輸送コストの削減方法は?高騰の要因や物流コストとの違いを解説
近年、燃料価格の上昇やドライバー不足などの影響で、輸送コストは年々高騰しています。輸送コストは物流コスト全体の中でも大きな割合を占め、企業の利益や競争力に直結する重要な費目です。そのため、単なる運賃交渉だけではなく、輸送距離・ルート・積載率といった構造的な要因を見直し、効率的な運用を実現することが欠かせません。 本記事では、輸送コストの基本的な仕組みや物流コストとの違い、高騰している背景、そして実務に役立つ削減方法などについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。
なお、輸送コストの上昇にお悩みなら、物流DXコンサルティングのHacobu Strategyがご支援できます。Hacobu Strategyの概要は以下ページをご覧ください。
目次
輸送コストとは
トラックなどによる輸送コストです。入荷側、出荷側、社内転送などの車両の費用が含まれます。これは物流に関わるコストの約60%を占めると言われ、企業の利益に影響を与えやすい費目です。
輸送コストの削減策として初めに考え付くのは、運送会社との料金交渉だと思います。 しかし、それには限界がありますし、根拠なき値下げ交渉は避けた方が良いでしょう。コスト削減のためには運送を効率化する方法を考えなければなりません。しかし、昨今ドライバーの人手不足などによって、運送費が上昇しています。
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物流コストとの違い
輸送コストと物流コストは、対象となる物資の移動範囲が異なります。輸送コストは、トラックや船舶などを使って物資をA地点からB地点へ運ぶ際にかかる費用を指します。一方、物流コストは輸送コストを含む、より広範囲なコストです。具体的には、保管費用、荷役費用、包装費用、流通加工費用、物流管理費用なども含まれます。
つまり、輸送コストは物資の「移動」のみに焦点を当てたコストであるのに対し、物流コストは調達から保管、加工、配送まで、物資の流れ全体に関わるコストを網羅しています。企業が物流効率化を図る際には、輸送コストだけでなく、物流コスト全体を俯瞰して改善策を検討することが重要です。
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輸送コストの内訳
運送会社へ支払う輸送コストの中には、附帯業務という運送の前後にドライバーが行わなければならない作業の費用も含まれています。ドライバーは荷物の積み地で荷造りや検品、荷卸し地では入荷仕分けや棚入れなどを行うことがあります。これらの作業にかかる費用は運賃とは別となります。また、入出荷の待ち時間も30分を超えるものは請求すべし、と標準貨物自動車運送約款が改正されました。
輸送コストに影響を与える3つの要素
輸送コストは、以下の3つの要素によって大きく左右されます。それぞれの要素を理解し、適切な対策を講じることで、効率的なコスト削減が可能になります。
- 輸送距離:距離が長くなるほど燃料費や人件費が増加し、輸送コストが上昇します
- 輸送ルート:非効率なルート設定は無駄な移動距離や時間ロスを招き、コストを押し上げます
- 積載率:トラックの積載効率が低いと、1貨物あたりの輸送コストが高くなります
1. 輸送距離
輸送距離は輸送コストに直接影響する重要な要素です。距離が長くなるほど、燃料費、人件費、車両の維持管理費などが増加します。長距離輸送では高速道路料金も加算されるため、総合的なコストが上昇します。また、輸送時間が長くなると配送効率が低下し、1台の車両で行える配送回数も減少するため、単位あたりの輸送コストが高くなる傾向があります。
輸送距離による輸送コスト増加を抑える方法
輸送コストを削減する方法としては、以下が有効です。
- 配送ルートの最適化:最短距離や渋滞を避けたルート設定により走行距離を短縮
- 積載率の向上:トラックを満載に近づけることで、1回の配送で運べる貨物量を増やす
- 共同配送やミルクラン:複数の荷主や引取先をまとめて配送することで、効率的な輸送を実現
- 配送管理システムの活用:ITツールを使った効率的な配車計画の立案
2. 輸送ルート
