物流部門からの専門的なリーダーシップを期待していることが見て取れます。一方で、現場では「社外からの起用(21.3%)」の回答が、本社より多くありました。社内だけでは解決しにくい課題に対して、外部の新しいアイデアや知見が効果的と考えられていると推測できます。

第1位は「長期ビジョンおよび計画の策定(43.8%)」、次いで「社内の営業・調達など他部門との連携・調整・支援(42.5%)」

Q.CLOが直面する最も大きな課題は何だと思いますか(3つまで選択可)

物流関連2法で義務化される「長期ビジョンおよび計画の策定(43.8%)」が第1位となりました。前述の「物流関連2法」に伴う物流効率化の取り組みの結果では、中長期計画の策定が対応済みの企業は2割に満たないことがわかっており、CLOが取り組むべき重要課題であることは明白です。その他にもCLOが果たすべき役割として、人材育成や他部門との連携など、具体のアクションプランを検討する必要があると言えそうです。

CLO設置への期待、「部門を超えた物流最適化の実現」を最も重要視

Q.CLO設置により、特に、どのような効果を期待しますか?(複数選択可)

CLOの設置により期待する効果として、「部門を超えた物流最適の実現(50.0%)」が最多となりました。物流は部門を跨いで全社横断で取り組むべき課題であるため、CLOには部門間の調整や連携が求められます。また、「新たな価値を創出する攻めの物流投資(26.7%)」を挙げる企業も多く、CLOのリーダーシップのもとで、攻めの物流戦略が重視されていることがわかります。

物流関連投資について過半数が予算が増加すると回答

Q.今後3年間で、貴社の物流関連投資はどのように変化しそうですか。

「大幅に増加する」(12.3%)と「やや増加する」(47.9%)を合わせると、過半数(60.2%)が今後3年間で物流関連投資が増加すると考えていることがわかりました。 物流の重要性が企業内でますます認識され、今後の投資が増加していくことを示しています。

調査結果に見る、荷主企業のネクストアクション

「CLO」の設置は、物流の専門家にとって長年の悲願

「CLO」の設置は、物流の専門家や知見を有する方々にとって長年の悲願でした。本調査を通じて、物流の大変革期を改めて実感しています。わずか2年前には、「CLO」という言葉はこれほど浸透していませんでした。ここ1年で物流を取り巻く環境は大きく変化しました。だからこそ、この変革の波に乗り、物流変革に向けた具体的な一歩を踏み出すことが今、必要不可欠であると考えます。

CLOの認知および設置が加速

CLOの認知が大きく広がったことに加えて、CLO設置済みの企業は19.2%、設置検討および推進中を含めると7割を超えています。これは、物流の「経営アジェンダ化」が浸透している結果ともいえます。

CLOが直面する障壁は「長期ビジョンおよび計画の策定」と、それを推進する「人材の育成、確保」

障壁として最も多く挙げられたのは、長期ビジョンの策定(43.8%)でした。

物流関連2法の改正で、長期のビジョンの策定が求められていますが、中長期計画やKPIを検討するためには、現状の把握とデータによる可視化が不可欠です。物流効率化に向けた取り組みとして、荷待ち・荷役時間の可視化が進んでいるのは、先行企業が長期ビジョン策定に向けて、先ずは可視化に取り組んでいることが想定されます。

物流の最適化に向けて、「人材の育成・確保」は重要な課題です。長期ビジョンを描き、社内外を巻き込んで牽引していくリーダーは不可欠であり、リーダーの存在なしには物流効率化の実現は困難といえます。物流効率化を進める上での最も大きな課題として、費用対効果が得にくい(26.0%)が最多でした。その他にも、ノウハウをもった人材がいない、牽引できるリーダーがいないという回答も多く見られ、「人材」が物流効率化の障壁となっていることがわかります。 「CLOにふさわしい人材」の回答を部門別に見ると、社内の物流部門に続き、外部からの登用を望む声が一定数高い状況も、この「人材」の障壁が影響していると考えられます。

