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スギ薬局流! 物流センター運営の品質と効率を改善するKPIマネジメント術 ~全物流センターの情報を集約し、待機削減などの物流改善に成功

更新日:2023年11月08日
導入製品
MOVO Berth
会社/事業所・拠点名
株式会社スギ薬局/全国15の物流センター
本社所在地
愛知県大府市

スギ薬局は、愛知県で1976年に創業し、ドラッグストア「スギ薬局」とビッグコンビニエンス型ディスカウントセンター「ジャパン」を展開、現在は東名阪と北陸・信州に約1,500店舗を運営しています。調剤併設型の店舗を特徴とし、「地域社会に貢献する」という経営理念を基に、店舗と地域の共存を目指しています。

本社にある自社運営のセンターと、外部に運営を委託する15センターを合わせて全国で16センターを運営しており、全センターを統一KPIで管理し、長時間待機をはじめとした物流課題の改善に取り組むため、2021年の2センターへの導入を皮切りに、全センターにトラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」を導入しています。

スギ薬局には「企業が成長する上で、物流も定期的に見直す必要がある」という思想があり、約10年単位で物流部門の体制や方針の見直しを行っています。

前回の2016年には、全センターを統一KPIで管理・改善していくため、以前は物流委託先のシステムを利用していましたが、自社の物流システムを持つ体制に変更しました。加えて、本社1~3階に物流センターを構え、自ら運営することで、スギ薬局の社員が物流現場を知る体制を構築しました。また、全社に「物流が安定してこそ小売業が成り立つ」という意識を醸成すべく、物流部から店舗運営などの関連部門に積極的にジョブローテーションを行うことにも取り組んでいます。

今回、プロジェクトを牽引されたシステム・物流統括部物流部部長の北川様、運用課課長の田村様、大府センター課課長の天願様、金石様の4名に、MOVO Berthの導入の背景や具体的な成果、また成功の秘訣などについてお話を伺いました。

導入前の課題
  • 全物流センターの課題を、俯瞰して、正確に把握する手段がない
  • 2時間超の長時間待機が発生
  • 車両の入場時間が把握できず、入荷作業の人員計画が立てづらい
導入後の成果
  • 全センターの情報を集約し、統一KPIで管理・改善できる体制を構築
  • 待機時間を大幅に削減。2時間以上待機は、ほぼ0に
  • 入荷作業の適切な人員配置を実現

待機時間の削減に向けて、現場の実状を正確に把握することに取り組んだ

Q.MOVO Berth導入の背景を教えてください

北川様: MOVO Berthを導入するきっかけは、取引先からセンターで入荷車両の長時間待機が発生しているという話があった際、スギ薬局で事実を正確に把握する手段がなかったことにあります。物流業界は多重構造のため、待機時間は取引先経由のドライバーからの申告に頼らざるを得ないことが多いのですが、それでは、現場の実状を正確に把握することができません。物流センターがドライバーを待たせているのか、車両の到着時間が早いのか、事実を正確に把握する必要がありました。

現在、スギ薬局の物流センターは16センターあり、TC(通過型流通センター) がメインです。本社にある1センター以外の15センターは5社の物流委託先に運営を委託しているため、全センターの状況をスギ薬局で把握するためには、業務を標準化し、全センターの情報を集約し、統一KPIで管理できる体制を構築する必要がありました。私たちシステム・物流統括部物流部は、物流をひとつの情報として扱う部署という位置付けです。そのために、以前は物流委託先それぞれのシステムを利用していましたが、自社で物流システムを持ち、全センターでスギ薬局の物流システムを利用する体制に変更しました。MOVO Berthもその一環で導入しました。

