CASE STUDY
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執筆者:坂田 優, 佐藤 健次

物流DX実態調査リポートから読み解く、物流「2024年問題」対策の実態と課題

2024年4月より、働き方改革関連法によって自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されます。これによってトラックドライバーの時間外労働時間が制限されるため、長時間労働が横行している運送業界や物流業界では、新たな課題や問題が生じることが考えられます。これらの事を総称して、「2024年問題」といいます。 物流「2024年問題」への対策はまさに待ったなしの状況で、労働環境を見直すために物流DXを加速させることが必要不可欠です。

株式会社Hacobuでは「運ぶを最適化する」をミッションとして掲げ、物流管理ソリューション「MOVO」と、物流DXコンサルティングサービスを提供しています。

今回、当社サービスを導入されているお客様や、過去にお問い合わせをいただいたり、セミナーにご参加いただいたお客様の中から、物流領域の業務に従事されている253名の方を対象に「物流DX実態調査」としてアンケートを実施しました。 調査結果から導き出した「2024年問題」対策の実態と課題についてご紹介します。

※参考:物流業界(物流領域)の「2024年問題」とは|改正のポイントと影響と対策を解説

物流「2024年問題」への意識と対策について

今回の調査は、2023年1月25日〜2月7日の期間で、物流領域の業務に従事されている218社、253名の方を対象に調査を実施しました。

(回答企業の一例:AGCロジスティクス、F-LINE、江崎グリコ、花王、カネカ、キヤノン、キリンビバレッジ、JFE物流、豊田通商、ナイキジャパン、Mizkan、LIXIL物流ほか)

  • 物流「2024年問題」については9割超が意識している
  • 物流「2024年問題」対策を行わない理由とは
  • すでに行っている物流「2024年問題」対策

業界に従事している人の9割超が意識している

Q.貴社は物流『2024年問題』の対応を意識していますか?

「貴社は物流『2024年問題』の対応を意識していますか?」という問いに対して、 「意識している」「少し意識している」と回答した人を合計すると90.9%という結果となりました。

その2年前に、国交省で行われた調査(※1)によるとそのときの認知度が、運用郵便業においては6割程度だったことに対し、関心度が急速に高まってきていることがわかります。

Q.貴社は物流『2024年問題』に対する対策を行っていますか?

続いて行った「貴社は物流『2024年問題』に対する対策を行っていますか?」という問いでは、「行っている」「やや行っている」と回答した人を合計すると64.8%、「あまり行っていない」「行っていない」を合計すると35.2%という結果になりました。

まだ3社に1社は意識はしているものの、対策を講じられていない企業が多く存在することが見て取れます。

物流2024年問題の対策について、物流事業者と荷主に分けて深掘りすると、物流事業者が74.7%、荷主は56.8%となりました。2024年問題対策については、荷主がやや遅れをとっているということがわかってます。

「対策を行っていない」「あまり行っていない」と回答した人の理由を見てみると、「危機感を持っていない」という答えが32.7%で最多となりました。

目前に迫る2024年問題に対策するためには、データや数字から今後起こりうることを予測し、対策していかなければなりません。データや数字で事実を捉えることの重要性が、この結果に示されていると私たちは考えています。

別の調査で、2021年に行われたトラック輸送状況の実態調査(※2)の結果に興味深いデータがありました。物流事業者と荷主に、「荷待ち時間が発生しているかどうか」を質問したところ、物流事業者は7割以上が発生をしていると回答したのに対し、荷主は2割程度という結果になりました。50%もの開きがあることが問題で、双方で物流に関するデータを共有していかなければ、荷待ち時間が発生しているのかどうかすら、正しく把握することができません。そのため危機感が醸成されにくくなってしまいます。

物流DXに取り組んでいる企業の割合は3割

Q.物流DXの取り組み・実施状況について教えてください。

「物流DXの取り組み・実施状況について教えてください」という問いに対して、「現在取り組んでいる」と回答した人の割合は36.8%と、3社に1社でした。

他の業界と比較して、物流領域ではDX推進の遅れが懸念されています。また、2024年問題対策と比較すると、物流DXへ踏み込んで取り組めている企業というのは、やはり少ないと言えそうです。

Q.貴社が物流DXを推進する上での課題は何ですか?(複数選択)

物流DX推進する上での課題について質問したところ、約半数の方が「費用対効果が得にくい」、「物流DX推進のノウハウを持った人材がいない」と回答しました。

「DX推進人材の不存在」これこそが、まさに物流DXの壁ということだと私たちは認識しています。どのようにこの壁を乗り越えていくべきかについてお話しします。

Q.物流DX推進に最も期待する効果や、解決したい課題は何ですか?

