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執筆者:菅原 利康

ついに始まった3省合同会議 | 流通業務総合効率化法の規制的措置の最新動向を解説

改正流通業務総合効率化法における荷主・物流事業者等に対する規制的措置の施行に向けた検討が行われており、2024年6月28日には国土交通省・経済産業省・農林水産省の3省による第1回目の合同会議が行われました。

本記事では、同会議で提示され、検討が進んでいくであろう規制的措置の判断基準や、特定事業者などの取組状況に関する調査・公表の方法、特定事業者に求められる具体的な対応などを物流DXパートナーのHacobuが解説します。

※2024年6月28日に提示された内容は、規制的措置に関する今後の検討事項であり、確定事項ではありません。

この記事でわかること

  • 改正流通業務総合効率化法の施行は2025年度〜、2026年度〜に分かれる
  • 特定事業者に対して物流効率化の目標を定め、取組状況を調査、回答を点数化し、点数の公表を検討している
  • 物流統括管理者の業務内容として、物流効率化に向けた中長期計画の策定・定期報告だけでなく、水平連携や垂直連携の推進、商慣行の見直しなどを含むことを検討している

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流通業務総合効率化法とは

流通業務(輸送、保管、荷さばき及び流通加工)を一体的に実施するとともに、輸送網の集約やモーダルシフト、輸配送の共同化などの輸送の合理化により、流通業務の効率化を図る事業に対する計画の認定や支援措置等を定めた法律です。 国土交通省では、昨今の物流分野における労働力不足や荷主や消費者ニーズの高度化・多様化による多頻度小口輸送の進展等に対応するため、同法に基づき、2以上の者の連携による流通業務の省力化及び物資の流通に伴う環境負荷の低減を図るための物流効率化の取組を支援しています。

流通業務総合効率化法の改正

2024年5月15日、改正流通業務総合効率化法が公布されました。

同法改正では、輸送などの効率化に取り組む事業者への支援を盛り込むとともに、効率化への取り組みを荷主や物流事業者の努力義務としました。また、一定規模以上の事業者には、物流統括管理者の選任や物流効率化に向けた中長期計画の策定を義務付けるなどしています。

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3省合同会議とは

2024年6月28日、3省合同会議(正式名称「国土交通省物流部会・経済産業省流通小委員会・農林水産省物流小委員会 合同会議」)の第1回会合が行われました。

国土交通省 交通政策審議会の物流部会、経済産業省 産業構造審議会の流通小委員会、農林水産省 食料・農業・農村政策審議会の物流小委員会のメンバーが委員として出席し、物流を取り巻く現状と取り組み状況や、同法施行に向けて必要な検討事項について確認し、今後の検討の進め方について話し合いが行われました。

流通業務総合効率化法の今後の流れ

同法改正について、今後の施行までの流れを解説します。

まず前提として、同法改正ではドライバーの運送・荷役などの効率化のための規制的措置が新設されます。

下記のとおり、事業者全般に関わる法令の施行が公布後1年以内に、特定事業者に関わる法令の施行が公布後2年以内に、それぞれ行われます。

これに合わせて、規制的措置の詳細は政省令などで定められます。

第1回の3省合同会議で提示された規制的措置の内容を踏まえ、業界団体へのヒアリングや意見交換、パブリックコメントを実施しながら、第2回・第3回と会議を進めていき、政省令などの案が作成されていきます。

事業者全般に関わる法令の施行

  • 基本方針
  • 荷主・物流事業者の努力義務・判断基準
  • 判断基準に関する調査・公表

特定事業者に関わる法令の施行

  • 特定事業者の指定
  • 中長期計画の提出・定期報告
  • 物流統括管理者の選任

引用:3省合同会議 第1回配布資料「物流を取り巻く現状と取組状況について」

第1回の3省合同会議

ここからは第1回の3省合同会議で提示されたポイントを解説します。

基本方針

同法改正では、持続的なトラック運送に向けて、ドライバーの運送・荷役などの効率化の推進に関する基本方針を国が定めます。その具体的な内容の検討が必要として、それぞれ以下について検討の視点が提示されました。

  • 意義及び目標
  • 国や行政が行うべき内容
  • 荷主や物流事業者が行うべき内容
  • 国民の理解促進のための内容

概ねこれまで発表されてきた「物流の適正化・生産性向上に向けたガイドライン」や「2030年度に向けた政府の中長期計画」に明記されている内容とほぼ同じですが、ドライバーの荷待ち・荷役等時間について今後検討していく事項が提示されました。

1運行あたりの荷待ち・荷役時間を計2時間以内を目標、1回の受渡しごとの荷待ち・荷役時間は原則として1時間以内を目標にすることを検討しています。 (業界特性その他の事情によりやむを得ない場合は、業界ごとに目標を設定し、荷待ち・荷役時間の削減に取り組んでいくことになると予想されます。)

引用:3省合同会議 第1回配布資料「改正物流効率化法に基づく基本方針、判断基準、指定基準等について」

荷主・物流事業者の判断基準

同法改正では、荷主・物流事業者に対する物流効率化のため努力義務について、省令で判断基準を今後検討していく事項が提示されました。また、荷主・物流事業者の理解促進のために、取り組み事例などを記載した「判断基準の解説書」の作成も重要と書かれています。

