内航海運(海上輸送)へのモーダルシフト|貨物の種類からメリット・注意点を解説
「トラック輸送から内航海運への切り替えを検討しており、海上輸送の詳細が知りたい」
「法改正やホワイト物流への対応が急務だ」
そのようにお考えの荷主企業の物流部門・サプライチェーン部門の担当者様や責任者の方も多いのではないでしょうか。
人手不足、物流関連2法改正、そして環境配慮といった社会的要請により、これまで通りのトラック輸送を維持することは年々難しくなっています。
その具体的な対策として注目を集めているのが、輸送手段を切り替える「モーダルシフト」です。なかでも「内航海運への転換」は有力な選択肢ですが、トラック輸送とは大きく性質が異なるため、戦略的な切り替えが重要になります。
本記事では、内航海運を利用する貨物の積み込みに14年以上従事した筆者が、海上輸送の基礎知識やメリットをわかりやすく解説します。さらに、トラック輸送との徹底比較や、現場の最前線で感じたリアルな課題・注意点もご紹介します。
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目次
内航海運(海上輸送)の基礎知識と実態
この章では、国内貨物輸送における内航海運の役割や、長距離輸送における実態、そして実際に運ばれている貨物の種類について解説します。
- 国内貨物輸送量(トンキロベース)の約40%を占める
- 長距離輸送になるほど海運の利用率が高まる傾向
- 石油製品や鉄鋼など産業基礎物資が全体の約80%を占める
国内貨物輸送量(トンキロベース)の約40%を占める
日本の国内物流において、内航海運はトンキロベース(貨物の重量×輸送距離)で全体の約40%という非常に大きな割合を占めています。

出典:国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状について」
これは、海運が「一度に大量の重量物を運ぶ」ことに非常に長けているためです。トンキロベースとは運んだ貨物の「重量」と「距離」を掛け合わせて算出される指標であり、重い荷物を遠くへ運ぶほど数値が大きくなります。
長距離輸送になるほど海運の利用率が高まる傾向
輸送距離が長くなればなるほど、トラックから内航海運へと輸送手段が切り替わり、海運の利用率が高まる傾向にあります。

出典:国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状について」
これは、大量の貨物、重量物を長距離輸送する場合において、海上輸送のほうがコストメリットが出やすくなるためです。
今後の長距離輸送の維持に課題を感じている企業にとって、海運の活用は現実的かつ有効な選択肢といえるでしょう。
石油製品や鉄鋼など産業基礎物資が全体の約80%を占める
内航海運で運ばれる貨物の約80%は、石油製品や鉄鋼といった「産業基礎物資」が占めています。
産業基礎物資とは、エネルギー源や金属、化学原料など、あらゆる工業製品の製造や経済活動を支える土台となる不可欠な原材料のことです。具体的には、鉄鋼や石油・石炭・天然ガスなどが挙げられます。

出典:国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状について」
これらは重く、トラックでは何度も往復しなければなりません。しかし、船舶であればこのような重量物やバルク貨物(バラ積み貨物)を一度に大量に運ぶことができます。
なお、内航海運で使われる船には、さまざまな種類があります。自社の貨物に適した船の種類や特徴をさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
貨物船の種類一覧を解説 | 特徴と適した貨物を理解して、モーダルシフトを推進しよう
「『RORO船』…
2026.01.13
次章では、なぜ今、海運への切り替えが急務となっているのか、その背景について詳しく解説します。

海運への切り替えが急務となっている2つの背景
この章では、なぜ今トラック輸送から海運や鉄道への切り替え(モーダルシフト)が急がれているのか、その2つの大きな背景について解説します。
- 2024年問題によるドライバーの時間外規制
- 物流関連2法改正に伴う荷主企業への規制強化
2024年問題によるドライバーの時間外規制
トラックドライバーの時間外労働が年960時間以内に制限されたこと(いわゆる「2024年問題」)により、従来のようなトラックでの長距離輸送が物理的に困難になっています。
これにより顕在化したのは「長距離ドライバーの手配ができない」「運賃が高騰する」という問題です。もはや運送会社の努力だけでは解決できない「輸送力の限界」こそが、別の輸送モードへの切り替えを迫られている最大の要因です。
この2024年問題やドライバー不足について詳しく知りたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。
ドライバー不足の要因とは?2024年問題による影響や効果的な解決策を解説
現在、物流…
2025.12.26
物流関連2法改正に伴う荷主企業への規制強化
2025年4月に施行された「物流関連2法改正」により、荷主企業に対しても物流負担の軽減が法的に義務付けられたことも大きな背景です。
特に「特定荷主」に指定された場合は、中長期計画の作成や物流統括管理者(CLO)の選任が義務化され、取り組みが不十分だと行政処分となるリスクが生じています。
自社を守るための対策として、ドライバーの運転時間を大幅にカットできる海運へのシフトが急務となっています。
なお、以下の資料では、物流改善のスペシャリストがこの物流2法改正で荷主や物流事業者がとるべき対応ついて、わかりやすく解説しています。気になる方は以下のリンクをクリックし、内容を確認してください。
資料「物流関連2法改正・政府の中長期計画を解説 荷主・物流事業者は今何をするべきか」をダウンロードする
次章では、内航海運とトラック輸送をさまざまな観点で比較します。

