更新日 2025.05.09

不良在庫とは?発生する原因や解消方法、注意点を解説

不良在庫とは?発生する原因や解消方法、注意点を解説

在庫管理は、ビジネスを安定して運営するうえで欠かせない業務のひとつです。しかし、在庫の過不足を正確に見極めるのは容易ではなく、気づかないうちに「不良在庫」が増えてしまっているケースも少なくありません。

不良在庫は、ただの“売れ残り”ではありません。それが倉庫に眠り続けることで、保管コストや廃棄リスク、キャッシュフローの圧迫といった、さまざまな経営上の問題を引き起こします。小売業や製造業はもちろん、在庫を扱うすべてのビジネスにとって、不良在庫の管理は避けて通れない課題です。

本記事では、不良在庫の基本的な定義から、発生する原因、具体的な解消方法、さらには注意すべきポイントについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。

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不良在庫とは

不良在庫とは、販売の見込みが立たなくなった在庫のことを指します。長期間倉庫に眠ってしまっていたり、市場のニーズに合わなくなったりした商品は、たとえ物理的に損傷がなくても、企業にとっては「資産」ではなく「負債」となり得ます。

在庫は通常、将来的な販売を見越して仕入れるものですが、需要の変化や予測の誤りなどによって、販売が滞ってしまうことがあります。こうした在庫は、保管コストや減価リスクを伴い、キャッシュフローの悪化を招く要因になります。特に小売業や製造業では、在庫管理の巧拙が経営に直結するため、不良在庫の発生をいかに防ぐかが重要な課題となっています。

不良在庫の種類

不良在庫にはその背景や要因によっていくつかの種類があり、主には以下のように分類されます。

  • 過剰生産・仕入れによる在庫:需要予測を誤り、供給過多となった商品
  • 流行遅れの商品:トレンドの変化により、消費者の需要が減少した商品
  • 型落ち商品:新モデルの登場により、旧モデルの需要が減少した商品
  • 賞味期限切れの商品:食品や飲料など、期限切れにより販売できなくなった商品
  • 品質劣化した商品:長期保管により品質が低下し、販売が困難になった商品

このように、不良在庫にはさまざまな形態があり、それぞれ異なるリスクとコストが伴います。種類ごとの特徴を正しく理解することが、適切な在庫管理の第一歩といえるでしょう。

不良在庫が発生する主な原因

不良在庫が発生する背景には、業務プロセスや市場環境に起因するさまざまな原因が存在します。ここでは、不良在庫が発生しやすくなる主な要因を4つの観点から解説します。

需要予測のミス

需要予測は在庫管理の根幹ですが、完全に的中させるのは非常に難しいものです。販売データやトレンド分析をもとに予測を立てたとしても、予期せぬ天候の変化、社会情勢の影響、競合他社の動きなどによって、実際の需要が大きく変動することがあります。

たとえば、イベントやキャンペーンに合わせて大量に仕入れた商品が、思ったほど反響を得られなかった場合、結果的に在庫が滞留してしまうリスクがあります。予測のズレが生じると、すぐに在庫過多となり、不良在庫へとつながってしまうのです。

過剰発注・仕入れの失敗

需要予測だけでなく、仕入れや発注の判断ミスも不良在庫の原因になります。特に「欠品リスクを避けたい」という思いから、やや多めに発注する企業は少なくありません。しかし、それが行き過ぎると、結果として過剰在庫を生み出すことになります。

また、仕入れ単価を抑えるために「まとめ買い」を選択することも、不良在庫を招く原因となることがあります。コストは下がる一方で、売り切るまでに時間がかかり、保管コストや品質劣化のリスクが増してしまうからです。

商品の品質問題や保管環境の影響

商品そのものに問題がある場合も、不良在庫につながる可能性があります。製造段階での不具合や、パッケージミス、欠品などが発覚すると、販売が困難になるだけでなく、返品や廃棄の対応が必要となります。

さらに、保管環境が不適切であると、品質の劣化や破損を引き起こし、まだ販売可能だった商品が不良在庫になってしまうこともあります。温度や湿度の管理が求められる商品を扱う業種では、特に注意が必要です。

流行や市場の変化による影響

市場のニーズやトレンドは常に変化しています。ファッション、家電、化粧品など、流行の影響を受けやすい商材を扱う場合、ほんの数ヶ月の間に商品の価値が大きく変わることもあります。

また、競合商品や新モデルの登場によって、従来の商品が「選ばれにくくなる」こともあります。こうした市場変化に迅速に対応できないと、販売機会を逃し、在庫が売れ残ってしまうのです。

不良在庫を解消する方法

不良在庫が発生してしまった場合、重要なのは早期に対応し、企業にとっての負担を最小限に抑えることです。長く放置すればするほど、保管コストや廃棄リスクが高まり、経営への悪影響が大きくなります。ここでは、不良在庫の解消方法をいくつかご紹介します。

早期対応による在庫回転の促進

不良在庫が本格的に価値を失う前に、早めに売り切る工夫が求められます。売れ残りそうな在庫も、適切なチャネルや価格戦略を用いることで再び動かすことが可能です。

値引き販売やアウトレット販売

最も一般的な方法が、値引き販売による在庫の早期消化です。セールやキャンペーンを活用し、「お得感」を訴求することで需要を喚起し、売れ残っていた商品を動かせる可能性があります。また、自社ECや実店舗以外に、アウトレットモールやフリマアプリ、在庫処分専門のECサイトなどを活用することで、販路を広げながら在庫回転を促すことができます。

