更新日 2025.09.17

配送管理システム(TMS)の選び方を解説!基本機能と比較ポイント

配送管理システム(TMS)の選び方を解説!基本機能と比較ポイント

物流の業務には配車の管理や移動、状態の管理など、さまざまな課題があります。TMSは、トラックの配車や移動を改善するために役立ちます。この記事では、物流事業の事業担当者や経営者に向けてTMSの特徴を解説します。物流の効率化の参考にしてください。

目次

「物流管理」は商品の受注から配送までを管理すること

物流管理とは、商品について、発注から配送までのすべての工程を一元管理する方法です。物流の流れとして、まずは製造拠点から物流センターへと商品が輸送され、入荷作業を行った後に倉庫に保管されます。

その後、商品の流通加工を行い、ピッキングを行った後に配送されるという流れです。この物流管理をスムーズに進めるためのシステムとして、物流管理システムがあります。

物流管理における配送プロセスの位置づけ

物流管理における配送プロセスは、サプライチェーン全体の最終段階であり、顧客満足度に直結する重要な工程です。いくら商品の品質が優れていても、配送が遅延したり誤配送が発生したりすれば、顧客の信頼を失うことになります。特に近年の物流効率化法の改正により、配送の正確性と迅速性に対する要求は一層高まっています。

物流管理で生じている課題

物流管理で生じている課題には何があるのでしょうか。以下で詳しく解説していきます。

配車業務が属人化している

物流管理では、配車業務が属人化してしまっているという課題があります。ある調査によると「配車計画業務の属人化」に課題を感じる企業が全体の64.9%を占めているという結果も出ています。これは、経験豊富な担当者が、データなどを参考にするのではなく、長年の経験に基づく「勘どころ」などを頼りにしている現場があるためです。

その結果、業務の属人化が起こってしまいます。そのため、物流業務では配車管理機能の改善や強化が必要といえるでしょう。

たくさんのリソースが必要で人員不足が発生している

物流業務はたくさんのリソースが必要です。そのため工数も多く、人員不足が発生しています。
人員不足は業務のクオリティ低下につながります。特に、トラックドライバーが不足している状況があるので、業務の効率化を行うなどして、課題を解決していく必要があります。人手不足はドライバーの慢性的な疲労につながり、結果的に生産性の低下を招くため注意が必要です。

配送コストの可視化が難しい

物流管理における深刻な課題の一つが、配送コストの可視化の難しさです。配送コストは燃料費、人件費、車両など多岐にわたる要素で構成されており、それぞれが市場環境や季節変動の影響を受けます。特に燃料費は原油価格の変動に左右され、予測が困難といえます。

配送コストが可視化できないことは、経営判断に大きな影響を与えます。配送コストの不透明さから採算性を正確に見積もれず、結果として負債を抱えることになるなど、配送コストの可視化は単なる経費管理を超えた経営戦略上の重要課題です。

法令遵守と安全管理の両立が難しい

運送業界では労働時間規制、車両の点検義務、過積載防止などの法令遵守が強く求められます。しかし現場では納期や効率を重視せざるを得ず、遵守と実務の間にギャップが生じやすいのが実情です。例えば長距離輸送では休憩を確保する必要がある一方、配送スケジュールとの兼ね合いで調整が難しく、安全運転と顧客満足を両立するには仕組みづくりや計画の工夫が不可欠です。

TMS(輸配送管理システム)とは

ここからは、TMS(輸配送管理システム)について具体的に解説します。

TMSの種類と最新トレンド

TMSには主に3つの種類があります。まず「クラウド型」は、インターネット経由でサービスを利用するタイプで、初期投資を抑えられる点や常に最新版を利用できる点がメリットです。次に「オンプレミス型」は、自社サーバーにシステムを導入するタイプで、セキュリティ管理を自社でコントロールできる点や、大規模なカスタマイズが可能な点が特徴です。最後に「ハイブリッド型」は、クラウドとオンプレミスの両方の特徴を持ち、柔軟な構成が可能です。

