更新日 2026.09.29

AI配車とは?仕組み・メリット・システム比較を解説

AI配車とは?仕組み・メリット・システム比較を解説

AI配車という言葉を目にする機会は増えましたが、何をAIが判断し、従来の配車と何が違うのかは分かりにくいものです。本記事では、物流におけるトラックのAI配車について、次の3点を中心に解説します。

  • AI配車の仕組みと、AIが担う2つの工程
  • 導入で変わる業務、費用・データ・運用上の注意点
  • AI配車システムを比較するときの5つの条件と、受発注から実行までをどこまで同じ仕組みで扱えるかという視点

自社の課題にAI配車が合うか、どの範囲から試すべきかを判断する材料としてご活用ください。

なお、Hacobuが提供する配車受発注・管理サービス「MOVO Vista」は、受発注から配車計画、協力運送会社への依頼、運行実績までを同じ仕組みで扱い、出荷指示データからの案件情報作成をAIが支援します。機能や活用イメージはMOVO Vistaサービス資料(無料ダウンロード)でご確認ください。

目次

AI配車とは

AI配車とは、配送条件を計算し、車両の割り当てや配送順の作成、その車両を確保する依頼業務を支援する仕組みです。どこまでを対象にするかは製品によって異なります。

AI配車の定義と、これまでの配車業務との違い

AI配車は、配車担当者が経験と勘で行ってきた判断の一部を、コンピュータによる計算で支援します。従来の配車では、担当者が受注情報、車両の空き、荷量、納品時刻、道路事情、ドライバーの勤務状況などを見比べ、車両とルートを決めていました。

AI配車では、同じ条件をデータとして入力し、車両台数、走行距離、所要時間、積載量などの評価軸に沿って複数の案を計算します。最終判断まで必ず自動化する仕組みではありません。計算結果を担当者が確認し、当日の事情やシステムに登録できない条件を加味して確定する運用も一般的です。

なぜ人の手だけでは限界があるのか

配送先が増えるほど、車両への割り当て方と訪問順の組み合わせは急増します。10件の配送先を1台で回る順番だけでも、単純計算(10の階乗)では約363万通りあります。複数台への振り分け、時間指定、積載量まで加えると、候補はさらに増えます。

人は経験から現実的でない候補を素早く除外できますが、限られた時間ですべての組み合わせを比較することは困難です。AI配車システムは、条件を満たさない案を除きながら、多数の候補を計算し、評価軸に合う案を提示します。担当者の経験を否定するのではなく、膨大な比較をコンピュータに任せ、判断に使える時間を増やす考え方です。

AI配車と配車システムの関係を整理する

配車システムは、配送依頼、配車表、運行状況などを管理する仕組みの総称です。その中に、車両の割り当てや配送順を計算するAI配車機能を持つ製品があります。一方、AI配車に特化し、計画を既存の配車管理システムへ渡す製品もあります。

製品によって対応範囲が異なるため、AIの計算機能だけでなく、受注の取り込み、計画の共有、運行実績の記録まで、どの業務を同じ仕組みで扱えるか確認しましょう。

配車システム全体の機能や分類は、配車システムの機能・種類・選び方をご覧ください。

「AI配車」は、配車業務のどの工程をAIが担うかで見る

本記事では、配車業務の流れに沿って、貨物をトラックに割り当てる「配車計画」と、その車両を確保する「配送依頼」の2つの工程に分けて整理します。

どの工程にも、AIの関わり方は2つあります。1つは、計算や入力、照合といった作業そのものをAIが代わりに進めてくれるパターンです。もう1つは、「この便にあと何パレット積めるか」「この案件はどの会社に依頼したか」のような質問に、チャットで答えてくれるパターンです。前者は作業時間そのものを減らし、後者は探す・聞く・集計する時間を減らします。

さらに「どこまで任せるか」を補助軸として見ると、導入後の姿を描きやすくなります。課題と工程がずれると、期待した効果は得られません。

工程1:配車計画(車両への割り当てと配送順の作成)

出荷指示を受けた貨物を、どのトラックに載せ、どの順に回るかを決める工程です。「AI配車」と聞いて多くの人が思い浮かべる部分で、注文、車両、時間指定、積載量などの条件から組み合わせを計算し、走行距離、車両数、費用などの評価軸に合う案を提示します。

