更新日 2026.09.01

TMS(輸配送管理システム)とは?機能・選び方・サービス6選

TMS(輸配送管理システム)とは?機能・選び方・サービス6選

TMS(輸配送管理システム)とは、トラックの配車から配送、運賃の管理までを効率化する仕組みです。配車計画の作成から走行中の車両の把握、配送実績や運賃データの管理までを一元化し、輸配送業務全体の生産性を高めます。

この記事では、TMSの選び方やトレンドについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。Hacobuは、配車計画の作成から協力会社への依頼、実績・請求までを一元化する配車受発注・管理サービス「MOVO Vista」や、既製のサービスでは満たせない要件に対応する個社開発「Hacobu Solution Studio」も提供しています。

TMS(輸配送管理システム)とは

TMSとは何か、その特徴や種類、主な機能から順に解説します。

TMS(輸配送管理システム)の特徴

TMSとは『Transport Management System』の略で、輸配送管理システムのことです。具体的には、トラックの配車や移動データなどを管理するためのシステムになります。導入することで、輸送状況を可視化できるため、物流業務全体の効率化や生産性向上が目指せます。TMSの主な機能には「進捗管理機能」「配車管理機能」「実績管理機能」などがあります。

TMSの種類と最新トレンド

TMSには主に3つの種類があります。まず「クラウド型」は、インターネット経由でサービスを利用するタイプで、初期投資を抑えられる点や常に最新版を利用できる点がメリットです。次に「オンプレミス型」は、自社サーバーにシステムを導入するタイプで、セキュリティ管理を自社でコントロールできる点や、大規模なカスタマイズが可能な点が特徴です。最後に「ハイブリッド型」は、クラウドとオンプレミスの両方の特徴を持ち、柔軟な構成が可能です。

最新のTMSには、いくつかの注目すべきトレンドがあります。第一に「AI配車最適化」があります。これは膨大な配送データをAIが分析し、交通状況や天候、過去の配送実績などを考慮して最適な配車計画を自動生成するものです。導入企業では配送効率が平均15〜20%向上したという報告もあります。第二に、「IoTセンサー連携」があります。車両や貨物にセンサーを取り付け、リアルタイムで位置情報だけでなく、温度や振動、開閉状況などを監視できるようになっています。特に医薬品や生鮮食品など品質管理が重要な商品の輸送で注目されています。第三に「ブロックチェーン活用」があります。複数の物流事業者間での情報共有や取引の透明性確保にブロックチェーン技術を活用する取り組みが始まっています。これにより書類手続きの簡素化や、貨物の追跡精度向上が期待されています。

加えて、AI-OCRによる帳票のデータ化も実用段階に入っています。従来のOCRは読み取り位置を座標で定義する必要があり、帳票のフォーマットが変わるたびに設定し直す手間とコストが見合わないという課題がありました。現在のAI-OCRは、読み取りたい項目のサンプルを与えておけば、形式が異なる書面でも文脈から内容を解釈して構造化データに変換できます。手書きや紙の帳票が残る現場でも、デジタル化を前提に業務設計を見直せる状況になっています。

TMS(輸配送管理システム)の機能

TMS(輸配送管理システム)の機能には荷物の配送状況確認や、ドライバーの業務状況管理などさまざまなものがあります。以下で4つの機能を解説します。

荷物の配送状況を追跡する

TMSは荷物の配送状況を追跡することが可能です。例えばこの機能により、トラックに乗せられた荷物がいまどこを走行中なのかを把握できます。そのため、仮に道路が混雑していたとしても、その状況もリアルタイムで把握できるため、到着予定時間の共有を行えます。

運転に関するデータを共有する

TMSの機能により、ドライバーの運転に関するデータを共有可能です。具体的には、トラックの走行距離や使用燃料を把握できます。その結果、各トラックの作業効率を把握することができ、最適な配車や積載量を自動計算できるのです。また、ドライバーの作業効率を把握することで、給与の査定時に数値を活用することもできます。

トラックの運用にかかるコストを把握する

TMSでは、運転データや配送状況のデータだけでなく、トラックの運用にかかるコストを把握することもできます。コストは、トラックの燃料の使用量をもとに計算されます。また、取引先や顧客への運賃や支払い請求などの計算にも対応可能です。

ドライバーの業務状況を管理する

ドライバーの業務状況を管理できる機能もTMSは備えています。この機能により、作業効率の悪いドライバーの状況を数値化することが可能です。その結果を踏まえて具体的な指示を出すことも可能でしょう。また、業務過多になっているドライバーをすぐに発見することもできます。

TMSとOMSやWMSの違い

ここからは物流におけるTMSと、OMSやWMSとの違いを解説します。

商品の受注を管理する「OMS(受注管理システム)」

OMSとは『Order Management System』の略で、受注管理システムのことです。具体的には、顧客情報、商品情報、在庫情報、注文情報をまとめて管理できます。特徴は、注文から在庫として管理するまでを扱う、という点です。

倉庫の在庫を管理する「WMS(倉庫管理システム)」

WMSとは『Warehouse Management System』の略で、倉庫管理システムのことを指します。機能としては、倉庫の在庫を管理するための以下の機能が搭載されています。
・入荷管理
・在庫管理
・出荷管理
倉庫内での在庫の保管から発送までを管理できることが特徴になります。