最新のTMSには、いくつかの注目すべきトレンドがあります。第一に「AI配車最適化」があります。これは膨大な配送データをAIが分析し、交通状況や天候、過去の配送実績などを考慮して最適な配車計画を自動生成するものです。導入企業では配送効率が平均15〜20%向上したという報告もあります。第二に、「IoTセンサー連携」があります。車両や貨物にセンサーを取り付け、リアルタイムで位置情報だけでなく、温度や振動、開閉状況などを監視できるようになっています。特に医薬品や生鮮食品など品質管理が重要な商品の輸送で注目されています。第三に「ブロックチェーン活用」があります。複数の物流事業者間での情報共有や取引の透明性確保にブロックチェーン技術を活用する取り組みが始まっています。これにより書類手続きの簡素化や、貨物の追跡精度向上が期待されています。

TMS(輸配送管理システム)の特徴

TMSとは『Transport Management System』の略で、輸配送管理システムのことです。具体的には、トラックの配車や移動データなどを管理するためのシステムになります。導入することで、輸送状況を可視化できるため、物流業務全体の効率化や生産性向上が目指せます。TMSの主な機能には「進捗管理機能」「配車管理機能」「実績管理機能」などがあります。

TMS(輸配送管理システム)の機能

TMS(輸配送管理システム)の機能には荷物の配送状況確認や、ドライバーの業務状況管理などさまざまなものがあります。以下で4つの機能を解説します。

荷物の配送状況を追跡する

TMSは荷物の配送状況を追跡することが可能です。たとえばこの機能により、トラックに乗せられた荷物がいまどこを走行中なのかを把握できます。そのため、仮に道路が混雑していたとしても、その状況もリアルタイムで把握できるため、到着予定時間の共有を行えます。

運転に関するデータを共有する

TMSの機能により、ドライバーの運転に関するデータを共有可能です。具体的には、トラックの走行距離や使用燃料を把握できます。その結果、各トラックの作業効率を把握することができ、最適な配車や積載量を自動計算できるのです。また、ドライバーの作業効率を把握することで、給与の査定時に数値を活用することもできます。

トラックの運用にかかるコストを把握する

TMSでは、運転データや配送状況のデータだけでなく、トラックの運用にかかるコストを把握することもできます。コストをトラックの燃料の使用量をもとに計算されます。また、取引先や顧客への運賃や支払い請求などの計算にも対応可能です。

ドライバーの業務状況を管理する

ドライバーの業務状況を管理できる機能もTMSは備えています。この機能により、作業効率の悪いドライバーの状況を数値化することが可能です。その結果を踏まえて具体的な指示を出すことも可能でしょう。また、業務過多になっているドライバーをすぐに発見することもできます。

TMSとOMSやWMSの違い

ここからは物流におけるTMSと、OMSやWMSとの違いを解説します。

商品の受注を管理する「OMS(受注管理システム)」

OMSとは『Order Management System』の略で、受注管理システムのことです。具体的には、顧客情報、商品情報、在庫情報、注文情報をまとめて管理できます。特徴は、注文から在庫として管理するまでを扱う、という点です。

倉庫の在庫を管理する「WMS(倉庫管理システム)」

WMSとは『Warehouse Management System』の略で、倉庫管理システムのことを指します。機能としては、倉庫の在庫を管理するための以下の機能が搭載されています。
・入荷管理
・在庫管理
・出荷管理
倉庫内での在庫の保管から発送までを管理できることが特徴になります。

TMSを構成する3つの領域

配車計画システム

出荷する貨物情報や納期、積載条件をもとに、最適な車両割り当てを自動で行います。人手に頼ると時間がかかる計画業務を効率化し、燃費や稼働率を考慮した最適な配送計画を実現します。

配車管理システム

計画で割り当てられた車両を実際に手配し、ドライバーや協力会社への指示を行う領域です。運行前の調整や急な変更対応を一元的に管理でき、現場のオペレーション負担を大幅に軽減します。

車両管理システム

実際に稼働する車両の位置や走行状況をリアルタイムに把握します。遅延やトラブルへの即時対応が可能となり、配送品質の向上や顧客への正確な情報提供に直結する重要な領域です。

TMS(輸配送管理システム)を導入するメリット

TMSを導入することで企業は多くのメリットを得ることができます。以下では、代表的なメリットについて詳しく解説します。

配送計画の効率化と最適化

TMSの導入により、配送計画の効率化と最適化が実現します。従来の手作業による配車計画では見落としがちだった非効率なルートや積載率の低い車両配置などを、システムが自動的に検出し改善案を提示します。

