改正物流効率化法(流通業務総合効率化法)・改正貨物自動車運送事業法に関する省令の要点、判断基準ついて解説

2025年1月〜2月、改正物流効率化法(流通業務総合効率化法)・改正貨物自動車運送事業法に関する省令が公布されました。(一部を除く)本記事では、各事業者が講ずるべき措置や判断基準などの要点について物流DXパートナーのHacobuが解説します。
詳細は資料としてもまとめていますので、以下よりダウンロードしてご覧ください。
目次
物流関連2法改正の要点
まず、物流関連2法改正について整理します。ドライバー不足と労働時間規制による輸送力不足への対策として、物流関連2法(物流効率化法・貨物自動車運送事業法)の改正が行われました。

物流効率化法
求めるものは「物流の効率化」であり、以下の2点を推進します。
荷主や物流事業者には上記の努力義務が求められます。特定事業者には、さらに中長期計画の作成・定期報告などが求められます。
貨物自動車運送事業法
求めるものは「下請け取引の健全化」であり、以下の2点を推進します。
- 適正な運賃支払い
- 多重下請け構造の是正
改正物流関連2法・政府の中長期計画とは?法改正のポイントや荷主・ 物流事業者が対応すべきこと、今後の変化を解説
2024年5月15日、…
2024.04.12
物流効率化法施行スケジュールと政省令
2024年5月に改正物流効率化法が公布され、同法を補足する政省令の案を2024年6月〜11月にかけて検討が行われました。そして2025年1月〜2月に、前述の努力義務に関する政省令が公布され、2025年4月の施行の準備が整いました。
一方、2026年4月以降に特定事業者に関する措置が施行されますが、こちらの措置に関する政省令は今後公布される見込みです。

物流効率化法に関する省令:基本的な方針の要点
前述のとおり2025年2月に、改正物流効率化法に基づく基本方針や、事業者がどのような行動を取っていれば努力義務を果たしていると言えるのかについての判断基準を定める省令が公布されました。
2028年度までの目標
以下の2つが行政として、2028年度までに達成する目標として掲げられました。
荷待ち・荷役時間の削減
全国のトラック輸送による5割の運行で荷待ち時間を1時間削減する
- ドライバー1人あたり、年間125時間の削減
- 1運行の荷待ち時間を全国平均2時間以内、1回の受渡しごとの荷待ち時間の目標1時間以内
積載効率の向上
全国のトラック輸送における積載効率は、5割の車両で50%、全体の車両で44%を目指す
荷待ち時間と積載効率に関する補足
荷待ち時間
以下は、物流効率化法に関する省令の該当部分を以下に紹介します。
「現状、運転者の一運行の平均拘束時間のうち、荷待ち及び荷役等にかかる時間が合計約三時間と推計されていることを踏まえ、この一運行当たりの荷待ち時間等が全国平均で合計二時間以内となるよう荷待ち時間等を削減する必要がある。また、これを踏まえ、荷主等は、一回の受渡しごとの荷待ち時間等について、原則として目標時間を一時間以内と設定しつつ、業界の特性その他の事情によりやむを得ない場合を除き、二時間を超えないよう荷待ち時間等を短縮するものとする。なお、一回の受渡しごとの荷待ち時間等が一時間以内である荷主等については、その継続及び改善に努めるものとする」

