更新日 2026.11.08

特性要因図の書き方5ステップ|誤出荷を例に物流現場で作ってみる

特性要因図の書き方5ステップ|誤出荷を例に物流現場で作ってみる

誤出荷が減らない、対策したはずなのに同じミスが繰り返される。このような現場では、思いついた原因だけを挙げても、重要な要因の抜け落ちや担当者ごとの認識差が生じます。

原因の候補を一定の枠組みで漏れなく並べ、手を打つ先を絞る道具が特性要因図です。本記事では、基本的な意味と書き方を5ステップで解説します。さらに、倉庫で「例えば、誤出荷が月8件発生している」という問題を取り上げ、大骨・中骨・小骨を埋めた完成例まで紹介します。

特性要因図とは

特性要因図とは、問題(特性)と原因(要因)を、魚の骨の形で整理する図です。関係者で原因候補と優先順位を共有するために使います。

特性要因図(フィッシュボーン図)の意味と呼び方

特性要因図は、フィッシュボーン図、フィッシュボーンチャート、石川ダイアグラム、魚の骨図とも呼ばれます。いずれも問題と原因の関係を魚の骨に似た形で表す同じ手法です。特性要因図は、日本の品質管理の専門家である石川馨氏が考案した手法とされています。「石川ダイアグラム」は考案者の名前に由来します。製造、医療、サービスなど、原因を複数の観点から整理する場面でも使われます。

QC7つ道具の中での位置づけ

特性要因図は、品質管理に使う基本的な手法をまとめた「QC7つ道具」の一つです。日本科学技術連盟では、チェックシート、パレート図、管理図・グラフ、ヒストグラム、特性要因図、散布図、層別の7つを指します。ほかの道具は、件数や分布、変化などのデータを見る用途が中心です。特性要因図は、現場の知識や経験を持ち寄り、考えを整理する用途に向いています。グラフと管理図を一つにまとめて7つと数えるため、資料によって数え方が異なる場合があります。

なぜ魚の骨の形なのか

魚の骨の形を使う理由は、問題と原因の階層を一目で捉えやすいからです。問題へ向かう横線が「背骨」、原因の大分類が「大骨」、そこから分かれる原因が「中骨」「小骨」です。大きな分類から個別の原因へ掘り下げる構造を、1枚で確認できます。原因同士の位置関係が見え、重複や抜けにも気づきやすくなります。

特性要因図の種類(何を大骨に置くか)

大骨に何を置くかで図の質が変わります。対象業務で原因を考えやすい分類を選びます。

4M(人・設備・材料・方法)

4Mは、Man(人)、Machine(設備)、Material(材料)、Method(方法)の4分類です。製造や品質管理で広く使われ、人の注意不足だけでなく、設備、扱う物、作業方法まで視野を広げられます。検品ミスなら、作業者の習熟度、読み取り機器の状態、商品の表示、チェック手順という4方向から考えます。「担当者が注意すればよい」という結論に偏らず、設備や作業設計も改善候補にできます。

5M1E(4Mに測定と環境を足したもの)

5M1Eは、4MにMeasurement(測定)とEnvironment(環境)を加えた分類です。測定には検査基準や計測方法、環境には温度、湿度、明るさ、騒音、作業スペースなどが含まれます。温湿度が品質に影響する製造現場や、照明の暗さが品番の見間違いにつながりうる倉庫など、測定条件や周辺環境を分けて確認したい場合に適しています。測定や環境の変化が問題へ影響する場合は、独立した大骨として扱います。

物流の現場では何を大骨に置くか

物流の現場では、4Mをそのまま使うより、作業者が原因を連想しやすい言葉へ置き換える方法が実用的です。倉庫作業なら「人」「商品」「やり方」「現場環境」の4つが使いやすいでしょう。人には経験や疲労、やり方には手順や検品、商品には品番や荷姿、現場環境にはレイアウトや明るさを入れます。

輸配送なら「ドライバー」「車両」「運行計画」「受け入れ先の状況」などへ変えて構いません。分類の名称を守ることより、担当者が具体的な原因を出せることを優先します。大骨を決める際は「この分類から原因を思い浮かべられるか」を確認し、原因がほとんど出ない分類は現場の言葉へ置き換えます。

