更新日 2025.10.19

誤出荷とは?発生原因や生じる影響、物流倉庫の業務改善策を解説

誤出荷とは?発生原因や生じる影響、物流倉庫の業務改善策を解説

「なぜ誤出荷は発生してしまう?」

「誤出荷を防止する効果的な対策が知りたい」

物流倉庫の管理者や、自社商品の管理をアウトソーシングしている荷主の中には、このようにお考えの方も多いのではないでしょうか。誤出荷は単なる間違いではなく、オペレーションの崩壊やサプライチェーン全体の混乱につながるなど、経営の土台を揺るがすほどの深刻なトラブルです。

本記事では、物流倉庫で18年の現場経験を持つ筆者が、誤出荷の定義から発生してしまう原因を深掘りし、具体的な対策まで徹底解説します。

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誤出荷とは

誤出荷とは、受注した内容とは異なる商品を届けたり、異なる数量や宛先に出荷したりするミス全般を指します。ECサイトで注文した商品の色やサイズが違っていた、という経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが、それがまさに誤出荷の典型例です。

物流業務における品質低下の代表的な指標であり、顧客満足度の低下や返品・再発送といった余計なコストの発生に直結するため、多くの事業者にとって重要な経営課題となっています。

入出荷を含めた物流全般について一から学びたい方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。

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誤出荷の主な3つの種類

誤出荷は、大きく以下の3つの種類に分けられます。自社の課題がどれに当てはまるかを確認する上でも、それぞれの違いを理解しておくことが重要です。

  • 商品の誤出荷:注文された商品とは、種類・色・サイズなどが異なる商品を誤って出荷してしまうケースです。
  • 数量の誤出荷:注文された個数と異なる数量の商品を出荷してしまうケースです。
  • 宛先の誤出荷:商品の送り先を間違えて出荷してしまうケースです。

それぞれが起きてしまう原因については、次の章で詳しく解説します。

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【種類別】誤出荷が起こる原因

ここでは、以下の3つの誤出荷が起こる原因をそれぞれ深掘りしていきます。

  • 「商品」の誤出荷が起こる原因
  • 「数量」の誤出荷が起こる原因
  • 「宛先」の誤出荷が起こる原因

1. 「商品」の誤出荷が起こる原因

商品の誤出荷の背景には、以下の工程にそれぞれ原因が隠れていると考えられます。

  • 保管
  • ピッキング
  • 検品

たとえば、入荷した商品をそもそも違う棚に置いてしまったり、似たような商品を手に取ってしまったり、最終チェックの段階で見逃してしまったりするケースです。各工程で起こりうる原因を詳しく見ていきましょう。

ったロケーション(棚)に保管してしまう

入荷した商品を決められたロケーション(棚)とは違う場所に保管してしまうミスです。商品の保管場所を管理するロケーション管理のルールが曖昧だったり、作業員の勘違いや思い込みで保管されたりすることが主な原因です。

たとえば、本来A-1の棚に置くべき「Mサイズ」を、隣のA-2にある「Lサイズ」の棚に紛れ込ませてしまう、といった状況がこれにあたります。後に、Lサイズの出荷指示で確認せずにピッキングし、Mサイズを出荷してしまうトラブルにつながります。

保管業務の課題や効率化の方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

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異なる商品をピッキングしてしまう

出荷指示のあった商品を取り出す「ピッキング」で、別の商品を手に取ってしまうことも誤出荷の直接的な原因となります。以下のような要因で発生してしまうミスです。

  • 「いつもここにある商品だから」という作業員の思い込み
  • 倉庫内が暗くて品番が見えづらい
  • ピッキングリストの見間違い

筆者は、泡盛をピッキングする際に、同じ容量のアルコール度数「35度」と「43度」を間違えて出荷してしまった経験があります。以前と保管場所が変わっていたことが要因でした。ヒューマンエラーに加え、環境的な要因で起こりうるミスです。

