更新日 2026.01.19

物流業界におけるトレーサビリティとは?必要性や導入メリット、課題を解説

物流業界におけるトレーサビリティとは?必要性や導入メリット、課題を解説

物流のトレーサビリティとは、貨物や製品が「いつ、どこで、誰によって、どのように」取り扱われたかを記録し、必要なときに追跡できる状態のことを指します。品質事故や遅延が起きた際に原因と影響範囲を素早く特定し、取引先や消費者へ適切に対応するための土台となることから、トレーサビリティは物流業界で重要な概念となっています。

本記事では、トレーサビリティの基礎から導入メリット、課題、関連技術までを物流DXパートナーのHacobuが解説します。

トレーサビリティとは

トレーサビリティとは、原材料や部品、製品が生産・加工・流通される過程を記録し、後から追跡できる状態のことです。追跡を意味する「Trace」と能力を意味する「Ability」を組み合わせた造語で、日本語では「追跡可能性」と訳されます。

食品の安全管理、医薬品のロット管理、製造業の不具合・リコール対応などをはじめとし、広く物流業界でも活用されています。

トレーサビリティが注目される背景

トレーサビリティが注目される背景には、製品の安全性や信頼性に対する社会的要請の高まりがあります。

自動車のリコール制度やBSE(狂牛病)問題を契機に、原因の特定と迅速な回収を可能にする仕組みが求められました。

さらに近年は、サプライチェーンの多国籍化や分業化が進み、製品が複数国・複数企業をまたいで流通することが当たり前になっています。遅延や品質問題が発生した際に、関係者間で情報が分断されるリスクが増えたなかで、トレーサビリティはリスク低減だけでなく、取引の透明性や安定供給の観点からも重要性が高まっています。

物流業界におけるトレーサビリティの重要性

物流業界におけるトレーサビリティは、単なる「現在地の可視化」ではなく、輸送保管荷役の各工程の記録をつなぎ、品質と納期を説明できる状態にすることに本質があります。

荷主の立場では、誤出荷や遅延、品質事故が起きた際に「どこで何が起きたか」の迅速な特定が、顧客対応と再発防止の質を左右します。特に委託先や拠点が増えるほど、紙や口頭に依存した運用では、情報の抜け漏れや認識のずれが発生しやすくなります。記録の標準化と共有が進めば、トラブル対応だけでなく、平時の品質管理や業務改善の根拠となるデータも蓄積され、サプライチェーン全体の安定性向上につながります。

トレーサビリティの2つの種類

トレーサビリティは、サプライチェーン全体を追跡する「チェーントレーサビリティ」と、自社や拠点内に限定する「内部トレーサビリティ」に大きく分けられます。

チェーントレーサビリティとは

チェーントレーサビリティとは、調達から生産、物流、販売までの各段階を横断し、製品や貨物の履歴を追跡することを指します。

情報の形式や管理ルールを揃えることで、各領域で担当企業が異なる場合でも、何の製品がどの領域にいるのかを確認することができます。

内部トレーサビリティとは

内部トレーサビリティとは、1つの企業や工場、物流拠点など限定した範囲で、入荷から保管、ピッキング検品、出荷といった工程の履歴を追跡することです。

自社内で完結しやすく、導入の第一歩として取り組みやすい点が特徴です。

荷主や物流事業者がトレーサビリティを導入するメリット

トレーサビリティを導入すると、リスク低減、企業ブランドの向上をはじめとし、さまざまなメリットを得ることができます。ここでは、得られるメリットを5つ紹介します。

リスクを最小限に抑えられる

トレーサビリティの導入により、遅延や品質問題などが起きた際に原因や影響範囲を素早く特定でき、必要な範囲に絞った回収などの対応が可能になります。

迅速な対応を実現することにより、副次的な問題の発生を抑止できたり、企業の信用低下を最小限に抑えたりすることができるという利点もあります。

企業ブランドが向上する

顧客や取引先は、製品品質だけでなく、リスク管理と説明責任を果たす体制も含めて企業を評価します。トレーサビリティの取り組みがあることで、安心・安全への姿勢のアピールに裏付けがされ、信頼獲得から取引継続や新規案件の獲得を期待できます。

物流DXの推進になる

トレーサビリティは、現場の出来事をデータとして蓄積し、可視化・分析して改善につなげるための基盤となります。

紙やExcelに情報が分散したままでは、改善の属人化が進み、拠点間の標準化が難しいですが、トレーサビリティによってデータ化することで例外の検知や要因分析が進み、継続的な物流DXを推進することができます。

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業務効率が向上しサプライチェーン全体が最適化する

履歴の記録は一見手間に見えますが、システム化により確認作業や手戻りを減らし、ヒューマンエラーも抑制できます。さらに、輸送状況や在庫の見通しが立てやすくなるため、車両手配や倉庫運用を計画的に行えます。その結果、待機や滞留の削減、リードタイム短縮など、サプライチェーン全体の最適化が進みます。

