更新日 2026.10.05

物流改革におけるチェンジマネジメント|経営の意思決定と現場の納得を、2つの事例から考える

物流改革におけるチェンジマネジメント|経営の意思決定と現場の納得を、2つの事例から考える

改正物流効率化法への対応が進み、特定荷主による中長期計画の提出期限が10月末に迫っています。物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の策定を進めるなかで、物流改革が本格化している企業も多いのではないでしょうか。

一方で、社内の意思決定や現場の理解など、実行に移す段階ではさまざまな課題が生じ、改革が思うように前に進まないこともあります。

物流改革を前に進めるには、何を変えるかを考えるだけでなく、人や組織が変化を受け入れ、実際に動ける状態をつくることも必要です。こうした人や組織の変化を促し、改革の実現につなげるためのマネジメント手法を、チェンジマネジメントと呼びます。

本記事では、改革を進めるなかで生じる課題を捉える視点として、チェンジマネジメントの考え方を理論と事例から整理します。理論としては、ADKARモデルと組織行動論を軸に、人や組織が変化を受け入れる過程と、変革への抵抗が生じる要因や対応の方向性を捉えます。そのうえで、物流DXコンサルティング Hacobu Strategyが実際に支援した2つの事例を通じて、改革を前に進めるための働きかけを考えます。

取り上げる事例や既存の理論を踏まえ、Hacobu Strategyが物流改革を進めるうえで重視しているポイントを、次の5つに整理しました。

【Hacobu Strategyのアプローチ】

  1. 現場の「認知」を阻む背景まで捉える
  2. 機能や効率だけでなく、現場が納得して使えるかで手段を選ぶ
  3. 「認知」だけで終わらせず、経営が意思決定できる状態をつくる
  4. 小さな成果を早期につくり、次の取り組みにつなげる
  5. 実現までやりきる体制を構築する

チェンジマネジメントとは

チェンジマネジメント分野の専門機関である米Prosci(プロサイ)社は、チェンジマネジメントを次のように定義しています。

目指す成果を達成するために、変化における人の側面を導く、体系的なプロセスと一連のツールの適用

Prosci「Definition of Change Management」(公式サイト、2026年8月19日確認)。日本語は本記事による訳。

チェンジマネジメントは、新しい戦略や業務プロセス、システム、体制などの変化を組織のなかで実現していくために、人や組織に働きかける考え方・方法論です。

改革の内容そのものに加えて、人と組織の側面も、変革の成否にかかわる要素です。新しい仕組みや取り組みも、それを進める関係者の理解や納得が得られなければ、思うように進みません。

物流改革において、こうした人の意思や判断が大きくかかわるのが、改革の方向性を決める領域と、それを現場に落とし込み、関係者と調整しながら実行する領域です。

AI時代には、経営判断や日々の意思決定にかかわる上流部分と、実際の現場での実行にかかわる下流部分の重要性が増しており、こうした構造は「知的スマイルカーブ」として示されています。

出典:冨山和彦『日本経済AI成長戦略』(松尾豊監修、文藝春秋、2026年)「知的スマイルカーブ現象」を基に作成

本記事で取り上げる2つの事例も、ひとつは現場での実行、もうひとつは経営の意思決定にかかわるものです。ここからは、ADKARモデルで「変革がどの段階で進みにくくなっているのか」、組織行動論で「その背景にどのような要因があるのか」という視点を中心に、人や組織の変化を見ていきます。

ADKARモデル|人や組織が変化を受け入れる過程

ADKARモデルとは、Prosci社の創業者ジェフ・ハイアットが開発したフレームワークです。個人が変化を受け入れる過程を、認知(Awareness)→意欲(Desire)→知識(Knowledge)→実践(Ability)→定着(Reinforcement)の5段階で捉えます。

図A:ADKARの5段階

出典:Prosci/ハイアット(2006)ADKARモデルを基に作成

ここでいう「認知」は、なぜ変革が必要なのかを理解している状態、「意欲」は、その変革に自ら取り組もうとする状態を指します。今回取り上げる2つの事例では、特にこの入り口となる2つの段階にかかわる課題が見られました。

変化をどのように受け止めていくのか

人は変化に直面したとき、すぐに新しい状態を受け入れられるとは限りません。そうした変化に対する人の反応や受け止め方の移り変わりを表したものを、チェンジカーブといいます。ADKARが、個人が変革を受け入れ、行動に移していくために必要な要素を段階で捉えるのに対し、チェンジカーブは、変化に直面した人がそれをどのように受け止めていくかを捉えます。精神科医キューブラー=ロスが示した「悲しみを受け入れるプロセス」を基に発展してきました。