検品設備が整備されていない

バーコードを読み取るハンディターミナルといった検品用のシステムが導入されていない場合、こうしたヒューマンエラーによる見落としを防ぐことは難しく、誤出荷のリスクを抱え続けることになります。

人の目に頼った目視検品は、作業員の習熟度やその日の体調、集中力によって精度が大きく左右されます。意外なところでは、「老眼」がミスの直接的な原因になる可能性があります。筆者の勤めていた現場は紙のピッキングリストの文字が小さく、中高年作業員のピッキングミスが多発していました。

誤出荷を音や光で知らせる検品設備があれば、このような誤出荷を防止できます。

2. 「数量」の誤出荷が起こる原因

「注文した数より多い、あるいは少ない」といった数量の誤出荷は、お客様からの信頼を損ねるだけでなく、在庫差異の原因にもなる厄介なミスです。その多くは、「数え間違い」や「単位の勘違い」といった、人が確認する工程でのヒューマンエラーやそれを引き起こす環境に要因があると考えられます。

商品を数え間違えてしまう

数量の誤出荷で最もシンプルな原因が、ピッキングや検品の際の数え間違いです。細かい商品を大量に扱う場合や、集中力が欠けていたり、出荷時間に追われて焦っているなど、作業者の心理的な状況も大きく影響します。

商品の単位を間違えてしまう

商品の発注単位と在庫単位の認識が異なっているケースです。「ケース」「ボール」「ピース(バラ)」など、複数の荷姿で商品を管理している現場では注意が必要です。

たとえば、「1ケース(12個入り)」で管理している商品を、「1個」の出荷指示があった際に、バラさずに1ケースをまるごと出荷してしまう、といったケースが典型例です。

ピッキングの際に多く取ってしまう

意図せず注文数より多く商品をピッキングしてしまうケースもあります。

たとえば、薄い書類やカードのような商品を棚から取り出す際に、商品同士が静電気などでくっついてしまい、気づかずに2枚重ねて取ってしまう、といった状況です。商品がビニール袋にまとめて入っている場合などにも発生しやすく、後の検品工程でも見逃されやすいミスの一つです。

目視による検品の際に見落としてしまう

数量が合っているかを確認する検品工程も、目視に頼っている場合はミスが発生するポイントです。筆者は出荷貨物の検品をする際、パレットに積んである貨物が複雑なはい付け(積み付け)で数を読み違えたり、隙間に落ちている商品を見落としていたことで数量間違いを起こしたことがありました。

ピッキング担当者とは別の作業員がダブルチェックをしても、思い込みや慣れによって形骸化してしまい、正確な数を確認しきれないケースも少なくありません。

3. 「宛先」の誤出荷が起こる原因

商品の送り先を間違える「宛先」の誤出荷は、お客様にご迷惑をおかけするだけでなく、個人情報の漏洩にもつながる重大なミスです。原因は以下が考えられます。

送り状伝票を貼り間違えてしまう

宛先の誤出荷のほとんどは、荷物と送り状の組み合わせを間違えて貼り付けてしまうことが原因です。それにより、いわゆる「テレコ発送」が発生してしまいます。

たとえば、A様宛の荷物とB様宛の荷物を同時に梱包している際に、それぞれの送り状を逆さまに貼り付けてしまう、といった人的ミスが典型例です。

手書き伝票を書き間違えてしまう

伝票を手書きで運用している場合に起こりうる誤出荷です。送り先を書き間違えたり、走り書きなどで書かれた文字を配送ドライバーが誤読し、誤配送につながるケースもあります。