参考:倉庫管理システム(WMS)とは

「物流管理」は商品の受注から配送までを管理すること

物流管理とは、商品について、発注から配送までのすべての工程を一元管理する方法です。物流の流れとして、まずは製造拠点から物流センターへと商品が輸送され、入荷作業を行った後に倉庫に保管されます。

その後、商品の流通加工を行い、ピッキングを行った後に配送されるという流れです。この物流管理をスムーズに進めるためのシステムとして、物流管理システムがあります。

参考:物流管理の基本

物流管理における配送プロセスの位置づけ

物流管理における配送プロセスは、サプライチェーン全体の最終段階であり、顧客満足度に直結する重要な工程です。いくら商品の品質が優れていても、配送が遅延したり誤配送が発生したりすれば、顧客の信頼を失うことになります。特に近年の物流効率化法の改正により、配送の正確性と迅速性に対する要求は一層高まっています。

物流管理で生じている課題

物流管理で生じている課題には何があるのでしょうか。以下で詳しく解説していきます。

配車業務が属人化している

物流管理では、配車業務が属人化してしまっているという課題があります。ある調査によると「配車計画業務の属人化」に課題を感じる企業が全体の64.9%を占めているという結果も出ています。これは、経験豊富な担当者が、データなどを参考にするのではなく、長年の経験に基づく「勘どころ」などを頼りにしている現場があるためです。

その結果、業務の属人化が起こってしまいます。そのため、物流業務では配車管理機能の改善や強化が必要といえるでしょう。

たくさんのリソースが必要で人員不足が発生している

物流業務はたくさんのリソースが必要です。そのため工数も多く、人員不足が発生しています。

人員不足は業務のクオリティ低下につながります。特に、トラックドライバーが不足している状況があるので、業務の効率化を行うなどして、課題を解決していく必要があります。人手不足はドライバーの慢性的な疲労につながり、結果的に生産性の低下を招くため注意が必要です。

配送コストの可視化が難しい

物流管理における深刻な課題の一つが、配送コストの可視化の難しさです。配送コストは燃料費、人件費、車両費など多岐にわたる要素で構成されており、それぞれが市場環境や季節変動の影響を受けます。特に燃料費は原油価格の変動に左右され、予測が困難といえます。

配送コストが可視化できないことは、経営判断に大きな影響を与えます。配送コストの不透明さから採算性を正確に見積もれず、結果として負債を抱えることになるなど、配送コストの可視化は単なる経費管理を超えた経営戦略上の重要課題です。

法令遵守と安全管理の両立が難しい

運送業界では労働時間規制、車両の点検義務、過積載防止などの法令遵守が強く求められます。しかし現場では納期や効率を重視せざるを得ず、遵守と実務の間にギャップが生じやすいのが実情です。例えば長距離輸送では休憩を確保する必要がある一方、配送スケジュールとの兼ね合いで調整が難しく、安全運転と顧客満足を両立するには仕組みづくりや計画の工夫が不可欠です。

いまのシステムを見直すべき4つのサイン

配車や輸配送の管理をすでに何らかのシステムや表計算ソフトで行っている場合、TMSの新規導入ではなく、いまの仕組みの見直しが検討の出発点になります。判断の目安になるのは、次の4つのサインです。

1つ目は、データ構造が現在の運び方を表現できなくなっていることです。中継輸送や共同配送など、導入当時は想定していなかった運び方が増えると、システムに正しく登録できず、表計算ソフトや個別のメモで補う運用が生まれます。その結果、コストやリードタイム、荷待ち時間の分析に必要なデータが残りません。

2つ目は、改修の見積もりが跳ね上がることです。どこを変更すると何に影響するのかが分からなくなり、小さな項目追加や画面変更でも影響調査とテストに多くの時間と費用がかかります。法改正や新しい業務要件への対応が遅れる原因になります。

3つ目は、人と文書の形骸化です。構築当時の担当者が異動・退職し、仕様書や運用マニュアルも更新されていないため、なぜその仕様なのかを誰も説明できない状態を指します。トラブル対応や改修判断が属人化します。

4つ目は、現場ごとのシャドーITが増えることです。基幹システムを改修できない状態が続くと、営業所や部署が独自に表計算ソフトやツールを導入します。一見すると現場の課題は解決しますが、全社でデータがつながらず、セキュリティや運用ルールの管理も難しくなります。

これらに当てはまる場合、重要なのは最新のシステムに入れ替えることではなく、法改正や運び方の変化に合わせて変え続けられる構造を選ぶことです。導入した時点では最新でも、変更しにくい作りであれば数年後には同じ課題が再発します。

なお、見直しは全面的な入れ替えだけが選択肢ではありません。標準的な業務は既製のサービスに寄せ、自社固有で変えにくくなっている部分だけを切り出して作り直すという進め方もあります。具体的な選択肢は、後述のサービス紹介で触れます。

海外と日本におけるTMSの違い

海外におけるTMSの位置づけ

米国をはじめとするグローバル市場では、TMSは単独のシステムではなく、サプライチェーン全体の最適化ツール群の一部として位置づけられています。海外では工場渡し(EX Factory、EX Works)が一般的で、着荷主が自社で車両を手配するケースや、自社で車両を抱えている企業が多いのが特徴です。そのため荷主企業が輸送の責任を持つことが前提となっており、TMSは自社のサプライチェーン管理に不可欠なツールとして発展してきました。

