物流戦略とは?策定手順や実行のメリットを解説
物流戦略とは、物流を経営資源として捕え、輸配送・保管・荷役などの機能を全体最適の視点で設計・改善する取り組みです。本記事では、物流戦略の目的や策定手順、成功のポイントを企業事例とあわせて解説します。
物流戦略の立案にお困りなら、物流DXに特化したコンサルティング「Hacobu Strategy」にご相談ください。企業間物流の現状分析から改善施策の実行支援まで、データと業界知見に基づく一貫したサポートを提供します。
目次
物流戦略とは
物流戦略とは、物流を単なるコストではなく経営資源として捉え、輸配送・保管・荷役などの物流機能を全体最適の観点で設計し、継続的に改善していく方針と実行計画のことです。
物流戦略の目的
物流戦略の目的は、物流コストの抑制だけにとどまりません。顧客に届けるスピードや品質を高め、欠品や遅延といった機会損失を減らし、結果として事業の競争力を強化することにあります。
たとえば同じ売上規模でも、配送リードタイムが短く在庫回転が健全であれば、キャッシュフローや顧客体験が改善し、事業成長の余力が生まれます。
物流KPIを設定し、現状と目標の差を数値で把握したうえで、輸配送・拠点・在庫・作業の設計を一体で見直すことが、物流戦略の中核です。
物流業界の現在の状況
物流戦略が重要になっている背景には、構造的な制約の強まりがあります。改正物流効率化法の本格施行、運賃の継続的な上昇など、法規制と物流コストの両面から、荷主企業主導で物流改革を進める必要性が高まっています。
特に企業間物流では、電話・FAXによる受発注や、拠点ごとにバラバラな運用が依然として残っており、荷待ち・荷役時間の実態すら把握できていないケースが少なくありません。データに基づく改善の土台が整っていない状態では、戦略の立案も実行も困難です。
今後は、個社最適の改善だけでは限界があり、共同輸配送やモーダルシフトなどより広い視点からの取り組み、荷待ち・荷役の削減による運転時間の最大化、長距離輸送の削減、顧客サービス条件の見直しなど、複数の打ち手を組み合わせる局面に入っています。
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2026.02.03
物流戦略を策定するメリット
物流戦略を策定し実行するメリットは、コスト削減の一点ではなく、業務・財務・顧客価値・リスクの同時改善にあります。
現場の改善を積み上げるだけでは見えにくい「全体の設計」を先に置くことで、部門間の利害調整が進みやすくなり、投資判断の優先順位も明確になります。
ここでは物流戦略を策定するメリットを6つ紹介します。
業務フローの効率化
物流を起点に受発注・生産・在庫・配送の流れをつなげて見直すと、手戻りや待ちが減り、業務を効率化できます。
たとえば、出荷波動に対して倉庫側の人員配置やバース運用が追随できていない場合、現場は残業と応援で埋め合わせがちですが、波動の見える化と計画精度の改善によって、作業標準と要員計画の再設計が可能になります。結果として、現場の逼迫が抑えられ、改善が継続しやすい状態になります。
物流コストの全体最適化と利益率の向上
物流コストは、輸送費だけでなく、荷待ち・荷役・在庫・誤出荷・緊急対応など、分散した形で企業に潜り込みます。
物流戦略によって、どこで何が発生しているかを可視化し、距離・回数・滞留・空荷といった構造要因に手を入れることで、再現性の高いコスト削減を行うことができます。
運賃交渉のような単発の最適化ではなく、ネットワークや運用設計の見直しによって、利益率を中長期で底上げしやすくなります。
配送品質・リードタイム改善による顧客満足度(CS)の向上
顧客にとっての価値は「確実に届くこと」と「期待通りの時間で届くこと」です。
物流戦略でリードタイムを分解し、どこで遅延が起きているかを特定することで、輸送だけでなく、出荷締め時間、ピッキング方式、バース滞留、情報連携の遅れなど、品質を下げる原因を根本から対処できます。結果として、欠品や遅延の問い合わせが減り、顧客対応コストの削減にもつながります。
業務プロセスの効率化と生産性の最大化
