インタンクの基本情報からメリット・デメリット|注目された背景と軽油価格高騰で荷主がとるべき行動とは
「最近よく聞くインタンクとは?」「物流が危機的状況にある今、荷主がとるべき行動とは?」
そうお考えの物流担当者の方も多いのではないでしょうか。
インタンクとは、運送会社やバス会社の車庫などの敷地内に燃料を保管しておく自家給油設備のことです。近年、中東情勢の悪化によって日本への原油供給が難しくなり、燃料価格が高騰する中で、このインタンクが改めて大きな注目を集めています。
そこで本記事では、運送会社に14年以上勤めた筆者が、インタンクの基礎知識から、運送会社が導入するメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。さらに、昨今インタンクが注目された背景や、中東情勢の悪化が物流業界にどのような影響を与えているのかなど、最新の動向も紐解きます。
ぜひ最後までお読みいただき、激動の時代における貴社の物流戦略や危機管理のヒントとしてお役立てください。
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目次
インタンクの概要と基礎
この章では、初心者の方に向けてインタンクの基本的な仕組みや役割と、導入時に気になる費用の相場について解説します。
- インタンクとは「自家給油設備」
- インタンク設置にかかる費用
インタンクとは「自家給油設備」
インタンクとは、運送会社やバス会社などの事業所敷地内に設置する「自家給油設備」のことです。
設備としては、主に地下に埋設された燃料(軽油など)を貯蔵するタンクと、地上にある計量機(給油機)から構成されます。「自社専用の小さなガソリンスタンドを持っている」というイメージで問題ありません。
自社で大量の燃料を保管・管理できるため、多くの車両を毎日稼働させる物流事業者にとって、日々の給油業務を支える重要なインフラ設備となっています。
インタンク設置にかかる費用
インタンクを新設する場合、初期費用としてまとまった投資が必要になります。設置するタンクの容量や工事の条件にもよりますが、一般的には数百万円から、規模が大きければ1,000万円以上の費用がかかることも珍しくありません。
また、設置後も以下のような継続的なランニングコストが発生します。
- 地下タンクの漏洩(漏れ)検査(※1)
- 消防設備の定期点検
- 給油機(計量機)のメンテナンス・修理費用
※1:消防法により1年(特別な措置が講じられている場合は3年)以内に1度の定期点検が義務付けられています。
▼消防法 第14条の3の2
政令で定める(第8条の5)製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、これらの製造所、貯蔵所又は取扱所について、**総務省令(第62条の4)**で定めるところにより、定期に点検し、その点検記録を作成し、これを保存しなければならない。
▼総務省令 第62条の4
法第14条の3の2の規定による定期点検は、1年(告示で定める構造又は設備にあつては告示で定める期間)に1回以上行わなければならない。
▼総務省令 第62条の5の3の2
~中略~(完成検査を受けた日から15年を超えないもの又は危険物の漏れを覚知しその漏えい拡散を防止するための告示で定める措置が講じられているものにあつては3年)を超えない日までの間に1回以上行わなければならない。
引用元:消防法における漏洩防止に関する措置について(環境省)
インタンクの導入を検討する際は、これらの「初期費用」と「毎月の維持費」が、燃料代の削減効果に見合うかどうかを慎重に見極めることが重要です。
次章では「インタンク設置のメリットは?」という疑問にお答えします。
運送会社がインタンクを設置する3つのメリット
この章では、インタンクを設置する理由となる、メリットを3つご紹介します。
- ガソリンスタンドより安く給油できる
- 給油所への移動をゼロにし、ドライバーの労働時間を削減する
- 有事のガソリンスタンド利用不可リスクを回避する(BCP対策)
ガソリンスタンドより安く給油できる
1つ目は、「燃料費の削減」です。一般的に、インタンクへの給油は石油元売り会社や特約店からの「タンクローリーによる大口のまとめ買い」となります。
そのため、中間マージンのかかるガソリンスタンドでの小口給油よりも、リッターあたりの単価が安く設定されます。
以下の表は、ガソリンスタンドとインタンクの軽油価格の差を示したものです。
▼2024年軽油価格の比較
| 種別 | 2024年軽油価格(円/リットル) |
|---|---|