誤出荷によって生じる影響

ここでは、誤出荷が引き起こす主な影響として、以下の3つを解説します。

  • 物流コストが増加してしまう
  • 在庫数に差異が生じてしまう
  • 自社の信頼が失われる

物流コストが増加してしまう

誤出荷が発生すると、直接的なコストの増加は避けられません。具体的には、以下のような費用が発生します。

  • 返品・交換にかかる配送コスト
  • 謝罪や正しい商品の手配にかかる人的コスト

この他にも、開封済みでアウトレット商品になってしまうなど、商品価値の低下も避けられません。

在庫数に差異が生じてしまう

誤出荷は、倉庫内の在庫管理の精度に直接悪い影響を与え、システム上の在庫数と実在庫の間に差異を生じさせます。

在庫があるはずなのに欠品していて販売機会を逃したり、逆に不要な発注で過剰在庫を抱えてキャッシュフローを悪化させたりと、二次的な問題を引き起こします。

自社の信頼が失われる

誤出荷がもたらす最も深刻な影響は、お客様からの信頼を失うことです。注文と違う商品が届けば、お客様をがっかりさせるのは当然です。

たびたびミスを犯すようであれば、口コミやSNSで悪い評判が広がるリスクもあり、一度失った信頼の回復は困難です。長期的に見れば、この信頼低下は売上の減少に直結し、企業のブランドイメージを大きく損なう最も深刻なダメージと言えるでしょう。

誤出荷を防ぐ業務の改善方法

ここでは、誤出荷を防ぐ業務の改善方法として、代表的な3つをご紹介します。

  • 倉庫内を整理し商品の保管場所を明確化する
  • 作業ルールの統一・周知を徹底する
  • WMS(倉庫管理システム)を導入する

倉庫内を整理し商品の保管場所を明確化する

誤出荷対策の基本は、ロケーション管理の徹底です。以下のポイントで保管場所を最適化し、作業員の勘や思い込みによるミスを防ぎます。

  • 固定/フリーの使い分け:商品の特性に応じて保管方法のルールを明確化する。
  • 類似品の分離:品番やデザインが似た商品を意図的に離し、ピッキングミスを防ぐ。
  • ABC分析とゾーニング:出荷頻度の高い商品を最も作業しやすい場所に集約する。

保管の課題や効率化のポイントについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

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作業ルールの統一・周知を徹底する

作業員の経験や勘に頼ると、品質が安定せずミスも起こりやすくなります。特にピッキングには、オーダーごとに商品を集める「摘み取り式」や、複数オーダー分をまとめて集める「トータルピッキング」など複数の方式があるため、自社に合った方式のルールを標準化し、誰でも同じ作業ができるよう徹底することが重要です。たとえば以下のようなマニュアルを作成します。

【トータルピッキングの作業マニュアル例】

  1. リストに基づき、各商品の必要合計数をまとめてピッキング。
  2. 仕分けエリアに運び、オーダーごとに商品を振り分ける(種まき)。
  3. 全商品の振り分け後、検品を行い梱包へ回す。

作業員は必ずこの手順を守り、「自己流」を許さないことが誤出荷の発生や再発防止につながります。

WMS(倉庫管理システム)を導入する

WMSは入荷から出荷までの倉庫業務を一元管理し、作業の精度と効率を向上させる専門システムです。

一般的にハンディターミナルでバーコードをスキャンしながらの作業で、思い込みや勘違いによるヒューマンエラーを大幅に削減できます。

導入のメリットとして以下が挙げられます。

  • 正確な在庫管理:商品の入出庫がデータで記録され、リアルタイムで正確な在庫数を把握できる。
  • 作業の標準化:作業員はハンディターミナルの指示に従うだけでよく、経験による品質のばらつきがなくなる。
  • 照合機能によるミス防止:違う商品をピッキングすると警告が出るため、その場で間違いに気づける。

次の章では、実際にシステムを導入して誤出荷を防止した事例をご紹介します。

誤出荷を防止するシステムの導入事例

ここでは、実際にシステム導入で誤出荷の削減など入出荷業務の効率化を実現した例を2つご紹介します。

  • スタッフの生産性大幅向上と在庫精度99.9%を実現
  • トラック入荷の最適化で構内作業にも余裕が!人員の最適化を実現

スタッフの生産性大幅向上と在庫精度99.9%を実現

米国の冷暖房機卸売業者であるJohnstone Supply社は、事業拡大に伴い配送センターが増加し、拠点間の在庫データに食い違いが起きるという課題を抱えていました 。これにより、データ入力作業が増え、人員の増加も招いていました 。