まず、2020年10月に本社(大府)と豊川の2つのセンターでMOVO Berthを導入し、現場からの反応もよかったため、全センターへの展開を進めました。

Q.MOVO Berth導入の成果を教えてください

北川様: 導入の効果は大きく3つあります。
1つ目は、全センターの状況を情報で把握し、統一KPIで管理・改善できるようになったことです。現在、「品質」と「効率」の観点で5つのKPIを設定しています。MOVO Berth導入により、KPIのひとつである「30分以上の待機車両(台数)の割合」を管理・改善できる体制が整いました。MOVO Berthを全センターに導入されたことで、業務が標準化され、あるセンターの改善事例が他のセンターにも展開しやすくなったこともメリットです。業務マニュアルは、スギ薬局の物流部で作成しています。一部センター独自のローカルルールはあるものの、基本的なオペレーションは標準化しています。

2つ目は、待機時間を削減できたことです。効果はすぐに現れました。はじめに導入した2センターの待機状況は、大府センターでは「2時間以上待機する車両」が全台数の約19%、豊川センターでは約13%でした。それがMOVO Berth導入直後には、それぞれ2.5%、0.4%まで減少しました。

はじめは「2時間以上の待機」としていましたが、待機時間が大幅に削減されたため現在では「30分以上の待機」でKPIを設定しています。
2022年度(2022年3月~2023年2月)は、全センターで128,250台の入荷車両がありましたが、そのうち30分以上の待機は440台で0.34%に抑えられています。

3つ目は、入荷作業の適切な人員配置ができるようになったことです。当社の物流センターはモノの流れをコントロールすることが難しいため、モノの流れにあわせて人の流れをコントロールする必要がありますが、その日入場する車両の台数と入場時間が把握できないとモノの流れが分からず、作業者が何時までいればいいのか判断することができません。

MOVO Berth導入前は、その日に来る荷物の総量は把握できていましたが、車両の台数までは把握できていませんでした。MOVO Berthを導入することによって、今日来る車両の台数とそれぞれの入場時間を把握することができるようになりました。これは、MOVO Berthがなければ絶対に把握できないことです。車両の台数と入場時間を朝の時点で把握できることで、残業の予定はもちろん、スキルを加味した人員の配置が可能になりました。

例えば、最終車両の入荷の荷姿がケースなのか折りたたみコンテナ(以降、オリコン)なのかは人員の配置において重要なポイントです。MOVO Berthによって、比較的作業が簡単なオリコンの入荷を遅めの時間に調整するといったことも可能になり、物流センターで働く方のシフト管理が非常にしやすくなりました。

Q.MOVO Berth導入の苦労を教えてください

北川様: 当初、予約を入れることが面倒だということで、取引先が予約を入れてこないことがありました。予約率を上げるため、まず予約されていない取引先がどこかを現場から吸い上げることが重要です。MOVO Berthのデータを見ただけではわからないため、予約がない取引先をセンターに確認し、スギ薬局の物流部と各センターとで協力し説明してまわりました。

「予約をすることによって待機時間を削減できる」というメリットを、一社一社に丁寧に伝えて理解していただくことで、現在は全ての取引先が予約をしてくださるようになりました。

これは、「予約をすることで待機時間が確実に減る」という事実があってこそ協力していただけることです。信用を勝ち取ることができました。

Q.MOVO Berthの運用について教えてください

田村様: 現在、取引先からの予約は当日の12時までとしています。受付の際にドライバーさんに携帯電話番号と取引先名をお聞きしています。バースが空いていれば誘導し、空いていない場合は待機場所で待機していただき、空き次第携帯電話にご連絡するという流れで運用しています。

 

統一KPIを設定し、センター間で競うことで品質と効率を改善

Q.成功の秘訣を教えてください

北川様: 全センターで競い合う環境があることが成功の秘訣です。全センターを統一KPIで管理しているためできることです。

具体的には、全センターの物流委託先が集まる定例を月1回設け、KPIの確認を行っています。毎月センターごとの「30分以上の待機車両(台数)の割合」をデータで示し、全員で確認して、改善・悪化の理由を議論しています。情報を開示することによって、プロ意識に火をつけ統制を図っています。「30分以上の待機車両(台数)の割合」の他に、オリコン内の積載率やマテハン効率など4つのKPIに定めていますが、これらも同様にして、センター同士が競い合うことによってお互いが改善していく体制を作っています。