AIが代わりに進めてくれるのは、組み合わせの計算そのもの、基幹システムの出荷指示からの案件情報の作成、積載率などの指標の算出といった作業です。あわせて、「この便にあと何パレット積めるか」「明日の荷量なら何台必要か」といった確認をチャットで行える製品もあります。計算方式は過去データを学習する機械学習とは限らず、その日に与えられた注文、車両、時間指定などだけを使って比較する方式も一般的です。導入時は「AI搭載」という表現ではなく、何を最小化・最大化するのか、どの条件を制約として扱えるのかを確認しましょう。

なお、その日の条件だけで計算する方式でも、評価軸や制約条件を見直す材料は過去の実績にしかありません。実績が残っていなければ、設定を確かめることもできません。

工程2:配送依頼(トラックを探して確保する)

確定した計画を運ぶ車両を、自社便や協力運送会社(傭車)から確保する工程です。どの運送会社に、どの案件を、いくらで依頼するかを決め、依頼を出し、諾否を確認します。電話やメールのやりとりが残りやすく、「この案件はこの会社」という担当者の記憶に依存しがちな部分でもあります。

AIが代わりに進めてくれるのは、過去の依頼実績や対応エリア、車格からの依頼先候補の提示、案件情報の依頼内容への整形などです。チャットでは、「このエリアを直近受けてくれた会社はどこか」「まだ返答がない案件はどれか」といった確認をその場で行えます。最終的にどこへ依頼するかは人が決める前提の製品が多く、確保できなかった案件を誰がいつ引き取るかという運用まで含めて確認しましょう。

この工程でもう一つ欠かせないのが、「いくらで頼むか」です。依頼先を決めるには、区間や車格ごとの運賃、燃油サーチャージや待機・附帯作業の扱い、改定後の最新条件を知っている必要があります。ところがこれらの条件は、契約書、覚書、見積書、運賃表といった形で分散し、拠点ごとに違う取り決めが残っていることも少なくありません。結果として、「この案件はいくらが適正か」を確かめるのに時間がかかり、担当者の記憶に頼る状態になりがちです。

ここにもAIの関わり方は2つあります。契約書や覚書、見積書を読み取って運賃条件をデータ化し、一元管理する作業の代行と、「この区間・この車格の運賃は」「改定後の条件はどうなっているか」とチャットで聞けば引き出せる回答です。

依頼を出す仕組み(Hacobuの場合は配車受発注・管理サービス「MOVO Vista」)と、運賃の根拠を持つ仕組み(契約・運賃管理サービスMOVO Contract)がつながると、誰に頼むかだけでなく、いくらで頼むかまでを同じ流れの中で扱えます。

2つの工程に共通してついて回る「振り返り」

分析は、独立した工程というより、どちらの工程にもついて回るものです。配車計画側では、積載率や実車率、走行距離の推移を振り返り、評価軸や制約条件を見直します。配送依頼側では、依頼先ごとの実績や運賃の推移、諾否の傾向を見て、次の依頼先や条件を考えます。過去の荷量や曜日、季節から先の荷量を推定する予測も、この振り返りの延長線にあります。

ここでもAIの関わり方は同じです。実績の集計やレポート作成を代行するほか、「あの荷物は今どこにあるか」「先月の拠点別の積載率は」とチャットで尋ねてその場で答えを得る使い方もできます。ただし、振り返れるかどうかは、計画と実績が案件単位で残っているかで決まります。

補助軸:どこまで任せるかで見る

同じ工程でも、人とAIの役割分担は製品や設定によって異なります。次の3段階で確認すると、導入後の業務を具体的に描けます。

  • 下書きを任せる:AIが案件情報や計画の素案をつくり、人が内容を確認・修正して確定する
  • 案の比較を任せる:AIが複数案や推奨案を提示し、人が選んで確定する
  • 条件内は自動で確定する:あらかじめ決めた条件を満たす案件だけ自動確定し、外れたものを人に回す

