公開日 2025.02.19
更新日 2025.02.19

規模の経済とは?仕組みや種類、メリット、デメリット、合わせて行うべき取り組みを解説

規模の経済とは、企業規模によって競争力が向上する効果を指します。本記事では、規模の経済の仕組みや種類、メリット、デメリット、合わせて行うべき取り組みについて、物流DXパートナーの Hacobu が解説します。

なお、Hacobuでは物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援する物流DXコンサルティング Hacobu Strategy を提供しています。物流業務の改善にお悩みがありましたら、以下をクリックしてご覧ください。

規模の経済とは

規模の経済の定義

規模の経済(Economies of Scale)とは、企業が生産規模を拡大することで、単位あたりのコストが低下し、競争力が向上する効果を指します。これは、生産量が増えることで固定費が分散され、材料の大量仕入れや生産効率の向上が可能になるためです。

たとえば、工場で製品を10個生産する場合と1,000個生産する場合を比較すると、1個あたりのコストは後者の方が低くなります。これは、設備投資や人件費などの固定費が多くの製品に分散されるためです。企業が成長するにつれて、コストの削減が可能となり、価格競争力を高めることができます。

規模の経済とコスト

企業のコストは「固定費」と「変動費」に分けられます。固定費とは、生産量に関係なく発生するコストであり、例えば工場の賃料や設備費用、管理部門の人件費などが含まれます。一方で、変動費とは生産量に応じて増減するコストで、原材料費や物流費などが該当します。

規模の経済が働くのは、主に固定費の分散が影響するためです。生産量が増えることで、1つの製品あたりにかかる固定費の割合が小さくなり、結果として製品コストの低下につながります。さらに、大量仕入れによる単価引き下げや、生産プロセスの効率化による変動費の削減も、規模の経済の重要な要素となります。

規模の経済が働くメカニズム

規模の経済が機能する仕組みには、以下のような要因が関係します。

生産プロセスの最適化

大量生産に適した設備や技術を導入することで、効率的な生産が可能になります。

材料の大量仕入れによるコスト削減

サプライヤーとの交渉力が高まり、原材料の仕入れ単価を抑えることができます。

専門化の進展

生産ラインの分業を進めることで、従業員の習熟度が向上し、作業効率がアップします。

固定費の分散

工場の設備投資や研究開発費などのコストが、多くの製品に分散されることで、1製品あたりのコストが低下します。

このように、規模の経済は企業の競争力を向上させる重要な要素となります。

規模の経済の種類

内部的な規模の経済

内部的な規模の経済とは、企業内部の努力や施策によって得られる規模の経済のことです。具体的には、生産工程の自動化、大量仕入れによるコスト削減、設備投資の最適化などが含まれます。

例えば、大手製造業ではロボットやAIを活用した生産ラインの自動化を進めています。これにより、人件費の削減と生産効率の向上が実現し、コスト削減につながります。

外部的な規模の経済

外部的な規模の経済は、業界全体の成長や共通のリソース活用によって得られる効果を指します。産業クラスター(特定の地域に同業種の企業が集積すること)や、政府の支援策などがこれに該当します。

例えば、自動車産業が発展している地域では、関連企業が密集することで部品の供給網が効率化され、物流費が削減される効果が生じます。

規模の経済と範囲の経済の違い

規模の経済と似た言葉に「範囲の経済」があります。両者の違いを解説します。

範囲の経済の定義

範囲の経済(Economies of Scope)とは、同じ設備や人材を活用し、複数の製品を生産することでコストを削減する仕組みを指します。

例えば、コンビニが食品や雑貨など多様な商品を扱うことで、物流や店舗運営のコストを効率化できるのが範囲の経済の一例です。

規模の経済との違い

規模の経済は「生産量の増加によるコスト削減」が主な要因ですが、範囲の経済は「多様な商品・サービスを提供することで生じるコスト削減」が特徴です。企業戦略に応じて、これらを適切に活用することが重要です。

規模の経済のメリット

利益率の向上

規模の経済が働くことで、単位あたりのコストが低減し、企業の利益率が向上します。特に製造業では、大量生産による固定費の分散が利益向上に直結します。

価格競争力の強化

コスト削減により、低価格で商品を提供することが可能になり、競争優位性が高まります。これにより、市場シェアの拡大が期待できます。

参入障壁の構築

規模の経済を活用することで、新規参入者が同じコスト構造で競争することが難しくなります。例えば、大規模な設備投資を要する業界では、既存企業が優位性を保つことができます。

規模の経済のデメリット

多額の初期投資とリスク

規模の経済を実現するには、大量生産を可能にする設備への投資が不可欠です。

また、仮に資金を投じたとしても、初期投資を回収する前に市場の需要が低下すれば、設備がそのまま負債化するリスクがあります。投資規模が大きくなればなるほど経済的なメリットも増しますが、その分リスクも大きくなると言えます。

