ラストワンマイル問題とは?現状や解決策、物流にもたらす影響を解説
物流は「経済の血流」と呼ばれるほど、社会の基盤を支える重要な機能です。しかしその一方で、物流領域は多くの課題を抱えているのが現実です。特に近年では、EC市場の急速な拡大に伴い、消費者へ商品を届ける最終区間である「ラストワンマイル」において深刻な問題が顕在化しています。本記事では、荷主企業の担当者の方に向けて、ラストワンマイル問題の本質や現状、そして解決に向けた取り組みについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。
なお、企業間物流において、物流コストの増大や非効率、属人化などの課題を抱えている場合は、物流DXコンサルティングHacobu Strategyがおすすめです。現状分析から改善施策の実行支援まで、一貫したサポートを提供します。
目次
そもそもラストワンマイルとは?
ラストワンマイルとは、物流センターや配送拠点から消費者の手元に商品が届くまでの最終配送区間のことです。
元々は通信業界で使用されていた用語ですが、現在では物流領域において広く用いられています。具体的には、宅配便やデリバリーサービスなど、個人宅や店舗への配送を指します。この区間は、サプライチェーンで最も消費者に近い接点であり、顧客満足度に直結する重要な工程といえます。
近年のEC利用者数の増加により、配送需要は急激に拡大しており、配送品質の向上と効率化の両立が求められています。
ラストワンマイルの現状について
ラストワンマイルを取り巻く現状は、需要と供給のバランスが大きく崩れている状況にあります。
Eコマース市場の規模は、2014年から2023年の10年間で約1.9倍に拡大しており(2023年:24.8兆円)、新型コロナウイルスの影響による巣ごもり需要の増加を背景に、ECの利用者は急増しました。コロナが収束した後もこの傾向は続いており、住宅へ届ける荷物は年々増え続けています。
また、インターネットを利用した1世帯あたり1か月の支出では日用雑貨が最も高く、購入頻度の高さがうかがえます。

一方で、物流領域全体では人手不足が顕在化しています。特に、ドライバーの高齢化や労働環境の悪化により、物流に従事する人材は減少傾向にあります。
ラストワンマイル領域では、企業向け配送と比較して高い水準のサービスが求められます。消費者のライフスタイルの多様化に伴い、細かな時間指定や置き配などの配送方法への対応が必要となっており、配送事業者の負担は増大する一方です。
このような需給ギャップが続けば、消費者の要望に応えられなくなる時が来るかもしれません。こうした状況を放置すれば、物流機能そのものが麻痺し、社会生活や経済活動に危機的な影響を与える恐れがあります。
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物流業者は…
2025.11.05
ラストワンマイル問題とは?
ラストワンマイル問題とは、物流の最終配送区間で生じるさまざまな課題を総称した言葉です。
具体的には、配送需要の急増に対してドライバーや配送車両などの供給能力が不足することで発生する問題を指します。再配達の増加による非効率な配送、積載効率の低さ、ドライバー不足による配送キャパシティの限界など、多岐にわたる課題が含まれます。
これらの問題は、配送事業者の経営を圧迫するだけでなく、荷主企業のコスト増加や配送品質の低下にもつながります。
さらに、社会全体で見れば環境負荷の増大や経済活動の停滞といった影響も懸念されており、物流領域全体で取り組むべき重要な課題となっています。
物流業界においてラストワンマイル問題が起こる要因
ラストワンマイル問題が発生する主な要因として、以下の3点が挙げられます。
第一に、EC市場の急拡大による配送需要の増加です。コロナ禍を経て、消費者の購買行動がオンラインへシフトし、宅配便の取扱個数は増加の一途を辿っています。宅配便取扱実績は年々増加し、2023年度は約50億個となっており、過去5年間で約1.2倍増加しています。
第二に、再配達の発生による労働生産性の低下です。再配達は、ドライバーの走行距離や労働時間を増加させ、配送効率を大きく低下させる要因となっています。2021年の宅配便再配達率は10.9%となっており、約10個に1個の荷物が再配達となっていました。近年は微減傾向にあり、2025年月時点で8.4%ですが、以前として高い水準です。
第三に、積載効率の低さです。個人向け配送は、届け先が分散しており一件当たりの貨物量も少ないため、トラック一台当たりの積載効率が低くなりがちです。特に地方の人口が少ない地域では、長い距離を走行しても配送件数が限られるため、採算性の確保が困難な状況にあります。

見落とされがちな「上流」の課題
ラストワンマイル問題は、消費者への最終配送区間だけを見ていては解決できません。なぜなら、幹線輸送や物流拠点での非効率が、最終配送区間に”しわ寄せ”として現れているケースが少なくないからです。