| ガソリンスタンド | 154.7 |
| インタンク | 127.8 |
| 価格差 | 26.9 |
参照:
・石油製品価格調査 調査の結果(経済産業省 資源エネルギー庁)
価格差を見ればわかるように、1Lあたり20円以上安くなるケースも珍しくありません。物流部門を持つ企業や、物流事業者の燃料費を管理する荷主企業にとって大きなコスト削減につながる可能性があります。
燃料費を含む物流コストの削減についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。
関連記事:物流コストとは?内訳を把握する重要性やコスト削減のポイントを解説
給油所への移動をゼロにし、ドライバーの労働時間を削減する
2つ目のメリットは、給油にかかる移動時間や手間を削減し、ドライバーの労働環境改善に貢献できる点です。
筆者が以前、ある物流事業者の経営者から伺った話が非常に印象的でした。「ドライバーの本来の仕事は荷物を安全に運ぶこと。ガソリンスタンドへ給油に行く作業は、あくまで『付帯作業』だ」という考え方です。
特に地方や郊外に事業所を構えている場合、最寄りのガソリンスタンドまで距離があることも少なくありません。もし運行ルートから外れた場所までわざわざ給油に行かなければならない場合、ドライバーにとっては無駄な移動時間と残業が発生してしまいます。
インタンクがあれば、事業所に帰庫したタイミングや出発前にサッと給油できるため、ドライバーの負担軽減や残業代の削減につながります。
この「ドライバーの付帯作業」は法改正により注目度が高まっています。物流領域の付帯作業について詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。
物流領域の付帯作業とは?業務例や問題点、適正化に向けた国の施策を解説
付帯作業と…
2026.02.26
事のガソリンスタンド利用不可リスクを回避する(BCP対策)
3つ目のメリットは、自然災害などの有事におけるBCP(事業継続計画)対策として機能することです。
地震や台風などの大規模災害が発生した場合、街のガソリンスタンドは停電によって給油機が動かなくなったり、燃料の供給がストップして営業できなくなったりするリスクがあります。
また、たとえ営業していても、一部のスタンドに車両が殺到し、数時間待ちの渋滞が発生することも過去の災害時に何度も起きています。
もし自社にインタンクがあれば、数日から数週間分の燃料ストックを常に確保できている状態になります。有事の際でも自社のトラックを稼働させ、支援物資の輸送や緊急時の配送業務を継続することが可能です。社会インフラとしての物流を止めないための強力な備えと言えるでしょう。
なお、物流企業のBCP対策については、以下の記事で詳しく解説しています。
物流のBCP対策のポイントと事例
本記事では…
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次章では「反対に、インタンク設置のデメリットは?」という疑問にお答えします。
インタンク設置のデメリット
この章では、インタンクを導入する際に注意すべき2つのデメリットとリスクについて解説します。
- 設備の設置に多額の費用がかかる
- 管理不備による燃料漏れ
設備の設置に多額の費用がかかる
インタンク導入における最大のハードルは、金銭的な負担が大きいことです。
前述の【インタンク設置にかかる費用】で解説したとおり、インタンクの新設には地下の掘削工事や設備費を含め、規模によっては1,000万円以上という多額の初期費用がかかります。加えて、年間10万円〜30万円程度の維持費も継続して発生します。
自社のトラック台数や月間の燃料消費量を正確に把握し、「初期費用と維持費を何年で回収できるか」という投資対効果(ROI)をしっかりとシミュレーションしなければなりません。
単に「リッターあたりの単価が安くなるから」と安易に導入してしまうと、結果的にガソリンスタンドを利用するよりも高くついてしまうおそれがあるため注意が必要です。
管理不備による燃料漏れ
もう一つの大きなデメリットは、設備の老朽化や管理の不備によって燃料の流出事故を起こすリスクがある点です。実際に、全国の危険物施設において流出事故は後を絶ちません。
▼流出事故件数の推移

出典:令和6年中の危険物施設に係る事故の概要(消防庁危険物保安室)
万が一このような事態が発生すれば、土壌の浄化に莫大な費用がかかるだけでなく、近隣住民への被害や企業の社会的信用の失墜といった甚大なダメージを受けかねません。
次章では「そもそもインタンクが注目された背景を詳しく知りたい」という声にお答えします。