「AIだからすべて自動」ではありません。どの工程を、どの段階まで任せるのかを先に決めておくと、誤りが起きた際の確認経路も明確になります。

自社にはどの工程のAIが必要かを見極める

工程は、解決したい課題から逆算して選びます。1つの製品が複数の工程をカバーする場合もあります。

自社の悩み主に対応する工程確認したい機能
配車計画を組む時間を減らしたい工程1:配車計画車両割り当て、訪問順、必要台数の計算
出荷指示から案件をつくる手間を減らしたい工程1:配車計画出荷指示データ連携、案件情報の自動生成、確認・修正画面
走行距離や使用車両数を見直したい工程1:配車計画評価軸、制約条件、積載率などの指標表示
協力運送会社への依頼のやりとりを減らしたい工程2:配送依頼依頼先候補の提示、オンライン依頼、諾否の管理
いくらで依頼するかをすぐに確かめたい工程2:配送依頼契約・運賃条件のデータ化、区間・車格別運賃の参照、改定履歴
将来の荷量や必要車両数を見通したい工程1:配車計画需要予測、学習データ、予測誤差
問い合わせや状況確認を減らしたい両工程共通(振り返り)自然言語検索、回答根拠への遷移
積載率や運賃の推移を継続して見たい両工程共通(振り返り)実績の蓄積、集計・出力、分析画面

どの工程にも共通する前提:案件情報がデータになっているか

2つの工程はいずれも、注文、車格、時間指定、発着地、納品ルールがデータとして揃っていて初めて動きます。案件の入口が電話、メール、FAX、添付ファイルのままでは、AIに渡す前の聞き取りと転記が律速になり、計画作成だけを速くしても業務全体の時間は減らない場合があります。

帳票の読み取り(AI-OCR)や出荷指示データの連携、受発注そのものをデータでやりとりする仕組みは、この前提を埋める役割を担います。なお、本記事の2工程は業務の流れから便宜的に整理したもので、業界共通の公式分類ではありません。

もう一つの前提:計画と実績が同じ場所に残っているか

AIの結果は、計画をどう組んだかだけでなく、実際にどう運んだかが残っているかで変わります。実際の発着時刻、積載量、荷役にかかった時間、変更や欠車の経緯が案件単位で残っていなければ、実績ベースで条件設定や予測を見直すことはできません。

よくあるのは、計画はExcel、実績は日報や紙、位置情報は別システムという状態です。この場合、計画と実績を突き合わせられず、履歴が蓄積されても分析に使える資産になりません。AIの機能を見る前に、受注から依頼、運行実績、請求までを同じ案件IDで残せる器があるかを確認しましょう。

AI配車計画が同時に考えている条件

AI配車計画の良し悪しは、現場で守るべき条件をどこまで入力できるかで決まります。これらの条件は、受注情報が構造化されていなければ入力すらできません。走行距離だけを短くしても、積めない車両や受け入れられない時間に到着する計画は使えません。導入前に、担当者が日々どの条件を見ているかを棚卸しする必要があります。

車両側の条件

車両側では、車格、最大積載量、荷室の容積、保有台数、出発地・帰着地、稼働可能時間などを設定します。冷凍・冷蔵設備、パワーゲート、危険物対応といった装備・資格条件も必要になる場合があります。

重量だけでなく容積やパレット数も上限になる配送では、複数の積載単位を同時に扱えるかが重要です。往復便や複数回転がある現場では、1便目の帰着後に再積載して出発する条件も確認します。高速道路の利用可否、車高・車幅による通行制限まで扱える製品もあります。

荷主・納品先側の条件

荷主・納品先側では、納品時間帯、荷役にかかる時間、休業日、使用できる車格、受付方法などを設定します。「午前必着」「大型車は入場不可」「左付けで停車」「特定ドライバーのみ入場可」など、担当者が暗黙に守っているルールも対象です。

条件には、必ず守る制約と、できれば守りたい希望があります。両者を区別できないと、一つの希望条件のために車両台数が増える場合があります。各条件の優先度と、破った場合の影響まで整理すると、AI配車計画を評価しやすくなります。

ドライバー側の条件(労働時間のルール)

