物流業界における人材不足の原因とは?深刻化の現状とリスク、解決策を解説
物流業界の人手不足は、採用の難しさにとどまらず、輸送力やサービス品質、物流コストにまで影響し得る、荷主企業・元請け事業者にとって重要な経営課題です。
「なぜ物流業界はこれほど人手不足が深刻なのか」「人手不足を解消する具体的な方法が知りたい」といったお悩みや疑問をお持ちの物流担当者様も多いのではないでしょうか。
実際に、物流業界の人手不足は年々深刻さを増しています。本記事では、物流業界の人手不足の現状と原因を、公的資料や業界団体の情報など信頼できる根拠に基づき整理し、荷主・元請けの実務に落とし込める解決の方向性を解説します。さらに、人手不足の解消に向けて取り組みを進めた事例も紹介します。
「何から着手すべきか整理できない」とお悩みであれば、外部の専門家に相談することも有効です。たとえば「Hacobu Strategy」では、データに基づく物流課題の整理と改善を支援しています。概要はリンク先をご確認ください。
目次
物流・運送業界における人手不足の現状
まずは物流業界の人手不足について、客観的なデータをもとに実態を見ていきましょう。
- 倉庫業の人員不足率は15.9%まで膨らむと予想されている
- トラックドライバーは20年で20万人減少
倉庫業の人員不足率は15.9%まで膨らむと予想されている
人手不足を測る指標のひとつに、業務に必要な総人数に対し、具体的に何%が欠員しているかを表す「人員不足率」があります。
一般社団法人 日本倉庫協会で紹介されている倉庫事業者へのアンケート結果によると、2024年時点で7.5%である主観的な人員不足率が、今後5年以内に15.9%まで増加すると予想されています。

出典:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001851408.pdf
トラックドライバーは20年で20万人減少
内閣府「(補論)物流業の人手不足問題」に掲載されているデータによると、2000年には97.3万人いたトラックドライバーですが、2020年には77.9万人と、20年間で約20万人も減少しています。
▼トラックドライバーの就業者数の推移

出典:https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr23/pdf/chr23_1-4.pdf
このデータからも、物流業界の人手不足は一過性のものではなく、深刻化の一途をたどっているといえます。
なお、物流業界の課題や対策については以下の資料でさらに詳しく解説しています。気になる方はダウンロードしてご覧ください。
資料「物流業界を取り巻く状況とは 抱える課題や対策を解説」をダウンロードする
次章では「なぜ物流業界はこれほど人手不足が深刻化している?」という疑問にお答えします。
物流業界で人材不足が深刻化している原因
物流業界の人手不足が深刻化する主な原因として、以下の4つが挙げられます。
- 働き手の高齢化
- 労働生産性が低い
- 給与水準が低い
- 体への負担が大きい
トラックドライバーの高齢化
トラックドライバーの担い手は中年層に偏っています。国土交通省資料(総務省「労働力調査(H27)」)では、道路貨物運送業の就業者のうち**40~54歳が45.2%**を占め、**29歳以下は10.1%**にとどまります。若年層が薄いまま大量退職期を迎えれば、供給力の低下が加速し得ます。
関連リンク:https://hacobu.jp/blog/archives/3182
倉庫作業員の人材確保が困難
倉庫内作業員の採用が難しいのは、求人需要の増加に対して供給が追いつきにくい構造があるためです。ECの拡大や多頻度小口化により、入出荷・仕分け・検品といった工程は平準化しにくく、繁忙期には人員を厚く確保する必要が生じます。一方で、倉庫は郊外立地になりやすく通勤条件が厳しいケースがあり、募集しても母集団が集まりにくい要因になります。加えて、立ち作業や重量物対応など体力負荷を伴う現場もあり、定着面で課題を抱えやすい点も無視できません。結果として、欠員補充が間に合わず、現場の残業増や教育の手薄化が起こり、さらに離職を招く悪循環に陥りやすくなります。
労働生産性が低い
内閣府「(補論)物流業の人手不足問題」内の以下の表を見ればわかるように、物流業界が該当する運輸業・郵便業は、製造業などに比べて労働生産性が低い産業であることがわかります。
▼業種別労働生産性(2018年)

出典:https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr23/pdf/chr23_1-4.pdf