図1:大骨に置く分類の比較(4M・5M1Eと、物流現場での置き換え例)

特性要因図の書き方5ステップ

特性要因図は次の5ステップで作ります。

図2:特性要因図の書き方5ステップの全体像

作図は、図3のような骨格から始めます。

図3:特性要因図のテンプレート(右端に特性、中央に背骨、上下に4本の大骨)

ステップ1:解決したい問題(特性)を決める

最初に、図の右端へ置く問題を具体的に決めます。問題が曖昧だと、原因の範囲も対策の評価基準もぶれます。「ミスを減らす」ではなく、可能であれば「誤出荷が月に8件発生している」のように対象、数字、期間を入れると、対策前後を比較しやすくなります。数字が未計測なら、どのミスを、どの単位で数えるかを先に決めます。一つの図に「誤出荷と在庫差異」のような複数の問題を混ぜないことも重要です。複数の問題を扱うと、原因と対策の対応が曖昧になります。特性を決めたら、対象工程、対象商品、集計期間も参加者間でそろえます。

ステップ2:背骨と大骨を引く

紙の右端に問題を書き、左から右へ向かう矢印を引きます。この矢印が背骨です。次に、背骨へ向かって斜めに大骨を引き、原因の分類を書きます。大骨には4Mや5M1Eを使えます。大骨が多すぎると議論が分散するため、最初は4〜6本程度に絞り、必要に応じて追加します。倉庫の誤出荷なら、「人」「商品」「やり方」「現場環境」のように、現場の人が理解しやすい言葉へ置き換えます。

ステップ3:中骨・小骨で原因を出し切る

大骨ごとに原因を挙げ、中骨・小骨へ書き込みます。この段階では、重複しても細かすぎても構いません。選びながら書くと発言や思考が止まり、重要な候補まで落ちるためです。「なぜ起きるのか」を繰り返し、「別の商品を取る」から「型番が似ている」「隣の棚にある」まで掘り下げます。管理者だけで作らず、ピッキング、検品、梱包など実作業を担う人にも参加してもらいます。参加者には事実と推測を分けて発言してもらいます。推測も候補に残しますが、後から記録や観察で検証できる表現に直します。

ステップ4:影響の大きい要因に印をつける

原因を出し切ったら、「問題への影響が大きそう」かつ「自分たちで手を打てる」要因に丸をつけます。特性要因図を作る本当の目的は、原因を多く書くことではなく、検証・対策する要因を絞ることです。印象だけで決めず、誤出荷の記録、作業観察、担当者への聞き取りで確かめます。候補ごとに「影響の大きさ」「発生頻度」「対策のしやすさ」を確認し、優先順位をそろえます。自社だけで変えにくい要因は、取引先との協議事項として分けます。丸が多い場合は、最初に検証する要因を2〜3個に絞ります。

図4:影響の大きさと対策のしやすさで要因を位置づける

ステップ5:対策と担当・期限を決める

丸をつけた要因ごとに、対策、担当者、期限、確認方法を決めます。「注意する」ではなく、「類似商品を別の棚へ移す」のように作業の変化がわかる形にします。「倉庫責任者が今月末までに配置を変更し、翌月の誤出荷件数を確認する」と、誰がいつまでに実行し、何で効果を確かめるかまで決めてください。対策前後で同じ指標を記録し、変化がなければ別の要因を検証します。結果は次の改善へ反映してください。対策を考える際は、作業の排除・結合・再配置・簡素化の順に見直すECRS(イクルス)の4原則も参考になります。

【実例】倉庫の誤出荷を特性要因図で分解する

誤出荷の原因と対策を参考に、図へ書く内容を示します。完成すると下の図のようになります。

図5:倉庫の誤出荷を特性要因図で分解した完成例(赤枠は影響が大きく対策できそうな要因の例)

特性に「誤出荷が月8件発生している」を置く

問題は、例えば「誤出荷が月8件発生している」と書きます。月8件は作り方を説明するための例であり、実際の調査数値ではありません。件数と期間を入れると、参加者が同じ問題を想像しやすくなり、対策後も翌月の件数と比較できます。商品違いだけを扱うなら、「商品違いの誤出荷が月5件発生」のように対象をさらに絞ります。対象を絞る際は、商品違い・数量違い・宛先違いなど、現場で使っている分類をそのまま使うと集計結果と照合しやすくなります。対策後も同じ定義で数えてください。