たとえば、物流センターでのトラックの荷待ち時間が長引けば、ドライバーの拘束時間が増え、1日あたりの配送件数は減少します。また、電話やFAXによる配車手配が属人化していれば、急な需要変動への対応が遅れ、配送キャパシティの確保が困難になります。
Hacobuが多くの現場で見てきたのは、こうした上流工程の課題を放置したままラストワンマイルだけを効率化しようとしても、根本的な解決には至らないという現実です。サプライチェーン全体を俯瞰し、ボトルネックを特定することが、ラストワンマイル問題の本質的な解決への第一歩となります。
ラストワンマイル問題がもたらす影響
この問題は配送事業者だけでなく、荷主企業や消費者、さらには経済社会全体に多大な影響を及ぼしています。
配送需要の増加と供給能力の不足により、物流コストの上昇や配送品質の低下が現実のものとなっており、各ステークホルダーがその影響を受けています。以下では、それぞれの立場における具体的な影響について解説します。
物流事業者への影響
物流事業者は、より深刻な経営課題に直面しています。
第一に人件費の増加です。ドライバー不足が深刻化する中、人材確保のために賃金を引き上げる必要があり、そのため人件費が高騰しています。
第二に、再配達や非効率な配送ルートによる燃料費の増大です。不在による再配達や積載効率の低い配送は、走行距離と時間を増加させ、燃料コストを押し上げます。
第三に、長時間労働による労働環境の悪化です。配送需要の増加に対して人員が不足しているため、既存のドライバーへの負担が増大し、労働時間の長期化や健康リスクの増加につながっています。
これらの問題が解消されなければ、配送事業者の経営持続性が危ぶまれる事態となります。
荷主企業への影響
荷主企業にとっても、ラストワンマイル問題は見過ごせない課題となっています。
第一に、配送コストの上昇です。配送事業者の経営環境悪化により、運賃の値上げ要請が相次いでおり、物流コストの増加が荷主企業の収益を圧迫しています。
第二に、配送品質の低下によるブランドイメージの毀損です。配送の遅延や誤配送が発生すれば、消費者の不満は荷主企業に向けられ、顧客満足度の低下やブランド価値の毀損につながります。
第三に、配送キャパシティの確保が困難になることで、販売機会の損失が生じる可能性があります。特に繁忙期には配送を引き受けてもらえないケースも発生しており、事業計画の達成が難しくなる恐れがあります。
経済社会への影響
ラストワンマイル問題は、経済社会全体にも広範な影響を及ぼしています。
第一に、環境負荷の増大です。再配達や非効率な配送により、トラックの走行距離が増加し、CO2排出量の増加につながります。これはカーボンニュートラル実現に向けた社会的な取り組みに逆行する事態といえます。
第二に、経済活動の停滞です。物流が円滑に機能しなければ、商品の流通が滞り、経済活動全体に悪影響を及ぼします。
第三に、地域格差の拡大です。採算性の低い地方や過疎地域では配送サービスの縮小や撤退が進み、地域住民の生活利便性が低下する恐れがあります。
このように、ラストワンマイル問題は社会インフラとしての物流機能を脅かす深刻な課題となっています。
消費者への影響
消費者もまた、ラストワンマイル問題の影響を直接受けています。
第一に、配送料金の値上げです。配送事業者のコスト増加は、最終的に消費者が負担する送料の上昇につながります。これまで当たり前だった送料無料サービスの縮小や有料化が進む可能性があります。
第二に配送サービスの質の低下です。ドライバー不足により、希望する時間帯での配送が選択できなくなったり、配送日数が延びたりするなど、利便性が損なわれる恐れがあります。
これらの影響により、消費者のオンラインショッピング体験が悪化し、EC市場の成長にも影響を及ぼす可能性があります。
ラストワンマイル問題の解決に向けた行政の動き
物流革新に向けた政策パッケージにおける「消費者の行動変容」
政府は「物流革新に向けた政策パッケージ」において、消費者の行動変容を重要な柱の一つとして位置付けています。
具体的には、再配達率の「半減」を目標に掲げ、マンションへの宅配ボックス設置促進や置き配の定着を推進。消費者一人ひとりが受け取り方法を工夫することで、ドライバー不足の解消と持続可能な物流の実現を目指しています。
ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会
この政策パッケージで示された方針を具体化するため、国土交通省は2025年6月に「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」を設置しました。
有識者、物流事業者、EC事業者、地方自治体、不動産業界団体など多様な関係者で構成され、地域の物流サービスの持続可能な提供と、宅配便の再配達率半減(12%→6%)の実現を目的としています。