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トラブル発生時の原因究明に役立つ

トラブルの原因究明では、現場の記憶や感覚に頼るほど対応が遅れ、再発防止も曖昧になりますが、工程ごとの記録が残っていれば、いつ、どの拠点で、どの条件下で異常が起きたかをたどることができます。結果として、対策が具体化し、改善の効果検証も行いやすくなります。

物流業界におけるトレーサビリティ導入時の課題

トレーサビリティの導入には多くのメリットがありますが、導入にあたっては課題もいくつか存在します。ここでは主な課題を3つ紹介します。

法規制が厳格化されている

物流は扱う商材によって求められる基準が異なり、特に食品や医薬品などは品質要件が厳格です。荷主企業は、どの情報を、どの期間、どの粒度で保持すべきかを整理し、委託先とも合意したうえで運用する必要があります。

要件が曖昧なままでは必要な記録が残らない上、現場負荷だけが増える恐れがあり、法規制や業界基準を踏まえ、実態に即した記録設計に落とし込むことが求められます。

初期費用がかかる

トレーサビリティの導入には、システム導入費に加え、現場で情報を取得する端末やタグ、場合によってはセンサーなども必要です。その上、業務フローの見直しや教育、定着のための工数も発生するため、効果を得るには、初期費用が多くかかります。

対象範囲を絞る、内部トレーサビリティから段階的に広げるなど、目的に合わせて工夫した設計を行う必要が生じることもあります。

将来的にはAI技術との連携が必須

将来的に遅延や品質劣化の兆候を早期に捉えるには、蓄積したデータの分析と予測が重要になり、AIの活用が期待されますが、その前提となるのは正確で欠損の少ないデータです。現場で入力が続かない運用や、定義が拠点ごとに異なるデータでは、分析の精度が上がりません。まずは「継続できる取得方法」と「共通のデータ定義」を整え、AI活用につながる土台を作ることが求められます。

トレーサビリティの効果を最大化する最先端技術

トレーサビリティの成否は、必要な情報を無理なく取得できるかによって左右されます。現場負荷を抑えつつ精度を高めるために、IoTセンサー、RFID、ブロックチェーンなどの技術を目的に応じて組み合わせることが有効です。

IoTセンサー

IoTセンサーは、温度・湿度・振動など輸送中の状態を継続的に取得できる技術です。

温湿度センサーや振動センサーなどがリアルタイムにデータを収集することで、規定範囲からの逸脱を早期に検知し、配送ルート変更や再手配などの判断を迅速に行うことができます。

また、状態データが記録として残ることで、品質事故時の説明力も高まり、荷主企業のリスク管理にも寄与します。

RFID(Radio Frequency Identification)

RFIDは電波を使う無線タグで、バーコードのように一点ずつ読み取らずに、複数の情報をまとめて取得できる点が特徴です。

無線タグの読み取りや書き換えが一括で可能であるため、読み取り漏れや確認ミスを抑制しつつ、入出荷や棚卸、検品の効率化を実現することができます。

ブロックチェーン

ブロックチェーンは、データを分散管理し改ざんが難しい形で記録する技術です。

複数の企業が関与するサプライチェーンでは、同じ記録を同じ前提で共有したい場面があり、透明性を高める手段として検討されます。すべてのケースで必須というわけではありませんが、取引の信頼性や監査対応の観点で価値を発揮します。

物流改善なら株式会社Hacobu

トレーサビリティは、システムを入れるだけで完成するものではなく、現場で継続できる運用設計と、データを改善に活かす仕組みがそろってはじめて成果につながります。

Hacobuでは「運ぶを最適化する」をミッションとして掲げ、物流DXツールMOVO(ムーボ)と、物流DXコンサルティングサービスHacobu Strategy(ハコブ・ストラテジー)を提供しています。物流現場の課題を解決する物流DXツール「MOVO」の各サービス資料では、導入効果や費用について詳しくご紹介しています。

トラック予約受付サービス(バース予約システム) MOVO Berth

MOVO Berth(ムーボ・バース)は、荷待ち・荷役時間の把握・削減、物流拠点の生産性向上を支援します。

動態管理サービス MOVO Fleet

MOVO Fleet(ムーボ・フリート)は、協力会社も含めて位置情報を一元管理し、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。

配車受発注・管理サービス MOVO Vista

MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)は、電話・FAXによるアナログな配車業務をデジタル化し、業務効率化と属人化解消を支援します。

物流DXコンサルティング Hacobu Strategy

Hacobu Strategyは、物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援します。

まとめ

物流のトレーサビリティは、貨物や製品の履歴を追跡できる状態をつくり、トラブル時の対応を迅速に行い、品質と信頼を守るための仕組みです。

目的に応じて追跡範囲と粒度の設定、IoTやRFIDなどとの連携を行うことで、現場負荷を抑えつつ物流品質を向上などさまざまな効果が期待できます。ぜひ「トレーサビリティ」の観点から物流・流通システムを見直してみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。 >>プロフィールを見る

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