ドライバー側では、勤務可能時間、休憩、資格、担当エリア、運転できる車種などを考慮します。2024年4月適用の改善基準告示では、拘束時間は年3,300時間以内、1か月284時間以内が原則です。1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長時も原則15時間が上限です。休息期間は継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないことが定められています。

複数日の勤務実績と翌日の計画を見比べ、すべてのドライバーの基準を確認するのは容易ではありません。勤務可能時間や休憩を条件にできるAI配車システムは、基準を超える可能性がある計画を避ける支援になります。ただし、AI配車だけで労務管理が完結するわけではありません。

出典:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」

条件を入れきれないと現場で使われなくなる

AIが出した案を毎回大幅に直す状態では、担当者が「自分で組んだ方が早い」と感じ、利用が定着しません。原因はAIの計算能力だけでなく、納品先の個別ルールや担当者の判断基準が登録されていないことにもあります。条件が抜ける原因の一つは、案件情報の入り方にもあります。電話やメールで受けた依頼を担当者が読み替えている場合、条件はシステムに残らず、人の記憶と経験に留まります。

導入前には暗黙のルールを言語化し、登録できる条件と登録できない条件を分けます。登録できない条件は、人が最終確認する手順に組み込みます。条件設定と運用設計を一体で考えることが、現場で使われるAI配車システムの前提です。

AI配車を導入するメリット

AI配車のメリットは、単に「AIが計画を作る」ことではありません。計画作成時間、担当者への依存、積載・走行、法対応に関わる確認作業がどう変わるかを、自社の現状値と比較することが重要です。効果が出るのは計画を組む工程だけでなく、車両を確保する配送依頼の判断にも及びます。

配車計画をつくる時間が短くなる

AI配車は、多数の組み合わせを計算して計画のたたき台を提示します。担当者は、ゼロから車両と荷物を組み合わせる作業を減らし、結果の確認と例外調整に時間を使えます。急な追加注文が入った場合も、既存計画への組み込みを再計算できる製品があります。

効果を測る際は、計算時間だけでなく、データ入力、手直し、ドライバーへの指示まで含めた総時間を比べます。入力のための転記が増える構成では、計画作成が速くても業務全体の時間は減らないためです。

ベテラン頼みの状態から抜け出せる

AI配車に条件を登録すると、配車担当者が判断してきた一部の基準を共有できます。特定の担当者が休むと計画を組めない、後任が育たない、判断理由を説明できない、といったリスクを抑えやすくなります。

属人化しやすいのは、計画を組む工程だけではありません。「この案件はこの会社に頼む」「この区間はこの運賃」といった配送依頼の判断も、ベテランの経験や各拠点の慣行に支えられているケースが多くあります。依頼実績や契約・運賃条件がデータとして残っていれば、他の担当者も同じ基準で依頼先と金額を確かめられます。

ただし、ベテランの知識は自動的にシステムへ移りません。「この納品先にはこの車格」「この時間帯はこの道を避ける」といった判断を聞き取り、データや運用ルールに変える工程が必要です。AI配車の導入は、暗黙知を棚卸しして組織の知識に変える機会でもあります。

詳しくは、配車業務の属人化はなぜ起きるのかをご覧ください。

積載効率が上がり、コストが下がる

配車計画の工程(工程1)のAIは、荷量と車両容量を照合し、荷室の空きを減らす組み合わせを探します。複数の荷物を同じ方面の便へまとめる、遠回りを減らす、帰着後に別便へ回すといった案を比較できます。結果として、使用車両数、走行距離、残業時間などを削減できる可能性があります。

効果は配送網や制約条件によって異なります。「AI配車を入れれば必ず車両が減る」とは言えません。導入前後で、積載率、実車率、総走行距離、使用車両数、輸配送コストを同じ条件で比較して判断します。

法律への対応が進む

2025年4月施行の物流効率化法では、すべての荷主・物流事業者に対し、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮などへの取り組みが努力義務として課されています。AI配車は、複数荷主の貨物の積み合わせや納品日の集約を検討し、積載率・走行距離などの実績を把握する基盤になり得ます。