例えば米国の大手小売業者では、TMSを活用して出荷情報、配送情報、コスト情報、トラッキング情報、ドライバー情報といった幅広いデータを一元管理しています。これらのデータを活用することで、運送会社との適切な交渉、業務改革の推進、取引条件の最適化を実現しています。

日本におけるTMSの現状

一方、日本では運送業者が導入するツールとして発展してきた経緯があり、現場最適のツールに留まっている傾向があります。しかし、物流関連二法の改正により、日本でも荷主企業が運行管理情報を把握することが求められる時代になってきました。今後は海外と同様に、荷主が輸送責任を持ち、全体最適を目指すツールとしてTMSを活用していくことが重要になるでしょう。

TMSを構成する3つの領域

配車計画システム

出荷する貨物情報や納期、積載条件をもとに、最適な車両割り当てを自動で行います。人手に頼ると時間がかかる計画業務を効率化し、燃費や稼働率を考慮した最適な配送計画を実現します。

配車管理システム

計画で割り当てられた車両を実際に手配し、ドライバーや協力会社への指示を行う領域です。運行前の調整や急な変更対応を一元的に管理でき、現場のオペレーション負担を大幅に軽減します。

車両管理システム

実際に稼働する車両の位置や走行状況をリアルタイムに把握します。遅延やトラブルへの即時対応が可能となり、配送品質の向上や顧客への正確な情報提供に直結する重要な領域です。

この3領域は、それぞれ別のサービスとして提供されていることが多く、1つのサービスで3領域すべてをカバーする例は多くありません。自社がどの領域に課題を抱えているのか、将来的にどこまで広げたいのかを先に整理しておくと、後述するサービス選定で迷いにくくなります。

TMS(輸配送管理システム)を導入するメリット

TMSを導入することで企業は多くのメリットを得ることができます。以下では、代表的なメリットについて詳しく解説します。

配送計画の効率化と最適化

TMSの導入により、配送計画の効率化と最適化が実現します。従来の手作業による配車計画では見落としがちだった非効率なルートや積載率の低い車両配置などを、システムが自動的に検出し改善案を提示します。

特に近年は、AIを活用した動的ルート最適化が注目されています。これは、リアルタイムの交通情報や天候、突発的な配送先の変更などに応じて、最適なルートを動的に再計算する機能です。従来の静的なルート計画と比較して、平均で配送時間を8〜12%短縮できるとの報告もあります。

配送コストの削減と「見える化」

TMSの導入による最も大きなメリットの一つが、配送コストの削減とその可視化です。実際の導入企業の事例では、燃料費が平均15%削減されたり、効率的な人員配置により人件費を約10%削減することに成功していることもあるようです。

コストの可視化が経営判断に与える影響も見逃せません。ある中堅運送会社では、TMSによるコスト分析から、特定の配送エリアが予想以上に収益性が低いことが判明しました。この分析結果を基に、同エリアの配送料金の見直しと配送頻度の最適化を行った結果、全体の営業利益率を向上させることに成功しています。コストの「見える化」は、単なる経費削減を超えた戦略的な経営判断を可能にするのです。

TMSに蓄積されるデータの活用価値

TMSに蓄積される運行管理情報は「宝の山」です。日々の業務を通じて自動的に蓄積されるデータを活用することで、輸送効率改善のための様々な分析が可能になり、データドリブンな運送マネジメントが実現します。

出荷・受注情報からは、需要分析や出荷パターン分析、納期遵守率分析が可能です。これにより出荷傾向を把握し、在庫計画や配送計画の最適化につなげられます。配送計画・実績データでは、ルート効率や積載率、遅延要因を分析することで、空車削減やリードタイム短縮が実現します。

コスト・運賃情報の分析により、コスト構造の可視化や顧客別の利益率分析、運送会社の評価が可能になります。これは適正運賃での料金交渉や収益性改善に直結します。さらに配送ステータス・トラッキング情報からは遅延要因の特定や地理的傾向の把握ができ、車両・ドライバー情報からは稼働率分析や労務分析を通じて、最適な人員・車両配置の立案が可能になります。

TMS(輸配送管理システム)を導入するデメリット

TMSの導入には多くのメリットがある一方で、導入前に理解しておくべきデメリットやリスクも存在します。これらを事前に把握することで、導入後の失敗を最小限に抑えることができます。

初期導入コストと運用費用の負担増大

TMSを導入する際の大きな障壁となるのが初期導入コストと継続的な運用費用です。初期導入コストは規模にもよりますが、小規模企業で約100万円から、大規模企業では数千万円に達することもあります。この初期費用には、システム本体の費用だけでなく、カスタマイズ費用、データ移行費用、社内教育費用なども含まれます。

ランニングコストについても理解しておく必要があります。月額利用料は月額数万円〜数十万円になることもあります。さらに、システムの更新料、サポート料、追加機能のオプション料金なども発生します。これらのコスト負担を軽減するためには、段階的な導入計画を立てることが効果的です。まずは核となる配車管理や進捗管理などの機能から導入を始め、効果を確認しながら徐々に機能を拡張していく方法が推奨されます。

個別開発を含む場合も同様で、最初から本開発に入らず、PoC(概念実証)で小さく試してから投資判断を行う進め方があります。対応できる開発パートナーかどうかを、見積もりの段階で確認しておくとよいでしょう。

