更新日 2026.07.05

燃料費高騰の現状と推移|運送業への影響と今やるべき対策について解説

燃料費高騰の現状と推移|運送業への影響と今やるべき対策について解説

燃料費高騰が続くなか、運送業では「燃料代の増加」をそのまま利益の圧迫につなげない工夫が欠かせません。本記事では、燃料費高騰の背景と運送業への影響を整理し、エコ配送や燃油サーチャージ、DX活用など“今やるべき対策”を解説します。

燃料費高騰の現状と推移

燃料費高騰は、2026年3月に「急騰」として表面化しました。図のとおり、軽油の全国平均価格(週次)は2026年1〜2月にかけて155〜157円/L台で推移していた一方、3月は上昇基調に転じ、3/16週に190.8円/Lまで急伸しています。その後は170円/L前後へ反落したものの、短期間で水準が大きく切り上がりました。帝国データバンクも2026年3月の原油価格高騰を「価格ショック」と整理しており、運送業では原価管理の精度向上と、燃料サーチャージ等による転嫁設計を急ぐ必要があります。

軽油価格の推移(2026年1〜3月・週次)

関連リンク:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260406-tdbreview-no45/

政府や自治体による燃料費高騰への対応・支援

燃料費高騰に対して政府は、店頭価格の急騰を抑える目的で元売りへの補填を通じた支援を行っています。具体的には、2025年5月からガソリン・軽油を一定額引き下げる「燃料油価格定額引下げ措置」を導入し、補助額は週次で見直される運用です。加えて2025年6月には、市場の急変時に自動的に補助を発動する「予防的激変緩和措置」も追加され、短期の混乱を抑える枠組みが強化されました。また税制面では、ガソリン暫定税率の年内廃止に向けた合意が示されるなど、補助から減税へ政策の軸足を移す動きもあります。自治体でも、事業者向けに省エネ投資や設備導入を支援する制度が設けられる場合があるため、国の制度とあわせて公募情報を継続的に確認することが重要です。

燃料費高騰の主な要因

燃料費高騰の背景には複数の要因があります。本章では、世界的な需要の増加、歴史的な円安の影響、ロシア・ウクライナ情勢などの地政学リスクの3点から、燃料価格が上がる仕組みを整理します。

世界的な需要の増加

世界的な需要の増加は、原油価格を押し上げ、結果として燃料費高騰につながります。コロナ禍で一時落ち込んだ移動・生産活動が各国の景気回復とともに持ち直し、物流や航空、製造業などでエネルギー需要が回復しました。需要が増える局面では原油の国際価格が上がりやすい一方、供給はOPECなどが生産量を調整するため、需要に対して供給がすぐに増えないことがあります。そのため、需要回復と供給調整が重なると、燃料価格が上がりやすい状況が続きます。

歴史的な円安の影響

円安が進むと燃料費が上がりやすいのは、原油の「買い方」に理由があります。日本は原油をほぼ海外から輸入しており、原油の代金は基本的に米ドルで支払います。ここで、1バレル100ドルの原油を買う場合、為替が1ドル=100円なら支払いは1万円相当ですが、1ドル=150円なら1万5,000円相当になります。同じ量・同じドル価格の原油でも、円安になるだけで円での負担が増えるということです。近年は円安の状態が続きやすく、原油価格の上昇と重なると、国内のガソリン・軽油価格に上昇圧力がかかりやすくなります。

ロシア・ウクライナ情勢などの地政学リスク

地政学リスクは、原油の供給不安を強め、燃料価格の上昇につながります。原油は産出地域が偏っており、紛争や制裁、周辺国の緊張が高まると、生産や輸送の停滞が懸念されます。その結果、実際の供給減が起きる前でも「今後不足するかもしれない」という見通しが市場で意識され、原油価格が上がりやすくなります。近年ではロシアのウクライナ侵攻に加え、中東情勢の悪化なども重なり、供給リスクが価格を押し上げる要因になっています。

燃料費高騰が運送業へもたらす影響

燃料費高騰は、運送業の経費を直接押し上げ、利益の圧迫や資金繰り悪化につながります。特に燃料は日々の運行量に応じて発生するため、上昇局面では損益への反映が早く、荷物を運ぶほど採算が崩れる事態も起こり得ます。一方で、燃料価格上昇分を運賃に上乗せできないケースも多いのが実情です。理由として、値上げを提示すると競合に仕事を取られる懸念があること、荷主側も物価高でコスト負担が増えていること、元請・下請構造などで荷主と直接交渉しにくいことが挙げられます。

