物流コストの削減方法18選と上昇原因について【荷主 物流担当者向け】
近年、物流コストは上昇傾向が続いています。燃料価格の高止まりや2024年問題を背景とした人件費の増加、さらにはサプライチェーンの複雑化や顧客ニーズの多様化など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。これらの要因により、従来の手法ではコストを抑えきれない状況が生まれています。
本記事では、物流コストの基本構造を整理しつつ、最新の上昇要因を踏まえたうえで、実務で活かせる18の具体的な削減方法について、物流DXパートナーのHacobuが解説します。単なるコストカットではなく、サービス品質を維持しながら効率化を実現する「戦略的なコスト最適化」のヒントをお届けします。
なお、物流コストの削減にお悩みなら、物流DXコンサルティングのHacobu Strategyがご支援できます。Hacobu Strategyの概要は以下ページをご覧ください。
目次
物流コストとは?
物流コストは2つに大別されます。企業自らが行っている「自家物流」と、物流事業者に委託している「委託物流」です。
そして、機能で分けると、輸送費、保管費、荷役費、包装・梱包費、物流管理費(物流管理人件費)の5つの費目に分けることができます。
また、物流コストは以下の3つの視点からも捉えることができます。
①ミクロ物流コスト:荷主企業を対象に実施したアンケート結果をもとに、売上高に対する物流コストの割合などを集計したデータです。各企業が自社の立場から物流コストを把握し、比較・分析するための指標として活用できます。
②マクロ物流コスト:公的統計データなどを基に、国全体の物流コスト総額を国民経済の観点から推計したものです。日本の物流コストを国家レベルで捉え、経済全体における物流の位置づけを評価するための指標として活用されます。
③企業物流コスト:企業物流コストとは、物流業務の中で商品を移動させる際に発生するさまざまな費用の総称です。具体的には、運送費・保管費・包装費などがこれに含まれます。
物流コストの適正化・削減は、企業の収益性向上だけでなく、環境負荷軽減や顧客満足度向上にも繋がります。しかし、単純なコスト削減だけを目指すのではなく、サービスレベルとのバランスを考慮した「最適化」が重要です。適切な物流コスト管理は、企業の持続的成長を支える重要な経営戦略の一つと言えるでしょう。
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物流コスト比率の推移は上昇傾向にある
物流コスト比率とは、企業の売上高に対する物流コストの割合を示す指標です。この比率は企業の物流効率性を測る重要な指標であり、業種や企業規模によって適正値は異なりますが、一般的に低いほど物流効率が高いとされています。
日本ロジスティクスシステム協会の2024年度物流コスト調査によると、2024年度の売上高物流コスト比率は5.45%でした。近年、ドライバー不足を原因とした物流事業者からの値上げ要請などを理由に、売上高物流コスト比率は長期的な上昇傾向にあると考えられます。実際に過去20年間の調査と比較しても、5.70%を記録した2021年度調査に次ぐ売上高物流コスト比率の高さとなっています。
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サプライチェーンの複雑化により自社の課題が把握できない
近年のグローバル化やeコマースの拡大により、サプライチェーンは非常に複雑化しています。多数の取引先、複数の物流拠点、さまざまな輸送手段が絡み合うことで、全体像の把握が困難になっています。
この複雑化により、どこでコストが発生しているのか、どの工程に非効率が潜んでいるのかを特定することが難しくなっています。たとえば、ある拠点での遅延が他の拠点での余分な在庫につながったり、輸送ルートの非効率が複数の工程に影響を及ぼしたりするケースがあります。
また、各部門が独自の目標やKPIを持つことで、部分最適が進み、全体最適が阻害されることもあります。例えば、調達部門がコスト削減のために大量発注すると、在庫管理コストが増加するといった相反する状況が生じています。
需要と供給のバランスが取れていない