その背景には、トラックドライバーの「荷待ち問題」や、リードタイムの短縮、納品時間の厳しい制約、EC物流の拡大による倉庫作業の複雑化など、さまざまな要因があります。 これらは、「労働時間は長いのに生産性が上がらない」という現象を生んでいます。
自動化や機械化が進んでいるとはいえ、体力のない中小企業では、依然として「人の手」に頼らざるを得ません。そのため、いまだに労働集約型の現場が多く残っているのが実情です。
トラックドライバーの働き方に関しては、以下の資料で詳しく解説しています。気になる方は以下のリンクをクリックし、ダウンロードしてください。
資料『「2024年問題」から1年。トラックドライバーの働き方に関する実態調査』をダウンロードする
給与水準が低い
トラックドライバーは長時間労働になりやすい一方で、賃金面の競争力が相対的に弱いことが指摘されています。国土交通省の公表資料では、トラック運送事業の年間所得は全産業平均と比べて低い傾向が示されており、待遇のミスマッチが採用・定着の障壁になり得ます。賃金だけでなく、荷待ち・荷役を含む業務実態と対価の整合も論点になります。
体への負担が大きい
物流現場、特にドライバーや倉庫作業員の仕事は、体力的な負担が大きいことも無視できません。
フォークリフトやパレット活用が進んでいる現場がある一方で、依然として段ボールを一つひとつ手作業で積み下ろしする「手荷役(てにやく)」が求められる現場も多く残っています。筆者が勤めた物流現場も手作業が多く、腰痛など体の不調を理由に退職する者が後を絶ちませんでした。
また、トラックドライバーであれば、長距離運転や夜間配送など、不規則な勤務体系は生活リズムを崩しやすく、健康管理が難しい側面もあります。
「きつい仕事」という懸念から、特に若手や女性の定着率が上がりにくく、多様な働き手を確保する上での障壁となっています。
2024年問題が物流業界に与える影響について
物流の2024年問題は、ドライバーの時間外労働の上限規制等により、これまでと同じ前提で輸送を組みにくくなる点に本質があります。労働時間の制約が強まれば、同じ運行計画でも走れる距離や回数が減り、輸送能力の目減りが起こり得ます。その結果、トラック事業者は売上機会を取りこぼしやすくなり、ドライバー側も稼働時間の減少が収入減につながる可能性があります。荷主側では、輸送能力の不足を埋めるための運賃・付帯作業費の上昇、リードタイム延伸、集荷条件の見直しなど、調達コストと運用設計の両面で影響が表面化します。さらに、配送頻度や時間指定の維持が難しくなれば、納品条件の変更や欠品リスクを通じて、販売・生産計画にも波及します。したがって2024年問題は、運送会社だけの課題ではなく、荷主と元請けが一体で、荷待ち削減、荷役の効率化、発注の平準化、契約・運賃条件の適正化を進めるべき経営課題と捉える必要があります。
関連リンク:https://hacobu.jp/blog/archives/1305
人手不足が物流業界にもたらす深刻なリスク
人手不足は「採れない」という一時的問題ではなく、業務の停滞や品質低下、コスト上昇、ノウハウ断絶といった形で、企業活動の土台を揺るがし得るリスクです。特に物流はサプライチェーン全体に連鎖するため、影響は運送・倉庫の現場にとどまりません。
業務効率の低下による離職率の増加
人手不足が続くと、欠員を埋めるために残った人員に業務が集中し、現場の段取りは「回すこと」自体が目的化しやすくなります。結果として、荷待ちや再配車、突発対応が増え、計画通りに運べない状態が常態化しやすくなります。こうした状況では、休憩取得や教育の時間が削られ、事故・ミス・クレーム対応が増えて心理的負荷も高まります。負荷の上昇は定着を阻害し、離職が増えることでさらに人手不足が深まるという悪循環に入りやすく、採用だけでなく「離職を増やさない設計」が重要になります。
物流コストの高騰による企業収益の悪化
人手不足は、運賃の上昇だけでなく、付帯作業費や待機時間の増加、緊急対応の外注費など、見えにくいコストを積み上げます。たとえば、必要な時間帯に車両や作業員を確保できないと、スポット手配や分割納品が増え、調達単価が上がりやすくなります。さらに、欠品や納品遅延が発生すれば、販売機会の損失や生産ラインの停止といった形で、物流費以外の損失も発生し得ます。物流コストの上昇は、最終的に粗利を圧迫するため、価格転嫁と同時に、荷待ち削減や荷役標準化など構造改善をセットで進める必要があります。
ベテランの引退による属人的ノウハウの流出