ファーストステップは、データによる可視化から

物流リーダーが、中長期のビジョンを策定し、社内外を巻き込んで改革を推進するためには、現状を把握する必要があります。つまり、データによる可視化が物流DX推進の第一歩となります。

日本の企業においては、物流システムの導入が遅れから、物流情報のデータ化がなかなか進んでいませんでした。しかし、近年では「物流の2024年問題」の解決に向けて、物流システムの導入やIT活用に取り組む企業も増えており、物流の効率化やコスト削減に成功しています。

物流DXの推進によって、物流情報が集積されれば、データを活用して課題に対する新たな打ち手を検討することができます。

Hacobuが提供する以下のサービスも「物流の2024年問題」対策として活用されています。

トラック予約受付サービス MOVO Berth

物流拠点の荷待ち・荷役時間の削減や物流現場の生産性向上を実現するシェアNo.1(※1)のバース予約受付システムです。

\MOVO Berthの詳細はこちらから/

動態管理サービス MOVO Fleet

協力会社も含めた車両の一元管理を実現、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。

\MOVO Fleetの詳細はこちらから/

配車受発注・管理サービス MOVO Vista

電話・FAXベースの配車手配やアナログな配車組みをデジタル化し、業務効率化やデータ活用による物流コスト削減を実現します。

\MOVO Vistaの詳細はこちらから/

物流課題を明らかにし、対策を検討する

物流DXが推進され、物流が経営課題として捉えられるようになったことは、企業また社会にとってポジティブな影響を与えていくものと考えています。一方で、物流DXを推進したいが、何から始めていいかわからないという物流担当者様も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

Hacobuでは、個社における物流課題を明らかにし、物流の最適化に向けてご支援するサービスを提供しています。

物流DXの戦略から実行までの知見を持つプロフェッショナル集団 Hacobu Strategy

Hacobu Strategyは、皆さまの改革チームの主体性を尊重し、稼働工数を減らすことで費用を抑えながら支援するコンサルティング集団です。皆さまのあらゆる物流のお悩みをまずは受け止め、戦略・戦術の両面から最適解を共に探します。

\Hacobu Strategyの詳細はこちらから/

CLOと物流リーダーが実践すべきアクションプラン

従来、物流はコストセンターとして扱われることが一般的であり、経営の中枢で議論される機会は少ないものでした。しかし、2024年の法改正により、発荷主や着荷主に対する責任が強化され、物流が経営アジェンダの一つとして議論されるようになりました。

この変革は単なる規制強化にとどまらず、物流を戦略的に捉えるべき重要なターニングポイントです。これからの物流は、企業全体の経営戦略と密接に関連し、単なるコスト削減の対象から、企業の競争力を向上させるための戦略的投資分野へとシフトすることが求められます。

企業が直面している「物流の2024年問題」の核心には、労働力不足や物流DXの遅れがあります。これらの課題への迅速な対応に加えて、中長期的な戦略の策定と実行を担うCLO(ChiefLogistics Officer)や物流リーダーの果たすべき責任と役割は、非常に大きいと言えます。

以下のリポートでは、物流を強化し、企業競争力を高めるために取り組んでいただきたい5つのアクションプランを紹介しています。

**※**1. 出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2023年度版】』https://mic-r.co.jp/mr/02960/ バース管理システム市場の売上高および拠点数におけるシェア

リポートは以下からダウンロードいただけます。

調査を終えて

ここで紹介した内容が、物流に関わる全ての企業の皆様にとって、物流改革を考える上での一助となることを願っています。物流の課題を解決するためには、様々なプレイヤーの皆様との連携や共創が必要不可欠です。最難関ともいわれる物流課題の解決へ挑むべく、ぜひ皆様の課題、アイデア、ご意見をお寄せください。本リポートが物流の未来を共に考え、共に創る、一つのきっかけとなれば幸いです。

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