既存システムとの連携における課題

TMSを導入する際、多くの企業が直面するのが既存システムとの連携における課題です。典型的な問題としては、まずデータフォーマットの不一致があります。会計システムや販売管理システムで使用しているデータ形式がTMSと互換性がなく、データ変換が必要になるケースが多いのです。次に、リアルタイム連携の難しさがあります。基幹システムでの受注情報や在庫情報をTMSにタイムリーに反映させることが技術的に困難な場合があります。

これらの課題に対処するためには、API連携の活用が有効です。例えば、ある製造業では、ERPシステムとTMSをAPI連携させることで、受注情報から自動的に配送計画が作成される仕組みを構築しました。また、データ互換性の問題に対しては、ETLツールの活用も効果的です。これにより異なるシステム間のデータ形式を自動変換し、スムーズなデータ連携が可能になります。いずれにせよ、システム連携は導入前の詳細な要件定義と、ベンダーとの綿密な協議が不可欠です。場合によっては外部のシステムインテグレーターを活用することも検討すべきでしょう。

その際に見落とされやすいのが、パートナーの物流業務への理解度です。輸配送の連携開発では、付帯作業の扱いや積み合わせの制約、取引先ごとの納品ルールなど、現場を知らないと要件定義の段階で認識がずれる論点が多く出てきます。技術力だけでなく、物流の業務要件を現場の言葉で議論できるかどうかが、手戻りの量を左右します。

TMS導入前に決めておきたい、輸配送への関与レベル3パターン

TMSを選ぶ前に決めておきたいのが、自社が輸配送にどこまで関与するのかという方針です。荷主企業の関与の仕方は、①定期モニタリング、②リアルタイムモニタリング、③配車業務の自前実施の3つに整理できます。関与の度合いは①から③へ向かって深くなり、必要なリソースも得られる効果も大きくなります。

パターン主目的向いている企業関与の度合い
①定期モニタリング見える化と改善の土台づくり輸配送の実態をまず把握したい/物流に割けるリソースが限定的/運送会社が改善活動に協力的小
②リアルタイムモニタリング日々の運用に介入して積載効率を高める積載に改善余地がありそうだが裏付けがない/運送会社任せでは改善が限定的だと感じている中
③配車業務の自前実施輸配送コストと輸配送能力を自社でコントロールする物流の効率性が中長期の競争力の源泉になる/自社で配車したほうが効率的だと考えている大

定期モニタリングは、運送会社との間でKPIを設定し、月次などの頻度で共同で改善を進める取り組みです。リアルタイムモニタリングは、これに加えて日々の輸配送状況を把握し、積載率の低い配車が見えた場合に追い積みを行うなど、日々の業務へ踏み込みます。配車業務の自前実施は、輸配送計画そのものを自社で立案・運用し、運送会社を統括する取り組みです。

3つのパターンに絶対解はありません。選ぶ際は、関与する目的(安定輸送の確保、法対応、品質向上、コスト最適化のどれを重視するか)、自社のリソース(物流に割ける人員、ノウハウ、データ)、物流会社との関係性(パートナーシップの深さ、対象輸送の重要度)という3つの軸で判断します。ここが定まると、TMSに求める機能の範囲も自然に絞り込めます。

TMS(輸配送管理システム)を選ぶときのポイント

TMSを選ぶ際には、自社の業務特性や課題に合ったシステムを選定することが成功の鍵となります。ここでは、TMSの選定において押さえておくべき重要なポイントを解説します。

自社の物流課題を明確にする

TMS選定の第一歩は、自社の物流課題を明確に洗い出すことです。この作業は以下の手順で進めると効果的です。まず、現状の業務フローを可視化し、各プロセスにおける所要時間やコスト、問題点を洗い出します。次に、物流に関わる各部門へのヒアリングを実施し、現場の声を集めます。そして収集したデータを分析し、重要度と緊急度に基づいて課題の優先順位を決定します。最後に、解決すべき課題とそれによって得られる効果(KPI)を明確にします。

業種別に見ると、典型的な物流課題にはいくつかのパターンがあります。製造業では「生産計画と配送計画の連携不足」、卸売業では「多頻度小口配送の増加によるコスト増」などが挙げられます。また、小売業では「店舗ごとの納品時間指定への対応」などが課題となっています。これらの業種別の特性を踏まえ、自社の具体的な課題を特定することで、より効果的なTMS選定が可能になります。

サポート体制とアフターフォローの重要性

TMSの導入成功には、システムの機能だけでなく、ベンダーのサポート体制とアフターフォローが決定的に重要です。チェックすべきポイントとしては、まずサポート対応時間が挙げられます。物流業務は早朝から深夜まで、また土日祝日も動いていることが多いため、365日対応可能なサポート体制があるかどうかは重要な判断材料となります。また、担当者の専門性も確認すべきです。単なる操作方法の案内だけでなく、物流業務に精通したスタッフが対応してくれるかどうかで、問題解決の質が大きく変わります。

アフターフォローが不十分な場合のリスクは想像以上に大きいものです。ある食品メーカーでは、TMSの導入後にシステムエラーが発生し、その日の配送計画が作成できなくなったこともあるようです。しかし、ベンダーの対応が遅く、結局その日は手作業での配車対応を余儀なくされ、多くの配送遅延が発生しました。このようなリスクを回避するためには、導入前にベンダーのサポート体制を詳しく確認するとともに、実際に導入済みの他社の評価や口コミも参考にすることが重要です。

