更新日 2025.12.10

物流業界で人材不足の原因とは?解決策や人手不足解消の成功事例を紹介

物流業界で人材不足の原因とは?解決策や人手不足解消の成功事例を紹介

「なぜ物流業界はこれほど人手不足が深刻なのか?」

「人手不足を解消する具体的な方法が知りたい」

このようなお悩みや疑問をお持ちの物流担当者様も多いのではないでしょうか。

実際に、物流業界の人手不足は年々深刻さを増しています。 物流現場に18年従事した筆者自身も、その状況が悪化していくのを痛感していました。

本記事では、物流業界の人手不足の現状とその原因を、現場目線を交えて解説。さらに、具体的な解決方法から、人手不足解消を成功させた企業の事例までご紹介します。

ぜひ最後までお読みいただき、貴社の物流課題解決の参考にしてください。

もし、「なにから手をつければよいかわからない」とお悩みであれば、外部の専門家に相談するのが近道です。 そこでおすすめしたいのが「Hacobu Strategy」です。データに基づいた物流課題の解決を支援するプロフェッショナルが、貴社を強力にサポートします。

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物流・運送業界の現在の状況

まずは物流業界の人手不足について、客観的なデータをもとに実態を見ていきましょう。

  • 倉庫業の人員不足率は15.9%まで膨らむと予想されている
  • トラックドライバーは20年で20万人減少

倉庫業の人員不足率は15.9%まで膨らむと予想されている

人手不足を測る指標のひとつに、業務に必要な総人数に対し、具体的に何%が欠員しているかを表す「人員不足率」があります。

一般社団法人 日本倉庫協会で紹介されている倉庫事業者へのアンケート結果によると、2024年時点で7.5%である主観的な人員不足率が、今後5年以内に15.9%まで増加すると予想されています。

出典:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001851408.pdf

トラックドライバーは20年で20万人減少

内閣府「(補論)物流業の人手不足問題」に掲載されているデータによると、2000年には97.3万人いたトラックドライバーですが、2020年には77.9万人と、20年間で約20万人も減少しています。

▼トラックドライバーの就業者数の推移

出典:https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr23/pdf/chr23_1-4.pdf

このデータからも、物流業界の人手不足は一過性のものではなく、深刻化の一途をたどっているといえます。

なお、物流業界の課題や対策については以下の資料でさらに詳しく解説しています。気になる方はダウンロードしてご覧ください。

資料「物流業界を取り巻く状況とは 抱える課題や対策を解説」をダウンロードする

次章では「なぜ物流業界はこれほど人手不足が深刻化している?」という疑問にお答えします。

物流業界で人材不足が深刻化している原因

物流業界の人手不足が深刻化する主な原因として、以下の4つが挙げられます。

  • 働き手の高齢化
  • 労働生産性が低い
  • 給与水準が低い
  • 体への負担が大きい

働き手の高齢化

高齢化は非常に深刻で、たとえば筆者が現場にいた頃、いつも入荷で来社するベテラン運転手の横に、明らかに60歳を超えた「新人」の方が乗っているのを目の当たりにした経験があります。こういったことから、日々現場の高齢化を痛感していました。

データもそれを明らかにしており、年齢構成において全産業平均に比べ50代の占める割合が早いペースで上昇しています。

▼道路貨物運送業の年齢構成

出典:https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr23/pdf/chr23_1-4.pdf

少子化による労働人口の減少に加え、「中型免許」や「大型免許」の取得ハードルもあり、若者が新規に参入しにくい環境が原因です。このままベテラン層が定年退職を迎える時期がくれば、労働力不足がさらに加速することは避けられません。

労働生産性が低い

内閣府「(補論)物流業の人手不足問題」内の以下の表を見ればわかるように、物流業界が該当する運輸業・郵便業は、製造業などに比べて労働生産性が低い産業であることがわかります。

▼業種別労働生産性(2018年)

出典:https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr23/pdf/chr23_1-4.pdf

その背景には、トラックドライバーの「荷待ち問題」や、リードタイムの短縮、納品時間の厳しい制約、EC物流の拡大による倉庫作業の複雑化など、さまざまな要因があります。 これらは、「労働時間は長いのに生産性が上がらない」という現象を生んでいます

自動化や機械化が進んでいるとはいえ、体力のない中小企業では、依然として「人の手」に頼らざるを得ません。そのため、いまだに労働集約型の現場が多く残っているのが実情です。

