更新日 2026.10.07

モーダルシフトの補助金とは?活用できる制度の違いと申請の流れを解説

モーダルシフトの補助金とは?活用できる制度の違いと申請の流れを解説

モーダルシフトに取り組む荷主企業は、国土交通省の補助金を活用することで、調査・計画策定・実証運行・設備投資の負担を抑えられます。ただし制度ごとに申請主体(協議会・連携体)や補助対象経費、補助率、公募時期が異なり、単独企業では申請できない制度もあります。本記事では、モーダルシフトで活用できる補助金制度の違いを一覧で整理し、申請前に確認すべき要件と申請の流れ、採択に向けたポイントを解説します。

モーダルシフトとは

モーダルシフトとは、トラックによる貨物輸送の一部を、鉄道や内航海運などの大量輸送に適した輸送手段へ転換する取り組みです。長距離の幹線輸送を鉄道・船舶に切り替え、集荷や配送などの短距離区間をトラックが担う形が一般的です。

モーダルシフトの定義や進まない理由、企業事例はモーダルシフトとは?進まない理由や現状、荷主がすべき対策を解説で詳しく解説しています。

なぜモーダルシフトに補助金が用意されているのか

モーダルシフトは、物流の2024年問題による輸送力不足と、2050年カーボンニュートラルの実現という二つの課題に同時に効く施策として、国が政策的に後押ししている領域です。

一方で、トラックから鉄道・内航海運へ切り替えるには、積替え設備の準備や実証運行の実施など、効果を確認するまでに相応の初期負担が発生します。リードタイムや輸送品質への影響も見極める必要があるため、単独の企業が自社の投資判断だけで踏み出すにはハードルが高いのが実情です。

この「政策としては進めたいが、民間の判断だけでは進みにくい」というギャップを埋めるために、国土交通省は調査費や協議会の運営費、実証運行の経費などを対象とした補助制度を用意しています。補助金は費用の穴埋めではなく、検討と立ち上げの段階でつまずきやすい部分を支える仕組みだと捉えると、活用の方向性を定めやすくなります。

出典:国土交通省「モーダルシフトとは」

補助金でカバーできるコストと、カバーできないコスト

補助金は、モーダルシフトに伴うあらゆる負担を埋められるわけではありません。どこまでを補助金で賄えるのか、どこからは自社と取引先で解決する必要があるのかを、検討の早い段階で整理しておきましょう。

補助金でカバーしやすい負担

補助制度が主に支援するのは、検討フェーズと立ち上げフェーズの費用です。具体的には、総合効率化計画の策定に伴う調査・分析費、協議会の運営費、実証運行に係る経費、省人化・自動化に資する機器の導入費などが対象になります。モーダルシフトは、実際に運行してみなければ所要時間や積替えの負荷、コスト水準を読み切れない取り組みです。試行段階の費用リスクを抑えられることが、補助金を活用する最大の効果といえます。

補助金では埋まらない負担

一方で、運用面の制約は補助金では解決できません。駅や港での積替え・接続待ちによるリードタイムの増加、着荷主の納品時間指定への対応、在庫計画の見直し、コンテナ単位のロット確保、パレット規格や荷役設備の適合といった課題は、自社と取引先の調整によって解消していく必要があります。補助金の採択を前提に検討を進めるのではなく、どの貨物のどの路線であれば鉄道・内航海運で成立するのかを先に整理し、そのうえで活用できる制度を探す順序が現実的です。

出典:国土交通省「物流効率化推進事業」

モーダルシフトに活用できる補助金制度

モーダルシフトには、国土交通省の補助金制度を活用できる場合があります。制度ごとに対象者や補助対象経費、補助率、上限額が異なるため、自社単独ではなく協議会や連携体での申請が必要かを確認しましょう。

3制度の比較一覧

まずは、荷主企業が検討対象となりやすい3つの制度について、申請主体や対象経費、補助率の違いを一覧で確認します。

制度名申請主体主な対象経費補助率上限額向いているケース
モーダルシフト等推進事業(現・物流効率化推進事業)荷主・物流事業者等で構成する協議会総合効率化計画の策定調査費、モーダルシフト/幹線集約/中継輸送の実施経費計画策定:定額〜1/2、実施:最大1/2〜2/3計画策定500万円、実施1,000万円荷主+物流事業者で特定路線の転換を進めたい
モーダルシフト加速化事業費補助金荷主・物流事業者などの連携体鉄道・内航海運への転換に必要な設備投資、運行経費、実証経費公募要領で確認公募要領で確認すでに転換方針が固まり、早期に実行したい
地域連携モーダルシフト等促進事業自治体1以上+荷主/物流事業者2社以上を含む協議会地域物流量の可視化・調査分析費、協議会運営費、共同輸配送・モーダルシフトの実証経費調査・運営:定額、実証:1/2以内調査・運営 計2,500万円、実証5,000万円自治体・地域の複数事業者と面で取り組みたい

モーダルシフト等推進事業(国土交通省)