物流コスト削減が難しい理由のひとつに、「需要と供給のバランスが崩れている」ことがあります。たとえばドライバー不足は深刻で、2030年には需要に対して約25万人のドライバーが不足すると考えられており、これにより輸送能力で約35%が不足する可能性も指摘されています。
幹線輸送では、輸送距離の長大化と積載効率の低下が課題です。荷主間で輸送量や出荷タイミングが偏在しており、復路での空車率が高まるケースが多く見られます。これにより、トラック1台あたりの輸送効率が下がり、燃料費・車両維持費などの固定的なコストが割高になります。さらに、積替え拠点や輸送ルートの共同化が進まず、物流ネットワークが分散しているため、全体最適化が難しいのが現状です。鉄道や船舶などを活用したモーダルシフトも進展していますが、輸送リードタイムや利便性、インフラ整備の面で依然課題が残っています。
ラストワンマイル配送においても、個人宅への配送件数が急増し、再配達や時間指定などへの対応が需給バランスを圧迫しています。配送効率を高めるための仕組みづくりが進められてはいるものの、需要の変動が大きく、安定した運用には至っていません。
さらに、顧客の要求が多様化していることもコスト構造を複雑にしています。配送スピード、受取方法、配送時間帯などの要望が細分化し、標準化されたオペレーションでは対応しきれないケースが増えています。こうした需要の高度化と供給能力のギャップが、物流コスト削減を困難にしているのです。
燃料価格が頻繁に変動する
物流コストを削減しづらい要因の一つが、燃料価格の変動です。原油価格は国際情勢、産油国の政策、為替レート、自然災害など様々な要因により頻繁に変動します。例えば、中東情勢の緊迫化やOPECの減産決定によって原油価格が急騰したり、世界的な景気後退懸念から需要減少を見込んで下落したりします。
運送事業者にとって燃料費は人件費に次ぐ主要コストであり、この変動は直接的に物流コストに影響します。特に長距離輸送では全コストの20〜30%を燃料費が占めることもあり、短期間での価格変動が収益計画を困難にしています。
物流業界全体の人材不足
物流業界では深刻な人材不足が続いており、前述のとおりドライバーの不足は危機的状況にあります。国土交通省の調査によると、ドライバーの平均年齢は年々上昇し、約45.2%は40~54歳と考えられています。一方、29歳以下の若年層は全体の10%以下で、若手ドライバーの新規参入が減少傾向にあります。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001225739.pdf
また、物流の2024年問題によりドライバー1人あたりの労働時間が制限された結果、輸送能力が減少し、従来どおりの物流量を維持することが難しくなっています。もともと慢性的な人手不足が続いていた中で、追加の人材確保が進まず、荷主・運送事業者の双方に運行計画やコスト面での影響が広がっています。
そして、倉庫作業員やピッキングスタッフなどの物流現場作業者も不足しています。少子高齢化による労働人口の減少に加え、体力を要する作業や不規則な勤務時間などから、若年層の就業意欲が低く、人材確保が難しい状況です。多くの物流企業では、外国人労働者への依存度を高めていますが、言語の壁や文化の違いによる課題も存在します。
こうした人材不足は、人件費の上昇、サービス品質の低下、納期遅延などの問題を引き起こし、物流コストを押し上げる大きな要因となっています。
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適正原価の告示
運送業は過当な価格競争が起こりやすく、実運送事業者が持続的に事業を行うために「標準的な運賃」が設定されていました。しかし強制力が弱く、標準的な運賃を用いた交渉で荷主の理解を得られたのは全体の4割程度にとどまっていました。
しかし、2025年6月に成立した貨物自動車運送事業法の改正により、国土交通大臣が、運賃・その他料金について事業運営に必要な費用を「適正原価」として定めることになりました。(2028年度までに施行)一般貨物自動車運送事業者は運賃・料金を適正原価未満で受託できなくなり、多重下請け構造が残る案件では物流コストが上昇する見込みです。
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物流コストの削減が難しい5つの理由