在庫買取サービスの活用

社内での販売が難しい場合には、在庫買取サービスを活用するのも一つの手です。商品カテゴリによっては、専門の業者が在庫を一括で買い取ってくれるため、即時現金化が可能になり、倉庫スペースの確保や管理工数の削減にもつながります。ブランド価値への影響を懸念する場合は、匿名販売や特定地域のみでの流通に対応してくれる業者を選ぶとよいでしょう。

在庫の再利用・リサイクル

販売が難しい商品でも、用途や視点を変えることで再活用の道が見える場合があります。たとえば、製品の一部を部品や素材として再利用する、社内向けの備品やノベルティとして使うなど、商品を別の形で有効活用することが可能です。

食品や化粧品などの場合は、一定の基準を満たせば寄付活動に回すといった社会的価値のある取り組みにもつなげられます。これにより、単なる廃棄ではなく、ブランドイメージ向上やCSR(企業の社会的責任)にも寄与する形での在庫処理が実現します。

取引先やサプライヤーとの調整

在庫の発生原因によっては、取引先や仕入れ元との関係性を見直すことも有効です。たとえば、売れ行きが思わしくない商品の返品交渉や、次回以降の仕入れ数量の調整、共同での販促企画の実施などを通じて、在庫リスクの分散を図ることができます。

特に長期的な取引関係があるパートナーとは、在庫状況や販売動向を共有することで、双方にとって無理のない供給体制を構築することが可能になります。

IoT・AIを活用した在庫管理の最適化

根本的な解決を目指すには、在庫が「不良化」する前に動きを予測し、コントロールする仕組みが必要です。近年では、IoTやAIを活用した在庫管理システムの導入が進んでおり、より精度の高い需要予測や在庫状況の可視化が実現しています。

たとえば、センサーによって倉庫内の在庫量をリアルタイムで把握したり、過去の販売データや天候・イベント情報をもとにAIが販売傾向を分析したりと、属人的な判断に頼らず在庫を管理できるようになります。これにより、不良在庫の発生を未然に防ぎつつ、企業全体の在庫効率を改善することが期待できます。

不良在庫を防ぐための注意点と対策

不良在庫は一度発生すると、コストやリスクの面で大きな負担になります。だからこそ、発生を未然に防ぐための仕組みづくりが重要です。ここでは、日々の業務に取り入れやすい実践的な対策を紹介します。

需要予測の精度向上

不良在庫を防ぐ第一歩は、やはり需要予測の精度を高めることです。過去の販売データや季節性、トレンド情報、外部要因(天候・イベント・経済動向など)をもとに、できるだけリアルな需要を見極めることが求められます。

また、社内で属人的な予測に頼るのではなく、複数のデータを掛け合わせて分析する仕組みを持つことで、精度を安定させることができます。予測の定期的な見直しも重要なポイントです。

発注・仕入れルールの最適化

仕入れや発注の判断基準が曖昧なままだと、無意識のうちに過剰在庫を抱えてしまうリスクが高まります。適正在庫数や最小発注単位、安全在庫の基準など、社内で明確なルールを定め、全員が共通認識を持てる状態を作ることが大切です。

加えて、仕入れ先との柔軟な連携体制を築いておくことで、急な需要変動にも対応しやすくなります。たとえば、受注生産型の取引や、小ロットでの仕入れ対応なども選択肢の一つです。

適切な在庫管理システムの導入

手作業や表計算ソフトによる在庫管理には限界があります。現場の状況をリアルタイムで把握し、迅速な判断を可能にするには、在庫管理に特化したシステムの導入が効果的です。

たとえば、販売データや在庫回転率を自動で分析してくれるSaaS型のツールを活用することで、データに基づいた発注判断がしやすくなります。複数拠点の在庫を一元管理できる仕組みがあれば、全体最適な在庫調整も実現できます。

保管環境の見直しと品質管理の強化

在庫があっても、品質が劣化して販売できなくなっては意味がありません。特に食品・化粧品・電子機器など、品質に影響を受けやすい商品を扱う場合は、保管環境の整備が重要です。

温度・湿度管理の徹底、棚卸しの頻度や方法の見直し、パッケージ破損のチェック体制など、日常的な管理体制を見直すことで、不良在庫化を未然に防ぐことができます。また、定期的なスタッフ教育も品質維持の観点では欠かせません。

まとめ

不良在庫は、単なる“在庫の残り”ではなく、経営リスクを内包した課題です。しかし、その発生には明確な原因があり、日々の業務や仕組みの改善によって十分にコントロールすることが可能です。

重要なのは、発生後の対処だけでなく、「発生させない」ための視点を持つこと。需要予測の見直し、仕入れルールの整備、在庫管理システムの導入、品質管理の徹底など、企業全体で一貫した在庫戦略を持つことが、不良在庫削減の鍵となります。

在庫は、利益を生む“資産”にもなり、コストを生む“負債”にもなります。在庫を的確にコントロールし、健全な経営体制を築くための取り組みを、今日から一歩ずつ進めていきましょう。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

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