物流現場の品質は、配車の勘所、荷姿や荷役手順の注意点、納品先ごとの暗黙知など、経験に支えられている部分が少なくありません。ところが高齢化が進む中で、ベテランが引退し、十分な引き継ぎができないまま人が入れ替わると、事故・破損・誤配送のリスクが高まります。属人化した運用は、特定の担当者が不在になった途端に回らなくなるため、事業継続の観点でも脆弱です。したがって、マニュアル整備やデジタル化だけでなく、作業手順の標準化、教育時間の確保、データに基づく改善の仕組み化が、ノウハウ流出リスクの低減につながります。
サービス品質の低下によるブランド価値の毀損
人手不足が深刻化すると、時間指定の精度低下、破損・誤配送、問い合わせ対応の遅れなど、顧客体験に直結する品質が落ちやすくなります。BtoBでも納品遅延は先方の生産・販売計画に影響し、信頼の低下を招きます。また、現場が逼迫している状態では、改善活動や再発防止が後回しになり、同様のトラブルが繰り返されやすくなります。こうした品質問題は、短期的にはクレーム増や違約金、長期的には取引継続の判断や入札評価にも影響し得るため、採用難の時代ほど、品質を維持する運用設計と荷主・元請けを含む役割分担の再整理が重要になります。
物流業界の人手不足を解消するための解決策
物流業界の人手不足を解消するための主な解決策は、以下の5つです。
- モーダルシフトの導入
- 共同配送の実施
- 自動倉庫やロボットの活用
- 物流システムの活用
- 物流企業へのアウトソーシング
モーダルシフトの導入
モーダルシフトとは、トラックによる貨物輸送を、鉄道や船舶といった大量輸送機関へ転換することです。
トラック輸送は重量ベースでは圧倒的ですが、長距離輸送(トンキロベース)で見ると鉄道や船舶も大きな役割を担っています。これらを活用することで、ドライバー不足と環境問題を同時に解決できます。
▼指標別国内貨物輸送量の推移

上記の表から、トンベースで見ると圧倒的なシェアを誇る「自動車(トラック)」ですが、距離を掛け合わせたトンキロベースで見ると、船舶や鉄道の役割が大きくなることがわかります。
実際にこの動きは拡大しており、たとえば佐川急便とJR貨物が連携し、「飛脚JR貨物コンテナ便」というサービスを2023年2月1日よりスタートさせています。
出典:https://www2.sagawa-exp.co.jp/newsrelease/detail/2023/0201_2015.html
関連リンク:https://hacobu.jp/blog/archives/3043
共同配送の実施
共同配送とは、複数の企業が連携し、トラックやコンテナを共有して荷物を運ぶ仕組みです。
これまでは、各社が個別にトラックを手配していたため、「荷台がスカスカの状態で走る」といった非効率が発生していました。しかし、業種の枠を超えて荷物を積み合わせることで、トラックの積載率が向上します。
結果として、必要なトラックの台数とドライバーの人数を減らすことができ、コスト削減と安定輸送の両立が可能になります。近年では、競合メーカー同士が手を組み、物流面で協調する動きも活発化しています。
モーダルシフトや共同配送で実現が期待される「カーボンニュートラル」について以下の記事で詳しく解説しています。
関連リンク:https://hacobu.jp/blog/archives/1354
関連記事:カーボンニュートラルとは?物流業界が知っておくべき基礎知識と対応ポイント
自動倉庫やロボットの活用
倉庫内の業務においては、マテハン機器やロボットの活用が効果的です。
自動倉庫(AS/RS)や、棚ごと商品を運んでくるAGV(無人搬送車)などを導入することで、ピッキング作業のために人が広い倉庫内を歩き回る必要がなくなります。
「人海戦術」からの脱却を図ることで、少人数でも大量の注文を処理できる体制が整います。初期投資は必要ですが、長期的な人件費削減や、24時間稼働が可能になる点も大きなメリットです。
なお、出荷業務の効率化の手順や方法についてさらに詳しく知りたい方は、以下の資料をご覧ください。
【倉庫管理者必見】出荷業務の効率化マニュアル|改善の手順や方法、成功事例を紹介
「出荷業務…
2025.12.18
物流システムの活用
アナログな業務をデジタル化する「物流システム」の導入は、即効性のある解決策の一つです。
デジタル化により業務のムダを省き、一人当たりの生産性を高めることは、今いる人員で現場を回すために有効な手段です。
たとえば、トラック予約受付システムを導入すれば、電話やFAXで行っていた調整業務を自動化することで管理担当者の人員削減に寄与します。もちろん、ドライバーの長時間待機も解消可能です。
YKKグループの建材用プロダクトを取り扱う「YKK AP株式会社」は、シェアNo.1※トラック予約受付システム「MOVO Berth」を導入し、トラックの荷待ち解消だけでなく、管理業務を月43.4時間短縮することに成功しています。