令和7年11月の取りまとめでは、主に以下の3つの方向性が示されました。
1. 多様な受取方法の普及と宅配サービスの変革
置き配や宅配ボックス、コンビニ受け取りなど多様な受取方法の普及を促進。標準宅配便運送約款を改正し、対面以外の受取方法を正式に位置付ける方向で検討を進めるとしています。また、荷物の盗難や破損時の責任分担を明確化するガイドラインの策定も提言されました。
2. 地域の物流サービスの持続可能な提供
地方自治体が地域の物流課題に積極的に関与し、共同配送や貨客混載などの取り組みを推進。配送伝票や伝票番号体系の標準化により、業務効率化とデータ連携を促進する方針も示されました。
3. 新たな輸送手段の活用
過疎地域でのドローン配送の社会実装を推進し、ドローン航路の全国展開を目指します。また、自動配送ロボットについても、より配送能力の高い形態の実用化に向けた実証実験を進める方針です。
出典:国土交通省「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会 取りまとめ」
ラストワンマイル問題の解決に向けた取り組み
ラストワンマイル問題の解決に向けて政府や配送事業者、荷主企業が連携し、さまざまな取り組みを推進しています。配送の効率化、再配達の削減など、多角的なアプローチにより持続可能な物流体制の構築を目指しています。以下では、代表的な取り組みについて具体的に解説します。

物流管理システムを活用する
物流管理システムの活用は、ラストワンマイル問題の解決に直結する有効な手段として注目されています。
特に輸配送管理システム(TMS:Transport Management System)は、物流センターから届け先までの輸配送全般を管理し、最適化する機能を持っています。AI技術を活用した配送計画機能により、日々の交通状況や納品期限、配送先の位置関係などを考慮した最適な配送ルートを自動算出できます。従来は経験や勘に頼っていた配送業務を標準化し、トラックの積載効率を向上させることで、配送回数や走行距離の削減が可能となります。
また複数の事業者が連携する共同配送の現場でも、配送リソースの効率的な割り振りが実現できるため、労働力不足の改善が期待されています。
さらにリアルタイムでの配送状況の可視化により、荷主企業や消費者への迅速な情報提供が可能となり、サービス品質の向上にも貢献しています。
関連記事:物流システムとは?種類や導入効果、選び方、導入の成功ポイントを解説
受け取り方法の多様化を推進する
受け取り方法の多様化は、再配達削減の鍵となる取り組みです。
政府や配送事業者、小売事業者が連携し、自宅以外での受け取りオプションを拡充しています。コンビニエンスストアや駅、近所の宅配ボックスでの受け取りは、消費者が好きな時間に荷物を受け取れるため、利便性が高く普及が進んでいます。
また、「置き配」サービスも注目されています。従来はセキュリティリスクの懸念から普及が進みませんでした。そこで、配送事業者が配送可能場所を制限するなどの工夫により、安全性を確保しながらサービスを提供する取り組みが進んでいます。
これらの受け取り方法の多様化により、不要な再配達の発生を防止し、配送効率の向上とドライバーの負担軽減が実現できます。さらに、受け取り方法の選択肢が増えることで、消費者のライフスタイルに合わせた柔軟な配送サービスの提供が可能となります。荷主企業にとっても、再配達コストの削減により物流費用の抑制につながり、収益性の改善が期待できます。
今後もテクノロジーの進化と社会インフラの整備により、より多様で便利な受け取り方法が登場することが見込まれています。
小型・無人輸送を導入する
ドローンや自動配送ロボットなどの小型・無人輸送技術は、問題の解決に向けた革新的な手段として期待されています。
ドローンを活用した配送は、空中を飛行することで渋滞の影響を受けず、離島や山間部など配送が困難な地域への迅速な配送が可能となります。また都市部の歩道を自律走行する配送ロボットは、短距離の配送を担うことで、ドライバー不足の解消に貢献します。現在、国土交通省をはじめとする関係機関が続々と実証実験を進めており、技術開発と制度設計が並行して進められています。
将来的には、これらの無人輸送技術が広く実用化されることで、配送の効率化と労働力不足の解消が期待されています。
配送方法を効率化する
配送方法の効率化として、共同配送や配送拠点の統合といった取り組みが進められています。
複数の荷主企業や配送事業者が連携し、同じ地域への配送を集約することで積載効率を高め、配送回数を削減できます。また、都市部における交通渋滞や駐車スペース不足に対応するため、自転車や電動カートを活用したラストワンマイル配送も注目されています。これらの小型車両は小回りが利き、環境負荷も少ないため、持続可能な配送手段として導入が進んでいます。