短期(1~3ヶ月)

短期的には、原油高が「価格ショック」として燃料小売価格に比較的早く波及し、運送業では燃料費が即座に増加します。TDBも、輸入エネルギーコストの上昇が企業収益を圧迫し、先行き不安を通じて景況感を悪化させる流れを示しています。運賃への転嫁にはタイムラグがあるため、利益率の低下や資金繰りの逼迫が起こりやすくなります。
関連リンク:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260406-tdbreview-no45/

中期(3~6ヶ月)

中期(3~6ヶ月)では、原油高の影響が燃料にとどまらず、価格転嫁を通じて原材料費・サービス費など幅広いコスト上昇として波及しやすくなります。TDBも、原油高が企業利益を圧迫しつつ、食料品や日用品、サービスへ影響が広がる流れを示しています。運送業では燃料費に加えて周辺コストも増え、運賃改定が追いつかなければ採算悪化が長期化します。
関連リンク:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260406-tdbreview-no45/

中・長期(6~12ヶ月)

中・長期(6~12ヶ月)では、原油高の影響が燃料費の増加にとどまらず、企業収益の圧迫を通じて投資や賃上げ余力を下押しし、取引先のコスト抑制や需要の鈍化として跳ね返る可能性があります。TDBも、交易条件の悪化などを通じて実質所得を押し下げ得る点を示しており、運送業では採算悪化が長期化しやすくなります。
関連リンク:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260406-tdbreview-no45/

燃料費高騰はいつまで続くのか

燃料費高騰がいつまで続くかは一概に断定できませんが、少なくとも短期で元の水準に戻ると見込みにくい状況です。背景には、ロシア・ウクライナ情勢や中東の緊張などによる供給不安、円安が続くことによる輸入コスト増、景気回復局面での需要増といった複数要因が重なり、価格が高止まりしやすい構造があります。一方で、脱炭素の流れにより、原油需要は2030年頃まで緩やかに増え、その後は減少・鈍化する可能性があるとの見通しも示されています。ただし、OPECの生産調整や地政学リスク次第で、需要が弱まっても価格が下がりにくい局面はあり得ます。

運送業者が今やるべき燃料費高騰対策

燃料費高騰に備えるには、燃料消費を抑える運行・運転の見直しと、燃料サーチャージ等による適正な価格転嫁を進めることが重要です。本章では、稼働効率化、補助金活用、デジタルツール活用まで含めて整理します。

エコ配送を実施する

エコ配送は、燃料費高騰時に「今ある運行をそのままに、燃料の使い方を減らす」ための基本対策です。具体的には、急発進・急加速を避け、一定速度を保つ、エンジンブレーキを活用するなどのエコドライブを徹底し、無駄な燃料消費を抑えます。加えて、荷積み・荷降ろし時や休憩中の不要なアイドリングを減らすことも効果的です。さらに中長期的には、低燃費な車両(燃費性能の高い車両やハイブリッド車など)への更新を進めることで、ドライバーの工夫だけに頼らず、燃料使用量を継続的に抑えられます。

燃料(燃油)サーチャージ制を導入する

燃料(燃油)サーチャージは、燃料価格の上昇で増えたコスト分を、運賃とは別建てで「荷主(または元請)に請求し、負担してもらう」ための仕組みです。燃料高を運送会社だけで吸収し続けると採算が崩れやすいため、変動分を取引先と合理的に分担する狙いがあります。運用では、基準となる燃料価格と見直し頻度(例:月次)を決め、一定幅以上の変動があった場合にサーチャージ単価を改定します。算定根拠(走行距離・輸送回数など)を明確にし、契約書や覚書に計算方法と適用条件を明記して合意することが重要です。

車両の稼働効率化を図る

車両の稼働効率化は、燃料費高騰局面でも「走らせ方」を変えることで燃料消費とコストを同時に抑えられる重要な対策です。具体的には、配送ルートの組み替えや配車計画の見直しにより、空車回送や迂回を減らし、1台あたりの積載率を高めます。さらに、納品頻度や時間帯の調整、荷待ち・荷役の発生しやすい工程の改善によって、停車中のムダやアイドリングを抑えることも効果的です。車両台数や便数を最適化できれば、同じ輸送量でも走行距離を短縮でき、燃料費の影響を受けにくい運行体制につながります。

