公開日 2024.10.16
更新日 2025.02.05

アイドルタイムとは?有効活用する方法や削減方法、物流領域の入出荷におけるアイドルタイムの削減方法も解説

アイドルタイムとは、勤務中の仕事をしていない時間のことです。アイドルタイムは、業務に直接関係しない時間ではありますが、どのように扱うかが重要です。本記事では、アイドルタイムの定義や有効活用する方法、削減する方法などについて、物流DXパートナーのHacobuが解説します。

目次

アイドルタイム(Idle Time)とは?

アイドルタイムとは、勤務中の仕事がない時間を意味します。意図せずに発生する「作業のない時間」であるため、休憩時間とは区別されます。

アイドルタイムの由来

アイドルタイムは、英語の「idle(アイドル)」が語源となっています。「idle」は、仕事がない、遊んでいるなどを意味する言葉です。「idle」に「time(時間)」が加わることで、仕事が落ち着いている時間をアイドルタイムと呼ぶようになったとされています。

アイドルタイムが発生する施設

アイドルタイムが発生する施設は、物流センター・倉庫、工場、飲食店など、さまざまです。

物流センター・倉庫

物流センター・倉庫では、作業者が業務を行っていない手待ち時間がアイドルタイムです。手待ち時間とは、作業を進めるために必要な情報や指示が不足している、前工程の作業が遅延しており作業に着手できないなどの状況のことです。例えば受注データが届いていないため、ピッキング作業ができない時間などを指します。

一方で、トラック運送事業者の目線では、荷主や物流センター・倉庫の事情により、ドライバーが待機する時間である「荷待ち時間」もアイドルタイムと言えます。

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工場

工場では、製造ラインが止まっている時間などをアイドルタイムと呼びます。具体的には、以下のようなシーンが該当します。

  • 段取り替えの前後
  • 材料・工具などを待つ時間
  • 停電・故障などのトラブルが起こったとき

製品の需要が低下する閑散期は、生産量を調整するため、意図的にアイドルタイムを設ける場合もあります。また、物流センター・倉庫と同様に、原材料の入荷や完成品の出荷時、工場に来場するドライバーにも荷待ち時間が生じることがあります。

飲食店

飲食店では、モーニングやランチ、ディナーなどのピークタイムの合間に、アイドルタイムが発生します。店舗の立地によっても異なりますが、食事を中心に提供するレストランでは15~17時頃、カフェの場合は13~15時頃が客足の少ない時間帯となります。

その他のサービス業

ホテルやコンビニエンスストアなどでも、アイドルタイムは発生します。ホテルの場合は、一般的に、接客を中心に担当するフロントの業務量が少なくなる時間帯を指します。具体的には、以下のようなシーンが該当します。

  • チェックアウトから次のチェックインまでの時間
  • 最終チェックインから翌日のチェックアウトまでの時間

一方で、コンビニエンスストアでは、外出する人が少ない早朝や深夜の時間帯をアイドルタイムと呼びます。

アイドルタイムのデメリット

アイドルタイムが発生すると、デメリットが生じます。

アイドルコストが発生する

仕事をしていない間でも、アイドルコストは発生しています。アイドルコストとは、労働力や設備を上手に活用できていないことから発生するコストのことで、「機会費用」とも呼ばれています。人件費や工場の賃料・地代、冷暖房費、機械設備のリース代などが該当します。

技術やサービスのレベルが低下する可能性がある

アイドルタイムが長時間続くと、技術やサービスの質が低下する恐れがあります。例えば、アイドルタイムに働く人員を減らすことで、予想外のトラブルや業務の増加に適切に対応できなくなる可能性があります。

従業員のモチベーションが低下する可能性がある

アイドルタイムが長く続くと、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。仕事がなくなり、従業員が手持ち無沙汰になると、緊張感を維持するのが難しくなります。時間が過ぎるのを待つのを、苦痛に感じる従業員も出てくるかもしれないため、アイドルタイムをできるだけ短く保つことが重要です。