物流の生産性は、作業そのものの速さだけで決まりません。たとえば、荷待ちや荷役の削減、パレット化などによって、運送以外の時間を縮め、限られた人員と車両の稼働を最大化できます。
物流改革を進めるうえでは、デジタル活用による可視化と、標準化された運用を両輪とすることで、継続的な改善が見込めます。
在庫の適正化によるキャッシュフローの改善
在庫は、サービスレベルを支える一方で、過剰になると保管費・廃棄・陳腐化といったリスクを生みます。
物流戦略で拠点配置や補充ルール、在庫配置の前提を見直すと、「どこに置けば最短で届けられるか」と「どこに置けば在庫を持ちすぎないか」のバランスが取りやすくなり、より多くの資金を成長投資に回すことができます。
リスク管理体制(BCP)の構築
物流は災害や事故、法規制、需給変動の影響を受けやすく、止まれば事業継続に直結します。
物流戦略の段階で、代替ルートや拠点の冗長性、重要顧客の優先ルール、情報連携の方法を設計しておくと、緊急時の意思決定が速くなります。さらに、サプライチェーン全体の見える化が進むほど、影響範囲の把握と復旧計画が立てやすくなります。

物流戦略を策定する手順
物流戦略は、現状把握から始め、目標設定、施策立案、実行と評価までを一連で設計することが重要です。途中で止まらない計画にするためには、最初から「運用する体制」と「見直す仕組み」まで含めて考えます。
現状分析:物流コストや業務フローの「可視化」と課題の洗い出し
まず、輸配送・倉庫・在庫・荷役・情報の流れを、データと現場観察の両面から可視化します。
具体的には、納品リードタイムの内訳、荷待ち・荷役時間、積載率、誤出荷率、庫内作業のボトルネック、繁閑の波動要因などを整理します。
ここで重要なのは、現場の努力不足ではなく、構造として何が無理を生んでいるかを見つけることです。
目標設定:経営戦略と連動したKGI・KPIの策定
次に、経営として何を優先するかを明確にし、物流のKGI・KPIに落とし込みます。
たとえば「利益率を上げる」なら、輸配送単価や庫内生産性だけでなく、欠品・返品・緊急配送の発生率なども見なければなりません。「サービスを強化する」なら、納期遵守率やリードタイムのばらつきなどが中心になります。
目標は、現場で日々追える指標に落とすことで、改善が仕組みになります。
施策立案:解決策の選定とロードマップ作成
課題と目標の差が明確になったら、打ち手を「構造を変える施策」と「運用を整える施策」に分けて選定します。
前者は拠点配置や輸送モード、共同化の範囲、サービス条件の見直しなどで、後者はバース運用、標準化、教育、データ連携などです。
施策は同時に走らせすぎると現場が崩れるため、効果と難易度、依存関係を整理し、段階的なロードマップにします。
実行・評価:体制構築とPDCAサイクルによる継続的な改善
最後に、誰が意思決定し、誰が現場に落とし、どう評価するかを決めます。
物流改革は部門横断になりやすく、物流部門だけで完結しないため、会議体、権限、情報の持ち方を整えることが成果を左右します。
実行後は、KPIの変化だけでなく、現場の運用定着やデータ品質も評価し、改善が回る状態を作ることが重要です。
物流戦略を成功させるためのポイント
物流戦略は「正しい計画」よりも「実行され続ける計画」であることが重要です。
ここでは、物流戦略を成功させるためのポイントを4つ紹介します。
物流部門だけで完結させず「全社プロジェクト」として推進する
物流の非効率は、営業の納期条件、生産のロット、調達の発注方式、販売のキャンペーン設計など、他部門の意思決定の積み重ねで生まれます。
物流部門が現場で吸収し続ける運用では限界が来るため、全社で「どのサービスを維持し、どこを変えるか」を合意し、全体最適のルールに置き換える必要があります。
正確なデータに基づいた意思決定を行う
物流は、見えないコストと時間が多い領域です。
例えば荷待ち時間が長いのに、発生場所や要因が共有されていないと、改善は属人的になってしまいます。