需要減少時の損失が大きい

規模の経済が成り立つのは、製品が安定して売れていることが前提です。もし需要が急減した場合、固定費の負担が大きくのしかかります。たとえば、生産量を半分に抑えたとしても、固定費は変わらず発生し続けるため、1つあたりのコストが上昇し、利益率が低下する可能性があります。

規模の不経済

一定以上に生産を増やすと、逆にコストが上昇することがあります。これを「規模の不経済」と言います。たとえば、大量生産により新たな設備投資が必要になったり、在庫管理コストや人件費が増加したりすることが要因となります。

規模の経済の限界

さまざまなメリットがある規模の経済ですが、現代のビジネスにおいては適用が難しくなっています。

環境規制

環境意識の高まりにより、大量生産・大量廃棄のビジネスモデルが見直されています。環境規制の強化や持続可能な生産への移行が求められ、端的な大量生産を前提とした規模の経済の効果が薄れる場面も増えています。

人手不足

労働力不足が深刻化しており、大量生産を維持するための人材確保が難しくなっています。特に製造業では、高齢化や労働環境の問題により、人員不足が進んでおり、大規模な生産体制を維持すること自体が困難になっています。

多品種・少量生産化

消費者のニーズが多様化し、画一的な大量生産よりも、多品種少量生産が求められる市場が増えています。規模の経済が効きやすい、大規模な生産ラインでは対応しづらいケースが増えています。

規模の経済と合わせてすべき取り組み

規模の経済には限界がある中、企業は合わせて何をすべきかを解説します。

サーキュラーエコノミーの実現

サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、資源の効率的な利用を促進し、廃棄物の発生を最小限に抑える仕組みです。リサイクル可能な素材の採用、製品の再利用を前提とした設計(リマニュファクチャリング)、廃棄物を削減する生産プロセスの導入が求められます。

カーボンニュートラルを見据えた製造プロセスの転換

カーボンニュートラルを実現するためには、製造プロセスの抜本的な見直しが必要です。再生可能エネルギーの活用、省エネルギー設備の導入、排出量削減技術の適用が重要になります。また、サプライチェーン全体でのCO2排出量を可視化し、企業間の協力による削減策を推進することも有効です。

業務プロセスの自動化

人手不足が深刻化する中で、工場や倉庫の自動化は生産性向上の重要な手段となります。製造業では、マテハンなどのロボットを活用した生産ラインの自動化が進んでおり、作業精度の向上とコスト削減が実現されています。これにより、従業員の負担を軽減しつつ、スループットの向上と人件費の削減を図ることができます。

データ活用による需要予測の高度化

デジタル技術を活用した需要予測の高度化は、無駄のない生産と在庫管理を実現する鍵となります。AIやビッグデータを活用し、過去の販売データや市場動向を分析することで、需要の変動を高精度で予測できます。これにより、過剰生産や欠品のリスクを抑え、最適な生産計画を策定することが可能になります。

物流ネットワークの再構築

多品種・少量生産化が進み、規模の経済によるメリットを得られづらくなっている今、メスを入れるべきなのが製造後のプロセス、つまり物流です。物流における各工程のデータを精緻に把握・解析することで、物流ネットワークの再構築が可能になります。それにより物流費の削減を行い、規模の経済以外の手法による利益率向上を目指します。

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Hacobuの支援内容

最後に、規模の経済によって競争優位性を構築されている企業へのHacobuの支援内容を紹介します。

工場・倉庫の自動化:トラック予約受付サービス MOVO Berth

トラック予約受付サービス MOVO Berthは、工場や倉庫へのトラックの入退場を予約管理するシステムです。トラックの入退場時刻や予約バース、トラック到着状況のデータを持つMOVO Berthと、エッジカメラやWMS(倉庫管理システム)、WCS(倉庫制御システム)をAPI連携させることで、トラックの到着をトリガーとして後工程を自動化できます。

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データ活用による需要予測:生産・販売・在庫管理サービス MOVO PSI

生産・販売・在庫管理サービス MOVO PSIは、製造業、卸売業、小売業の企業間をつなぎ、PSI情報を管理・共有・分析するプラットフォームです。このシステムを通じて、各企業は日々のデータにアクセスし、過剰在庫や欠品を防ぎつつ、在庫量や輸配送量を最適化することができます。

物流戦略の立案:物流DXコンサルティング Hacobu Strategy

物流コンサルティングサービス Hacobu Strategyは、経営戦略策定から物流ネットワーク戦略や在庫戦略の策定、テクノロジーを活用した戦術・オペレーション実行まで、幅広く包括的な問題解決を支援します。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

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