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執筆者:片山 裕美

【Logistics Today掲載記事】物流改革、MOVO Berth(ムーボ・バース)から始めるのは合理的か

【2023年10月16日 (月)にLogistics Todayで掲載された記事をご紹介します。】

物流DXツールを開発、提供するHacobu(東京都港区)が、「政策パッケージへの対応は”万全”か」というメッセージを掲げて問いかける。これの意味するところは何か。

物流革新に向けた政策パッケージにおいて、まず取り組むべき事項として位置付けられている、トラックドライバーの待機時間・荷役時間削減。「荷主は荷待ち・荷役時間等に係る時間を原則2時間以内に収めること」をガイドラインにした、いわゆる「2時間ルール」が定められたことで、同社が提供するトラック予約受付サービス(バース予約システム)、MOVO Berth(ムーボ・バース)導入の意義・有用性に改めて焦点が当たっている。

SaaS事業本部マーケティング部の片山裕美氏は「政策パッケージの発表後、ムーボ・バースへの問い合わせも急増しています。特に、荷主企業からの問い合わせが増えたことを見ると、今まで2024年問題に未対応だった企業も、自分ごととしてとらえ、急ピッチで取り組む環境になったように感じます」と語る。

▲SaaS事業本部マーケティング部の片山裕美氏

片山氏は、政策パッケージの中で特に重要なポイントは、荷主の経営者層の意識改革・行動変容の促進へ向けて、荷主企業の役員クラスに物流管理統括者の配置を義務付ける規制的措置の導入が言及されたことだとする。「政策パッケージでは、ドライバーの荷待ち時間、荷役時間の把握が必要とされていますが、荷主はこれまで物流現場の実情が見えていない状況です。物流管理統括者は、これらを把握して適正化する責任を負うわけですが、では、何から始めればいいのか、何かしなくては、そんな相談も増えているのです」(片山氏)。

これまで、現場から課題を提起しても全社での動きにつながらなかったことが、トップダウンでの改革へと形を変え始めていることは、荷主経営レベルの意識が変わってきていることの現れ。丸投げだった現場改善へのアクションもより具体的になり、バース予約システム導入の関心も高まる。「以前検討してはいたが、導入にまで至らなかった企業から、改めてこのタイミングで検討したいというケースも増えています。政策パッケージが後押しとなっていることは間違いありません」(片山氏)

▲MOVO Berth(ムーボ・バース)概要

ムーボ・バースは、荷待ち・荷役時間の把握から、その削減を実現するツール。待機時間を平均63.3分削減(*1)するとしている。また、入場時間や荷物に関わる情報の事前共有により計画的な庫内作業をサポートし、作業当日はセンターのどこからでも車両状況・作業状況をリアルタイムに把握して、電話連絡などの無駄な工程を削減し、業務効率化を促す。「物流現場の業務効率化を実現しつつ、日々の活用で取得したデータから現場状況を可視化し、改善につなげることができます。荷主企業が、取るべき改革への具体的なアクションのひとつとして、現場業務の効率化と、物流の状況の可視化を同時に実現できるムーボ・バースのような物流DXツールを導入することは、合理性があると考えています。」(片山氏)

▲センターの関係者が見るバース表

「物流改革の実践」としてのムーボ・バース導入

実際に、ムーボ・バース導入から物流改革に成功した事例もある。ドラックストア大手・スギ薬局では、複数の物流事業者に委託しているセンターを含めた全国16センターの情報を一元管理し、スギ薬局本社が主導して全センターの待機時間削減に取り組むため、ムーボ・バースを導入した。「ドライバーの長時間待機が発生しているという報告があがってきても、それがスギ薬局のセンターが待たせているのか、それともドライバーが早く来ているのか、正確な情報を把握する手段がないことに課題を感じ、スギ薬局の本社で全16センターの状況が把握・管理できる体制を構築するためにムーボ・バースを導入いただきました。荷主企業として現場の状況を正しく把握すべきという意識から具体的な改革に乗り出された代表例と言えます」(片山氏)

▲スギ薬局本社

2020年に2センターからムーボ・バース導入をスタートし、現在は全16センターに導入を完了。KPIに設定した「30分以上の待機車両(台数)の割合」を管理・改善できる体制を整えたことで、以前は2時間以上待機する車両が19%に及ぶセンターもあったが、現在は、30分以上の待機が発生している車両は全体で0.34%以内となっている。小売荷主のスギ薬局にとっては、物流は一機能に過ぎないとも思えるが、「スギ薬局 物流部長からは「物流の仕事の見える化で、2024年問題の取組みにようやく着手できた」とのコメントがありました。また「荷主企業として、再委託先のドライバーの労働時間にも責任をもつべき」との考えから動態管理サービスのMOVO Fleet(ムーボ・フリート)の導入も進めていただいています。このように、荷主企業自らが現場の状況を正しく把握しようとし、改善に取り組む姿勢こそが、政策パッケージで求められている荷主の具体的なアクションだと考えていますし、そのお手伝いできたことを嬉しく思います」(片山氏)