トラックドライバーの働き方に関しては、以下の資料で詳しく解説しています。気になる方は以下のリンクをクリックし、ダウンロードしてください。

資料『「2024年問題」から1年。トラックドライバーの働き方に関する実態調査』をダウンロードする

給与水準が低い

過酷な労働環境であるにもかかわらず、給与水準が見合っていないという点も、人材確保を困難にしています。

内閣府「(補論)物流業の人手不足問題」によれば、トラックドライバーの年間所得額は、全産業平均と比較して低い水準で推移しています。

▼トラックドライバーの賃金水準

長時間労働が常態化している一方で、時間当たりの賃金に換算すると低くなってしまうケースも少なくありません。

この「低賃金・長時間労働」というイメージが定着してしまっていることが問題です。求職者から敬遠される大きな要因となり、他業界への人材流出にもつながっています。

体への負担が大きい

物流現場、特にドライバーや倉庫作業員の仕事は、体力的な負担が大きいことも無視できません。

フォークリフトやパレット活用が進んでいる現場がある一方で、依然として段ボールを一つひとつ手作業で積み下ろしする「手荷役(てにやく)」が求められる現場も多く残っています。筆者が勤めた物流現場も手作業が多く、腰痛など体の不調を理由に退職する者が後を絶ちませんでした。

また、トラックドライバーであれば、長距離運転や夜間配送など、不規則な勤務体系は生活リズムを崩しやすく、健康管理が難しい側面もあります。

「きつい仕事」という懸念から、特に若手や女性の定着率が上がりにくく、多様な働き手を確保する上での障壁となっています

次章では「人手不足を解消する具体的な方法は?」という疑問に対し、5つの解決策をご紹介します。

物流業界の人手不足を解消するための解決策

物流業界の人手不足を解消するための主な解決策は、以下の5つです。

  • モーダルシフトを導入する
  • 共同配送を取り入れる
  • 自動倉庫やロボットを活用する
  • 物流システムを活用する
  • 物流企業へアウトソーシングする

モーダルシフトを導入する

モーダルシフトとは、トラックによる貨物輸送を、鉄道や船舶といった大量輸送機関へ転換することです。

トラック輸送は重量ベースでは圧倒的ですが、長距離輸送(トンキロベース)で見ると鉄道や船舶も大きな役割を担っています。これらを活用することで、ドライバー不足と環境問題を同時に解決できます

▼指標別国内貨物輸送量の推移

上記の表から、トンベースで見ると圧倒的なシェアを誇る「自動車(トラック)」ですが、距離を掛け合わせたトンキロベースで見ると、船舶や鉄道の役割が大きくなることがわかります。

実際にこの動きは拡大しており、たとえば佐川急便とJR貨物が連携し、「飛脚JR貨物コンテナ便」というサービスを2023年2月1日よりスタートさせています。

出典:https://www2.sagawa-exp.co.jp/newsrelease/detail/2023/0201_2015.html

共同配送を取り入れる

共同配送とは、複数の企業が連携し、トラックやコンテナを共有して荷物を運ぶ仕組みです。

これまでは、各社が個別にトラックを手配していたため、「荷台がスカスカの状態で走る」といった非効率が発生していました。しかし、業種の枠を超えて荷物を積み合わせることで、トラックの積載率が向上します。

結果として、必要なトラックの台数とドライバーの人数を減らすことができ、コスト削減と安定輸送の両立が可能になります。近年では、競合メーカー同士が手を組み、物流面で協調する動きも活発化しています。

モーダルシフトや共同配送で実現が期待される「カーボンニュートラル」について以下の記事で詳しく解説しています。

カーボンニュートラルとは?物流業界が知っておくべき基礎知識と対応ポイント

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自動倉庫やロボットを活用する

倉庫内の業務においては、マテハン機器やロボットの活用が効果的です。

自動倉庫(AS/RS)や、棚ごと商品を運んでくるAGV(無人搬送車)などを導入することで、ピッキング作業のために人が広い倉庫内を歩き回る必要がなくなります

「人海戦術」からの脱却を図ることで、少人数でも大量の注文を処理できる体制が整います。初期投資は必要ですが、長期的な人件費削減や、24時間稼働が可能になる点も大きなメリットです。

なお、出荷業務の効率化の手順や方法についてさらに詳しく知りたい方は、以下の資料をご覧ください。

【倉庫管理者必見】出荷業務の効率化マニュアル|改善の手順や方法、成功事例を紹介

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物流システムを活用する

アナログな業務をデジタル化する「物流システム」の導入は、即効性のある解決策の一つです。

デジタル化により業務のムダを省き、一人当たりの生産性を高めることは、今いる人員で現場を回すために有効な手段です。

たとえば、トラック予約受付システムを導入すれば、電話やFAXで行っていた調整業務を自動化することで管理担当者の人員削減に寄与します。もちろん、ドライバーの長時間待機も解消可能です。

YKKグループの建材用プロダクトを取り扱う「YKK AP株式会社」は、シェアNo.1トラック予約受付システム「MOVO Berthを導入し、トラックの荷待ち解消だけでなく、管理業務を月43.4時間短縮することに成功しています。