物流コストの削減は多くの企業が取り組むべき課題ですが、様々な要因によって思うように進まないことがあります。以下では、物流コスト削減を困難にしている4つの主要な理由について詳しく解説します。これらの要因を理解することで、より効果的な削減戦略を立てることができるでしょう。サプライチェーンの複雑化や人材不足など、業界全体が直面している構造的な課題に対応するためには、従来の方法論を超えた革新的なアプローチが求められています。
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物流コスト①「輸送費」の削減方法
輸送費とは、トラックなどによる輸送コストです。入荷側、出荷側、社内転送などの車両の費用が含まれます。これは物流に関わるコストの約60%を占めると言われ、企業の利益に影響を与えやすい費目です。
事故防止対策の実施
輸送において最重要なのは安全性です。事故等に伴うコストを抑制することは担当者が最初に取り組むべきです。自動車運送事業にかかわる重大事故は、半数以上がドライバー起因であり、具体的には「運転操作不良(運転ミスや危険運転など)」や「健康状態」「積載物」などです。事故を発生させないために予防措置の導入、監視を検討する必要があります。
車両数/運行数/距離削減
既存の配送ルート、配車を見直していくことでトータルの車両数/運行数距離の削減を図ります。実際の運行ルートは運送会社任せになっていることが多いですが、荷主としてもチェックしていくべきでしょう。
積載率の向上
簡単にいうと、トラックに荷物が満載に近づくように積載することです。トラックの積載率は直近では約40%まで低下していると言われています。フル積載になるように車両をコントロールするのが基本です。計画精度の向上、車格の調整、マテリアルハンドリング機器の標準化なども検討の余地があります。
空距離の削減
A地点からB地点に運ぶ積載率は高くても、B地点からA地点に戻る際の積載率が低いことがあります。片道運行契約への切り替えや共同配送の取り組みを検討し、空で走る距離をいかに縮めるかを検討します。
運行実績管理
運行状況や遅延確認などの実績把握によって、最適なルートであったかを検証し、今後の計画に活用します。
物流コスト②「保管費」の削減方法
倉庫、物流センターなどにモノを保管するコスト。賃借料、保管料などで構成されます。
保管の効率化
物流倉庫、物流センターの保管効率を高めるにはムダなスペースの削減を第一に検討します。需要は時とともに変化していきます。それに最適な保管という視点で見直しを図ってください。
在庫削減
在庫を削減することで保管場所や維持経費の削減が可能になります。在庫削減のためには様々な手法がありますが、正しく需要を予測し、振れ幅を抑えることで、在庫基準値を下げることが基本的な手法です。また、長期滞留在庫、不動在庫の排除という視点も重要です。
外部倉庫の活用
繁閑のリスクを回避することを目的に、外部倉庫を活用して保管費を変動費化してくことも手段のひとつです。繁忙期においては外部倉庫を一時的に利用し変動費化を図ることでコストダウンを狙います。
物流コスト③「荷役費」の削減方法
倉庫や物流センターでの入出荷、ピッキング、在庫管理などの人件費です。
ピッキングの効率化
人の手による作業が大きな割合を占めるため、改善の余地が多く残されている場合があります。オペレーションを見直すことで効率化、ミスを低減することができます。例えば、動線の最小化、アイテムロケーションの見直し、ピッキング動作の見直しなどで効率化の効果を期待できます。
パレット化
パレット化を進めれば荷役の効率化が図れます。パレット導入のコストと荷役のコストを比較して導入の判断をします。パレット輸送をする場合には、積載効率が落ちると懸念する方もいらっしゃいますが、バラ積みと比べた場合のバース回転率が上ることによる庫内の入出荷能力の上昇、ドライバーの作業時間の短縮効果などを荷役コスト削減に加味して検討するべきでしょう。
レイアウト修正/物流機器の導入
荷役作業の効率化や省人化のために歩行動線等を見直します。またマテリアルハンドリング機器は、フォークリフトや台車、パレット、コンベア、搬送用ロボット、ソーター、ピッキングシステム、自動倉庫など多岐にわたり、それらの導入によっても生産性を高めることは可能です。
平準化