チェンジカーブでは、変化に直面した人が、否定や怒り、抵抗、落ち込みなどを経ながら、次第に変化を受け入れ、試みや発見を重ねて、新しい状態へ適応していく過程が示されています。ただし、すべての人が同じ段階を同じ順序でたどるわけではなく、変化の大きさや種類、個人によって、通る段階や適応の速さは異なります。

図B:変化の受け止め方を捉えるチェンジカーブ

※図は、変化を受け止めていく過程を概念的に示したものです。すべての人が同じ段階を同じ順序でたどるものではありません。変化の大きさや種類、個人によって、通る段階や適応の速さは異なります。

物流改革でも、同じ取り組みに対して、すぐに必要性を理解して動き始める人もいれば、不安や抵抗を感じる人もいます。そのため、関係者が変化をどのように受け止めているのかを捉え、それぞれの状況に応じて働きかけることが重要です。

出典:日本チェンジマネジメント協会「チェンジカーブとは?変化を受け入れる過程を知るチェンジマネジメントフレームワーク」(2026年9月10日確認)

組織行動論|変革への抵抗とその要因

人や組織が変化を受け入れる過程では、変革への抵抗が生じることもあります。ADKARモデルが「どの段階で進みにくくなっているのか」を捉えるのに対し、ここでは「なぜ進みにくくなっているのか」に目を向けます。S.P.ロビンスは『組織行動のマネジメント』において、変化への抵抗の要因を「個人的抵抗」と「組織的抵抗」の2つの層に分けて整理しています(図C)。

図C:変化への抵抗の要因

出典:S.P.ロビンス『【新版】組織行動のマネジメント』(髙木晴夫訳、ダイヤモンド社、2009年)第16章の分類を基に作成

ここで押さえておきたいのは、変革への抵抗には、個人に起因するものと、組織に起因するものがあるという点です。同じように改革が進みにくく見えても、その背景にある要因によって、必要な働きかけは異なります。

変化への抵抗にどう対応するか

ロビンスは、変化への抵抗を克服する方法を5つあげています(図D)。ここで押さえておきたいのは、5つの方法そのものではなく、抵抗の要因や置かれている状況によって、必要な働きかけが異なるという点です。

図D:変化への抵抗への対応方法

出典:S.P.ロビンス『【新版】組織行動のマネジメント』(髙木晴夫訳、ダイヤモンド社、2009年)第16章の5つの方法を基に作成

誰が変革を進めるのか

変革を進めるためには、その活動をリードする人材が必要です。ロビンスは、変革活動のマネジメントに責任を持つ人を「変革のエージェント」と呼んでいます。変革のエージェントは、組織内のマネジャーや従業員が担う場合もあれば、外部のコンサルタントが担う場合もあります。

物流改革では、経営、物流部門、現場、物流会社など、立場の異なる関係者がかかわります。改革を前に進めるためには、施策を考えるだけでなく、関係者が改革をどのように受け止めているのか、その背景にどのような課題があるのかを捉え、必要な働きかけを行いながら実行につなげていくことも重要です。

以下では、Hacobu Strategyが実際に支援した2つの事例を、ADKARモデルで「どの段階で進みにくくなっていたのか」、組織行動論で「その背景にどのような要因があったのか」という2つの視点から見ていきます。事例①は主に現場の「認知」、事例②は経営の「認知」から「意欲」にかけての課題にかかわる事例です。

詳しくは以下より概要資料をダウンロードしてご覧ください。

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事例①【下流】:荷待ち・荷役時間取得の基盤構築と現場の納得

現場で見えた課題

あるメーカーの大規模工場で、法令対応の観点から荷待ち・荷役時間を可視化するため、物流動態管理システムを導入するプロジェクトです。必要なデータを取得しながら、委託先物流会社のトラックドライバーの理解や納得を得て、仕組みを現場で運用していくことが課題となりました。ADKARモデルに照らすと、現場の「認知」にかかわる課題です。一方、組織行動論の視点では、表面に現れた反応だけでなく、その背景にある抵抗の要因を捉える必要がありました。