アイドルタイムを有効活用する方法

アイドルタイムは無駄にせず、有効活用することが大切です。ここでは、アイドルタイムを有効活用する方法について解説します。

新人教育を徹底する

アイドルタイムは、新しく入った従業員に仕事を教える時間として活用できます。アイドルタイムを利用して教育するためには、新人指導ができる従業員をシフトに含めて、教育時間を確保しましょう。

忙しい時間帯では新人教育が難しいですが、アイドルタイムならば、丁寧に指導できます。マンツーマンで指導をすれば、短時間で実践的なスキルを習得してもらうことも可能です。

清掃や設備点検をする

アイドルタイムに、普段できていない清掃や設備点検をしましょう。勤務中に清掃や設備点検を行うことで、労働強化の防止、残業代削減につながります。

5S活動のなかでも、「整理」「整頓」「清掃」が行き届いた職場は、生産効率が向上し、顧客満足度も向上します。5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとった言葉で、作業の安全性や品質を高めるために職場環境を整える行動のことです。

アイドルタイムはボトルネックに繋がる

ここでは、アイドルタイムとボトルネックの関係性を解説します。その前に、まずタクトタイムとサイクルタイムについても解説します。

タクトタイム(Tact Time)

タクトタイムとは、1つの作業を完了するのにかける時間の目安となる「理論値」です。タクトタイムは、顧客の需要により逆算して算出していきます。

サイクルタイム(Cycle Time)

サイクルタイムとは、1つの作業が完了してから次の作業が完了するまで、1サイクルにおける実際にかかる時間を示す「実測値」です。

サイクルタイムの中に、作業を行っている時間に加えて、機械が動作するための準備や待機時間であるアイドルタイムが存在しています。

生産や在庫に影響するタクトタイムとサイクルタイムの関係

タクトタイムとサイクルタイムの関係は、製品の生産や在庫に影響します。両者の値が等しい場合、無駄なく生産できている最良な状態と言えます。

しかし、サイクルタイム>タクトタイムの場合は生産が追いついておらず欠品や納期遅延の危険性がある、また、サイクルタイム<タクトタイムの場合は目標より早く多く生産しているため在庫を抱えやすいといった関係性になります。

物流センターや工場の入出荷作業においては、サイクルタイム<タクトタイムの状態は計画よりも効率的に作業ができたと基本的には言えます。

ボトルネック(Bottleneck)

ボトルネックとは、アウトプット量を制限する要素を指しており、最もサイクルタイムが長いプロセスを指します。物流センターや工場では、複数の工程を経て、商品を出荷したり製品を完成させますが、ひとつでもスムーズにいかない工程(ボトルネック)があると全体のアウトプット量に影響を与えるため、ボトルネックをいかに解消するかが重要なポイントになると言えます。

サイクルタイム短縮のために考えたいアイドルタイム

例えば機械の実作業時間を節約しようとすると、機械の設定変更などによって完成品の品質に変化が生じてしまうリスクがあります。それよりは品質に直接影響しないアイドルタイムの方を改善し、短縮することでサイクルタイム全体の短縮に繋げる方が効率的です。

アイドルタイムの削減方法

アイドルタイムは、有効活用するだけでなく、削減することも大切です。ここでは、アイドルタイムの削減方法について解説します。

サイクルタイムの流れ・動作を把握する

アイドルタイムを削減する上で大切なのは、サイクルタイムの流れや動作を把握することです。

サイクルタイムの流れや動作として、具体的に把握すべき内容は、以下のとおりです。

・実際に作業している時間

・動作している機械や人の動き

・作業と作業の間のアイドルタイムの有無

こうした動作をひとつひとつ丁寧に把握していくことにより、サイクルタイムを短縮できるが見つかるかもしれません。

削減・短縮できる動作を探す

サイクルタイムの流れや動作を確認したら、「削減・短縮できるアイドルタイム中の動作は何か」を考えましょう。例えば、動作の停止命令を出した後、次のプログラムに移るまでに余計な時間が生じることがあります。この時間を利用して、別の動作に対する開始命令を送ることで、アイドルタイムを短くできます。