AI配車のデメリットと、導入前に確認すること

AI配車は、データ整備、業務変更、手直しの負担を伴います。メリットだけで判断せず、自社が準備できる人員と期間、期待する効果を明確にする必要があります。

基礎データを整える手間がかかる

AI配車を動かすには、注文、配送先、車格、車両、ドライバーなどの基礎データが必要です。住所の表記が統一されていない、作業時間が未登録、最大積載量が古い、といった状態では、現場と合わない計画が出やすくなります。

初期登録だけでなく、車両の増減、納品条件の変更、新規配送先の追加に合わせた更新も欠かせません。データ整備の担当者、更新頻度、変更の承認方法まで決める必要があります。

現場のやり方を変える必要がある

従来のExcelや紙を残したままシステムへ同じ情報を二重入力すると、負担は増えます。受注データを誰が取り込むか、AIの案を誰が確認するか、変更をどうドライバーへ伝えるかまで業務フローを見直します。

現場に定着させるには、システムに業務を合わせる部分と、現場の必須ルールをシステムへ反映する部分を分けることが重要です。

AIが出した案を人が直す前提で考える

初日から100点の計画が出るとは限りません。AI配車は計画のたたき台を作り、人が例外を確認して仕上げる使い方が現実的です。修正内容を記録すれば、未登録のルールや設定の優先度を見つけられます。

導入判断では、修正の有無だけでなく、修正にかかる時間と理由を測ります。手直しが多くても短時間で済み、全体の作業時間が減るなら効果があります。最後に成否を分けるのは、配車担当者やドライバーが無理なく使い続けられるかです。高度な計算でも、現場の段取りに合わなければ使われなくなります。導入後も現場の声を聞き、設定と運用を一緒に見直せる体制があるかを、機能と同じ重さで確認しましょう。

AI配車の導入の進め方

AI配車は、既存システムをすべて入れ替えるのではなく、現在の受注・運行・実績の仕組みを活かしながら段階的に取り込む方法が現実的です。以下の4ステップで、対象と効果を明確にしながら進めます。

ステップ1:今の配車業務とデータを棚卸しする

最初に、誰が、どの情報を使い、どの順番で配車を決めているかを整理します。対象は、受注、車両、ドライバー、荷物の特徴、配送先、地理情報、納品ルールなどです。Excel、基幹システム、紙、担当者のメモに分かれている情報源も洗い出します。あわせて、案件がどの経路で入ってくるか(電話、メール、FAX、EDI、基幹システム)も棚卸しの対象に含めます。AIに任せる範囲を決める前に、入口のデータ化が必要になる場合があります。

最も重要なのは、ベテランの頭の中にある判断ルールを言葉にすることです。「この荷物は同載しない」「この納品先には朝一番に入る」などの暗黙知を、必須条件、希望条件、人が判断する例外に分けます。この作業がAI配車導入の前提になります。

ステップ2:AIに任せる範囲と人が判断する範囲を決める

配車業務全体を一度にAIへ任せると、データ整備、システム連携、教育の負担が大きくなります。受注データの取り込み、車両の割り当て、ルート作成、最終確認、運行指示のうち、どこを対象にするかを決めます。

例えば、配車計画(工程1)では車両割り当てと訪問順の計算を任せ、追加便の判断と最終承認は担当者が行います。配送依頼(工程2)では依頼先候補の提示までを任せ、発注そのものは人が決めます。責任の境界を先に決めることで、誤りが起きた際の確認経路も明確になります。

ステップ3:小さく試して効果を測る

対象を一部の拠点、エリア、荷主、車両に絞り、AIと人が作った計画を比較します。検証では次の数字を同じ期間・条件で測ります。

  1. 総走行距離
  2. 使用車両台数
  3. 積載率
  4. 配車を組むのにかかった総時間
  5. 納品遅延の件数
  6. AIの案を修正した件数と時間

小規模に試すと、データ不足や現場ルールの見落としを早期に発見できます。結果が悪い場合も、製品が合わないのか、条件設定が不足しているのかを切り分けやすくなります。

ステップ4:広げたあとも数字を見続ける

AI配車は、導入して終わりではありません。対象拠点や業務を段階的に広げながら、車両稼働率、積載率、走行距離、配車作成時間、納品遅延率を継続して確認します。

荷量、取引先、道路事情、労務ルールが変われば、適切な条件設定も変わります。担当者が修正した理由と現場の声を定期的に集め、基礎データ、制約条件、評価軸を更新します。効果が出ている拠点の設定をそのまま横展開せず、各拠点固有の条件を追加することも重要です。