トラック予約受付システムで得られる効果が、荷待ち解消だけではない理由について詳しく知りたい方は、以下のリンクをクリックし資料をダウンロードしてください。

資料「荷待ちが発生していない物流拠点でもバース予約システムを導入すべき理由とは?」をダウンロードする

物流企業へアウトソーシングする

自社で人材や設備を確保することが難しい場合は、物流業務そのものを外部の専門企業(3PLなど)へアウトソーシングするのも一つの戦略です。

物流のプロに任せることで、物量の波動に合わせた柔軟な人員配置が可能になり、採用や教育にかかるコストや手間からも解放されます。 「物流は自社で行うべき」という固定観念を捨て、専門家に任せることで、自社社員は商品開発や営業などのコア業務に集中できる環境を作ることができます。

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次の章では、人手不足解消に成功した企業事例をご紹介します。

人材不足解消に成功した事例

船舶輸送に変更しドライバー運転時間を大幅削減

ビールメーカー4社は、従来それぞれ陸上輸送で行っていた関東から関西への輸送を見直し、RORO船による海上モーダルシフトを実施しました。各社の工場から直接大型シャーシに積載、もしくは集約拠点で大型シャーシに積み替えた後、千葉港から堺泉北港まで約696kmをRORO船で輸送する仕組みです。この取り組みにより、CO2排出量を1,648.7t(59.3%)削減しただけでなく、ドライバーの運転時間を3,793時間(77.5%)も削減することに成功しています。複数企業が連携してモーダルシフトを進めることで、環境負荷の低減と人手不足の両方に対応した好事例といえます。

出典:https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000172834.pdf

トラック予約受付システムで受付人員を半分に削減

大分製紙の豊前工場の倉庫運営・運送を担う有限会社花菱流通は、2024年問題への対策としてトラック予約受付システム「MOVO Berth」を導入しました。導入前は20~30分の待機が常態化し、繁忙期には4時間待機が発生することもありました。受付・待機所では2名体制でリフトマンとドライバーの間を仲介する役割を担っており、人間関係のトラブルも発生していました。MOVO Berth導入後は、事前の予約状況を見ながら出荷準備ができるようになり、待機時間は5分程度まで短縮。リフトマンがSMS(ショートメッセージ)で直接ドライバーを呼び出せるようになったことで、受付・待機所の人員を2名から1名体制に削減することに成功しています。

詳細の事例は以下からご覧いただけます。

2024年問題への対策で導入し、待機時間は大幅改善 受付・誘導人員が半分に

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現場でシステムを活用して効率化を図りたい場合は「MOVO」が最適です。トラック予約受付システムや動態管理システムなど、アナログ業務をデジタル化することで一人当たりの生産性を高め、少ない人数でも現場を回せる環境を実現します。

新たに人材を採用したい場合は、物流特化型人材紹介サービス「Hacobu Career」をご活用ください。物流業界に特化した採用支援により、貴社に最適な人材確保をサポートします。

人手不足という課題に対し、Hacobuは設計の最適化、システムによる効率化、人材採用支援という3つの側面から、貴社の物流改革を強力に後押しします。

まとめ

倉庫業界の人員不足率は将来的に15.9%まで拡大すると予測されています。この数字は、もはや「採用活動の強化」だけで解決できるレベルを超えており、物流の仕組みそのものを変える必要があります。

人手不足を解消し、安定した物流体制を築くためには、以下の解決策を検討しましょう。

  • モーダルシフトの導入:トラックから鉄道・船舶へ転換し、ドライバー負担を軽減する
  • 共同配送の活用:他社と協力して積載率を高め、車両台数を削減する
  • 自動倉庫・ロボットの活用:マテハン機器で「人海戦術」から脱却する
  • 物流システムの活用:アナログ業務をデジタル化し、一人当たりの生産性を高める
  • アウトソーシングの検討:物流のプロに委託し、コア業務に集中する

重要なのは、「人が集まるのを待つ」のではなく、「今いる人員でも回る仕組み(省人化)」へとシフトすることです。ぜひ本記事を参考に、貴社の物流改革の一歩を踏み出してください。

著者プロフィール / 井上 ダイスケ
物流業界歴18年以上。港湾の職業訓練校を経て、港湾荷役の最前線でRORO船の荷役などに従事。その後、14年以上にわたり倉庫業務も経験し、安全衛生担当者や労働組合執行役員として、現場作業だけにとどまらない多角的な視点から物流現場を深く理解した。この豊富な実務経験と、フォークリフトやクレーン運転士など多数の国家資格に裏打ちされた専門知識を土台に、現場目線でのリアルな記事執筆を得意とする。また、AmazonセラーとしてのEC運営経験から、荷主側の視点に立ったライティングにも対応可能。自動車関連の執筆実績も多数。 >>プロフィールを見る

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