モーダルシフト等推進事業は、温室効果ガスの排出削減や流通業務の省力化を目的に、荷主や物流事業者などで構成される協議会の取り組みを支援する制度です。補助対象は単独企業ではなく、荷主、物流事業者、必要に応じて地方公共団体などが参加する協議会である点に注意が必要です。

制度名対象(協議会等)補助対象経費補助率補助上限額公募時期
モーダルシフト等推進事業荷主および物流事業者等、物流に係る関係者で構成される協議会総合効率化計画策定のための調査費、モーダルシフト推進事業、幹線輸送集約化推進事業、中継輸送推進事業などに係る経費総合効率化計画策定事業は定額・最大1/2、実施事業は最大1/2・一部最大2/3総合効率化計画策定事業は上限総額500万円、実施事業は上限総額1,000万円令和7年度は2025年4月8日〜6月6日

この制度では、計画策定段階の調査費から、総合効率化計画に基づく実際の運行や機器導入までが支援対象になります。省人化・自動化に資する機器導入等を伴う場合は、補助率や上限額が変わるため、申請前に最新の応募要項を確認することが重要です。

出典:国土交通省「物流効率化推進事業」、国土交通省「令和7年度『モーダルシフト等推進事業』(補助事業)の募集開始」、国土交通省「令和7年度『モーダルシフト等推進事業費補助金』の交付決定」

モーダルシフト加速化事業費補助金(国土交通省)

モーダルシフト加速化事業費補助金は、トラック輸送から鉄道・内航海運への転換をより早く進めるための支援制度です。荷主と物流事業者が連携し、設備投資や実証的な運行に取り組むケースで活用が想定されます。

制度名対象(協議会等)補助対象経費補助率補助上限額公募時期
モーダルシフト加速化事業費補助金荷主・物流事業者などによる連携体鉄道・内航海運への転換に必要な設備投資、運行経費、実証に係る経費など公募要領に基づき設定公募要領に基づき設定令和7年度は2025年4月30日〜6月12日

モーダルシフト等推進事業が計画策定から実施までを支援する制度であるのに対し、モーダルシフト加速化事業費補助金は、物流の停滞を防ぐための緊急対策として、鉄道・内航海運への転換を速やかに進める位置づけが強い制度です。採択や事業実施のスピードを重視する場合は、対象要件や公募期間を早めに確認しておく必要があります。

出典:国土交通省「『モーダルシフト加速化事業費補助金』の募集開始について」、公募要領(モーダルシフト加速化事業費補助金)PDF

地域連携モーダルシフト等促進事業(国土交通省)

地域連携モーダルシフト等促進事業は、地域の産業振興や物流課題と連動しながら、モーダルシフトや共同輸配送などを促進する制度です。地方公共団体を含む地域単位の連携が前提となる点が、他の制度との大きな違いです。

制度名対象(協議会等)補助対象経費補助率補助上限額公募時期
地域連携モーダルシフト等促進事業地方公共団体、産業団体・経済団体、荷主、物流事業者等で構成される協議会等。地方公共団体1自治体以上、荷主または物流事業者2社以上の参画が必須地域の物流量把握・可視化に必要な調査分析費、協議会運営費、共同輸配送やモーダルシフト等の実証経費調査分析費・協議会運営費は定額、実証経費は1/2以内調査分析費・協議会運営費は合計2,500万円、実証経費は5,000万円令和7年度は四次公募が2025年10月1日に開始

この制度は、単一企業や個別ルートの改善にとどまらず、地域全体の物流効率化を進めるための支援策です。地方公共団体や地域の複数事業者と連携し、産業振興や地域課題の解決とあわせてモーダルシフトを進めたい場合に検討しやすい制度といえます。

出典:国土交通省「『地域連携モーダルシフト等促進事業』(補助事業)の四次公募開始」、国土交通省「地域の事業者間連携を通じた物流生産性向上推進事業」

モーダルシフトの補助金を申請する前に確認すること

補助金を活用するには、制度ごとの対象者や補助対象経費を正しく把握する必要があります。特に、協議会の構成要件、補助率、自己負担額を事前に確認しておくことが重要です。

協議会の構成要件(荷主・物流事業者・自治体)

モーダルシフト関連の補助金は、単独企業で申請できる制度ではなく、荷主企業や物流事業者などで構成する協議会が申請主体となるケースが中心です。地域連携型の制度では、地方公共団体の参画が必須となる場合もあります。申請を検討する際は、まず対象となる貨物や路線を整理し、関係する物流事業者、鉄道・船舶事業者、自治体などと連携体制をつくることが必要です。そのうえで、輸送量やCO2削減効果、実施スケジュールを協議し、計画書としてまとめていきます。

補助対象経費と補助率

申請前には、設備投資、運行経費、調査費、協議会運営費など、どの経費が補助対象になるかを確認しましょう。補助率は制度や経費区分により異なりますが、目安として1/2〜2/3、補助上限額は500万円〜1,000万円の範囲で設定される制度があります。自己負担額は、対象経費から補助金額を差し引いて算定します。ただし、制度によって上限額や対象経費は異なるため、詳細は前段の制度別表と最新の公募要領を確認することが重要です。