なぜ動態管理システムだったのか

この荷主の拠点では、荷役場所が複数カ所に点在しており、ドライバーが各所を回りながら積み込みを行っていました。

荷待ち・荷役時間の取得には、バース予約・受付システムを活用するのが一般的です。この拠点の場合、荷役場所ごとに受付の仕組み(タブレット端末など)を設置し、ドライバーがその都度操作することになります。そのため、現場の操作負担が大きく、継続的に必要なデータを取得できるかという運用上の課題がありました。

そこで提案したのが、動態管理システムによる運用です。車両の位置情報から荷待ち・荷役時間を自動で取得できるため、ドライバーに新たな操作をほとんど求めずに済みます。

図E:データ取得手段の選択と現場への影響(事例①)

認識の共有と、運用環境の整備

動態管理を選ぶことでドライバーの操作負担を抑えられた一方で、運行実態が荷主に可視化されることから、「監視されるのでは」という声が上がりました。確認した結果、その背景には、システムの目的やデータの利用方法が十分に共有されていなかったことがありました。

こうした反応があるなかで、まずは比較的好意的に受け入れてくださった一部の物流会社の数台の車両に動態管理システムを試験的に導入しました。その結果、ドライバーに新たな操作負担をほとんどかけることなく、荷待ち・荷役時間を精緻に把握できることを確認しました。

そこでドライバーに、次の3点を説明しました。

説明の意図内容
導入目的についての認識を共有する個別の運行ごとにドライバーの行動を監視することを意図したものではないこと
導入の必要性そのものを説明する荷主として、荷待ち・荷役時間を把握する必要があること
ドライバー自身にとっての意義を示す追加の操作負担なくデータを取得でき、ドライバーの労働環境の改善につながる可能性があること

また、「監視されるのでは」という声を踏まえ、データの利用方法の説明を計画に加え、決定を一方的に通知するのではなく、目的・背景・データの利用方法を共有しながら導入を進めました。

結果として、システムの導入についてドライバーの理解を得ることができました。運用に必要な環境を構築し、データを取得する範囲を漏れなく設定して、荷主側で集計できる状態を整えました。現在は、運用の定着に向けた支援を行っています。

この事例を通じて感じたのは、物流改革は荷主だけでは進められないということです。輸配送をはじめ、物流の実務を外部の物流会社に委託している荷主企業にとって、改革を実行するには物流会社やドライバーにも動いてもらう必要があります。

物流を取り巻く環境が変わるなかで、荷主と物流会社の関係性も変化しています。だからこそ、なぜ取り組む必要があるのか、相手にとってどのようなメリットがあるのかを伝え、対話を重ねながら、納得感を持って取り組んでもらうことが重要です。

事例②【上流】:物流会社との役割分担の見直しと経営の意思決定

意思決定で見えた課題

長年3PL(物流会社)に物流機能を委託してきた荷主企業が、戦略企画・設計と管理を自ら担う体制へ見直す取り組みです。経営の意思決定に加えて、日々の物流運営にかかわる意思決定も自社で行うことになります。この事例では、ADKARモデルでいう「認知」から「意欲」にかけての課題が見られました。一方、組織行動論の視点では、長年続いてきた委託体制を見直すことへの組織としての懸念やリスクが、その背景にありました。

この荷主は、過去からの経緯で物流会社と密接な関係にあり、物流機能の3つの領域のすべてを委ねている状態でした。

【物流機能3領域】

  • 戦略企画・設計:物流構想・戦略の策定、KGI・KPI設計、物流ネットワーク設計
  • 管理:KGI・KPI管理、輸送状況管理、在庫管理、コスト管理
  • オペレーション:輸配送、庫内作業、システム入力

その結果、荷主側から物流業務の実態を把握しにくい状態にあり、自社に知見が十分に蓄積できず、物流会社との交渉に必要な情報が少ない状況にありました。

こうした状況や、法令対応、業界の動向、今後のリスクを踏まえ、3領域のうちオペレーション(輸配送や庫内作業)は引き続き物流会社に委託し、戦略企画・設計と管理を自社が担う体制への見直しを検討しました(図F)。

図F:委託範囲の見直し

改革を促す要因と、意思決定を阻む要因

検討にあたっては、法令対応の必要性や業界の潮流、現在の委託体制を継続することによる将来リスクなど、改革を促す要因がありました(図G)。一方で、顧客への安定供給への影響や移行失敗のリスク、体制・ノウハウの不足など、意思決定を阻む要因もありました。なかでも大きな懸念のひとつが、長年取引のある物流会社との関係が悪化し、必要な領域で協力を得られなくなるリスクでした。