また、動作停止や開始確認などの確認作業にかかる時間をなくすことで、アイドルタイムを劇的に短縮できます。

以降では、さらに物流センターや工場におけるアイドルタイムの発生理由と削減方法を解説します。

物流センターにおけるアイドルタイムの発生理由

物流センターでは、以下のような理由でアイドルタイムが発生します。

不適切なスケジューリング

作業スケジュールが適切でないと、作業員や機械が待機状態になり、効率が悪化します。ピッキングや荷物の積み降しがスムーズに連携していないことが原因です。

不十分な作業の標準化やマニュアル

作業手順が標準化されていない場合、または従業員が作業に不慣れな場合、無駄な動きや遅れが生じ、アイドルタイムが増加します。

機器やシステムの故障やメンテナンス不足

機器の故障やメンテナンス不足によって、作業が停止することでアイドルタイムが発生します。これにより、業務の進行が遅延します。

物理的なレイアウトの問題

物流センター・倉庫のレイアウトが非効率だと、作業員やフォークリフトが無駄に移動し、アイドルタイムが発生します。商品や作業スペースの配置が悪い場合が典型的な例です。

人手不足または過剰

繁忙期や閑散期に応じた適切な人員配置ができていないと、作業の偏りが生じ、作業者が待機する時間が増えます。

コミュニケーション不足

作業者間、またはチーム間の連携が不足していると、作業のタイミングが合わず、無駄な待機時間が発生します。

物流センターにおけるアイドルタイムの削減方法

物流センターにおけるアイドルタイムの削減は以下のような方法が考えられます。

スケジュール管理の改善

需要予測を向上させ、リアルタイムで作業進捗を管理するソフトウェアを導入することで、スケジューリングの精度を高め、無駄な待機時間を減らします。

作業標準化とトレーニング強化

作業手順を標準化し、従業員に対して定期的なトレーニングを行い、効率的な作業方法を徹底します。また、自動化システムを導入することで作業の無駄を削減します。

予防保全とバックアップ体制

定期的なメンテナンス計画を実施し、機器の故障を防ぎます。また、予備機材や代替作業プランを用意しておくことで、故障時の影響を最小限に抑えます。

レイアウトの最適化

商品の配置を最適化し、作業者や機械が無駄な移動をしないようにレイアウトを改善します。頻繁に使用するアイテムを作業エリアの近くに配置し、動線を短縮します。

柔軟な人員配置とクロストレーニング

需要に応じてパートタイムや季節労働者を活用し、人手不足や過剰を調整します。また、従業員に複数の作業スキルを習得させ、繁忙期には柔軟に配置転換を行えるようにします。

コミュニケーションツールと定期ミーティングの導入

リアルタイムで情報共有できるデジタルツールを導入し、作業の連携をスムーズにします。定期的なミーティングを行い、進捗確認と問題点の共有を行うことで、作業の効率化を図ります。

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工場におけるアイドルタイムの発生理由

工場では、以下のような理由でアイドルタイムが発生します。

設備の故障やメンテナンス不足

工場では、生産設備の故障やメンテナンスが不十分な場合、生産ラインが停止し、作業員や機械が稼働できないため、アイドルタイムが発生します。

材料や部品の供給遅延

生産に必要な材料や部品がタイムリーに供給されない場合、作業が滞り、機械や作業者が待機する時間が生じます。これは供給チェーンの不備や在庫管理の問題が原因です。

作業手順の非効率性や標準化不足

作業手順が非効率であったり、標準化されていない場合、作業者が無駄な動きをするため、全体の生産効率が低下し、アイドルタイムが増加します。

作業員のスキル不足や不均一な作業負担

作業員が十分なスキルを持っていない場合や、特定の作業に偏った負担がかかると、一部の作業が滞り、他の工程で待機時間が発生します。

生産ラインの不適切なレイアウトや設計

生産ラインのレイアウトが効率的でない場合、機械や作業員が無駄に移動したり、作業が円滑に進まないことでアイドルタイムが増加します。

コミュニケーション不足や情報の遅延

生産工程での情報共有が適切でないと、次の作業指示が遅れたり、問題が即座に解決されず、作業が停止してしまうことがあります。

工場におけるアイドルタイムの削減方法

工場におけるアイドルタイムの削減は以下のような方法が考えられます。

予防保全とメンテナンススケジュールの強化

設備の故障を防ぐために、定期的な予防保全を実施し、リアルタイムで設備の状態を監視するシステムを導入します。また、予備部品の確保やメンテナンス体制の強化も重要です。