トラック予約受付システムで得られる効果が、荷待ち解消だけではない理由について詳しく知りたい方は、以下のリンクをクリックし資料をダウンロードしてください。
資料「荷待ちが発生していない物流拠点でもバース予約システムを導入すべき理由とは?」をダウンロードする
※出典 デロイト トーマツ ミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2025年度版】』https://mic-r.co.jp/mr/03650/ バース管理システム市場のベンダー別拠点数。本調査に参加した国内主要システム6社の拠点数合計をシェア100%とした場合のシェア
物流企業へのアウトソーシング
自社で人材や設備を確保することが難しい場合は、物流業務そのものを外部の専門企業(3PLなど)へアウトソーシングするのも一つの戦略です。
物流のプロに任せることで、物量の波動に合わせた柔軟な人員配置が可能になり、採用や教育にかかるコストや手間からも解放されます。 「物流は自社で行うべき」という固定観念を捨て、専門家に任せることで、自社社員は商品開発や営業などのコア業務に集中できる環境を作ることができます。
そこでおすすめしたいのが、「Hacobu Strategy」です。データに基づいた物流課題の解決を支援するプロフェッショナルが、貴社の物流課題を解決します。Hacobu Strategyの概要は以下ページをご覧ください。
次の章では、人手不足解消に成功した企業事例をご紹介します。

人材不足解消に成功した事例
船舶輸送に変更しドライバー運転時間を大幅削減
ビールメーカー4社は、従来それぞれ陸上輸送で行っていた関東から関西への輸送を見直し、RORO船による海上モーダルシフトを実施しました。各社の工場から直接大型シャーシに積載、もしくは集約拠点で大型シャーシに積み替えた後、千葉港から堺泉北港まで約696kmをRORO船で輸送する仕組みです。この取り組みにより、CO2排出量を1,648.7t(59.3%)削減しただけでなく、ドライバーの運転時間を3,793時間(77.5%)も削減することに成功しています。複数企業が連携してモーダルシフトを進めることで、環境負荷の低減と人手不足の両方に対応した好事例といえます。
出典:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000172834.pdf
トラック予約受付システムで受付人員を半分に削減
大分製紙の豊前工場の倉庫運営・運送を担う有限会社花菱流通は、2024年問題への対策としてトラック予約受付システム「MOVO Berth」を導入しました。導入前は20~30分の待機が常態化し、繁忙期には4時間待機が発生することもありました。受付・待機所では2名体制でリフトマンとドライバーの間を仲介する役割を担っており、人間関係のトラブルも発生していました。MOVO Berth導入後は、事前の予約状況を見ながら出荷準備ができるようになり、待機時間は5分程度まで短縮。リフトマンがSMS(ショートメッセージ)で直接ドライバーを呼び出せるようになったことで、受付・待機所の人員を2名から1名体制に削減することに成功しています。
詳細の事例は以下からご覧いただけます。
2024年問題への対策で導入し、待機時間は大幅改善 受付・誘導人員が半分に
物流改善なら株式会社Hacobu
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現場でシステムを活用して効率化を図りたい場合は「MOVO」が最適です。トラック予約受付システムや動態管理システムなど、アナログ業務をデジタル化することで一人当たりの生産性を高め、少ない人数でも現場を回せる環境を実現します。
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まとめ
物流業界の人材不足は、ドライバーだけの問題ではなく、倉庫内作業や付帯業務を含めた現場全体の採用・定着の課題として捉える必要があります。背景には年齢構成の偏りや、労働時間と賃金のミスマッチ、需要変動に対して人員を柔軟に確保しにくい現場構造があります。さらに2024年問題により、従来の稼働前提に依存した輸送設計は限界を迎えつつあり、荷主・元請け・物流事業者が一体で、荷待ち削減、荷役の効率化、発注の平準化、条件の適正化に取り組むことが不可欠です。人材確保を「採用施策」だけで解こうとすると限界があるため、業務の標準化とデータ活用を通じて、少ない人数でも品質と生産性を維持できる仕組みへ移行することが、現実的な打ち手になります。
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