どこまでを自社の仕組みとデータで持つかを決める

TMSで管理する範囲は、輸送計画までか、手配までか、請求・原価までかという3段階で考えると整理しやすくなります。段階1は、計画立案や積載シミュレーションまでを自社で持ち、依頼・承諾の書面のやり取りと実行、請求は運送会社に残す形です。段階2は、これに手配を加えてデジタルで管理します。段階3は、請求・原価まで含めてすべてを自社が担う形で、運送会社とのやり取りをほぼ直接管理する状態になります。

ここで分けて考えたいのが、「自社でやる業務」と「仕組み・データを自社が持つこと」です。運送会社との役割分担は変えないまま、仕組みとデータだけを自社側に持つという選び方もできます。また、段階が上がるほど必要な体制も増えます。段階1なら積載シミュレーションを担う人材、段階2なら協力会社との運用合意、段階3なら運送会社ごとの購買・経理連携が必要です。システムと運用体制はセットで検討してください。

標準機能で足りる範囲と、作り込む範囲を線引きする

TMSの選定では、標準機能で対応する範囲と、自社向けに作り込む範囲を先に線引きしておくことが重要です。判断の軸は、その業務が自社の競争優位につながるかどうかと、標準機能で満たせるかどうかの2つです。マスタ管理や基本的な進捗管理のように競争優位に直結しない業務は標準機能に任せ、運送会社の選定基準や採算性を踏まえた受注判断のように、自社のノウハウが表れる領域に投資を集中させます。

あわせて、全体を一体で作り込まず、必要な機能を部品として選び、後から付け外しできる構成にしておくことも有効です。一体で作ると、1か所を変えるだけで大きな手間がかかります。なお近年はAIの活用により個別開発のコストが下がっており、従来は採算が合わず見送っていた自社固有のルールも、実装を検討できる範囲が広がっています。

作り込む範囲が決まったら、次に検討するのが開発パートナーの選定です。輸配送の個社開発は、付帯作業や積み合わせの制約、取引先ごとの納品ルールなど、現場の業務を知らないと要件定義の段階で認識がずれやすい領域です。そのため、物流業務への理解がある開発パートナーを選べるかどうかが、手戻りの量を大きく左右します。

Hacobuでも、システムインテグレーション・AI導入支援「Hacobu Solution Studio」で、輸配送領域の個社開発を支援しています(具体的な対応範囲は後述のサービス紹介で触れます)。

TMS(輸配送管理システム)サービス6選

ここからは、代表的なTMSを5つと、既製のサービスで要件を満たせない場合の選択肢となる個社開発を合わせた6つを紹介します。TMSは配車計画・配車管理・車両管理の3領域で構成されますが、サービスによってカバーする範囲は異なります。ここでは、対応領域の広いものから順に取り上げます。まず各サービスの対応領域を一覧で確認してください。

サービス配車計画配車管理車両管理
MOVO Vista○○○
MOVO Fleet−−◎
LYNA 自動配車クラウド○−−
Loogia配車作成○−−
LogiSTAR配車管理簿○−−
Hacobu Solution Studio(個社開発)○○○

※◎は特化した強みを持つ領域、○は対応している領域、−は対応範囲外を示します。各サービスの公式サイトおよび公開情報にもとづく整理であり、優劣を示すものではありません。オプションや上位サービスの利用により、対応範囲が広がる場合があります。また、同じブランドでも配車計画と車両管理が別々のサービスとして提供されている場合があるため、表はサービス単位で整理しています。

MOVO Vista

MOVO Vistaは、配送の計画・依頼・実行・請求・分析を一気通貫で扱える配車受発注・管理サービスで、配車計画・配車管理・車両管理の3領域すべてをカバーします。

配車管理の面では、貨物・車両・ドライバーの情報を一元管理したうえで、協力会社への配送依頼から承諾、車番・ドライバーの回答、実績の登録、請求までを同じサービス上で扱えます。電話やFAX、メールでやり取りしていた手配業務をデジタル化できるため、依頼を出したのに返事がない、誰がどの荷物を運ぶのかが分からないといった状態を防げます。

さらに、依頼と実績のデータが蓄積されるため、運送会社ごとの依頼件数や承諾率、貨物あたりの輸送単価をあとから振り返れます。手配を紙や表計算ソフトで行っていると残らない情報であり、料金交渉や協力会社の見直しを数字で議論する土台になります。

配車計画の面では、AI配送計画機能により、出荷指示データをもとに納品先の時間指定や車両条件、車格・積載量といった制約を踏まえて、どの貨物をどの車両に積み合わせ、どの順番で回るかまでを含む配送計画を自動で作成します。荷物の重量や占有床面積と車両の大きさから積載率を自動で算出して可視化するため、経験の浅い担当者でも積載率を確認しながら短時間で計画を立てられます。作成した計画は出荷指示カードのドラッグアンドドロップで修正でき、そのまま協力会社への依頼・請求まで同一サービス上で完結できます。

車両管理の面では、現在地共有機能により、配送案件の画面上でドライバーの現在位置や配送状況をリアルタイムに確認できます。荷待ち時間や到着・出発時刻の記録、現場写真のアップロードにも対応しており、どの配送先で荷待ちが長く発生しているかといった実態を把握して改善につなげられます。ドライバー向けアプリ「MOVO Driver」と連携する仕組みのため、専用のGPS端末を用意する必要がありません。元請け事業者を介して実運送事業者へ再委託されるような多段構造でも、状況確認のための連絡を減らせる点が特徴です。

