BOM (部品構成表)とは?生産管理における役割や目的、種類、課題、BOM管理システムについて解説

製造業において、製品を構成する部品の管理は非常に重要です。BOM(部品構成表)は、この部品管理の基盤となる重要な情報であり、効率的な生産管理のために欠かせないものです。本記事では、物流DXパートナーのHacobuがBOMの基本概念から、その役割、種類、そして管理システムまで解説します。
BOM (部品構成表)とは?
BOM(Bill of Materials)とは、製品を構成する部品やサブアセンブリの一覧表のことを指します。日本語では「部品構成表」や「部品表」とも呼ばれています。BOMは、製品を製造するために必要なすべての部品、材料、中間組立品などの構成要素とその数量を階層構造で表したものです。
たとえば、自動車のBOMには、エンジンやブレーキシステム、車体などの主要コンポーネントが含まれます。さらに、ボルトやナット、ワイヤーといった小さな部品まで、すべての要素がリストアップされます。
BOMを構築する目的
BOMを構築する主な目的としては、まず正確な製品構成の把握があります。製品を構成するすべての部品とその関係性を明確にすることで、製品設計や製造工程の理解を深めることができます。また、材料調達の効率化も重要な目的です。必要な部品とその数量を事前に把握することで、過不足なく材料を調達することが可能になります。
さらに、コスト管理の面では、各部品のコストを集計することで製品全体のコストを算出し、コスト削減の機会を特定できます。在庫管理の最適化も重要で、必要な部品数を正確に把握することで過剰在庫や欠品を防ぎ、在庫管理の効率化を図れます。
生産計画の立案においても、製品の生産数に応じた部品の必要数を算出し、計画的な生産が可能になります。品質管理の向上も目的の一つで、部品の変更や代替品の使用が製品全体に与える影響を評価することで、品質管理の水準を高めることができます。

BOMの種類
BOMには主に2つの基本的な形式があります。ストラクチャー型とサマリ型です。
ストラクチャー型
ストラクチャー型(階層型)BOMは、製品の構造を階層的に表現したものです。最上位に完成品があり、その下に主要コンポーネント、さらにその下にサブコンポーネントという形で、親子関係を明確にした構造になっています。
このBOMは製品の構造を直感的に把握しやすく、各部品の親子関係が明確になります。設計や技術部門での利用に適しており、組立順序を考慮した構成が可能です。
たとえば、自転車のストラクチャー型BOMでは、最上位レベル(Level 0)に自転車(完成品)があり、その下のレベル(Level 1)にフレーム、ハンドル、車輪セット、ブレーキシステムなどの主要部品があります。さらにその下のレベル(Level 2)には前輪、後輪などが車輪セットの子要素として位置づけられ、最下層のレベル(Level 3)にはタイヤ、チューブ、リム、スポークなどが前輪の子要素として表現されます。このように、製品の構造が階層的に表現されるのがストラクチャー型BOMの特徴です。
サマリ型
サマリ型(フラット型)BOMは、製品を構成するすべての部品をフラットなリストとして表現したものです。階層構造は示されず、製品を作るために必要なすべての部品とその総数量が一覧で表示されます。
サマリ型BOMは、必要な部品の総数がひと目で分かるため、調達や在庫管理に適しています。製造計画を立てる際にも有用ですが、階層関係は示されません。
たとえば、自転車のサマリ型BOMでは、フレームが1個、ハンドルが1個、タイヤが2個、チューブが2個、リムが2個、スポークが48個、ブレーキセットが2個というように、部品の総数が一覧で表示されます。
その他、用途に応じて様々な種類のBOMも存在します。設計部門が作成する設計BOM(EBOM: Engineering BOM)は、製品設計に基づいたもので、製品の機能的な構成に焦点を当てています。製造部門が使用する製造BOM(MBOM: Manufacturing BOM)は、実際の製造プロセスに基づいたもので、組立手順や工程を考慮した構成となっています。また、アフターサービスや保守のために使用されるサービスBOM(SBOM: Service BOM)は、修理や交換が必要な部品に焦点を当てています。
用途別のBOM
用途別のBOMを解説します。
設計部品表(E-BOM)