図G:改革を促す要因と、意思決定を阻む要因

改革の必要性を共有し、意思決定できる状態をつくる

まず、経営幹部を含めてディスカッションを重ね、事実やデータを基に、会社として取り組む必要のある改革であることへの理解を深めていきました。

また、既存の物流会社との契約関係を大きく見直す施策に先行して、まずは現場で実行可能な範囲から積載率の向上に取り組みました。小さな取り組みから実際にコスト削減効果を生み出すことで、物流改革の効果を具体的に示し、全社的に改革を進める機運を高めていきました。

既存の物流会社との関係や、切り替えに伴う業務への影響もあるため、リスクを負ってでも推進すべき改革なのか、どうすればリスクを抑えられるのかを具体的に検討しました。そのなかで進めたのが、次のような対応です。

  • 物流会社に依存せず、自社管理で業務を実行できる体制の検討
  • 物流の管理に必要な情報を可視化するためのシステム活用の検討
  • 既存の物流会社との取引継続が難しくなった場合に備えた、代替物流会社の検討
  • 既存の物流会社との協力関係を維持するためのコミュニケーションの検討

こうして改革に伴うリスクとその対応策をひとつずつ整理したうえで、改めて「会社として必要な改革なのか」を議論しました。その結果、リスクを踏まえても進めるべき施策であるとの認識が固まり、経営として改革を進める意思決定にいたりました。

2つの事例を、ADKARモデルと組織行動論から整理する

今回取り上げた2つの事例は、現場と経営という異なる立場への働きかけにかかわるものです。ただし、共通していたのは、改革の方向性や実施すべきことが見えていても、それだけでは改革が前に進まなかったことです。

ADKARモデルに照らすと、事例①では主に現場の「認知」、事例②では経営の「認知」から「意欲」にかけて、改革が進みにくくなっていました。一方、組織行動論の視点から見ると、同じように改革が進みにくい状況でも、その背景にある要因は異なります。事例①では、データ取得の目的や利用方法に対する現場の受け止め方が関係しており、事例②では、長年続いてきた委託体制を見直すことへの組織としての懸念やリスクが関係していました。

ADKARの5つの段階で見ると、いずれも入り口にあたる段階であり、改革を軌道に乗せるうえでは、まずこの最初の壁を越える必要がありました。

このように、ADKARモデルで「どの段階で進みにくくなっているのか」を捉え、組織行動論から「その背景にどのような要因があるのか」を考えることで、必要な働きかけも具体化できます。2つの事例をこの観点から整理すると、次のようになります(図H)。

図H:2つの事例の整理(段階・背景・働きかけ)

ADKARモデル(Prosci/ハイアット)およびS.P.ロビンス『【新版】組織行動のマネジメント』(髙木晴夫訳、ダイヤモンド社、2009年)第16章の整理に、今回の事例を照らして作成

同じように改革が前に進んでいないように見えても、経営と現場では、その背景も、必要な働きかけも異なります。

Hacobu Strategyでは、経営と現場のどちらか一方ではなく、それぞれの状況に応じた働きかけを行うことも、物流改革の重要な仕事だと考えています。

詳しくは以下より概要資料をダウンロードしてご覧ください。

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事例と理論を踏まえた実務上の示唆(Hacobu Strategyのアプローチ)

Hacobu Strategyでは、まず改革がどの段階で進みにくくなっているのか、その背景に何があるのかを見極めます。そのうえで、状況に応じて必要な働きかけを考え、実行につなげていくことを重視しています。こうして関係者に働きかけながら改革を前に進めていく役割は、先に触れた「変革のエージェント」の考え方とも重なります。

今回取り上げた2つの事例では、いずれも改革の初期段階に課題が見られました。ここまでの整理を踏まえ、改革を前に進めるための実務上のポイントを5つあげます。なお、5つは順に実施する手順ではなく、改革の状況に応じて必要な働きかけを考えるための視点です。

1. 現場の「認知」を阻む背景まで捉える

改革を実行するには、実際に動く現場の納得が重要です。ただし、現場から出てきた言葉をそのまま受け取るだけでは、必要な対応が見えないこともあります。

事例①では、ドライバーから「監視されるのではないか」という声が上がりました。その背景を確認すると、システムの目的やデータの利用方法が十分に共有されていないことが分かりました。ADKARモデルに照らすと、これは変革の必要性や目的を理解する「認知」にかかわる課題として整理できます。