AI配車システムの比較と選び方

AI配車システムは、対象とする配送、AIの役割、前後工程との連携、提供形態が異なります。製品名だけで比べず、自社の業務フローと解決したい課題を基準に確認しましょう。

主なAI配車システムの比較表

AI配車システムを比較するときは、機能数の多さだけでなく、自社の配送形態と課題に合うかを確認することが重要です。複数の配送先を巡回する業務と、案件ごとに発着地や車格が変わる貸切輸送では、適した仕組みが異なります。まず、どのような配送を得意とするサービスかを確認しましょう。

次に、AIが担う工程を見ます。配車計画(工程1)と配送依頼(工程2)のどちらを支援するかで、解決できる課題が異なります。受発注データの取り込み、ドライバーへの計画共有、運行実績の連携まで対応できるかも確認しましょう。

以下は、各社公式サイトで2026年9月20日に確認した公開情報です。「得意な配送のかたち」は公開情報から整理した目安で、対応範囲を限定するものではありません。機能や料金は変わる場合があるため、検討時は各社へ最新情報をご確認ください。

サービス名得意な配送のかたちAIが担う工程受発注・動態管理とのつながり提供形態
MOVO Vista(Hacobu)貸切輸送を含む企業間輸送、配送案件の計画・依頼・実行管理工程1・2(配車計画/配送依頼、実績の振り返りも)受発注、配車計画、配送ステータス、実績を一気通貫で管理。ドライバーアプリ等と連携クラウド
Hacobu Solution Studio(Hacobu)標準機能だけでは扱いきれない自社固有の配車・輸配送業務工程1・2(基幹システム連携やAI導入を個社向けに構築)MOVOと基幹システムの連携、データ統合、分析・可視化まで対応システムインテグレーション(個社開発)
Loogia配車作成(オプティマインド)複数配送先を回る日々の配送、細かな道路・現場条件がある配送工程1(走行実績の学習も活用)ドライバーアプリと動態管理へ連携。Excel・CSV・APIで注文を入力クラウド(パッケージ、個別拡張あり)
LYNA 自動配車クラウド(ライナロジクス)荷主・運送会社・3PLの日々の配車、固定・変動のある配送工程1計画共有、ドライバーへの配信。他社サービスやDXプラットフォームとの連携ありクラウド
ZENRIN ロジスティクスサービス 配車計画(ゼンリンデータコム)注文・訪問先・車型・車両データを使う複数配送先の計画工程1連携ナビゲーションアプリへ計画を共有クラウド
次世代運行管理システム AIR(五十鈴)重量物輸送、労働時間・日報・荷待ちも管理する運行工程1(実績の記録・管理も)受注、配車、動静、日報、勤怠、待機・附帯作業を管理クラウド、個別カスタマイズ対応

選び方1:自社の配送のかたちに合っているか

最初に、定期配送か貸切輸送か、毎日同じ配送先か変動するか、1台が複数件を回るかを整理します。店舗配送のように複数の納品先を巡回する業務と、案件ごとに発着地・車格・運送会社が変わる貸切輸送では、必要な機能が異なります。

あわせて、宿泊を伴う長距離運行、複数回転、集荷と配送の混在、冷凍・冷蔵、重量物などへの対応を確認します。自社の代表的な1日分だけでなく、繁忙日と例外の多い日を使って試すと適合性を判断しやすくなります。

選び方2:どの工程のAIを持っているか

計画作成時間や車両台数、積載率を見直したい場合は工程1(配車計画)、協力運送会社への依頼や車両の確保、運賃条件の確認に時間を取られている場合は工程2(配送依頼)が候補です。状況確認や実績の振り返りは、どちらの工程にもついて回ります。

「AI配車」という名称だけでは、どの仕事を担うかは分かりません。デモでは、自社の課題に対応する機能を実際に動かし、入力データ、出力、修正方法、根拠の確認方法まで見ます。あわせて、その工程をどこまで任せられるか(下書きまでか、案の提示か、条件内の自動確定か)も確認しましょう。複数の工程をカバーする製品では、各機能の提供状況と追加費用も確認します。