供給チェーンと在庫管理の最適化

材料や部品の供給タイミングを見直し、供給チェーンの信頼性を向上させます。また、在庫管理システムを導入し、リアルタイムで在庫状況を把握して、必要な材料が不足しないようにします。

作業手順の標準化と自動化の導入

作業手順を見直し、効率的なプロセスに標準化します。さらに、自動化技術を導入することで、人的ミスや作業のばらつきを減らし、アイドルタイムを削減します。

クロストレーニングと適切な作業負担の調整

作業員に対してクロストレーニングを実施し、複数の作業に対応できるようにします。また、作業負担の均一化を図り、特定の作業に負担が集中しないようにします。

生産ラインのレイアウトの最適化

生産ラインの動線や機械の配置を見直し、作業の無駄な移動や待機時間を削減します。作業ステーション間の距離を短縮し、効率的に作業が進むようにレイアウトを最適化します。

情報共有のデジタル化と定期的なフィードバック

リアルタイムで情報を共有できるデジタルツールを導入し、作業者間のコミュニケーションを円滑にします。また、定期的にミーティングを行い、生産状況や課題をフィードバックして改善を進めます。

物流センターや工場では、入出荷においてもアイドルタイムが発生します。

以降では、物流センターや工場の入出荷におけるアイドルタイム削減の方法を解説します。

入出荷のアイドルタイム削減にはトラック予約受付システムが有効

物流センターや工場の入出荷におけるアイドルタイムを削減するためには、トラック予約受付システムの導入が有効です。トラック予約受付システムを導入することにより、トラックの到着時間に合わせた積み降しの作業計画や人的配置が可能となります。以降で、トラック予約受付システム導入のメリットを詳細に解説します。

作業計画性を向上できる

例えば以下の左図は、トラックの到着時間をコントロールせず、積み込み作業をした際のバース・時間別の稼働率を表したものです。グレーのマスがアイドルタイムで、バースの稼働にムラがあることがわかります。

トラック予約受付システムを活用することで、アイドルタイムを発生させないようにトラックの到着時間をコントロールし、バースの稼働率を高めることが可能です。

さらに、何時にどの荷物を出荷するかが明確になるので、ピッキング・検品・梱包など前工程も積み込み時間に先んじて準備しておくことができます。

リアルタイムで軌道修正ができる

物流センターや工場の積み降しをする担当者は、以下のような「バース表」と呼ばれる画面を操作します。バース表には、現在の作業状況やトラックの到着状況がリアルタイムで可視化されます。(以下の例は、13時40分時点の状況)

例えば、以下の「B棟_5番バース」をご覧ください。13時40分現在、B棟_5番バースで荷降し作業中であることがわかります。また、13時55分には作業が完了する見込みです。一方で、14時30分から荷積みをする予定のトラックがすでに到着していることがわかります。現在の計画では、13時55分から14時30分までアイドルタイムが発生する予定でしたが、すでに到着しているトラックを14時30分まで待たせる理由はありません。荷積み開始を14時からに変更するといった軌道修正が可能です。

ドライバーの荷待ち時間を削減できる

ドライバーの荷待ちが発生する原理としては、人気の時間に到着が集中してしまうことが要因です。バースのキャパシティよりも到着トラック台数が多い場合、積み降しがボトルネックとなり、荷待ちとなります。

前述のバース表を活用し、バースのキャパシティに合わせて、トラックの到着時間を分散させることで、ドライバーの荷待ち時間を削減できます。

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著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

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