MES(製造実行システム)とは?主な機能や導入メリットを解説

製造業のデジタル化が進む中、製造現場の効率化を実現するMES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)が注目を集めています。本記事では、MESの基本的な概念や主な機能、導入メリットなどについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。
なお、物流DXツールのMOVOはこちらからサービスの詳細をご覧いただけます。
MES(製造実行システム)とは?
MESは、製造現場におけるリアルタイムの生産管理・品質管理を実現するシステムです。具体的には、生産指示の作成から、進捗管理、品質データの収集・分析、トレーサビリティの確保まで、製造プロセス全体を一元管理します。生産計画と現場オペレーションをリアルタイムでつなぐシステムであり、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)における重要な要素となっています。
MES(製造実行システム)が製造業で必要とされる理由
製造業では生産性の向上と品質管理の両立という大きな課題を抱えています。製造現場では、高い生産性を維持しながら、厳格な品質管理を行う必要があり、MESはリアルタイムでの製造データ収集と分析によりこの両立を可能にします。また、製品の製造履歴や品質データの記録・管理の重要性が増しており、MESによる自動的なデータ収集と管理が求められています。さらに、従来は把握が困難だった製造プロセスの詳細な状況を、MESを通じてリアルタイムで可視化することができます。これにより、問題の早期発見と迅速な対応が可能になり、製造現場の効率化と品質向上を同時に実現することができます。
MESとERPの違い
MESとERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)は、どちらも企業の業務を支援するシステムですが、その性質には大きな違いがあります。まず対象範囲において、ERPは企業全体の経営資源(人、物、金、情報)を統合的に管理するシステムであるのに対し、MESは製造現場に特化したシステムとなっています。
MESは秒単位でリアルタイムにデータを収集・処理するのに対し、ERPは日次や月次単位で全社的な管理を行います。
さらに目的においても、ERPは経営管理や業務の効率化が主な目的であるのに対し、MESは製造プロセスの最適化と品質向上に焦点を当てています。
このように、MESとERPは異なる役割を持ちながら、相互に連携することで製造業の全体最適化を実現する重要なシステムとなっています。
MESの主な11の機能
MESには、MESA(Manufacturing Enterprise Solutions Association)が定義する11の主要機能があります。
製造資源の管理
人材・設備・資材などの資源を一元的に管理します。
スケジュールの管理
生産計画に基づいて作業スケジュールを作成し、作業員や設備の割り当てを行います。
作業員の管理
作業員の作業状況を把握して業務を割り当てます。
製造工程の管理
製造の進捗状況を監視し、異常発生時の対応をフォローします。
製造指示
作業スケジュールに沿って作業員への業務指示や情報伝達を行います。
品質管理
製造実績や不良発生などのデータを活用して製品の検査を行います。
製品の追跡
製造途中の仕掛品を追跡して、進捗や製造実績、後工程などを管理します。
設備の保守・保全管理
定期的なメンテナンスの箇所・頻度などを定めた予防保全のスケジュールを作成・管理します。
仕様・文書管理
作業指示書・手順書や図面、製品仕様書などの製造に必要な文書を管理します。
データの収集
製造設備の稼働データや作業員の点検・記録データなどを収集します。
実績の分析
出荷履歴や不良発生などの実績データを分析します。

MESを導入するメリット
MESを導入すると、以下のようなメリットがあります。
リアルタイムな製造管理
MESを導入すると、製造現場の状況をリアルタイムで可視化できます。
製造設備の稼働状況、作業の進捗、品質データなどの情報がシステムに自動的に集約され、現場の状況を正確に把握できます。これにより、問題が発生した際の早期発見と迅速な対応が可能となり、製造ラインの停止時間を最小限に抑えることができます。
品質向上
製造工程の各段階で収集される品質データの分析により、品質管理の精度が向上し、不良品の発生を未然に防げます。
統計的な品質管理手法を用いて製品のばらつきを監視し、異常の予兆を検知することで、不良品の発生を未然に防ぐことができます。また、製造条件と品質の相関関係を分析することで、最適な製造条件を見出すことも可能です。
生産性の向上
詳細なスケジューリング機能により、設備や人員の稼働率を最大化することができます。また、製造現場の様々なボトルネックを特定し、改善することで、生産性を継続的に向上させることが可能です。作業者の動線分析や、設備の段取り時間の短縮なども、データに基づいて最適化することができます。
コスト削減
在庫の適正化、設備稼働率の向上、不良品の削減などにより、製造コストを大幅に削減することができます。特に、予防保全による設備の突発停止の防止や、適正在庫の維持による在庫コストの削減は、直接的なコスト削減効果をもたらします。また、製造プロセスの効率化により、エネルギーコストの削減も期待できます。
意思決定の迅速化
製造現場の様々なデータがリアルタイムで可視化されることで、現場レベルから経営レベルまで、より迅速で的確な意思決定が可能になります。問題が発生した際の原因分析や対策立案が効率化され、生産計画の変更やリソースの再配分などの判断を、データに基づいて素早く行うことができます。
コンプライアンスの向上
製造プロセスの各段階で詳細な記録が自動的に保存されることで、製品のトレーサビリティが確保され、品質保証や法規制への対応が容易になります。製造履歴の追跡や、品質データの報告など、コンプライアンスに関する業務を効率的に行うことができ、監査対応の負担も軽減されます。また、製造プロセスの標準化により、品質基準や安全基準の遵守も確実になります。

MESの種類
MESには以下のような種類があります。
オンプレミス型
オンプレミス型MESは、自社内にサーバーやシステムを構築・運用する形態です。システムの完全なカスタマイズが可能で、自社の製造プロセスに最適化した運用ができます。また、データを自社内で管理できるため、セキュリティ面での安心感が高く、ネットワーク環境に依存せず安定した運用が可能です。一方で、初期導入コストが高く、システムの保守や更新に専門的な知識と人材が必要となります。
クラウド型
クラウド型MESは、インターネットを通じてサービスを利用する形態です。初期投資を抑えることができ、システムの導入や更新が容易です。また、場所を問わずアクセスが可能で、複数拠点での情報共有もスムーズに行えます。スケーラビリティが高く、必要に応じて機能を追加したり、利用規模を拡大したりすることができます。ただし、インターネット環境に依存するため、通信速度や安定性の確保が重要となります。
製造現場だけでなく物流もシステム化を
製造業のデジタル化において、MESは製造現場の効率化、品質向上、コスト削減など、様々な課題解決に貢献する重要なシステムです。しかし、競争力を高めるには、製造現場だけでなく、物流プロセスの最適化も重要です。
なお、Hacobuでは「運ぶを最適化する」をミッションとして掲げ、物流DXツールMOVO(ムーボ)と、物流DXコンサルティングサービスHacobu Strategy(ハコブ・ストラテジー)を提供しています。物流現場の課題を解決する物流DXツール「MOVO」の各サービス資料では、導入効果や費用について詳しくご紹介しています。
トラック予約受付サービス(バース予約システム) MOVO Berth
MOVO Berth(ムーボ・バース)は、荷待ち・荷役時間の把握・削減、物流拠点の生産性向上を支援します。
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MOVO Fleet(ムーボ・フリート)は、協力会社も含めて位置情報を一元管理し、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。
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物流DXコンサルティング Hacobu Strategy
Hacobu Strategyは、物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援します。
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