参考:Hacobu、「MOVO Vista」で、AI配送計画機能を提供開始/Hacobu、「MOVO Vista」に配送計画機能と現在地共有機能を追加

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MOVO Fleet

MOVO Fleetは、車両管理の効率化で、荷主と運送会社双方のコスト削減を支援します。配送計画をダッシュボード上で可視化することで、車両位置把握や着荷の自動記録などが可能です。また拠点を跨いでリソースを一元管理できるため、大きく輸送効率化を実現できます。

車両管理の精度を重視する場合の選択肢になります。車両の位置情報を5秒間隔で取得するため、走行ルートや着荷・出発の時刻を細かい粒度で記録できます。測位の間隔が粗いと、短時間の立ち寄りが記録から抜け落ちたり、到着時刻にずれが生じたりします。荷待ち時間や配送実態をデータで把握し、運送会社との協議や改善活動の根拠に使いたい場合は、位置情報の取得間隔も確認してください。

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LYNA 自動配車クラウド

AI搭載の自動配車システムで、配車業務の効率化が可能です。6時間かかっていた日々の配車計画を30分に短縮できるため人件費の削減を行えます。また正確な配車計画を誰でも行えるため、人材不足も解消するシステムです。

組合せ最適化のアルゴリズムを用いており、混載禁止や連続運転時間、休憩、車両ごとの担当エリアといった制約条件を設定したうえで計算できます。複数日の配車計画を一括で作成する機能や、制約違反・未配車理由の表示にも対応しています。なお、上位サービスの「LYNA DXプラットフォーム」では、受発注管理や動態管理、日報作成までを含めたデジタル化に対応範囲が広がります。

Loogia配車作成

誰でも簡単に最適なルートを作成することで配送業務を効率化できるシステムです。高精度な経路探索で「計画通り」に配送でき、配送コース数の削減や、稼働時間の圧縮を実現します。

ラストワンマイル配送に特化しており、実際の走行データを解析した独自の速度推定モデルを用いる点が特徴です。ドライバーの勤務時間や休憩、車両の積載容量や車格、配送先の納品時間帯や滞在時間など、40以上の制約条件を標準機能で設定できます。稼働時間・訪問件数・荷量で担当間の偏りをならす均等化の設定や、右折の抑制、使用を禁止する道の指定といった、現場の事情に踏み込んだ条件にも対応します。

なお、リアルタイムの進捗把握や実績データの分析は、別サービスの「Loogia配送支援」が担います。配車結果をドライバーアプリへ連携し、走行中のGPSデータをもとに移動時間の予測精度を高める仕組みのため、両方を導入すると配車計画の精度が使うほど上がっていく構成になります。上の表は配車作成の対応領域を示しています。

LogiSTAR配車管理簿

LogiSTAR配車管理簿は、曜日時間帯別の走行速度(VICS統計)搭載で、時間指定や車格指定などの多様な接車条件にも対応可能なシステムです。多数の運用実績を製品に反映させることで、常に情報をアップデートできます。

パスコが提供するGIS技術ベースのシステムで、希望する配送時間帯や優先度を踏まえた一括の配車計算を行う、配車計画の領域のサービスです。時間帯別の走行速度に加えて、月別・曜日別の道路混雑も考慮して計算します。熟練の配車担当者が持つ納品要件(接車のしやすさ、待たされやすい時間帯、必要な対応人数など)を顧客マスタとして登録できるため、経験の浅い担当者でも同じ条件を踏まえた配車が可能です。動態管理サービスと連携すれば、計画と配送状況を突き合わせて確認できます。

Hacobu Solution Studio(個社開発)

ここまでの5つのサービスで自社の要件を満たせない場合は、個社開発という選択肢があります。Hacobu Solution Studioは、システムインテグレーションとAI導入支援を行う開発チームです。輸配送の領域では、個社向けの配車システムの開発、運送会社の選定ロジックの作り込み、積み付けシミュレーションの実装、基幹システムや倉庫管理システムと輸配送データをつなぐ連携開発、輸配送KPIのダッシュボード化と分析までを扱います。配車計画・配車管理・車両管理のどの領域も、自社の業務に合わせて設計できる点が、あらかじめ機能が決まっているサービスとの違いです。

開発した仕組みは、協力会社への発注・支払いをMOVO Vistaでデジタル化するなど、既存のサービスと組み合わせて構成することもできます。要件定義の段階から現場の言葉で議論できること、開発プロセス自体に生成AIを組み込み、プロトタイプの作成と試用を高速に繰り返しながら実装を進められることが特徴です。MOVOを利用していない場合でも相談でき、PoC(概念実証)から小さく始める進め方も選べます。

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TMS(輸配送管理システム)の導入事例

TMSの導入がどのような効果をもたらすのか、実際の企業の事例を通して見ていきましょう。

前提として、荷主企業が輸配送機能を強化する動きは、システム導入以外の形でも広がっています。エディオンや伊藤園は物流会社を買収して自社の物流機能を強化し、レゾナック(旧・昭和電工)やAGCは物流子会社を本体へ吸収しました。スバルや花王は物流を管理する新組織を立ち上げています。輸配送を運送会社に任せきりにしない体制づくりが、業種を問わず進んでいます。