【2026年4月最新】中東情勢の悪化がインタンクに与える影響
この章では、昨今インタンクが注目されるきっかけとなった中東情勢の悪化と、それに伴う燃料供給の危機的状況について、最新動向を以下の34つのポイントでまとめました。
- 【背景】タンカーがホルムズ海峡を通航できず燃料価格が高騰
- 燃料供給の見通しが立たず、インタンクへの供給を制限という報道
- インタンク価格がガソリンスタンド販売価格より高いとの声も
- 物流を守り、顧客へ安定した供給を維持するための荷主の対応
【背景】タンカーがホルムズ海峡を通航できず燃料価格が高騰
事の発端は、2026年2月28日に開始されたアメリカ・イスラエルによるイランへの攻撃です。
対するイラン側の報復措置は民間インフラにも及び、日本の原油輸入の約9割が通過する「ホルムズ海峡」が実質的に通行不可能な状態に陥りました。
参考:https://www.meij.or.jp/research/2023/58.html
その影響で、日本への原油の供給が不安定な状況となり、軽油をはじめとする燃料価格が一気に高騰しました。
状況は現在(記事執筆時/2026年4月5日)も変わらず、単なる「価格の高騰」というフェーズから、「そもそも燃料を供給できない」「需要の抑制(利用制限)」を懸念しなければならない深刻なフェーズへと移行しています。
燃料供給の見通しが立たず、インタンクへの供給を制限
国土交通省は、2026年3月13日に全日本トラック協会などに向けた事務連絡の中で「事業協同組合による共同購入事業など一部のトラック事業者が利用するインタンクへの給油を中心に、小売石油販売事業者が販売制限を行う動きがある」と明記しています。
参照元:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001989023.pdf
この報告が示すように、一部の現場では実際にインタンクへの給油制限が行われている可能性があります。主な要因として考えられるのは以下の2点です。
今後の軽油入荷の見通しが立たないため
原油の輸入が滞っているため、石油元売り会社も各所への供給量を絞らざるを得ない状況です。
ローリー不足による配送の優先順位付け
値上げ情報が出回ったことで、燃料確保のための注文が殺到しました。しかし、燃料を運ぶタンクローリーの数には限りがあります。結果、石油元請けが運営するガソリンスタンドへの配送が優先され、自社専用設備であるインタンクユーザーへの配送は後回しにされてしまっているかもしれません。
物流を守り、顧客へ安定した供給を維持するための荷主の対応
今後、中東情勢が改善に向かわなければ、さらなる燃料価格の高騰や深刻な供給不足が懸念されます。
こうした状況下では、運送会社(物流事業者)のコスト負担増は避けられません。経営が圧迫されれば、トラックを走らせることができなくなり、結果としてモノが運べなくなる事態に直結し、荷主企業の経営にも悪影響を及ぼすでしょう。
この危機を乗り越え、顧客へ安定して商品を供給し続けるためには、荷主としての適切な対応が不可欠です。
具体的には、運送会社から運賃の値上げや「燃料サーチャージ」の適用を打診された場合、頭ごなしに拒否するのではなく、現状のデータに基づき荷主として適切に協議・対応することが求められます。
ただ、燃料コスト増をそのまま自社の利益の圧迫にしてはいけません。運送費(燃料費)が増加した分のコストを吸収するためにも、今こそ経営戦略として物流全体の効率化を推進していく必要があります。
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まとめ
インタンクは運送会社にとって、燃料代の削減やドライバーの労働時間の短縮、さらには有事の際のBCP対策として有効な設備です。しかし、多額の初期費用や維持費がかかることや、現在の深刻な燃料供給不足によって「安く給油できる」という本来のメリットが失われつつある点には注意しなければなりません。
中東情勢の悪化に伴う燃料価格の高騰と供給不安は、物流業界全体にとってまさに死活問題です。荷主企業は、運送会社からの運賃や燃料サーチャージの交渉に適切に応じるだけでなく、双方が協力して物流業務全体の効率化に取り組むことが急務となっています。
燃料費高騰などの外部環境の変化に負けない強靭な物流体制を構築するために、本記事でご紹介した視点や、データに基づく改善をサポートする「Hacobu Strategy」を、ぜひ貴社の戦略にお役立てください。
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