内航海運(海上輸送)とトラック輸送の違いを徹底比較
この章では、以下のケースを徹底比較します。
【トラックやトレーラーを船舶に積み込み輸送した場合と、陸上輸送した場合のそれぞれの特徴】
それぞれの強みと弱みを把握し、自社に最適な輸送モードを選択するための参考にしてください。
| 比較項目 | 内航海運(海上輸送) | トラック輸送 |
|---|---|---|
| 一度に運べる貨物量 | 多い | 少ない |
| 運賃(コスト) | 「長距離かつ大量輸送」で割安 | 「中・短距離や、小ロットの輸送」で割安 |
| リードタイム(輸送日数) | 長い(例:東京~博多=約33時間+出荷元~港、港~納品先への陸上輸送)(※1) | 短い(例:東京~博多=約23〜25時間(休憩等含む)) |
| 集荷・配達の利便性 | 港での積み替え(二次輸送)が基本的に必要 | ドア・ツー・ドアで荷出地から直接届けられる |
| スケジュールの柔軟性 | 決まったダイヤ(運航スケジュール)に合わせる必要がある | 任意の時間で手配・出発しやすい |
| 天候による影響 | 台風や時化(しけ)による遅延・欠航のリスクがある | 渋滞や雪などの影響は受けるが、海運よりは柔軟に回避・対応しやすい |
| 環境負荷(CO2排出量) | 少ない(トラックの約5分の1程度) | 多い |
※1)参照元:https://www.nittsu.co.jp/umi/kuroshio.html(日本通運)
表からもわかるように、長距離輸送や大量の貨物を運ぶ場合は、内航海運がコストや環境面で圧倒的に有利です。一方で、リードタイムの短さやドア・ツー・ドアの柔軟性ではトラック輸送に軍配が上がります。
すべてを海運に切り替えるのではなく、貨物の特性に合わせて、トラックと海運を最適に使い分ける戦略が重要になります。
次章では、海上輸送への切り替えで得られる効果について、さらに深掘りします。
内航海運(海上輸送)を利用する3つのメリット
この章では、陸上輸送から内航海運へモーダルシフトすることで得られる、具体的な3つのメリットについて解説します。
- 一度に大量の貨物を運べる高い輸送効率
- 時間外規制などトラック輸送における問題の解決
- CO2排出量の大幅な削減による環境負荷の軽減
一度に大量の貨物を運べる高い輸送効率
船はトラックと比較して積載能力が高いため、まとまった量の荷物を一気に運ぶことができます。一般的な内航船1隻で、大型トラック数十台分に相当する量の貨物を一度に輸送することが可能です。
これにより、長距離トラックを何台も手配する手間が省けるだけでなく、長距離・大量輸送になるほど運賃(コスト)を抑えやすくなります。
時間外規制などトラック輸送における問題の解決
2つ目は、2024年問題に代表される、トラック輸送の課題を解決できる点です。
とくに、トラックやトレーラーごと船に乗り入れる「RORO船」や「フェリー」を活用した場合、長距離の幹線輸送を船に置き換えることで、ドライバーの拘束時間を大幅に削減できます。
たとえば、フェリーにトレーラーを積み込んだドライバーは船での移動中は「休息」扱いです。これにより、「業務間は11時間以上空けなければならない(努力義務/最低基準は9時間)」という法規制をクリアできます。
また、港と最終目的地を結ぶ「二次輸送」を発点、着点それぞれ現地のドライバーに任せる体制を構築できれば、ドライバーは日帰りで自宅に帰れるようになります。
ドライバーの労働環境改善(ホワイト物流)に直結するため、コンプライアンスを守りながら安定した輸送力の確保が可能です。
昨今、企業はさまざまな物流課題への対応が不可欠となっています。そんな中、物流危機にDX化で対応している企業が存在します。具体的な対応や考え方が気になる方は、以下のリンクをクリックし資料をご覧ください。
資料「物流危機、社長の挑戦。物流DX事例集」をダウンロードする
CO2排出量の大幅な削減による環境負荷の軽減
トラック輸送から内航海運への切り替えは、環境負荷を大幅に軽減する有効な手段となります。
船は一度に大量の荷物を運べるため、トラックに比べてエネルギー効率が高く、貨物1トンを1キロメートル運ぶ際のCO2排出量が少ないためです。一般的に、内航海運のCO2排出量はトラックの約5分の1程度と言われています。