数値で見るTMSの導入効果(モデルケース)

1つ目の事例は、関東圏を中心に展開する食品卸売業A社です。同社は配送車両50台を保有し、1日あたり約500件の配送を行っていましたが、配車計画の属人化や配送コストの増加に悩んでいました。TMSを導入した結果、配送ルートの最適化により燃料費が月間約18%削減され、配車計画作成時間も1日あたり5時間から1時間に短縮されました。さらに、リアルタイムの配送状況把握により、顧客からの問い合わせ対応時間が60%減少し、顧客満足度が向上しています。

2つ目の事例は、全国に工場と配送センターを持つ製造業B社です。同社は多品種少量生産への移行に伴い、配送の小口化と頻度増加が課題となっていました。TMSの導入により、複数の配送先を効率的に組み合わせる共同配送が可能となり、積載率が平均65%から82%に向上しました。また、配送データの分析により季節変動の予測精度が向上し、繁忙期のドライバー残業時間が前年比25%削減されています。

3つ目の事例は、地方を拠点とする中小運送会社C社です。ドライバーの高齢化と人手不足に悩んでいた同社ですが、TMSを導入したことで配送効率が向上し、同じドライバー数で10%多い配送件数を処理できるようになりました。また、車両の稼働状況をリアルタイムで把握できるようになったことで、急な配送依頼にも柔軟に対応できるようになり、新規顧客の獲得にもつながっています。さらに、労務管理機能により、ドライバーの労働時間管理が適正化され、コンプライアンス違反のリスクも低減しました。

配車業務を自社に取り込んだ事例(製造業D社)

4つ目は、配車業務そのものを自社に取り込んだ製造業D社の事例です。売上500億円規模の同社は、地方の工場から全国へさまざまな車格のトラックで出荷しており、配車計画と手配は特定の3PLに委託していました。輸配送費が上昇するなかで効率化が必要になったものの、委託したままでは改善の余地に限界があると判断し、配車業務の自前実施に踏み切っています。

取り組んだのは3点です。1つ目は配車業務の設計で、業務を観察して業務フローを書き切ったうえで、システムはゼロから作らず、これまで利用してきたものを継続利用できるよう物流会社と調整しました。2つ目は配車担当者の育成で、自社で配車を行っているグループ会社へ人員を派遣し、OJT形式で育てています。3つ目は3PLとの交渉で、荷主として出荷量や納品時間を調整することで積載率の向上と必要車両数の削減に貢献できると示し、合意を得ました。この事例が示すのは、配車業務の自前実施はシステムを入れれば実現するものではなく、業務設計・人材育成・既存パートナーとの関係再設計をセットで進める必要があるということです。

実名で公開されている導入事例

ネスレ日本は、委託先の約7000人のドライバーとMOVO Vistaで情報連携する取り組みを進めています。ドライバーがスマートフォンアプリで記録した出荷元・納品先での到着、出発、荷待ちの時刻を荷主側がリアルタイムに確認できる仕組みで、年間約2万件の出荷を対象に展開しています。配送業務の指揮命令は従来どおり元請け事業者が担ったまま、荷主が現場の実態をデータで把握できる点が特徴です。

業務工数の面でも効果が出ています。後藤回漕店は配車発注業務のペーパーレス化により発注業務の工数を約40%削減し、基幹システムとの連携で二重入力も解消しました。京セラ鹿児島川内工場の物流部門では、トラックの輸送手配にかかる業務工数を60%削減しています。いずれも、電話やFAXでのやり取りをオンラインに置き換えたことが起点です。

参考:ネスレ日本、Hacobuの「MOVO Vista」で委託先約7000人のドライバーと情報連携/後藤回漕店、MOVO Vista導入で配車発注業務の工数を約40%削減/京セラ鹿児島川内工場、輸送手配の業務工数を60%削減

TMS(輸配送管理システム)に関するよくある質問

TMS(輸配送管理システム)は、配送計画や配車、運行管理、実績管理などを支援し、輸配送業務の効率化に役立つシステムです。ここでは、WMSとの違い、主な機能、導入効果、費用の考え方、導入する主体、パッケージと自社開発の選び方、法対応との関係について、荷主企業や物流事業者が検討時に押さえておきたい基本を解説します。

TMSとWMSの違いは何ですか?

TMSとWMSの違いは、管理対象が「輸配送」か「倉庫内業務」かにあります。TMSは、配車計画、配送ルート、運行状況、配送実績など、商品を拠点から納品先へ運ぶ工程を管理する仕組みです。一方でWMSは、入荷、保管、ピッキング、出荷検品、在庫管理など、倉庫内の作業を管理します。例えば、出荷する商品を倉庫で正確にそろえるのがWMS、その商品をどの車両で、どの順番に届けるかを管理するのがTMSです。

参考:倉庫管理システム(WMS)とは

TMSの主な機能は何ですか?

TMSの主な機能は、輸配送業務の計画から実行、実績把握までを一元的に管理することです。具体的には、配送依頼の管理、配車計画の作成、配送ルートの最適化、車両やドライバーの割り当て、運行状況の可視化、到着・完了実績の記録、運賃や請求に関わるデータ管理などが挙げられます。紙や電話、表計算ソフトで分散していた情報をシステム上で扱うことで、担当者ごとの判断に依存しやすい配車業務を標準化しやすくなります。

TMSを導入するとどんな効果がありますか?