設計部品表(Engineering Bill of Materials/E-BOM)は、製品の設計段階で作成される部品表です。製品の構造や構成要素を技術的観点から表現し、CADデータや設計図面と密接に関連しています。E-BOMには製品を構成するすべての部品、材料、モジュールとその関係性が含まれ、設計者の視点で整理されています。設計変更や製品開発のプロセスを管理する上で重要な役割を果たします。
製造部品表(M-BOM)
製造部品表(Manufacturing Bill of Materials/M-BOM)は、実際の製造プロセスに沿って構成された部品表です。E-BOMを基に作成されますが、製造工程、組立順序、作業指示などの情報が追加されています。M-BOMは生産計画、工程管理、材料調達などの製造活動を効率的に進めるための基盤となります。製造現場での実務に即した形式で、製造可能性を考慮した構成になっています。
販売部品表(S-BOM)
販売部品表(Sales Bill of Materials/S-BOM)は、販売・マーケティング活動で使用される部品表です。製品の販売構成、オプション、パッケージング情報などを含み、営業担当者や顧客向けに製品構成をわかりやすく表現します。製品カタログやコンフィギュレーターの基礎となり、価格設定や受注管理にも活用されます。顧客視点での製品構成を表現することで、製品選定や注文プロセスをスムーズにします。
購買部品表(P-BOM)
購買部品表(Procurement Bill of Materials/P-BOM)は、調達・購買活動に特化した部品表です。製造に必要な購入部品、材料、外注加工品などの調達情報を整理しています。サプライヤー情報、価格、納期、調達リードタイム、代替品などの情報が含まれ、効率的な調達活動や原価管理を支援します。サプライチェーン管理と密接に関連し、調達リスクの低減や戦略的購買活動の基盤となります。
保守部品表(S-BOM)
保守部品表(Service Bill of Materials/S-BOM)は、製品の保守・メンテナンス活動を支援するための部品表です。製品出荷後のサービス、修理、保守に必要な部品情報や交換手順を整理しています。保守マニュアル、トラブルシューティングガイド、スペアパーツリストなどの作成基盤となり、アフターサービス品質の向上に貢献します。製品ライフサイクル全体を通じたサポート体制を構築する上で重要な役割を果たします。

BOM管理における課題
部品コードの統一
BOM(部品表)管理において最も基本的かつ重要な課題の一つが部品コードの統一です。多くの製造企業では、長年にわたり異なる部門や拠点で独自の部品コード体系を採用してきました。この結果、同一部品に対して複数のコードが存在する重複管理が発生し、部品の一元管理や原価計算を困難にしています。
また、企業の合併や買収によって異なるコード体系が混在することも珍しくありません。部品コードの統一には全社的な取り組みが必要であり、既存システムの改修や膨大なマスターデータの見直しといった工数がかかります。さらに、取引先との間でも部品コードの連携が必要となるため、社内だけでなく社外との調整も必須となります。
ヒューマンエラー
BOM管理では、設計変更や仕様変更に伴う情報更新が頻繁に発生します。この過程で生じるヒューマンエラーが大きな課題となっています。具体的には、データ入力ミス、最新版への更新忘れ、承認プロセスの不備などが挙げられます。
こうしたエラーは一見小さなミスに見えても、生産ラインでの部品欠品や誤った部品の使用、最終製品の品質問題といった深刻な結果を招くことがあります。特に製品の複雑化に伴いBOMに含まれる部品点数が増加する傾向にあり、ヒューマンエラーのリスクも比例して高まっています。検証プロセスの強化やシステムによるチェック機能の実装など、エラー防止の仕組み作りが不可欠です。
管理工数
BOM管理には相当な管理工数が必要となります。特に以下の点が大きな負担となっています。
設計変更管理においては、変更点の特定、影響範囲の把握、関連部門への連絡、承認プロセスの実施など多くのステップが必要です。また、製品バリエーションの増加に伴うBOMの派生管理も工数増加の要因となっています。
さらに、グローバル生産体制の中では、国や地域ごとの部品調達状況に応じたBOMの作成・管理が必要となり、これが管理工数を倍増させています。法規制や環境規制への適合確認のためのBOM管理は、近年ますます重要性が高まり、管理の負担も増しています。