輸送ルートは、輸送コストの最適化において極めて重要な要素です。どれだけ距離が短くても、ルートが非効率であれば、無駄な移動や待機時間が発生し、結果的にコストが上昇します。たとえば、渋滞の多い幹線道路を通るルートや、複数の納品先を行き来する際に遠回りになるルートでは、燃料消費量とドライバーの拘束時間が増加します。さらに、道路事情や時間帯によっても走行効率は変化し、配送スケジュール全体に遅延を引き起こすこともあります。
また、ルート設計が不適切な場合、積載率を高めても効率的な配送ができず、結果的に車両の稼働率が低下します。これは特に都市部や中長距離輸送で顕著で、ちょっとしたルートの違いが燃料費や人件費に大きな差を生み出します。
輸送ルートによる輸送コスト増加を抑える方法
輸送ルートによるコスト増加を抑えるためには、次のような取り組みが有効です。
- ルート最適化システムの活用:AIやGPSを活用したルート最適化ツールを用い、渋滞情報や配送順序を自動で最適化。無駄な走行を削減します。
- 配送順序の見直し:納品先の地理的条件を考慮し、最短時間で回れるように配送順序を再設計。
- 道路状況・時間帯データの分析:過去の走行データを基に、混雑しやすい時間帯を避けた運行計画を立案。
- 共同配送の活用:近隣エリアの荷主企業と配送ルートを共有し、重複走行を削減。
- リアルタイム運行管理:GPSやテレマティクスを活用して、交通状況の変化に応じた柔軟なルート変更を実施。
3. 積載率
積載率は輸送コストに大きな影響を与える重要な要素です。積載率とは、トラックの最大積載量に対して実際に積んでいる貨物の割合を指します。積載率が低いということは、トラックの輸送能力を十分に活用できていない状態を意味し、結果として単位貨物あたりの輸送コストが高くなります。
現在、トラックの積載率は約40%まで低下していると言われており, これは輸送効率の大幅な悪化を示しています。積載率が低いと、同じ量の貨物を運ぶために必要な車両数や運行回数が増加し、それに伴って燃料費、人件費、車両維持費などの総コストが上昇します。
逆に、積載率を向上させることができれば、少ない車両数でより多くの貨物を運べるようになり、1回の配送で運べる貨物量が増えるため、単位あたりの輸送コストを大幅に削減できます。
積載率による輸送コスト増加を抑える方法
積載率を改善するための有効な取り組みとして、以下のような方法があります。
- 共同配送の推進:複数の荷主や配送先をまとめ、トラック1台を複数社で効率的に利用。積載率の向上と走行距離の削減を両立します。
- ミルクラン方式の導入:1台のトラックが複数の納品先を巡回することで、空きスペースを最小化しながら効率的に配送。
- 積載計画の最適化:出荷データや貨物サイズをもとに積載パターンをシミュレーションし、最も効率的な積み合わせを設計。
- 出荷タイミングの調整:出荷時間を統一・調整することで、積載率の高い便を組みやすくする。
- デジタルツールの活用:TMS(輸配送管理システム)や可視化ツールを用い、車両ごとの積載率や空き容量をリアルタイムで把握し、改善施策を継続的に実施。
輸送コストが高騰している要因
近年、輸送コストは様々な要因により上昇傾向にあります。主な要因として、以下の4点が挙げられます。
- 宅配便の需要が増加している
- 燃料価格が高騰している
- ドライバー不足により人件費が高騰している
- 海上輸送用のコンテナが不足している
それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。
宅配便の需要が増加している
新型コロナウイルス感染症の拡大により、ECサイトでの買い物が急増し、宅配便の需要が大幅に増加しました。これにより配送業者の業務量が増大し、ドライバー不足や車両の稼働率上昇につながっています。特に小口配送の増加は配送効率を低下させ、1個あたりの配送コストを押し上げる要因となっています。さらに、多頻度配送への対応や再配達の増加なども相まって、輸送コスト全体の高騰を招いています。このような需要増加への対応が、物流業界全体のコスト構造に大きな影響を与えています。
燃料価格が高騰している
燃料価格の高騰は、輸送コストを大きく押し上げる要因となっています。特に2022年以降、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした世界情勢の不安定化により、原油価格が急騰しました。この影響で、軽油やガソリンなどの燃料費が大幅に上昇し、トラック運送事業者の経営を圧迫しています。燃料費は輸送コストの中でも大きな割合を占めており、価格の変動が直接的に運送料金に反映されます。国際的なエネルギー市場の変動や地政学的リスクにより、今後も燃料価格の不安定な状況が続く可能性があります。