TMSを導入すると、輸配送業務の可視化と効率化を進めやすくなります。例えば、配送計画や車両の稼働状況をデータで把握できるため、無駄な走行や積載の偏り、待機時間などの課題を見つけやすくなります。国土交通省は、物流の2024年問題に関連して、ドライバーの拘束時間減少や輸送スケジュール見直しの必要性を示しています。TMSは、限られた車両・人員で安定した輸配送を行うための判断材料を整える手段として有効です。

参考:国土交通省東北運輸局「物流の『2024年問題』とは」

TMSの導入費用の相場はどのくらいですか?

TMSの導入費用は、初期費用が小規模な導入で100万円程度から、大規模な導入では数千万円規模まで幅があり、クラウド型の月額利用料は数万円〜数十万円程度が目安です。金額が大きく動く要因は、提供形態、利用拠点数、車両台数、連携するシステムの範囲、個別開発の有無です。公的機関や業界団体が一律の相場を示しているわけではないため、検討の出発点となる目安として扱ってください。一般に、クラウド型は初期費用を抑えて始めやすい一方、既存の基幹システムやWMSとの連携、独自の配車ルールへの対応が必要な場合は、設計・設定・運用定着にかかる費用も含めて比較する必要があります。

費用の不確実性を抑えるうえで有効なのが、段階的に広げる進め方です。まず輸送実績やコスト、荷待ち・荷役時間を可視化するところから始め、次に基幹システムやWMSとの連携を進め、その先で自動化やAIの活用へ広げます。最初から全機能を作り込まず、効果を確認しながら範囲を広げることで、投資判断もしやすくなります。

TMSは荷主企業と運送会社のどちらが導入するものですか?

TMSは荷主企業と運送会社のどちらも導入します。日本では運送会社が現場業務を効率化するツールとして普及させてきましたが、近年は荷主企業側の導入が増えています。背景にあるのは、ドライバー不足によって輸送能力の確保が難しくなっていることと、物流効率化法が荷待ち・荷役時間の短縮や積載効率の向上について荷主の関与を求めていることです。荷主企業の場合は、輸配送の実態をデータで把握し、運送会社と同じ数字で議論できる状態をつくることが導入の目的になります。

TMSはパッケージと自社開発のどちらを選ぶべきですか?

競争優位に直結しない業務はパッケージ、自社のノウハウが表れる業務は作り込み、という線引きで考えるのが基本です。マスタ管理や進捗管理のような標準的な業務まで独自開発すると、初期投資と運用負荷が大きくなり、変更もしにくくなります。一方、運送会社の選定基準や採算性を踏まえた受注判断など、自社の判断ロジックが競争力になる領域は作り込む価値があります。また、全体を一体で作るのではなく、部品を組み合わせて後から差し替えられる構成にしておくと、法改正や運び方の変化にも対応しやすくなります。

物流効率化法やCLO選任への対応にTMSは必要ですか?

法対応そのものにTMSが必須というわけではありませんが、求められる記録を残すうえで有効な手段になります。物流効率化法では、荷主・物流事業者に物流効率化に向けた努力義務が課され、一定規模以上の特定事業者には中長期計画の作成、定期報告、物流統括管理者(CLO)の選任が求められます。荷待ち・荷役時間や積載効率といった数値を継続的に記録し、後から説明できる状態にしておく必要があるため、輸配送データを一元管理できる仕組みが実務上の土台になります。

参考:物流統括管理者(CLO)とは

まとめ

TMS(輸配送管理システム)とは、トラックの配車から配送、運賃の管理までを効率化する仕組みで、配車計画・配車管理・車両管理の3領域で構成されます。サービスによってカバーする領域は異なるため、まず自社の課題がどの領域にあるのかを特定することが選定の出発点になります。

あわせて決めておきたいのが、自社が輸配送にどこまで関与するのか(定期モニタリング/リアルタイムモニタリング/配車業務の自前実施)と、標準機能に任せる範囲と作り込む範囲の線引きです。この2点が定まると、必要な機能の範囲と体制が具体的になります。すでに何らかの仕組みで運用している場合は、新しいシステムへの入れ替えよりも、法改正や運び方の変化に合わせて変え続けられる構造かどうかを見直すことが先になります。

課題が車両管理だけにとどまらない場合は、次の3つを目安に検討してください。走行ルートや荷待ち時間を高い精度で把握したいならMOVO Fleet、配車計画の作成から協力会社への依頼、実績や請求までをまとめてデジタル化したいならMOVO Vistaが候補になります。既製のサービスでは自社の業務要件を満たせない場合は、個社開発を担うHacobu Solution Studioにご相談ください。いずれも、いまの業務のどこに手をつけるべきかという段階からご相談いただけます。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営し、物流の基礎知識や法律を分かりやすく解説するメディア「ハコブログ」編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

クラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」のマーケティングを管掌し、荷主企業や物流事業者の業務デジタル化(DX)を推進。専門知識を活かし、ロジスティクス分野の専門誌への寄稿や、様々な業界団体での講演活動にも登壇。「最新ツールの普及」と「分かりやすい情報発信」の両面から、物流業界の課題解決に現場目線で取り組んでいる。 >>プロフィールを見る

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