選び方3:受発注や荷物の位置確認までつながるか

配車計画だけを別システムにすると、基幹システムから注文を転記し、計画を別の動態管理へ入力する作業が残る場合があります。計画作成が短くなっても、前後工程の転記が増えれば全体の効率化につながりません。

確認したい項目は次のとおりです。

  • 案件をどのように受けるか(メール、FAX、CSV、API、EDIなど)
  • 運送会社への依頼を同じ仕組みで出せるか
  • 確定した計画をドライバーへ渡せるか
  • 実績と位置情報が戻ってくるか
  • 計画と実績が案件単位で蓄積され、あとから分析・出力できるか
  • 標準機能か個別開発か、データの更新頻度と費用

受発注から配送ステータス、実績、請求までを同じ案件IDで扱える仕組みであれば、日々の運用そのものが実績の蓄積になり、次の計画を見直す材料になります。

配車の前後工程まで含めたサービス例は、Hacobuが提供する配車受発注・管理サービス MOVO Vistaをご覧ください。

選び方4:導入時の支援があるか

AI配車では、基礎データと制約条件の整備が結果を左右します。ベンダーが注文・配送先・車両データの整形を支援するか、担当者への聞き取りから暗黙のルールを整理するか、試算後の条件調整を行うかを確認します。

操作説明だけでなく、検証設計、効果測定、稼働後の見直しまで支援範囲を聞きましょう。社内の担当人数が限られる場合は、誰がどの作業を担うかを契約前に明確にすることが定着を左右します。

選び方5:料金と、元が取れる見込み

見積もりは、同じ対象範囲と条件を各社に伝えて比較します。金額だけでなく、何が含まれるかを確認してください。

  • 初期設定、データ整備、研修の費用
  • 月額費用の計算単位(拠点、車両、利用者など)
  • API連携、個別カスタマイズ、保守の費用
  • トライアルやPoCの期間・条件
  • 契約期間、追加・解約の条件
  • 効果測定に必要なデータの出力可否

配車作成時間、車両数、走行距離などの現状値から年間効果を試算し、初期費用と運用費を含む総費用と比べます。

AI配車の導入事例

AI配車の効果は、どの業務を対象にし、前後工程とどうつなげたかで変わります。ここでは、Hacobuが公表している2つの事例を、利用条件とともに紹介します。

川崎重工業:AI配車支援機能の実証

川崎重工業株式会社は、2025年5月にHacobuが提供する配車受発注・管理サービス「MOVO Vista」を導入し、明石工場でAI配車支援機能の活用を開始しました。対象は、出荷指示データからチャーター便の案件情報を作成する業務です。

生成AIが、選択した出荷指示の内容から、ルート、車格、顧客ごとの条件を整理して案件情報を自動生成します。担当者は画面上で内容を確認・修正し、そのまま協力運送事業者への依頼に使用できます。配車全体を無人化する仕組みではなく、入力作業をAIが支援し、人が確定する設計です。配車の計算そのものではなく、配車計画(工程1)の入口と、そこから配送依頼(工程2)へつなぐ部分にAIを用いた例と位置づけられます。公式発表では、納品先が5件以内程度のシンプルなルート配車などが利用例として示されています。

参考:MOVO VistaのAI配車支援機能(川崎重工業での実証)

ダイナパック:積載率を配車計画時点で可視化

包装資材メーカーのダイナパック株式会社は、2026年9月にHacobuが提供する「MOVO Vista」を導入し、安定的な輸送力の確保に向けた積載率向上の取り組みを始めました。従来は運行後にExcelで集計する振り返りの指標だった積載率を、配車計画を立てる時点で使えるようにすることが目的です。

基幹システムの出荷指示データを連携し、荷物の重量・大きさとトラックの大きさから1台ごとの積載率を算出。担当者は積載率を見ながら積み合わせやルートを見直せ、確定した計画は基幹システムへ自動で書き戻されます。現時点でAIが計画を自動作成する事例ではなく、配車計画(工程1)と実績をデータとして扱える器を整え、その先にAIによる配車計画の自動化を見据える進め方です。

参考:ダイナパック、MOVO Vistaを導入(2026年9月18日)

AI配車に関するよくある質問

AI配車を検討する際は、言葉の定義だけでなく、料金、呼び方の違い、人が担う役割まで確認することが重要です。「AIなら配車をすべて自動化できる」と考えると、実際の機能とのずれが生じます。製品によってAIの役割、必要なデータ、人が確認する範囲は異なります。ここでは、導入判断で起こりやすい5つの質問に回答します。

AI配車とは何ですか?