さらに配送時間帯の分散化により、交通渋滞の影響を受けにくい早朝や夜間の配送を活用する取り組みも行われており、配送効率の向上に寄与しています。
共同配送が注目される背景には、BtoC物流特有の構造があります。
BtoB物流では、届け先が限られた拠点に集中するため、一定の配送効率を確保しやすい傾向にあります。一方、BtoC物流では届け先が個人宅に分散し、配達密度(単位エリアあたりの配送件数)が配送効率を左右する決定的な要素となります。
単一のEC事業者だけでは、特定エリアの配達密度を高めることには限界があります。このため、複数の荷主企業が連携して物量を集約し、配達密度を高める「共同配送」の仕組みが、ラストワンマイル問題の本質的な解決策として期待されています。
ラストワンマイル問題の改善に取り組む企業事例
ラストワンマイル問題の解決に向けて、物流管理システムの導入や配送方法の効率化など先進的な取り組みを実施している企業が増えています。以下では、実際に成果を上げている企業事例を紹介します。
ヤマト運輸株式会社での配送サービス・体制の拡大
ヤマト運輸株式会社は、宅配便最大手として再配達削減に積極的に取り組んでいます。
同社は「EAZY」という受取人が配送日時や場所を柔軟に変更できるサービスを展開し、コンビニや宅配ボックスでの受け取りを推進しています。また、AIを活用した配送ルート最適化により、配送効率を大幅に向上させています。さらに電動アシスト自転車や台車を活用した小型配送の導入により、都市部の交通渋滞や駐車スペース不足といった課題にも対応しています。
これらの取り組みにより再配達率の削減とドライバーの労働環境改善を同時に実現し、持続可能な配送体制の構築を進めています。
出典:ヤマト運輸「EAZY」
ヤマトホールディングス「ビッグデータ・AIを活用した配送業務量予測および適正配車のシステム導入について」
佐川急便株式会社でのAIを活用した取り組み
佐川急便株式会社は、AIを活用した配送ルート最適化システムを導入し配送効率の大幅な向上を実現しています。
同社は独自の配送管理システムにより、交通状況や配送先の位置情報をリアルタイムで分析し、最適なルートを自動算出することで、配送時間の短縮と燃料コストの削減を達成しています。
また宅配ボックスの設置拡大や、コンビニエンスストアとの連携による受け取り拠点の増設にも注力しています。さらに、電動アシスト付き台車や小型電気自動車を活用した環境配慮型の配送体制を構築しています。
これらの取り組みにより、再配達率を約20%削減し、ドライバーの労働時間短縮にも成功しています。
出典:佐川急便「ルート最適化システムを佐川急便で導入を開始」
物流ウィークリー「佐川急便 電動アシスト自転車を導入、豊田TRIKEと共同開発」
イオン株式会社での小売業独自の取り組み
イオン株式会社は、店舗受け取りサービス「ネットスーパー店舗受取」を全国展開しラストワンマイル問題に対応しています。
顧客がオンラインで注文した商品を最寄りのイオン店舗で受け取れる仕組みにより、再配達の発生を防ぎ配送効率を向上させています。また、店舗の駐車場に宅配ボックスを設置し、24時間いつでも受け取り可能な体制を整備しています。さらに、自社の配送網を活用した共同配送の取り組みも進めており、複数のテナントや取引先の商品を一括配送することで、配送車両の削減とCO2排出量の低減を実現しています。
これらの施策により配送コストを削減し、顧客満足度の向上にも成功しています。
物流改善なら株式会社Hacobu
株式会社Hacobuが提供する「Hacobu Strategy」は物流領域全体の課題を可視化し、データに基づいた改善策を立案するコンサルティングサービスです。
企業間物流の課題に対して現状分析から改善施策の実行支援まで、一貫したサポートを提供します。配送ルートの最適化、配送コストの削減など、企業が抱えるさまざまな物流課題の解決を支援します。
豊富な実績とノウハウをもとに各企業の状況に応じた最適なソリューションを提案し、実効性の高い改善を実現します。物流DXの推進により、持続可能な物流体制の構築を全面的にバックアップいたします。
まとめ
ラストワンマイル問題は、EC市場の急拡大や労働力不足を背景に物流領域全体で取り組むべき課題となっています。
配送需要の増加に対して供給能力が追いつかず、配送事業者の経営圧迫、荷主企業のコスト増加など、多方面に影響が及んでいます。
この問題の解決には物流管理システムの活用による配送効率化、受け取り方法の多様化による再配達削減、ドローンや配送ロボットなどの新技術導入、共同配送による積載効率向上など、多角的なアプローチが必要です。荷主企業としても、物流パートナーとの連携を強化し、持続可能な物流体制の構築に向けて積極的に取り組むことが求められています。
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