年度末である2月には、その年「効率」「品質」において最も優秀だったセンターに当社の社長名で表彰状をお渡ししています。KPIを評価するだけではなく、認める、感謝することも大事にしています。センターの従業員の方にモチベーション高く仕事をしていただくことが重要と考えているからです。今回から、各センターからドライバーの方を1名推薦していただき、感謝状をお渡しする取り組みも始めました。スギ薬局が各センターの入荷車両のドライバーさんに接することはほとんどないのですが、荷主の立場から直接感謝の気持ちを伝えられないかと考え始めた取り組みです。

また、MOVO Berthのデータは当社に商品をご納品いただく取引先との間で共有することもあります。大口の取引先とは四半期に一度定例を行い、その中で、取引先が手配した車両のセンターでの待機時間や入場時間の実績データを共有しています。取引先と実績データをもとにディスカッションすることが可能になり建設的な議論ができるようになりました。取引先からも、それまでドライバーからの申告の情報しかなかったのが、事実に基づいた正しい情報を取得することができると喜ばれています。MOVO Berth導入以前は、取引先と物流委託先のセンターの間で意見の食い違いが発生することもありましたが、MOVO Berthの活用によって、どちらに改善の余地があるかを明確にすることができるようになりました。

Q:MOVO Berthの導入について社内ではどのように説明されたのか教えてください

社内では、将来の物流コスト増を最小限に抑えるための先行投資と説明しています。
当社規模の小売企業にとって、毎日の納品量・納品額は膨大であり、その仕入額に占める物流費の割合も大きく、物流費の増減は経営にとって大きなインパクトになります。今後、センターでの待機料が仕入れコストに転嫁される事態とならないよう、転嫁要素を排除し、将来想定されるコスト増を今のうちから最小限に抑える取り組みを行うことが重要と説明しています。MOVO Berth導入にかかるコストよりも、抑制できるコストの方がはるかに大きいとみています。

物流2024年問題に向けて、再委託先のドライバーの労働時間や生産性にも責任を持つ

Q.今後の展望を教えてください

北川様: TCの16センターにはMOVO Berthを導入しました。DCは有事の際に備えることを目的に、関東・関西・中部にひとつずつ、今年北陸にも新しく設立する予定ですが、まず今後の展望のひとつとして、すべてのDCにもMOVO Berthを導入することを考えています。DCに関しては入場車両台数は多くありませんが、待機時間については実態を把握できていないため、それを把握するために導入を予定しています。

次に、物流2024年問題への対応があげられます。
弊社は小売荷主です。物流会社に配送業務を委託していますが、実際に配送を行なっている車両のドライバーは再委託されていることがほとんどであるため、私たちの直接の取引先ではありません。しかし、実際に店舗まで運んでいただいている、再委託先であるドライバーの労働時間や生産性にも責任を持つべきで、私たちが取り組むべき物流2024年問題だと考えています。

そのために、動態管理サービス「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」を活用して、ドライバーの労働時間を確認したいと考えています。また、ドライバーの方に効率的に仕事をしていただくためには、積載率の把握も必要になります。こちらもMOVO Fleetを使うことである程度把握することができるようになります。
荷主として、物流の2024年問題に対応していきたいと考えています。

私たちは小売業なので店舗の運営がメインであり、物流は一機能にしか過ぎませんが、インフラとして非常に重要なファクターであると認識しています。
この意識をスギ薬局全社に浸透させることも重要だと考えています。例えば、ジョブローテーションで物流の知識や経験のある人材を店舗運営などの関連部門に配置し、その人材を通して周りの社員への「物流は重要なファクターである」という意識の醸成を図っています。

安定的にお客様に商品が提供できる小売業であり続けるため、全社で持続可能な物流のためできることに取り組んでいきたと考えています。