AI配車とは、配送条件を計算し、車両の割り当てや配送順の作成、その車両を確保する依頼業務を支援する仕組みです。注文、車両、時間指定、積載量、走行距離などを入力し、条件を満たす複数の組み合わせから評価軸に合う案を提示します。対象範囲は製品によって異なり、需要・所要時間の予測や、生成AIによる入力・検索を含むものもあります。

AI配車の料金はいくらですか?

AI配車の料金は公開されていないことが多く、個別見積もりが基本です。初期費用と月額費用の有無、拠点数・車両数・利用者数による変動、データ整備、API連携、カスタマイズ、研修・保守の費用を確認します。金額だけでなく、削減したい作業時間や車両数を決め、総費用と年間効果を比較する必要があります。

AI配車と自動配車の違いは何ですか?

AI配車と自動配車は、物流の実務ではほぼ同じ意味で使われる場合があります。ただし、名称が同じでも、配車計画と配送依頼のどちらを担うかは製品によって異なります。製品名ではなく、どの工程を、どこまで任せられるのかを確かめましょう。

AI配車を導入すると配車担当者は不要になりますか?

AI配車を導入しても、配車担当者が不要になるわけではありません。担当者の役割は、ゼロから計画を「組む人」から、AIの案を「確認して判断する人」へ変わります。急な欠車、顧客からの変更、登録できない現場ルール、関係者との調整には人の判断が必要です。担当者は例外対応と改善に、より多くの時間を使えるようになります。

AI配車の実績データはどこに蓄積すればよいですか?

実績ベースで配車を見直すには、計画と実績が同じ場所に案件単位で残っている必要があります。計画をExcelで作り、実績を日報や紙で管理している状態では、両者を突き合わせられず、履歴が分析に使える資産になりません。AI機能の有無とあわせて、受注から依頼、運行実績、請求までを一つのシステムで扱えるかを確認しましょう。

まとめ

AI配車を選ぶ際は、AIという名称ではなく、解決したい課題と扱える条件を確認することが重要です。

  • AI配車は、配送条件から車両の割り当てや配送順の作成を支援する仕組み
  • AIが担う工程は、配車計画と配送依頼の2つに分けて見る
  • 同じ工程でも、下書きまでか、案の提示か、条件内の自動確定かで業務は変わる
  • データ整備と現場ルールの言語化が、計画の実用性を左右する
  • 導入効果は、計画時間、車両台数、積載率、走行距離などで測る
  • 受発注や動態管理を含む前後工程との連携も確認する
  • 案件情報がデータになっているかは、どの工程にも共通する前提になる
  • 計画と実績が同じ場所に残る仕組みかどうかが、実績ベースの見直しを左右する

AI配車の導入は目的ではなく、運ぶ仕事をデータで扱える状態に変え、継続的に見直すための手段です。案件情報と実績がデータとして残れば、配車だけでなく、拠点の運用や取引先との調整まで見直す土台になります。

まずは、自社の悩みが配車計画と配送依頼のどちらにあるかを見極め、小さな範囲から検証しましょう。配車の前後工程をつなぐ方法は、Hacobuが提供する配車受発注・管理サービス MOVO Vistaをご覧ください。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営し、物流の基礎知識や法律を分かりやすく解説するメディア「ハコブログ」編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

クラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」のマーケティングを管掌し、荷主企業や物流事業者の業務デジタル化(DX)を推進。専門知識を活かし、ロジスティクス分野の専門誌への寄稿や、様々な業界団体での講演活動にも登壇。「最新ツールの普及」と「分かりやすい情報発信」の両面から、物流業界の課題解決に現場目線で取り組んでいる。 >>プロフィールを見る

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