大骨を「人・商品・やり方・現場環境」に設定する

大骨は「人」「商品」「やり方」「現場環境」の4つにします。誤出荷は、作業者の行動だけでなく、類似商品の存在、検品手順、棚の配置や繁忙度などが重なって起きるためです。「人」だけを大骨にすると対策が教育や注意喚起へ偏ります。商品や環境を分けることで、間違えやすい状態そのものを変える選択肢が生まれます。たとえば、商品なら表示や荷姿、やり方なら検品手順、現場環境なら棚配置や照明を確認します。分類ごとに確認担当を決めると、原因候補の検証も進めやすくなります。

中骨・小骨まで埋めた完成例

「人」には品番を思い込みで判断する、数量を数え間違える、送り状を取り違える、「商品」には似た型番・色・サイズがある、ケースとバラの単位が混在する、表示が小さい、と書きます。「やり方」には目視検品だけに頼る、確認項目が統一されていない、複数の送り状を同時に扱う、「現場環境」には似た商品が隣の棚にある、照明が暗い、繁忙時に検品を省略する、と配置します。小骨では「なぜ見落とすのか」まで掘りますが、原因候補が事実かどうかは記録や観察で確認します。図へ書いた時点では、すべてが真の原因と決まったわけではありません。誤出荷が起きた日時、商品、工程を照合し、該当する要因が繰り返し現れているかを確かめてください。

絞り込んだ要因から対策を決める

丸をつけた要因には具体的な対策を対応させます。「似た商品が隣の棚にある」なら棚を離し、品番表示を大きくします。「繁忙時に検品を省略する」なら、発生時間帯を確認し、検品担当の配置や締め時刻を見直します。「複数の送り状を同時に扱う」なら、1件ずつ照合と貼付を完了する手順へ変えます。対策後は同じ単位で件数を記録し、変化を確認してください。ほかの施策は倉庫の改善事例とアイデアも参考になります。

特性要因図を使うときの注意点

特性要因図は対策先を決める道具です。見栄えや数を目的にしないでください。

きれいに描くことが目的になりやすい

作図ソフトで整った図を作ることに時間を使い、要因を絞る前に作業が止まることがあります。最初は付箋やホワイトボードへの手書きで十分です。手書きでも表計算ソフトでも作れますが、図を整える時間より、現場で事実を確認する時間を優先します。完成版の清書は、対策対象を決めた後で構いません。

要因の数を競わない

要因は多ければよいわけではありません。候補を広げるのは、優先順位をつけて絞るためです。似た項目をまとめ、影響の大きさと対策可能性を確認し、検証する要因を選びます。印をつけた要因は、対策と行動計画へ移してください。候補が増えすぎたら、同じ意味の項目をまとめ、検証できない抽象語を具体的な状況へ言い換えます。

一人で作らない

管理者一人で作ると、実際の作業条件や例外が入りにくくなります。現場の実情を反映しない対策は定着しません。対象工程を担うメンバーを集め、「誰のミスか」ではなく「どの条件で起きるか」を話し合います。発言者を責めない進め方も、原因を出し切るために必要です。関連工程の担当者も交えると、工程間の原因を見つけやすくなります。

特性要因図となぜなぜ分析の使い分け

特性要因図で原因を広げ、なぜなぜ分析で一つの原因を深掘りします。

特性要因図は「広さ」、なぜなぜ分析は「深さ」

特性要因図は、原因候補を横に広げて観点の漏れを防ぐ道具です。人、設備、材料、方法などの分類を使い、問題に関係しそうな要因を並べます。なぜなぜ分析は、一つの事象に対して「なぜ」を繰り返し、原因を縦に掘る道具です。最初から一つの原因へ決めつけると、別の観点を見落とす可能性があります。まず特性要因図で全体を見渡し、深掘りすべき候補を選ぶのが基本です。両者は競合する手法ではなく、役割を分けて使います。

