ホワイト物流を進める上での実効的な取り組みとは?

ホワイト物流推進運動の中で取り上げられている取り組み項目は多くあるが、その中で今取り組むべき本当に実効的なアクションは何か、見極める必要がある。
「ホワイト物流」が生まれた背景
国交省、 経産省、 農水省が「運び方改革」と称して進める「ホワイト物流」推進運動。この言葉自体は2018年より提唱されるようになり、国民生活や産業活動に必要な物流を確保するとともに、経済の成長に寄与することを目的として、トラック輸送の生産性向上・物流の効率化と、女性や60代以上の運転者等も働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現を目指している。これまではあまり盛り上がりを見せることがなかったこの運動も、2019年4月に上場会社や各都道府県の主要企業など計約6,300社の代表者に「ホワイト物流」推進運動への参加を直接手紙で要請したことで、気運が高まってきた。また、それに応じた賛同企業が予定よりも前倒しで7月から発表されるなど、注目度がますます高まっている。
「ホワイト」という言葉からも、これまでグレーないしはブラックな働き方が残っていた物流業界における働き方改革を意識したものであることは間違いないが、ホワイト物流が生まれた背景はこれだけではない。推進する主体に国交省以外の省庁も含まれていることが注目に値し、特に経産省については、昨年より物流業界に対して生産性向上に向けた警鐘を鳴らしてきた。経産省が設けた「デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた研究会」は2018年9月に「DXレポート」を取りまとめ、その中で日本が直面する危機について論じた。デジタルトランスフォーメーションとは、単にビジネス現場でシステムを活用することにとどまらず、デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出し、経営を刷新することを意味する。その文脈で、「我が国における企業の生産性を落としている可能性のある分野」としてロジスティクスを挙げたのだ。こういった危機感がホワイト物流を強力に推進する源泉となっていることがうかがえる。
多くの企業が選択する具体的な取り組み
2019年7月8日時点で89社がホワイト物流への賛同を宣言し、具体的な取り組み内容を掲げている。東京都に所在地を置く企業が24社と多くを占める。また、業種別に見るとメーカー36社、運輸・通信業32社、卸売業・小売業19社、金融業・保険業1社、情報通信業1社、と荷主側の企業が多くを占める中で、 運送会社側でも一定数の企業が賛同を表明していることは興味深い途中経過だ 。
2社以上の企業が取り組み項目として掲げた28の取り組みのうち、一番多いのは「物流の改善提案と協力」だが、これは言ってみれば「協力します、頑張ります」という内容が多く、具体的な取り組みとは言いづらい。運送会社側で見たときに次に多いのは、「荷役作業時の安全対策」と「運送契約の書面化の推進」だ。基本的な取り組みではあるが、これまで進んでこなかった領域で、特に契約をきちんと書面化しておくことが今後荷主との交渉を進める上で重要だと認識されていることがわかる。メーカー側で多いのは、「異常気象時等の運行の中止・中断等」「リードタイムの延長」「パレット等の活用」「発荷主からの入出荷情報等の事前提供」である。「リードタイムの延長」については、商流にまで踏み込むことになり実現には多くのハードルが伴いそうだ。他方、「発荷主からの入出荷情報等の事前提供」については、実現が可能になる土壌が整いつつある。

実現可能かつ真に実効的な発荷主・着荷主・運送会社の協働
実は、先に挙げた28の取り組みのうち、2つはバース管理(トラック予約・受付)システムの導入により実現が可能になる。それは、「予約受付システムの導入」および「発荷主からの入出荷情報等の事前提供」だ。「予約」システムはドライバーや運送会社の配車係が車両の入場時間をオンラインで予約する仕組みだが、ドライバーにとっては配送先での待機がなくなり、物流センター側では各車両の到着時間が事前に把握できるので、庫内作業の効率化につながる。そして、意外と知られていないのは、その予約情報の中に発荷主からの出荷情報を含めることで、情報の事前提供が同時にできてしまうということだ。
実際、商流の世界ではメーカーと卸の間や、卸と小売の間にはファイネットやプラネットといったデータ交換をする仕組みであるEDI(Electronic Data Interchange)が存在する一方で、物流の世界ではこれまで必要とされていたにも関わらず、実効的な仕組みが存在しなかった。インターネットが発達し、データ交換に関する技術が発展した現在では、物流版の共通Web EDIのような存在が生まれつつあり、発荷主・着荷主・運送会社の間での協働が可能になったことで、ホワイト物流の実現を助けている。
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