モーダルシフト補助金の申請から交付までの流れ

モーダルシフトの補助金は、申請書を作成すれば完結するものではなく、連携体制の構築と計画策定に多くの時間を要します。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 対象貨物・路線の洗い出し:現行のトラック輸送について、輸送量、輸送距離、便数、納期制約を整理し、転換候補となる区間を絞り込みます。
  2. 連携先の選定:物流事業者や鉄道・船舶事業者に打診し、地域連携型の制度を狙う場合は自治体にも相談して、協力体制の見通しを立てます。
  3. 協議会・連携体の設立:規約、役割分担、事務局を決め、申請主体としての体制を整えます。
  4. 総合効率化計画・事業計画の策定:輸送量、CO2削減量、省力化効果を算定し、公募要領が求める様式に落とし込みます。
  5. 公募申請:公募要領に沿って申請書類を作成し、期限内に提出します。
  6. 採択・交付決定後の事業実施:計画に沿って実証運行や機器導入を進め、補助対象経費の証憑を整理しながら実施します。
  7. 実績報告・確定検査を経て精算払い:補助金は原則として事業実施後の後払いとなるため、事業期間中の資金繰りをあらかじめ手当てしておく必要があります。

出典:国土交通省「物流効率化推進事業」、公募要領(モーダルシフト加速化事業費補助金)PDF

採択に向けて押さえておきたいポイント

補助金は申請すれば必ず採択されるものではなく、効果の裏付けや継続性が審査で問われます。ここでは、申請準備の段階で押さえておきたい3つの観点を整理します。

効果を定量で示せるか(トンキロ・CO2削減量)

採択の可否を大きく左右するのは、転換によってどれだけの効果が生まれるかを数値で示せるかどうかです。便数、輸送距離、積載率、荷待ち・荷役時間といった現行輸送の実績を把握できていなければ、トンキロやCO2削減量の算定根拠が弱くなり、計画全体の説得力も下がります。申請書の作成に着手する前に、実績データを整備しておくことが最も重要な準備といえます。

単年度の実証で終わらない継続性

補助期間が終了した後も運用が続く見通しを描けているかどうかも問われます。実証期間だけ成立する輸送ではなく、運賃水準、荷姿、在庫計画まで含めて定常運用に乗せられるかを検討し、その方針を計画に反映しておきましょう。

公募時期を逃さない準備

公募期間は2か月程度と短く、告知を受けてから協議会を組成し、計画を策定するのは容易ではありません。前年度の公募要領を参考に必要書類と要件を把握し、公募開始前から関係者との調整を進めておくことが現実的な対応です。

出典:国土交通省「令和7年度『モーダルシフト等推進事業』(補助事業)の募集開始」、国土交通省「『モーダルシフト加速化事業費補助金』の募集開始について」

モーダルシフト補助金に関するよくある質問

最後に、荷主企業から寄せられることの多い疑問をまとめます。

単独企業でも申請できますか?

主要な制度は協議会や連携体を申請主体としており、荷主企業が単独では申請できないケースが中心です。まずは実際に輸送を担う物流事業者や鉄道・船舶事業者と連携できるかどうかを確認するところから始めましょう。

自治体の参画は必須ですか?

地域連携モーダルシフト等促進事業では、1自治体以上の参画が要件とされています。一方、モーダルシフト等推進事業では必須ではなく、必要に応じて地方公共団体が協議会に加わる位置づけです。

出典:国土交通省「『地域連携モーダルシフト等促進事業』(補助事業)の四次公募開始」

補助金はいつ受け取れますか?

原則として、事業を実施したうえで実績報告と検査を経てからの精算払いです。設備投資や運行経費は一度自社で立て替えることになるため、資金計画とあわせて検討しておく必要があります。

最新の公募情報はどこで確認できますか?

国土交通省の報道発表と、各事業の公募ページで確認できます。年度によって制度名や事業の枠組みが変わることがあるため、前年度の情報をそのまま前提にせず、毎年最新の公募要領を確認しましょう。

出典:国土交通省「物流効率化推進事業」、国土交通省「地域の事業者間連携を通じた物流生産性向上推進事業」

物流課題をDX化で解決するなら「Hacobu」

モーダルシフトを進めるには、輸送実績や待機時間、拠点ごとの車両動態、荷待ち・荷役の状況を可視化し、どの区間を鉄道や船舶へ切り替えられるかを判断する必要があります。Hacobuは、物流DXを通じて荷主企業と物流事業者の情報連携を支援し、輸送効率化や現場負荷の削減に貢献します。

まとめ

モーダルシフトの補助金は、国土交通省の複数制度に分かれており、申請主体(協議会か地域連携体か)、対象経費、補助率、上限額が制度ごとに異なります。多くは単独企業では申請できず、荷主・物流事業者・自治体との連携体制づくりが前提です。まずは対象貨物と路線を絞り、輸送実績とCO2削減効果を数値で整理したうえで、公募開始前から協議会組成と計画策定に着手しましょう。モーダルシフトそのものの考え方や企業事例はモーダルシフトとは?進まない理由や現状、荷主がすべき対策を解説をご覧ください。

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