例えば、以下のような提示がありました。

  • 適切なリードタイムの確保や発送量・納入量の適正化が図られるよう、社内の関係部門(物流・調達・販売 等)の連携を促進
  • トラック予約受付システムや標準仕様パレット、自動化・機械化機器などの導入
  • 物流情報標準ガイドラインへの準拠など物流データの標準化

荷主などの取組状況に関する調査・公表

同法改正では、荷主などの判断基準に関して、国が調査・公表を行うこととされているため、その具体的な方法について提示がありました。

  • 物流事業者に定期的なアンケート調査を実施
  • 荷待ち・荷役時間の短縮、積載率の向上に関する項目別に回答を点数化し、点数の公表(高い・低い双方)
  • 価格交渉について中小企業にアンケート調査、点数化・公表
  • 長時間の荷待ち、契約にない附帯業務、無理な運送依頼が常態化している場合には、トラックGメンに情報共有し、働きかけや要請につなげていく

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特定事業者の指定基準

同法改正では、一定規模以上の事業者を特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告などを義務付け、中長期計画の実施状況が不十分な場合、国が勧告・命令を実施するとしています。

特定事業者の基準

それぞれ以下の内容にて、大手の事業者から順に日本全体の貨物量の半分程度となると想定されています。

  • 荷主:取扱貨物重量
  • 倉庫業:保管量(注:同会議で配布された資料では保管量とされていますが、当日の議場では、入出荷量にすべきという意見がありました。)
  • 運送業:保有車両台数

中長期計画・定期報告の記載事項

中長期計画策定と定期報告について、今後の検討事項が提示されました。

  • 計画:毎年度の提出を基本としつつ、計画内容に変更がない限りは5年に1度の提出
  • 報告:簡易的なチェックリストを用いながら、「取組の実効性の担保」と「業務負荷の軽減」の双方に配慮しつつ、報告

荷待ち・荷役時間の算定方法

同法改正では、荷待ち・荷役時間の算定方法は省令で定めるとされていますが、算定方法の今後の検討事項が提示されました。

  • 荷待ち:指示時刻から荷役開始時刻まで(トラックが遅刻した場合、到着時刻から荷役の開始時刻まで)
  • 荷役:ドライバーがトラック事業に附帯する業務の開始時間から終了時間まで
  • 1つの施設内で荷卸しと荷積みの両方を行う場合は、荷卸しと荷積みを別々の荷待ち・荷役として計測する

物流統括管理者の業務内容

同法改正では、物流統括管理者の業務内容は以下の3点としています。

1:物流効率化に向けた中長期計画の作成 2:ドライバーの負荷低減と輸送される物資のトラックへの過度の集中を是正するための事業運営方針の作成と事業管理体制の整備 3:その他ドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務

3つ目「その他の業務」は省令で定めるとされていますが、今後の検討事項が提示されました。

  • 前述の定期報告
  • 社内の物流・調達・販売間の連携体制の構築
  • 設備投資、デジタル化、物流標準化に向けた事業計画の作成
  • フィジカルインターネットの実現に向けた水平連携や垂直連携の推進
  • 商慣行の見直しやオペレーションの調整、物流標準化

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荷主・物流事業者の物流改善の評価・公表について

荷主・物流事業者による物流改善の取り組みや実施状況について、ランク評価などによる見える化を行い、企業の努力が消費者や市場からの評価につながる仕組みの創設を検討しています。

仕組みは省エネ法の工場規制を参考にすると言及がありました。省エネ法の工場規制では、事業者クラス分け評価制度が存在し、省エネ法の定期報告書を提出した特定事業者をS・A・B・Cの4段階へクラス分けし、クラスに応じた対応を実施するものとなっています。

出所:経済産業省資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」から抜粋

同法に関しても、類似の評価制度を創設し、荷主・物流事業者が提出した定期報告書の内容を確認の上、判断基準に基づく取組の実施状況について優良な事業者、更なる努力が期待される事業者、停滞している事業者、注意を要する事業者のランク評価による見える化を行い、消費者や市場からの評価につなげていく考えが提示されました。

委員による議論内容

前述した通り、これまで解説してきた内容は確定事項ではなく、まだ検討の段階です。第1回会議では、各委員から多数の感想や意見がフィードバックされました。

複数の委員から「トラック予約受付システムを導入したが、ドライバーの荷待ち時間は減っていないという声を聞く。」「トラック予約受付システムをどのように使うべきかなどの使い方を解説書に明記した方がいい。」などといった意見がありました。

トラック予約受付システムのMOVO Berth(ムーボ・バース)を提供するHacobuとしても、この意見に賛同します。トラック予約受付システムは、ただ導入すれば荷待ち時間が削減できるものではなく、物流拠点が自拠点に最適な予約ルールを設定したり、ドライバーや予約者に対してそのルールを周知するなどの必要があると考えています。つまり、トラック予約受付システムの「導入」と最適な「運用」で、荷待ち時間は削減できます。

Hacobuでは、物流拠点で発生する荷待ち時間のうち、物流拠点が起因の荷待ち時間を「有責待機」と定義し、荷待ち時間の把握・削減のための重要な指標として、その概念を提唱しています。

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Hacobuはこれらも有責待機を削減するための、機能開発や手厚い運営支援体制を今後も行い、物流の効率化に貢献していきます。

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著者プロフィール / 菅原 利康

株式会社Hacobuのマーケティング担当

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