現場との対話を通じて、表に出ている反応だけでなく、その背景にある認識や受け止め方まで捉えることで、必要な説明や対応も見えてきます。

2. 機能や効率だけでなく、現場が納得して使えるかで手段を選ぶ

事例①では、荷待ち・荷役時間を取得する方法として、一般的なバース予約・受付システムではなく、動態管理システムを選択しました。背景には、荷役場所が複数に点在する現場で、ドライバーに都度操作を求めることによる負担がありました。

システムや施策を選ぶ際には、実際に使う人にどのような負担が生じるのか、目的を理解し、納得して使えるのかまで考える必要があります。

3. 「認知」だけで終わらせず、経営が意思決定できる状態をつくる

改革の必要性について認識が共有されても、それだけで意思決定できるとは限りません。ADKARモデルに照らせば、「認知」から、実際に変革へ踏み出す「意欲」につなげていく段階です。特に物流改革では、安定供給への影響や既存の物流会社との関係、移行失敗など、改革に伴うリスクを完全になくすことが難しい場合もあります。

事例②では、こうした懸念やリスクを洗い出したうえで、自社で管理できる体制、情報を可視化する仕組み、代替となる物流会社、既存物流会社との関係維持など、具体的な対応策を検討しました。

リスクを消し切ることを目指すのではなく、何が起こり得るのか、その場合にどう対応するのかを整理し、経営がリスクを踏まえて判断できる状態をつくることを重視しています。

4. 小さな成果を早期につくり、次の取り組みにつなげる

改革の必要性を理解していても、それだけで実際の行動に移れるとは限りません。言葉で伝えるだけでなく、実際に試して確かめられることが、次に進む後押しになる場合もあります。

そこで、すべてを一度に変えようとするのではなく、まず実行可能な範囲から着手し、成果を確認できる状態をつくります。

事例①では、一部の車両から動態管理システムを試験的に導入し、ドライバーに新たな操作負担をほとんどかけずに、必要なデータを取得できることを確認しました。事例②でも、大きな体制変更に先行して積載率の向上に取り組み、実際にコスト削減効果を生み出しました。

こうした小さな取り組みで成果を確認できれば、改革の効果を具体的に示し、次の議論につなげやすくなります。

5. 実現までやりきる体制を構築する

改革は、施策を決めただけでは実現しません。新しい体制や仕組みに移行した後も、計画どおりに進んでいるかを確認し、課題があれば対応しながら実行を続けていく必要があります。

そのためには、改革を推進する責任者を明確にし、進捗やKPIを定期的にモニタリングしながら、課題が出たときに必要な対応を判断・実行できる体制を整えます。誰が責任を持ち、どのように進捗を確認するのかまで決めておくことで、継続して実行できるようにします。

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まとめ:物流改革を前に進めるために、人と組織にどう働きかけるか

今回取り上げた2つの事例では、改革の方向性や実施すべきことが見えていても、人や組織がその必要性を認識し、変革に踏み出せる状態にならなければ、改革は前に進みませんでした。事例①では主に現場の「認知」、事例②では経営の「認知」から「意欲」にかけての働きかけが必要でした。

必要な働きかけは、課題が生じている段階やその背景によって異なります。事例①では、目的やデータの利用方法を共有し、現場が納得して取り組めるようにすることが出発点でした。事例②では、改革の必要性について経営として認識を合わせたうえで、意思決定を阻む懸念やリスクへの対応が必要でした。

物流改革では、方向性や施策を描いたあとも、人や組織がその必要性を認識し、意思決定や行動に移れるよう働きかける必要があります。早い段階で成果を確認しながら、継続して実行できる体制まで整えることで、施策を実現へと近づけていきます。

著者プロフィール / 清水大貴
Hacobu Strategyのシニアコンサルタント。食品メーカーで原料調達に従事した後、コンサルティングファームにて製造業を中心にサプライチェーンの業務改革・DX推進を支援し、Hacobuに参画。現在は企業の物流改革コンサルティングを担当。 >>プロフィールを見る
著者プロフィール / 伊藤浩司
Hacobu Strategyのマネージャー。ミスミで物流部門を、EYストラテジー・アンド・コンサルティングでコンサルティングを経験しHacobuに参画。Hacobu Strategyにて企業の物流戦略策定・実行支援を担当し、CLO(Chief Logistics Officer)機能の立ち上げ/推進をサポート。民間企業支援に加え、国土交通省関連の調査・提案案件にも関わる。 >>プロフィールを見る

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