日々の作業量が大きく変動すると、人員手配が非常に難しくなります。結果として過度な残業や過剰人員が発生し、無駄が起こります。平準化によって安定した人員確保を可能にすることで、コスト削減が期待できます。
また、1日の中で特定の時間帯に入出荷トラックが集中すると荷役作業の集中、フォークリフトの交錯などが発生し、業務が非効率になるという問題も発生します。入出荷時間を平準化することで、これを回避することができます。
生産性の見える化
各人の生産性をモニターし、平均値と比較することで改善ポイントを洗い出します。また、各人の生産性を把握することで行程別のパフォーマンスを整え、庫内の入出荷能力の最大化を図ることが可能になります。
物流コスト④「包装・梱包費」の削減方法
容器や包装、ダンボールやひもなどの梱包資材にかかる荷造材料費などのコストです。包装費は物流費の中で最も割合が低いですが、必然的に発生する消耗材のため、軽視はできません。見直し次第で資材購入費、作業費の抑制ができることがあります。
梱包の使用量、資材の品目の見直し
基本的には資材の購入は大量発注の方がコストを抑えられます。多品目になると1品あたりの購入量が少なくなるのでコスト高になる傾向があります。品目を減らすことができないか検討しましょう。
包装・梱包資材の再設計
梱包資材コストだけではなく、物流コストを下げるために包装・梱包資材の設計を改めます。大きな成果を出した例としてはティッシュボックスの体積を抑えたことで物流コストが下がった事例があります。
物流コスト⑤「物流管理費(物流管理人件費)」の削減方法
入出庫や伝票発行業務などの作業に携わる人件費を指します。
関連記事:https://hacobu.jp/blog/archives/1302
物流業務のデジタル化
物流管理に特化したシステムの導入により、物流管理の人件費を削減できます。昨今のDXではそれらの導入により、物流の見える化が大きく進む事例が増えていますので、ご検討ください。
関連記事:https://hacobu.jp/blog/archives/1297
物流資材/マテリアルハンドリング機器の最大活用
流通資材やマテリアルハンドリング機器の管理を徹底することで、管理人件費を削減することができます。
契約社員・パート等の活用
庫内の単純作業のラインや、季節や時間の波動対応には契約社員・パートなどを適材適所に配置します。
上記に挙げた基本的な物流コスト削減方法以外の、「応用編」も含めたコスト削減方法ついては、以下の資料をダウンロードください。

また、廃車買取によるコスト削減に関してはこちらのサイトも参考にしてみてください。
物流コストを削減するならHacobu Strategy
物流DXコンサルティング Hacobu Strategyは、物流業界に特化したコンサルティングサービスとして、企業の物流課題を総合的に分析し、最適なソリューションを提案します。専門コンサルタントが豊富な業界知識と実績を活かし、お客様の物流ネットワーク全体を見直すことで、無駄を削減し効率化を実現します。
具体的には、輸送費・保管費・荷役費などの各コスト要素を詳細に分析し、データに基づいた改善策を提案。例えば、配送ルートの最適化により輸送効率を高め、倉庫運営の見直しで保管コストを削減、作業動線の改善で荷役作業の生産性向上など、あらゆる角度から物流コストの削減に貢献します。
また、Hacobu Strategyは単なるコスト削減だけでなく、お客様のビジネス戦略と物流戦略を一体化させることで、長期的な競争力強化も支援します。デジタル技術を活用した物流の可視化や自動化提案も行い、人手不足や環境問題など現代の物流課題にも対応します。
Hacobu Strategyの概要は以下ページをご覧ください。
まとめ
物流コストを削減するためには、その構成要素を理解し、各項目に適した対策を講じる必要があります。輸送費の削減には配送ルートの最適化や共同配送、保管費には倉庫レイアウト見直しや在庫の適正化、荷役費には自動化技術の導入や作業の平準化が有効です。また、包装・梱包費は資材の見直しや再設計、物流管理費はデジタル化の推進が重要となります。
これらのコスト削減策を総合的に実施することで、物流業務の効率化と大幅なコスト削減が期待できます。特に現代では、デジタル技術を活用した物流の可視化や自動化が重要な鍵となっています。
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