荷主や物流事業者は、1運行における1回の受渡しごとの荷待ち時間を原則「1時間以内」という目標設定をしつつ、業界の特性ややむを得ない場合を除き、2時間を超えないようにしなければなりません。
また、すでに1回の受渡しごとの荷待ち時間が1時間以内に収まっている場合でも、よりスムーズな運用に向けた継続的な改善が求められます。
積載効率の向上
積載効率は以下に分解して考えられています。
実車率 × 積載率 = 積載効率
積載効率の考え方として、空車走行を減らして「実車率」を上げ、実車時の「積載率」を上げることで、近年40%以下の水準で推移してきた積載効率を50%まで持っていきたいという意図での目標設定となっています。
以降では、具体的に各事業者が講ずるべき措置について解説します。
荷主が講ずるべき措置
- 共同輸配送、リードタイムの確保、発注量の適正化などによる積載効率の向上
- トラック予約受付システムの導入などによる荷待ち時間の削減
- パレット導入、検品の効率化などによる荷役時間の削減
- 上記を実行するための責任者の選任、効果の把握、標準的な運賃の活用、関係会社との連携
倉庫事業者が講ずるべき措置
- トラック予約受付システムの導入などによる荷待ち時間の削減
- 検品の効率化などによる荷役時間の削減
- 上記を実行するための責任者の選任、効果の把握、関係会社との連携
その他、荷待ち・荷役時間の削減や積載効率の向上のために必要なこと
- 元請け事業者は、発着荷主や下請け事業者から協力要請に応じる (元請け事業者に対する規制は貨物自動車運送事業法を参照)
- 荷主はドライバーの拘束時間を削減するために、高速道路の利用を促し、高速料金は荷主が負担する
- 悪質な荷主、元請け事業者、利用運送事業者に対するトラック・物流Gメンによる是正指導の徹底(独禁法・下請法の違反防止を含む)
- 多重下請け構造是正のための実運送体制管理簿の積極的な活用
- ドライバーに対するハラスメントの防止
それでは、各事業者はどのような取り組みを行っていくべきでしょうか。例えば以下のような取り組みが求められます。
物流効率化法に関する省令:発荷主(第一種荷主)の判断基準の要点
積載効率の向上
トラック運送事業者が積載効率の向上を行えるように、以下に取り組んでいる
- 委託から配達までのリードタイムの確保、貨物量の平準化
- システム導入による配車計画・運行経路の最適化
- 全社的な部門間連携(『開発、生産、流通、販売、調達、在庫管理その他の貨物の運送に関係する業務に係る各部門間の連携を促進』)
荷待ち・荷役時間の削減
荷待ち・荷役の把握・削減の取り組みを計画的・効率的に実施している
- トラック予約受付システムを導入し、トラックの到着時間を調整、分散
- 一貫パレチゼーション、効率的な荷姿、フォークリフトや人員の適正配置
- 着荷主、3PL、トラック運送事業者への貨物情報の事前共有
- 検査の効率化、荷役を効率的に行える環境整備
- 荷待ち・荷役の把握・削減の取り組みを3PLに提案
- 3PLから提案を受けた場合は、必要な対応を実施
物流効率化法に関する省令:着荷主(第二種荷主)の判断基準の要点
発荷主への協力
発荷主が自身の判断基準に取り組めるように、納期調整があった場合には協力している
- 納期調整のための全社的な部門間連携(開発、生産、流通、販売、調達、在庫管理その他の貨物の運送に関係する業務に係る各部門間の連携を促進)
荷待ち・荷役時間の削減
荷待ち・荷役の把握・削減の取り組みを計画的・効率的に実施している
- トラック予約受付システムを導入し、トラックの到着時間を調整、分散
- 検査の効率化
- フォークリフトや人員の適正配置
- 荷役を効率的に行える環境整備
- 荷待ち・荷役の把握・削減の取り組みを3PLに提案
- 3PLから提案を受けた場合は、必要な対応を実施
物流効率化法に関する省令:運送事業者の判断基準の要点
積載効率の向上
積載効率向上の取り組みを計画的・効率的に実施している
- 複数の荷主の貨物を積み合わせ
- 輸送業者間の共同輸配送
- システム導入による配車計画・運行経路の最適化
- 大型トラックの導入
- 必要に応じて荷主にも提案や協力を要請
- 物流データの標準化などによる関係会社との連携の円滑化
- 荷役効率化のための機器や施設へ整備
物流効率化法に関する省令:倉庫事業者の判断基準の要点
荷待ち・荷役時間の削減
荷待ち・荷役の把握・削減の取り組みを計画的・効率的に実施している
- トラック予約受付システムの導入などにより、トラックの到着時間を調整、分散
- 荷役を効率的に行える環境整備、マニュアル整備
- フォークリフトや人員の適正配置
- 荷主から一貫パレチゼーションの要請があった場合に、有償で協力
- 検査の効率化
- 物流データの標準化などによる関係会社との連携の円滑化
- 荷役効率化のための機器や施設へ整備
- 荷待ち・荷役の削減のための責任者選任と、従業員への研修
- 荷待ち・荷役の把握・削減の取り組みをトラック運送事業者へ提案
- トラック運送事業者から提案を受けた場合は、必要な対応を実施
判断基準に関する調査・公表の実施
前述の荷主などの判断基準に対し、物流事業者を対象として定期的なアンケート調査を行い、物流効率化のための取り組み状況を把握します。
社名の公表
アンケートの回答結果について、点数の高い会社・点数の低い会社ともに公表することが予定されています。(点数の低い会社を公表する際は、別途ヒアリングなどにより適切に実態を把握するものとされています)
調査・公表の実施時期
調査・公表は、まず2025年秋に第1回目が実施される予定です。以降、毎年秋に定期的に実施される見込みです。
貨物自動車運送事業法に関する省令の要点
2025年1月、貨物自動車運送事業法の施行規則等の一部を改正する省令が公布されました。
- 運送契約時、運送役務の内容やその対価(高速代や追加燃料代などを含む)などを書面に記載し、交付する必要が ある。保存期間は1年間(電磁的方法での作成や保存も可だが、事前承諾等の要件あり)
- (貨物自動車運送事業者が)年間100万トン以上の利用運送をする場合、特別一般貨物自動車運送事業者として、 翌年度の7月10日までに、運送利用管理規程を作成し、届出が必要である。また利用運送管理者を選任し、届出が 必要である。
- 利用運送管理者が事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にあることを証する書類を届出に添付する 必要がある。
- 利用運送管理者は、真荷主に物流統括管理者がいる際には連携しなければならない。
- 実運送体制管理簿の作成対象は、運送あたり重量1.5トン以上の案件の場合。
- 元請け事業者が実運送事業者の請負階層を末端まで把握している場合は、実運送体制管理簿は、運送ごとに作成することを要しない(初回取引のみの記載で可。具体的な期間や都度の運送内容の記載は不要ですが、実運送体制管理簿の保存期間が1年であるため、1年を超えたら改めて作成する必要があります)。
まとめ
本記事では、改正物流効率化法・改正貨物自動車運送事業法に関する省令の要点を解説しました。各事業者が具体的に取り組むべき措置や判断基準が明文化されました。物流の効率化や下請け取引の健全化のために、各事業者には省令で明記された取り組みが求められます。
なおHacobuは、物流効率化や下請け取引の健全化を支援するさまざまなサービスを提供しています。
トラック予約受付サービス(バース予約システム) MOVO Berth
MOVO Berth(ムーボ・バース)は、荷待ち・荷役時間の把握・削減、物流拠点の生産性向上を支援します。
動態管理サービス MOVO Fleet
MOVO Fleet(ムーボ・フリート)は、協力会社も含めて位置情報を一元管理し、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。
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MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)は、電話・FAXによるアナログな配車業務をデジタル化し、業務効率化と属人化解消を支援します。
物流DXコンサルティング Hacobu Strategy
Hacobu Strategyは、物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援します。
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