改善に必要なのは、現場の感覚を否定することではなく、感覚を再現可能なデータに落とし、議論を前に進めることです。データの粒度と定義を揃え、部門間で同じ数字を見られる状態が、戦略の実行力を高めます。
現場スタッフへの浸透と教育を徹底し、実行力を高める
システムやルールを作っても、現場で使われなければ効果は出ません。
周知徹底と運用の守り方が整っていないと、混乱して元に戻りがちです。現場にとってのメリットと、守るべき理由を説明し、例外処理まで含めた運用設計と教育を行うことで、改善が定着します。
荷主と運送会社が「同じデータ」を見る仕組みをつくる
物流改善は、荷主だけ、あるいは運送会社だけで完結するものではありません。荷待ち時間の削減も、積載率の改善も、双方が同じデータを見て課題を共有できてはじめて前に進みます。
しかし実態としては、荷主側と運送会社側で情報が分断されており、互いの実態が見えないまま改善要請だけが行き交う構造になりがちです。企業間で共通のデータ基盤を持ち、事実に基づいて対話できる関係をつくることが、物流戦略を実行に移すための重要な基盤です。
自前主義にこだわらず、最適な外部パートナー(3PL)を活用する
物流戦略の実行には、現場改善、ネットワーク設計、データ基盤整備など、多様な専門性が必要になります。
自社で全てを抱えるのが難しい場合は、3PLや専門家と役割分担しながら、戦略と運用を両立させることが現実的です。重要なのは丸投げではなく、可視化とKPIに基づくマネジメントを前提に、外部パートナーを戦略実行の推進力として活用することです。
物流DXコンサルティングに相談する
物流戦略の第一歩は可視化ですが、「何のデータを」「どの粒度で」「どう取得するか」を自社だけで設計するのは容易ではありません。物流DXに特化したコンサルティングを活用すれば、業界知見とデータ活用のノウハウをもとに、現状把握から改善の優先順位づけまでを効率的に進めることができます。

企業の物流戦略の成功事例
ここでは、データ活用やKPI設計を起点に物流戦略を実行し、成果につなげた企業の事例を3つ紹介します。
事例1:ホクシン株式会社|中長期戦略に基づく物流改革で持続可能な体制を構築
建材メーカーのホクシンは、2019年から持続可能な物流体制の構築を経営戦略に位置づけ、中長期の改革に着手しました。「2026年度までに荷待ち・荷役時間を1時間以内にする」という明確なKPIを掲げ、デジタルツールを活用した業務の可視化と標準化を少数精鋭で推進。コロナ禍においても安定供給を維持し、戦略的な物流設計が事業継続力の強化につながることを示した事例です。
事例2:株式会社サトー商会|納品条件の見直しとルート再編で8台減便を実現
食品卸のサトー商会は、輸配送コストの構造的な課題に対し、納品の制約条件そのものを見直すという戦略的なアプローチを取りました。配送データの分析をもとにルートを再編し、8台の減便を実現。単なるコスト削減にとどまらず、余剰リソースを新規事業の足掛かりにするなど、物流戦略を事業成長につなげた好例です。
事例3:株式会社スギ薬局|全拠点共通KPIで荷主主導の物流改善を推進
小売大手のスギ薬局は、委託先を含む全物流拠点にバース管理システムを導入し、共通のKPIで物流オペレーションを可視化する戦略を採用しました。拠点ごとにバラバラだった運用を統一し、荷主主導でデータに基づく改善サイクルを回せる体制を構築。物流を「管理する対象」から「経営で設計する領域」へ引き上げた、全社的な物流戦略の実践例です。
物流戦略の策定ならHacobu Strategy
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まとめ
物流戦略とは、物流を経営資源として捉え、全体最適の設計と継続改善によって、コスト・品質・スピード・リスク耐性を同時に高める取り組みです。
法規制が本格化する中、規制対応にとどまらず、荷主企業主導で物流改革を進めることが重要です。物流戦略によって自社の物流を「現場が頑張る領域」から「経営が設計する領域」へ引き上げ、事業の全体最適を目指しましょう。
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