ドライバー不足により人件費が高騰している
トラックドライバーの不足は、輸送コストを大きく押し上げる深刻な問題となっています。物流業界では慢性的な人手不足が続いており、特に2024年4月に施行された「働き方改革関連法」による時間外労働の上限規制により、いわゆる「物流の2024年問題」が顕在化しました。
この規制により、ドライバー一人あたりの労働時間が制限され、長距離輸送や多頻度配送への対応が困難になりました。結果として、同じ輸送量を維持するためには、より多くのドライバーを確保する必要が生じています。しかし、ドライバー職の高齢化や若年層の入職者不足により、人材確保は極めて困難な状況です。
海上輸送用のコンテナが不足している
海上輸送用のコンテナ不足は、輸送コストの高騰を招く重要な要因となっています。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的なサプライチェーンが混乱し、コンテナの需給バランスが大きく崩れました。特に、ECサイトでの買い物が急増したことで、アジアから北米・欧州への輸出が大幅に増加し、コンテナが消費地に集中する一方、産地への空コンテナの返却が滞る事態が発生しました。
コンテナ不足により、海上運賃が急騰し、一部の航路では通常の数倍の運賃となるケースも見られました。この海上輸送コストの上昇は、国際物流全体のコスト構造に影響を及ぼし、最終的には商品価格の上昇として消費者にも転嫁されています。
今後の輸送コスト上昇の可能性
現在も高止まりしている輸送コストですが、今後さらに上昇する可能性があります。背景には、法制度の改正や環境規制の強化、そして人手不足に伴う人件費の上昇など、避けがたい構造変化があります。これらの変化は単に一時的なコスト増にとどまらず、物流業界全体の価格体系を見直すきっかけにもなっています。荷主企業としては、今後のトレンドを正確に把握し、中長期的なコスト構造の変化に備えることが求められます。
法制度改正による適正原価制度の義務化
2028年度以降、貨物自動車運送事業法の改正により、運送事業者が受託できる運賃・料金について「適正原価」を下回る契約が実質的に禁止されます。これまで一部で行われていた“過度な値下げ競争”が抑制され、運賃の下限が明確化される見込みです。これにより、ドライバーの労働環境改善や安全投資が進む一方で、荷主企業にとっては輸送コストの上昇が避けられません。特に中長距離輸送や多頻度配送を依頼している企業ほど、運賃改定の影響を強く受けると考えられます。
ドライバー処遇改善に伴う人件費の上昇
ドライバー不足は今後も解消の兆しが見えず、人件費の上昇は長期的なトレンドになると見込まれます。2024年の労働時間上限規制に続き、待遇改善・安全確保のための制度改正や社会的要請が強まっており、運送事業者は賃金水準を引き上げざるを得ません。また、ベテランドライバーの引退と若年層の入職減少により、採用・教育コストも増加しています。結果として、物流企業のコスト構造における「人件費比率」は高まり、運賃単価の上昇が続く見通しです。
脱炭素化対応による設備投資コストの増加
政府が掲げるカーボンニュートラル目標に沿って、物流業界にも脱炭素化の波が押し寄せています。EVトラックや燃料電池車(FCV)の導入、再生可能エネルギーを利用した物流拠点の整備など、環境対応のための投資が本格化しています。これらの設備更新には多額の初期コストがかかり、当面は輸送単価への転嫁が進むと予想されます。環境対応は不可避の流れであり、企業としては単なるコスト負担ではなく、持続可能な物流体制への投資と捉える視点が求められます。
輸送コストの削減方法10選
事故防止対策の実施する
輸送において最重要なのは安全性です。事故等に伴うコストを抑制することは担当者が最初に取り組むべきです。自動車運送事業にかかわる重大事故は、半数以上がドライバー起因であり、具体的には「運転操作不良(運転ミスや危険運転など)」や「健康状態」「積載物」などです。事故を発生させないために予防措置の導入、監視を検討する必要があります。
車両数/運行数/距離削減を削減する
既存の配送ルート、配車を見直していくことでトータルの車両数/運行数/距離の削減を図ります。実際の運行ルートは運送会社任せになっていることが多いですが、荷主としてもチェックしていくべきでしょう。
積載率を向上させる
