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執筆者:菅原 利康

センターフィーとは?背景や計算方法、抱えている課題、最適な設定方法などを解説

センターフィーとは、小売業者が運営する物流センターの使用料金のことです。これは物流領域における悩ましい課題の1つとなっています。本記事では、センターフィーについて、計算方法、抱える課題や対策について物流DXパートナーのHacobuが解説していきます。

なお、Hacobuでは物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援する物流DXコンサルティング「Hacobu Strategy」を提供しています。物流業務の改善にお悩みがありましたら、以下をクリックしてご覧ください。

センターフィーとは

センターフィーは、小売業者が運営する物流センターの使用料金のことを指します。具体的には、大手スーパーマーケットや量販店などの小売業者が、メーカーや卸売業者といった納入業者に対して請求する料金です。

小売業者における物流センターとは

小売業者における物流センターは、商品の集約や配送の効率化を図るための重要な物流拠点として機能しています。

物流センターが誕生した背景

物流センターが設置される以前は、納入業者が各店舗に個別に商品を配送する店舗直送納品が一般的でした。しかし、この方式では納入業者側の配送コストが膨大になるだけでなく、店舗側も多数の納入業者から個別に配送される商品の荷受け作業に多大な労力を要していました。このような非効率な状況を改善するため、物流センターが誕生しました。これにより、小売店側が物流センターを経由して各店舗に複数のメーカーの商品を一度に納品する共同配送が実現し、物流効率が大幅に向上しました。

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共同配送の利点

共同配送の導入により、小売店側は各店舗への納品が物流センターからの一括配送に集約され、従来の複数業者からの個別配送に比べて荷受け業務が大幅に効率化されました。一方、納入業者にとっても、各店舗への個別配送が不要になったことで、配送・作業負担が著しく軽減されています。さらに、この仕組みによってトラックの総運行数が削減され、環境面でもCO2排出量の削減に貢献しています。

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運営コストに対するセンターフィー

物流センターの運営は小売業者が行っていますが、運営コストを全額負担するわけではなく、その内の何割かは納入業者がセンターフィーとして支払っていることがあります。

センターフィーの内訳

センターフィーには、物流センターが提供する様々なサービスの対価が含まれています。具体的には、物流センターから各店舗への配送業務費用、店舗ごとの商品仕分けに要する店別仕分料、物流センターのシステムを利用した際の情報システム利用料金、さらには物流センターでの検品作業などの料金が含まれることがあります。

センターフィーは行政から問題視されている側面がある

公正取引委員会が実施した「大規模小売業者との取引に関する納入業者に対する実態調査報告書」によると、半数以上の納入業者が設定料率の根拠について説明を受けていないという実態が明らかになっています。

また、農林水産省の「食品製造業者・小売業者間における適正取引推進ガイドライン」では、合理的な根拠なく著しく高額なセンターフィーを徴収されるケースや、センターフィーの引き下げに同意した後で協賛金が一方的に引き上げられ、実質的な負担が変わらないといった事例を「問題となり得る事例」として指摘しています。このような行為は、下請法第4条第2項第3号が定める「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する可能性があり、法的な観点からも問題視されています。

参考:大規模小売業者との取引に関する納入業者に対する実態調査報告書|公正取引委員会

参考:食品製造業者・小売業者間における適正取引推進ガイドライン |農林水産省

センターフィーの計算方法

センターフィーの計算は、通常「商品代金(円)×設定料率(%)」という方式で行われます。この設定料率は、取り扱う商品のカテゴリによって異なることが多く、例えば常温商品と冷蔵商品では異なる料率が適用されます。また、業種や業態によっても料率が変動することがあり、各企業の物流戦略や運営方針によって決定されています。

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センターフィーの仕組みが抱える課題

本章ではセンターフィーの仕組みが抱える課題について解説します。

納入業者にとって大きな負担である

センターフィーは、多くの納入業者にとって深刻な課題となっています。特に食品スーパー、ドラッグストア、百貨店、100円ショップなどの業界では、センターフィーが納入コストの大きな部分を占め、場合によっては商品の配送コストを上回る負担となっているケースも少なくありません。

設定料率の根拠が不明瞭な場合が多い

センターフィーの設定料率は、物流センターを所有・運営する小売業者側が一方的に決定権を持っていることが多いです。しかしながら、この料率の算出根拠については、多くの場合で不明瞭な状態が続いています。