補助金を利用する

補助金の活用は、燃料費高騰の局面で資金負担を抑えつつ、燃費改善や業務効率化に向けた投資を進めるうえで重要です。燃料価格そのものは自社でコントロールできないため、補助制度を使って低燃費車両への更新や業務効率化の取り組みを後押しできれば、燃料消費量の削減やコスト構造の改善につながります。具体的には、国・自治体・業界団体の公募情報を定期的に確認し、対象経費や要件(設備導入、車両更新、システム導入、実績報告など)を満たす形で申請計画を立てます。採択後の報告まで見据え、見積・契約・証憑を整理しておくことも重要です。

デジタルツールを活用する

デジタルツールの活用は、燃料費高騰に対して「勘と経験」ではなく、データにもとづいて改善を継続するために重要です。具体的には、運行実績・走行距離・待機時間・燃費などをデジタルで記録し、燃料を押し上げている要因(荷待ちの長い拠点、アイドリングが多い時間帯など)を可視化します。改善後の効果も数値で追えるため、対策が形骸化しにくくなります。さらに、実績データは燃油サーチャージ等の説明資料としても使え、社内外の合意形成を進めやすくなります。

物流DXの推進により業務効率化に成功した企業事例

物流DXによる動態管理の活用で、車両の運行状況や配送実態をリアルタイムに可視化し、荷主への報告業務の効率化やコスト削減に成功した企業事例を紹介します。取り組み内容と得られた効果を具体的に整理します。

【事例1】株式会社三友ロジスティクス|荷主への配送状況報告を効率化

食品輸送を担う三友ロジスティクスは、九州8営業所にMOVO Fleetを導入しました。以前は荷主への到着時間や配送状況の報告を、窓口となる営業所が各営業所に確認して取りまとめており、社内の報連相が煩雑になり報告の遅延も生じていました。そこで車両の動態管理情報を一元化し、荷主自身がリアルタイムで運行状況を確認できる仕組みを構築。共同配送でも荷主ごとに自社の荷物情報のみを表示する制御を実現しました。結果として、報告のための業務工数を大幅に削減しながら荷主満足度を高め、交通事故や自然災害時にも車両状況を即座に把握できるようになり、全拠点で緊急時の対応力が向上しています。
関連リンク:https://hacobu.jp/case-study/12837/

【事例2】株式会社日本陸送|年間約200万円のコスト削減と可視化

自動車部品のジャストインタイム輸送を手掛ける日本陸送は、外部ベンダーに開発を委託した自社の動態管理システムを運用していましたが、車両が100台を超えた頃から通信不具合や動作不良が多発し、改修コストの高さや操作性の複雑さから現場で使われないシステムになっていました。そこでSaaS型のMOVO Fleetへ切り替えた結果、自社システム比で年間約200万円のランニングコストを削減。渋滞や災害による交通障害時のルート変更や乗務員への指示対応スピードが格段に向上し、全運行状況をリアルタイムに把握できることで管理者の電話対応も半減しました。さらにCO2排出量や積載率の可視化により、荷主企業への新たな価値提供にもつなげています。
関連リンク:https://hacobu.jp/case-study/7579/

物流課題をDX化で解決するなら「Hacobu」

燃料費高騰への対応には、エコ配送などの現場改善に加え、車両の運行状況や配送実態をデータでつなぎ、ムダやボトルネックを継続的に可視化・改善する仕組みが欠かせません。Hacobuの動態管理サービス「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」は、車両の位置情報や運行状況をリアルタイムに可視化し、配送状況の報告負担の削減やルート最適化、CO2排出量・積載率の可視化を支援します。データ活用を通じて、物流現場の生産性向上と持続可能な運用を実現します。

MOVO Fleetの資料は以下よりダウンロードいただけます。

まとめ

燃料費高騰は原油高・円安・地政学リスクなどが重なり、運送業の収益を直撃します。短期は燃料費増で資金繰りが悪化しやすく、中長期は周辺コスト上昇や需要鈍化にも注意が必要です。エコ配送や稼働効率化、燃油サーチャージの導入に加え、DXで業務を可視化・標準化し、継続的に改善することが重要です。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営し、物流の基礎知識や法律を分かりやすく解説するメディア「ハコブログ」編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

クラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」のマーケティングを管掌し、荷主企業や物流事業者の業務デジタル化(DX)を推進。専門知識を活かし、ロジスティクス分野の専門誌への寄稿や、様々な業界団体での講演活動にも登壇。「最新ツールの普及」と「分かりやすい情報発信」の両面から、物流業界の課題解決に現場目線で取り組んでいる。 >>プロフィールを見る

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