そこで同社は、在庫管理だけでなく、労務管理や3Dビジュアル分析機能も備え、複数倉庫の情報を一元的に可視化できる点が特徴のクラウド型倉庫管理システム(WMS)を導入 。

その結果、スタッフの生産性が大幅に向上し、誤出荷の削減などにより在庫精度は99.9%に改善されました 。また、新入社員でも約10日でシステムを習得できる操作性の高さから 、業界特有の繁忙期においても、オペレーション全体の一貫性を確保することに成功しました 。

参照元:国土交通省「物流・配送会社のための物流DX導入事例集」

トラック入荷の最適化で構内作業にも余裕が!人員の最適化を実現

50万点もの商品を扱い、トラックの長時間待機が常態化していた日本出版販売株式会社様。同社は、トラック予約受付サービス「MOVO Berth」を導入し、車両の到着状況を可視化し定量的なダイヤ改善を実現しました。

車両到着のタイミングが正確に予測できるようになったことで、経験則に頼っていた人員配置から脱却。作業量に応じた適切な人員配置や、計画的な休憩時間の確保が可能となり、現場の生産性向上に大きく貢献しています。

結果、構内スペースに大きな空きが生まれ、場内を安全かつ効率的に活用できるようになりました。スペースに余裕があればロケーション管理や安全な作業場所を確保でき、誤出荷の防止にも期待できます。

同社が導入したMOVO Berthをはじめとしたサービスを提供するHacobuは、物流DXコンサルティング事業「Hacobu Strategy」を提供しています。詳しくは、次の章で解説します。

物流効率を改善するならHacobu Strategy

Hacobu Strategyは、誤出荷防止をはじめとした物流全体の効率化を支援する物流DXコンサルティングサービスです。 単なる改善提案だけではなく、現場の声や業界動向といった定性データと、物流データの徹底分析による定量的な知見を掛け合わせ、課題の本質を可視化します。また、物流の実務経験と大手コンサルティングファームの戦略立案力を併せ持つメンバーが多数在籍。経験豊富なデータサイエンティストが、現場で実践できるアクションプランの策定まで伴走します。

「どこでミスが起きているのか」「ボトルネックがどこにあるのか」を明確にし、誤出荷だけでなく、在庫精度や生産性など倉庫全体の最適化を実現します。Hacobu Strategyの概要は以下ページをご覧ください。

まとめ

本記事では、誤出荷の種類や原因、企業に与える影響、そして具体的な改善策について解説しました。

誤出荷は、単なる現場の作業ミスとして片付けられる問題ではありません。返品・再発送によるコスト増加や、在庫差異の発生、そして何より顧客からの信頼失墜に直結する深刻な経営課題です。

物流倉庫がこれらの課題を解決するためには、倉庫内の整理整頓や作業ルールの徹底といった地道な改善活動に加え、WMS(倉庫管理システム)のようなデジタル技術の活用が有効です。

もし、荷主様がアウトソーシング先での度重なるトラブルに悩まされているなら、ぜひ物流改善のスペシャリスト集団である「Hacobu Strategy」をご活用ください。少しでもご興味を持たれた方は、以下のリンクをクリックし、サービス資料をダウンロードしご覧になってください。

著者プロフィール / 井上 ダイスケ
物流業界歴18年以上。港湾の職業訓練校を経て、港湾荷役の最前線でRORO船の荷役などに従事。その後、14年以上にわたり倉庫業務も経験し、安全衛生担当者や労働組合執行役員として、現場作業だけにとどまらない多角的な視点から物流現場を深く理解した。この豊富な実務経験と、フォークリフトやクレーン運転士など多数の国家資格に裏打ちされた専門知識を土台に、現場目線でのリアルな記事執筆を得意とする。また、AmazonセラーとしてのEC運営経験から、荷主側の視点に立ったライティングにも対応可能。自動車関連の執筆実績も多数。 >>プロフィールを見る

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