簡単にいうと、トラックが満載に近づくように貨物を積載することです。トラックの積載率は直近では約40%まで低下していると言われています。フル積載になるように車両をコントロールするのが基本です。計画精度の向上、車格の調整、マテリアルハンドリング機器の標準化なども検討の余地があります。
空距離を削減する
A地点からB地点に運ぶ積載率は高くても、B地点からA地点に戻る際の積載率が低いことがあります。片道運行契約への切り替えや共同配送の取り組みを検討し、空で走る距離をいかに縮めるかを検討します。
直送化する
中間物流拠点を介さずに、産地やメーカーから直接商品を受け取ることを言います。直送化は在庫コスト削減、納期短縮のメリットがあります。
配送頻度(サービスレベル)を見直す
消費者ニーズの変化などから店舗向け配送などで多頻度小口配送が増えています。配送頻度を高めれば鮮度の高い商品の提供ができ、過剰在庫のリスクを減らすなどのメリットがある一方、配送コストや人件費の増加、ひいてはCO2の排出量の増加などにつながります。
メリット・デメリットを理解して、最適な配送頻度を設定する必要があります。
帰り便を利用する
トラックは、通常、行きあるいは帰りの片道は必ず貨物を載せています。 しかし、 片道は空車で走ることが多いのです。 空車ということは運送料を得られないという ことなので、運送会社としては、空車で走らないようにするために貨物を探すこと が重要課題であり、多くの会社は少しくらい運賃を値引いてでも貨物を獲得しよう と考えています。 荷主の方は、そうした空車のトラックを探すことで支払運賃を下げることができます。
共同配送する
一社で納品量が少ない場合において、他社と共同して配送することをいいます。積載率が上がることで配送コストが抑制できます。ただ、これまでのような同業他社との共同配送だけでなく、他業種との間での共同化を促進することが、更なる効果をもたらす可能性があります。
関連記事:https://hacobu.jp/blog/archives/1354
ミルクランを導入する
同一地区内から複数の引き取りがある場合、引取先毎に小型 トラックを用意するのではなく、同地区全体の貨物を積載することができる大型車両一台で順番に引き取る方法のことです。 導入時の問題点は、引取順番、引取 時間の調整や大型車両が出入りできるかどうかなどが挙げられます。
関連記事:https://hacobu.jp/blog/archives/5358
配送管理システムを利用する
配送管理システムとは、配送状況を管理するITツールです。先に説明した車両の現在位置把握する動態管理や、積載率を鑑みた効率の良い配車計画を立案するシステムなどです。
Hacobuが提供するLogistics Cloud MOVOは、動態管理や配車管理を行うアプリケーション群です。
製品にご興味がある方は、以下より資料をダウンロードください。
物流効率を改善するならHacobu Strategy
Hacobu Strategyは、物流データを分析し、輸送コスト削減や業務効率化を実現するコンサルティングサービスです。蓄積された物流データを活用して、配送ルートの最適化、積載率の向上、配車計画の改善など、具体的な施策を提案します。
データに基づいた分析により、隠れたコスト要因を可視化し、実行可能な改善策を導き出すことで、持続的な物流効率の向上を支援します。輸送コストの削減だけでなく、CO2排出量の削減や労働環境の改善にも貢献します。
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まとめ
輸送コストは物流業界における重要な課題であり、燃料費、人件費、車両維持費などが主な構成要素となっています。近年、燃料価格の高騰やドライバー不足による人件費の上昇により、輸送コストは増加傾向にあり、企業の収益や商品価格に大きな影響を与えています。
輸送コスト削減には、事故防止対策の実施、車両数・運行数・距離の削減、積載率の向上、空距離の削減、直送化、配送頻度の見直し、帰り便の利用、共同配送、ミルクラン、配送管理システムの活用など、10の主要な方法があります。これらの施策を組み合わせることで、効率的なコスト削減が可能になります。
特に、配送管理システムやHacobu Strategyのようなデータ分析に基づくコンサルティングサービスを活用することで、物流データの可視化と最適化が実現し、持続的な物流効率の向上とCO2排出量の削減にもつながります。
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