特に問題となっているのは、長年にわたって同じ料率が採用され続けているケースです。このような場合、料率を当初設定した担当者がすでに退職しているなどの理由で、社内でも設定根拠を把握している人物が不在となってしまっていることがあります。その結果、センターフィーの料率設定プロセスが完全にブラックボックス化してしまい、納入業者との適切な協議や見直しが困難な状況に陥っている場合があります。

センターフィーの交渉がしにくい

納入業者側からセンターフィーの交渉を持ちかけることは、極めて困難な状況にあります。その背景には、小売業者が強い立場にあるという力関係が大きく影響しています。取引関係の維持や販路確保の観点から、多くの納入業者は高額なセンターフィーを受け入れざるを得ない状況に置かれています。

小売業者も手放せない

センターフィーは、小売業者にとって重要な収入源であり、運営コストの補填や利益向上に寄与しています。そのため、一度確立した徴収の仕組みを手放すことは容易ではありません。

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適切なセンターフィーを設定するために

センターフィーを適切に設定するためにすべきことを解説します。

協議をして料率を決める

センターフィーの料率設定は、小売業者からの一方的な提示ではなく、納入業者との協議を通じて決定されるべきです。その際、料率の算定方法や算出根拠を明確に示すことが重要です。また、定期的な料率の見直しも必要であり、人力での算出が困難な場合はAIの活用が有効です。AIを活用することで、現在の取引状況に応じた最適なセンターフィーの算出が可能かもしれません。

契約書を作成し、交わす

センターフィーに関する協議で合意した内容は、必ず書面化する必要があります。具体的には、協議によって決定した条件を明確に記載した契約書を作成し、小売業者と納入業者の双方が合意の上で契約を締結することが重要です。これにより、取引の透明性と公平性を確保することができます。

データに基づいた説明

適切なセンターフィーを設定するには、物流センターでの作業内容と時間を正確に把握することが重要です。例えば、商品の入出荷、検品、仕分けなど各工程で発生する作業時間を精緻にデータとして取得し、分析することで、具体的なコストを明らかにできます。このデータをもとに納入業者に対して合理的かつ透明性のある説明を行うことで、センターフィーの妥当性を確保し、納入業者との信頼関係を構築することが可能になります。

例えば、トラック予約受付サービスのMOVO Berth(ムーボ・バース)を活用することで、物流センターにおける納入業者の荷待ち・荷役時間を把握できます。荷姿や車格別に荷待ち・荷役時間を分析できるため、効率的な荷役に貢献している納入業者とは、センターフィーの緩和を行うなど合理的な議論ができます。

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Chief Logistics Officerへの期待

料率の根拠が不明瞭であっても、慣習的になかなか議論が進まないセンターフィーですが、日本企業でも誕生し始めているCLO(Chief Logistics Officer)という存在が変革を起こすかもしれません。

なぜならCLOの最大の役割は、企業内のサプライチェーンのみならず社会全体の最適化を図り、従来の商慣習を破壊・転換することにあると考えるからです。センターフィーは、その一部ではないでしょうか。

今後は、納入業者側のCLOと小売業者側のCLOがトップレベルで議論を重ねることで、慣習を打ち破り、物流を取り巻くさまざまな課題の解決に向けて連携していくことが求められます。

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まとめ

ここまで述べてきたとおり、センターフィーは、物流の効率化を目的として導入された仕組みですが、現在では納入業者にとって大きな課題となっています。解決に向けては、小売業者と納入業者が対等な立場で協議を行い、明確な根拠に基づいた料率設定と適切な契約締結を行うことが不可欠です。このような取り組みを通じて、双方にとって持続可能な物流体制を構築していく必要があります。

なお、Hacobuでは「運ぶを最適化する」をミッションとして掲げ、物流DXツールMOVO(ムーボ)と、物流DXコンサルティングサービスHacobu Strategy(ハコブ・ストラテジー)を提供しています。

物流現場の課題を解決する物流DXツール「MOVO」の各サービス資料では、導入効果や費用について詳しくご紹介しています。

トラック予約受付サービス(バース予約システム) MOVO Berth

MOVO Berth(ムーボ・バース)は、荷待ち・荷役時間の把握・削減、物流拠点の生産性向上を支援します。

動態管理サービス MOVO Fleet

MOVO Fleet(ムーボ・フリート)は、協力会社も含めて位置情報を一元管理し、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。

配車受発注・管理サービス MOVO Vista

MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)は、電話・FAXによるアナログな配車業務をデジタル化し、業務効率化と属人化解消を支援します。

著者プロフィール / 菅原 利康

株式会社Hacobuのマーケティング担当

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