2つを組み合わせる順番

実務では、最初に特性要因図で原因候補を広げ、影響が大きく対策可能な要因を絞ります。その後、絞った要因になぜなぜ分析を使い、対策できる具体的な原因まで掘り下げます。たとえば「似た商品が隣の棚にある」を選んだ後、「なぜ隣に置くのか」「なぜ配置変更されないのか」と掘れば、保管ルールや配置変更の基準まで確認できます。なぜなぜ分析で掘る対象は、特性要因図で丸をつけた要因に絞り、事実確認の結果に応じて順番に進めます。

図6:特性要因図で広げ、なぜなぜ分析で深める流れ

特性要因図に関するよくある質問

特性要因図を初めて作るときは、大骨の選び方や手順、ほかの呼び方で迷いやすいものです。ここでは、検索されることの多い4つの質問に簡潔に回答します。具体的な書き方や完成例を確認したい場合は、本文の5ステップと誤出荷の実例もあわせてご覧ください。自社の問題へ置き換える際にも活用できます。

特性要因図の4つの要素は?

特性要因図の4つの要素は、4MのMan(人)、Machine(設備)、Material(材料)、Method(方法)です。4Mは原因を探すための大骨で、人だけに原因を求めず、設備、扱う物、作業方法まで観点を広げられます。対象業務によっては、Measurement(測定)とEnvironment(環境)を加えた5M1Eを使います。物流現場では「人」「商品」「やり方」「現場環境」のように、関係者が理解しやすい表現へ置き換えて構いません。

特性要因図の作り方は?

特性要因図は、問題を決め、大骨を作り、原因を出し、重要な要因を絞り、対策・担当・期限を決める順に作ります。最初に問題を右端へ書きます。「例えば、誤出荷が月8件発生」のように、可能であれば数字と期間を含めると効果を比べやすくなります。次に4Mなどの大骨を引き、中骨・小骨へ原因候補を出します。候補を出す段階では選別せず、出し切った後に影響の大きさと対策可能性で印をつけます。最後に、担当者と期限、効果を確認する指標まで決めます。

特性要因図の言い換えは?

特性要因図は、フィッシュボーン図、フィッシュボーンチャート、石川ダイアグラム、魚の骨図と言い換えられます。英語ではcause-and-effect diagram(原因結果図)とも呼ばれます。フィッシュボーンは図の形、石川ダイアグラムは考案者の石川馨氏に由来する名称です。呼び方は異なりますが、右端に問題を書き、原因候補を大骨・中骨・小骨の階層で整理する点は同じです。社内では一つの呼称に統一すると、資料を探しやすくなります。

特性要因図の例題は?

特性要因図の例題には、倉庫の誤出荷、製造工程の不良、医療現場の確認漏れ、サービス業の待ち時間などがあります。本記事では「例えば、誤出荷が月8件発生している」を特性に置き、「人」「商品」「やり方」「現場環境」の4つを大骨にしています。中骨・小骨には、類似商品が隣の棚にある、目視検品に頼る、繁忙時に検品を省略するといった候補を配置しました。詳しくは「【実例】倉庫の誤出荷を特性要因図で分解する」をご覧ください。

まとめ

特性要因図は、問題と原因候補を魚の骨の形で整理し、対策する要因を絞る道具です。作成は、①問題を具体的に決める(可能であれば数字と期間を含める)、②背骨と大骨を引く、③中骨・小骨で原因を出し切る、④影響が大きく対策可能な要因へ印をつける、⑤対策・担当・期限を決める、の5ステップで進めます。

物流現場では、4Mを「人・商品・やり方・現場環境」などへ置き換えると、原因を具体化しやすくなります。作業者だけに原因を求めず、商品表示、手順、棚配置、繁忙度まで視野を広げてください。現場の整理やルールづくりには、5S活動とはも参考になります。図をきれいに作ることではなく、手を打つ先を絞ることが目的です。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営し、物流の基礎知識や法律を分かりやすく解説するメディア「ハコブログ」編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

クラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」のマーケティングを管掌し、荷主企業や物流事業者の業務デジタル化(DX)を推進。専門知識を活かし、ロジスティクス分野の専門誌への寄稿や、様々な業界団体での講演活動にも登壇。「最新ツールの普及」と「分かりやすい情報発信」の両面から、物流業界の課題解決に現場目線で取り組んでいる。 >>プロフィールを見る

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