「物流DX推進に最も期待する効果や、解決したい課題は何ですか?」という問いに対して、38.7%を占めた「生産性の向上」が第1位、次いで24.1%の「人手不足の解消」が第2位、21.7%の「データの活用・可視化」が第3位という結果になりました。この質問に対して、役職別に少し分解をして見てみると、面白い結果が得られました。

管理職、一般社員ともに第1位は「生産性向上」である一方で、第2位「データの活用・可視化」に関しては、一般社員が29.1%、管理職以上が18.4%と、10Pt以上の差が生じる結果となりました。

「生産性向上」に関しては、管理職以上のうち42%、一般社員も31.6%と高い数字がでました。しかし、「データ活用・可視化」については、管理職以上の方が10%程度少ない結果となっており、一般社員のほうがデータ活用に対する期待が高いことがわかります。一般社員においては、生産性向上と同じくらいデータ活用・可視化に対して期待されているようです。

これは、もしかすると管理職以上の方にとって、データ活用が難しいと考えてしまっているのではないかと推察しています。

以前、荷主企業の物流管理部長の方とお話しした際に、2024年問題に対して、その労働時間の規制が入ることに対して我が社は大丈夫だろうと思っていたけれども、実際、協力会社に運行状態について聞き取りをしたところ、月の残業が80時間を超えているケースもあって、改善するためには、もう見てはならないものを見る必要があると感じたとお話をしていました。

この見てはならないもの、蓋をしていたものの、蓋を開けなければならない時が今なのです。まさにこの物流データを使っていかなければなりません。データという現実から目を背けることは、経営上の大きなリスクになり得るため、データで現実を直視するということが、非常に重要になると考えています。

物流DXリポート本紙では、この他にも様々な調査結果を30頁にわたってご紹介しています。物流にかかわる全ての人にご覧いただきたいリポートです。

\調査リポートはこちらからダウンロードいただけます/

求められる荷主企業の2024年問題対応

荷主企業にも物流改善を義務化する動き

2023年4月、物流の革新に関する閣僚会議で6月上旬を目処に総合的な対策を政策パッケージとして取りまとめるよう、岸田総理が指示したことが報道されました。

一定の規模以上の貨物を運んでいるに荷主企業を特定荷主として選定し、中長期の物流改善に関する計画の作成や提出が義務付けられることなどが公表されていました。

物流管理統括者、役員クラスの選任を義務付けるといった話も出ています。

皆さんはCLOという言葉をご存知でしょうか。アメリカをはじめとする欧米諸国では、CLO(Chief Logistics Officer)つまり、最高ロジスティクス管理責任者というポジションが存在します。こういった存在の方が、これから日本でも必要になってくると考えています。

CLOが向き合わなければいけない事実、現実としては、業種別にばらつきがあるものの売上高物流比率は近年上昇していて、このような状況にどういった手を打っていくのかということがあります。

2024年問題によるドライバー不足の影響を受け、単価は上がっていくことがほぼ確実視されており、この単価と生産性の掛け合わせで物流が決まるとすれば、コストは上昇することが必至といえます。

そうなると、効率や生産性をコントロールする他ありません。そのために不可欠なのが、データです。物流データやグラフを見ながら、様々な思考にふける人物がCLOなのです。

参考:物流関連2法改正・政府の中長期計画を解説。荷主・ 物流事業者は今何をするべきか。

データドリブンなロジスティクスで社会課題解決へ

私たちHacobuは、データドリブンなロジスティクスで社会課題を解決するという信念を持っています。そういった信念を持ってCLOと、またそれを支える改革メンバー、チームメンバーの方々のパートナーとなる存在です。物流改革に取り組むために、最適なデジタルツールを導入しデータを収集するところからスタートします。

まず、データで実態を把握すること、そして、組織間で相互理解をすることです。物流DXに投資するという段階になったら、将来を考えながら費用対効果を考えていくことがポイントです。

そのためには、物流DX人材も不可欠です。データが得意な方がリスキリングするのも一つの方法です。Hacobuでは、物流DX人材を育成する講座「Hacobu ACADEMY」もご用意しています。

物流DXの専門家が、戦略、導入、実行まで一気通貫で支援するソリューション「物流DXコンサルティング〜Hacobu Strategy〜」について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

\物流DXコンサルティング〜Hacobu Strategy〜/

(※1)経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」(2022-9),18頁
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/001_02_00.pdf

(※2)国土交通省「トラック輸送状況の実態調査結果(2021年)」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001409523.pdf

著者プロフィール / 坂田 優

Hacobu取締役COO。野村證券にて、債券・デリバティブ商品を中心に金融法人向けの営業を担当後、財務部門にて債券の発行等による資金調達業務やキャッシュマネジメントシステムの導入プロジェクトに従事。その後、A.T.カーニーでは、東京オフィス及びロンドンオフィスにて、主に通信・メディア・テクノロジー、金融領域における事業戦略策定、業務改革プロジェクト等に参画。

著者プロフィール / 佐藤 健次

Hacobu執行役員CSO。アクセンチュア株式会社において、サプライチェーングループのコンサルタントとして、数多くの改革プロジェクトをリード。その後、ウォルマートジャパン/⻄友にて、eCommerce SCM、補充事業、物流・輸送事業、BPR(全社構造 改革)の責任者を歴任。ウォルマートジャパン/⻄友の物流責任者として、各国のリーダーおよびパートナーと物流革新を推進。

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