脱炭素社会の実現が求められる中、環境配慮への取り組みは、企業のブランド価値を向上させる強力なアピールポイントとなるでしょう。
次章では、海上輸送への切り替えにおける課題や注意点を解説します。

海運へ切り替える(モーダルシフト)際の課題と注意点
モーダルシフトには多くのメリットがある一方で、トラック輸送にはなかった海運特有の課題も存在します。導入前に知っておくべき3つの注意点を解説します。
- 港から最終目的地までの「二次輸送」の新たな手配
- トラック輸送よりも荷崩れのリスクが上昇
- 【経験則】悪天候による欠航で大幅遅延のリスク
なお、モーダルシフトについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
モーダルシフトとは?進まない理由や現状、荷主がすべき対策を解説
「モーダル…
2025.12.26
港から最終目的地までの「二次輸送」の新たな手配
海運を利用する場合、「トレーラーの荷台だけを船に乗せる」といったケースでは、港から最終目的地までの「二次輸送」を手配する手間が新たに発生します。
具体的には、トラック輸送であれば工場から納品先まで1台のトラックで完結します。しかし、海運では「出荷元〜出発港」および「到着港〜納品先」の陸上輸送を担うトラックを別途手配し、船のスケジュールに合わせて連携させる必要があります。(ドライバーを乗船させる場合を除く)
ただし、最近では海運事業者が集荷から配送までを一貫して請け負うサービスも増えているため、これらを活用することで手配の手間を大幅に削減することも可能です。
トラック輸送よりも荷崩れのリスクが上昇
海上輸送では、トラック輸送に比べて荷崩れのリスクが高まる点に注意が必要です。
航行中の船は、波やうねりによって前後・左右・上下と複雑に揺れ続けるため、貨物に多方向からの力が長時間加わるからです。
さらに、RORO船であればトレーラーを乗り入れる際のスロープ(ランプウェイ)を通過する際の振動も大きなものとなります。
強固な固定方法への変更や、海運専用の梱包材を採用するなど、船特有の揺れを想定した対応が不可欠です。
【経験則】悪天候による欠航で大幅遅延のリスク
筆者が14年以上の現場業務で最も強く感じた課題は、台風や時化(しけ)による欠航が引き起こす「大幅な遅延リスク」です。
船は自然の脅威に逆らうことができず、安全を最優先するため、天候不良による運休・欠航は免れません。
現場の経験上、時化が2〜3日続くと出発港・到着港ともに貨物が滞留して大混乱に陥ります。
運航が再開しても溜まった荷物を捌くまでに時間がかかるため、結果的に納品先への「欠航日数以上の遅延」が発生することもしばしばです。
そのため、厳格な納品スケジュールが求められる「製品」や「食品」などをいきなり全面的に海運へ切り替えるのはハイリスクといえます。
まずは数日到着が遅れても事業への影響が少ない「原料」などから移行し、過去の気象データなども踏まえてイレギュラーを考慮した計画を立てることが、リスク回避のために重要です。
このように、海運へのモーダルシフトはさまざまなメリットがある反面、イレギュラーを考慮した緻密なデータ分析と計画が不可欠です。とはいえ、自社だけで最適な業務フローを再構築するのは容易ではありません。
そこでおすすめなのが、データに強い物流課題改善のプロ集団『Hacobu Strategy』です。中立的な立場で、貴社の現状データを分析し、リスクを回避した最適な物流戦略の立案をサポートします。
「Hacobu Strategy」の詳細については、次章で詳しく解説します。
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まとめ|海運の特性を理解し持続可能な物流網を構築しよう
2024年問題や物流関連2法改正、そして環境配慮の観点から、長距離のトラック輸送だけに依存する物流体制は限界を迎えています。
一度に大量の貨物を運べ、CO2排出量も大幅に削減できる内航海運への切り替えは、企業の持続的な成長に有力な戦略です。
一方で、海運には「天候による欠航リスク」や「港からの二次輸送の手配」といった特有の課題もあります。すべてをいきなり船に切り替えるのではなく、納期に余裕のある原料から徐々に移行するなど、貨物の特性やデータに基づいた緻密な計画が求められます。
海運の強みと弱みを正しく理解し、トラック輸送と最適に組み合わせることで、持続可能な物流網を構築していきましょう。
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