バース予約システム「No.1」の理由

数あるバース予約システムの中でも、「3年連続シェアナンバーワン」(*2)を誇るムーボ・バース。片山氏は、その「強さ」の秘密を、ユーザー目線で練り上げられた開発姿勢とサポート体制にあるとする。「ユーザーの使い勝手を重視した視認性・操作性を重視し、すべて自社開発で取り組むことによって、新たなニーズも素早く取り込んで反映することができるのが強みです」(片山氏)。SaaSの機動性を生かし、2週間に1回のペースで新たな機能をリリースして、常にユーザー重視のアップデートを繰り返す。導入拠点での効果やユーザー評価によって、他の複数拠点へと導入展開されることも増えてきているという。このような実績がシェアナンバーワンにつながっており、国内ドライバーの2人に1人(*3)がこのシステムの利用経験があるという実績、利用事業所数で13,000拠点を突破するという成果を示す。

「導入拠点からのフィードバックはもちろん、ドライバーさんからのフィードバックも積極的に取りにいくようにしています。先日ある企業で、複数のサービスからどれを選択するかという時に、現場のドライバーさんの意見としてムーボ・バースが一番支持されたのでムーボ・バースに決めたというお話がありました。」(片山氏)。入場時間を予約することは、ドライバーの荷待ち時間を削減するだけでなく、ドライバーが次の仕事の段取りを安心して組むことができるというメリットもある。また、ムーボ・バースは、物流拠点とドライバーとのコミュニケーションを円滑化する役割も果たす。予定の入場時間に遅れる場合や早着の場合は、その情報を携帯電話やスマートフォンから物流拠点側に簡単に伝えることができる。システムに縛られるのではなく、ドライバーにとっても生産性を上げるツールとなっていることも、ドライバーの支持を集める理由のひとつだろう。

▲導入現場の様子

システム導入に際しての不安要素のひとつとなる運用面でのサポートにおいても、同社はきめ細かいサポート体制を組み上げる。「システムを浸透させることが、DX化の大きなハードルでもあり、導入における大切なポイントでもあります。私たちは『カスタマーサクセス』という、導入から運用定着、さらには改善提案まで一貫してユーザーをサポートする専門部署を設けており、チームで各拠点でのノウハウを共有し、物流拠点のさまざまな特性にも対応できる体制を整えています。ここが我々の強みでもあります。」(片山氏)。各拠点に応じた適切な運用設計やシステム設定、各利用者への運用ルールの周知、説明会の実施などを支援することで、システム導入の意義と効率的活用への意識を浸透させる。また、集積データのフィードバックにより次の改善へ向けてもサポートすることで、継続利用する企業は99%(*4)におよぶ。

ムーボ・バースを中心に広がる物流最適化に向けた連携(つながり)

「Data-Driven Logistics®」を信念として掲げ、データによりサプライチェーンの全体最適を目指す同社だが、コミュニティを通したプレイヤー同士のつながりも重視する。そのひとつとして、「MOVOユーザ・コミュニティ」や「未来の物流共創会議」の開催など、利用者同士がつながり、学び合う場作りにも取組み、物流DXツールを中心としたつながりの中から生まれる新しい改革も先導する。

つながりということでは、ムーボ・バースのオープンAPIによる外部システムとの連携でも、倉庫カメラでの車番検知とムーボ・バース上のデータをもとに入退場受付管理、導線指示、呼出まで自動で行うWCS(倉庫制御システム)との連携システムの運用も展開しており、サービス間連携によるさらなるサービス向上にも力を注ぐ。

同社は、バース予約システム(トラック予約受付サービス)の先陣を切ったサービス・ベンダーとして、さらにそのシェアで他社をリードする企業として、常に先を進み、改革をリードする使命も背負う。25年度に利用事業所数3万以上を目標とし、ノウハウや実績を積み上げながらプレゼンスを高めている。積極的なセミナー開催などによる啓蒙・広報活動や、BIPROGY(ビプロジー、東京都江東区)との資本提携など、次に向けた布石を打ちながら、より使いやすい物流DXツールへ向けての道筋を、速度を上げながら先導していく。

「業界ナンバーワンとしてMOVOのネットワークを拡げることは、ユーザーの使いやすい環境を作るうえで、私たちにとって最も重要なポイントだと思っています。物流現場に向き合い機能開発を行うとともに、ムーボ・バースを中心とした「つながり」でさらに大きな広がりを生み出すことが、物流改革への貢献になると考えています」(片山氏)

(*1)Hacobu独自調査「物流DX実態調査リポート ~2024年問題対策の実態と課題」より抜粋(2023年2月)
(*2)出典:デロイトトーマツミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望』2022年度版 https://mic-r.co.jp/mr/02560/ 他 「トラック予約受付サービス」におけるシェア
(*3)国⼟交通省「物流⽣産性向上に資する幹線輸送の効率化⽅策の⼿引き」2015年の従事者数76.7万⼈を基に試算 https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001415371.pdf
システム利用ドライバー数は、利⽤者が「MOVO Berth」を利⽤する際に登録するドライバー電話番号のID数
(*4)収益ベースに算出

LOGISTICS TODAY より引用

著者プロフィール / 片山 裕美

本文はページ最下部に出力されます。

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