これらの課題に対応するためには、BOM管理システムの導入・高度化によるプロセス自動化や、PLM(製品ライフサイクル管理)システムとの連携強化が有効な手段となります。また、部品コード体系の整理や標準化推進、管理プロセスの簡素化なども重要な取り組みです。
BOM管理システムを選ぶポイント
BOM管理システムを選定する際は、以下のようなポイントに注意しましょう。
ニーズに合った機能が搭載されているか
BOM管理システムを選定する際、最も重要なのは自社のニーズに合った機能が搭載されているかどうかです。製品開発プロセスや製造方法に応じて必要な機能は異なります。例えば、複雑な製品構成を持つ企業では階層構造の表現力や変更管理機能が重要になり、多品種少量生産の企業ではバリエーション管理機能が必須となるでしょう。また、設計変更が頻繁に発生する業界では、リビジョン管理や承認ワークフロー機能が不可欠です。さらに、既存システム(CAD、ERP、PLMなど)との連携性も検討すべき重要なポイントです。
導入・運用コスト
BOM管理システムの導入・運用コストは総所有コスト(TCO)の観点から評価する必要があります。初期導入費用だけでなく、ライセンス料、保守費用、カスタマイズ費用、トレーニング費用などの継続的なコストも含めて検討しましょう。また、システム更新や拡張時のコスト、将来的なスケールアップに伴う追加投資なども考慮することが重要です。コスト評価の際には、システム導入による業務効率化や品質向上などの効果も併せて検討し、投資対効果(ROI)を算出することで適切な判断が可能になります。
導入形式
BOM管理システムの導入形式には、オンプレミス型、クラウド型、ハイブリッド型などがあります。オンプレミス型はセキュリティやカスタマイズ性に優れていますが、初期投資や運用管理の負担が大きくなります。一方、クラウド型は初期投資を抑えられ、迅速な導入が可能ですが、カスタマイズ性に制限がある場合があります。企業の規模、IT環境、セキュリティポリシー、予算などを考慮して最適な形式を選択することが重要です。また、将来的な拡張性や他拠点との連携なども視野に入れた検討が必要です。
サポート体制
BOM管理システムは企業の中核業務を支える重要なシステムであるため、安定したサポート体制が不可欠です。導入時のサポートだけでなく、運用段階での技術サポート、トラブル対応、バージョンアップ対応などが充実しているかを確認しましょう。また、マニュアルやナレッジベースの整備状況、トレーニングプログラムの有無、問い合わせ窓口の対応時間なども重要な検討ポイントです。特に国内ベンダーの場合は日本語サポートの質と迅速性、海外ベンダーの場合は時差を考慮したサポート体制が整っているかを確認することが大切です。
BOM管理だけでなく物流もシステム化を
製造工程だけでなく出荷工程までを含めて効率化を図るには、物流システムの導入も重要な検討事項です。部品調達から製造、出荷までのサプライチェーン全体を最適化することで、リードタイムの短縮、在庫の適正化、物流コストの削減などが実現可能になります。
なお、Hacobuでは「運ぶを最適化する」をミッションとして掲げ、物流DXツールMOVO(ムーボ)と、物流DXコンサルティングサービスHacobu Strategy(ハコブ・ストラテジー)を提供しています。物流現場の課題を解決する物流DXツール「MOVO」の各サービス資料では、導入効果や費用について詳しくご紹介しています。
トラック予約受付サービス(バース予約システム) MOVO Berth
MOVO Berth(ムーボ・バース)は、荷待ち・荷役時間の把握・削減、物流拠点の生産性向上を支援します。
動態管理サービス MOVO Fleet
MOVO Fleet(ムーボ・フリート)は、協力会社も含めて位置情報を一元管理し、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。
配車受発注・管理サービス MOVO Vista
MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)は、電話・FAXによるアナログな配車業務をデジタル化し、業務効率化と属人化解消を支援します。
物流DXコンサルティング Hacobu Strategy
Hacobu Strategyは、物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援します。
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