特に近年は、AIを活用した動的ルート最適化が注目されています。これは、リアルタイムの交通情報や天候、突発的な配送先の変更などに応じて、最適なルートを動的に再計算する機能です。従来の静的なルート計画と比較して、平均で配送時間を8〜12%短縮できるとの報告もあります。

配送コストの削減と「見える化」

TMSの導入による最も大きなメリットの一つが、配送コストの削減とその可視化です。実際の導入企業の事例では、燃料費が平均15%削減されたり、効率的な人員配置により人件費を約10%削減することに成功していることもあるようです。

コストの可視化が経営判断に与える影響も見逃せません。ある中堅運送会社では、TMSによるコスト分析から、特定の配送エリアが予想以上に収益性が低いことが判明しました。この分析結果を基に、同エリアの配送料金の見直しと配送頻度の最適化を行った結果、全体の営業利益率を向上させることに成功しています。コストの「見える化」は、単なる経費削減を超えた戦略的な経営判断を可能にするのです。

TMS(輸配送管理システム)を導入するデメリット

TMSの導入には多くのメリットがある一方で、導入前に理解しておくべきデメリットやリスクも存在します。これらを事前に把握することで、導入後の失敗を最小限に抑えることができます。

初期導入コストと運用費用の負担増大

TMSを導入する際の大きな障壁となるのが初期導入コストと継続的な運用費用です。初期導入コストは規模にもよりますが、小規模企業で約100万円から、大規模企業では数千万円に達することもあります。この初期費用には、システム本体の費用だけでなく、カスタマイズ費用、データ移行費用、社内教育費用なども含まれます。

ランニングコストについても理解しておく必要があります。月額利用料は月額数万円〜数十万円になることもあります。さらに、システムの更新料、サポート料、追加機能のオプション料金なども発生します。これらのコスト負担を軽減するためには、段階的な導入計画を立てることが効果的です。まずは核となる配車管理や進捗管理などの機能から導入を始め、効果を確認しながら徐々に機能を拡張していく方法が推奨されます。

既存システムとの連携における課題

TMSを導入する際、多くの企業が直面するのが既存システムとの連携における課題です。典型的な問題としては、まずデータフォーマットの不一致があります。会計システムや販売管理システムで使用しているデータ形式がTMSと互換性がなく、データ変換が必要になるケースが多いのです。次に、リアルタイム連携の難しさがあります。基幹システムでの受注情報や在庫情報をTMSにタイムリーに反映させることが技術的に困難な場合があります。

これらの課題に対処するためには、API連携の活用が有効です。例えば、ある製造業では、ERPシステムとTMSをAPI連携させることで、受注情報から自動的に配送計画が作成される仕組みを構築しました。また、データ互換性の問題に対しては、ETLツールの活用も効果的です。これにより異なるシステム間のデータ形式を自動変換し、スムーズなデータ連携が可能になります。いずれにせよ、システム連携は導入前の詳細な要件定義と、ベンダーとの綿密な協議が不可欠です。場合によっては外部のシステムインテグレーターを活用することも検討すべきでしょう。

TMS(輸配送管理システム)を選ぶときのポイント

TMSを選ぶ際には、自社の業務特性や課題に合ったシステムを選定することが成功の鍵となります。ここでは、TMSの選定において押さえておくべき重要なポイントを解説します。

自社の物流課題を明確にする

TMS選定の第一歩は、自社の物流課題を明確に洗い出すことです。この作業は以下の手順で進めると効果的です。まず、現状の業務フローを可視化し、各プロセスにおける所要時間やコスト、問題点を洗い出します。次に、物流に関わる各部門へのヒアリングを実施し、現場の声を集めます。そして収集したデータを分析し、重要度と緊急度に基づいて課題の優先順位を決定します。最後に、解決すべき課題とそれによって得られる効果(KPI)を明確にします。

業種別に見ると、典型的な物流課題にはいくつかのパターンがあります。製造業では「生産計画と配送計画の連携不足」、卸売業では「多頻度小口配送の増加によるコスト増」などが挙げられます。また、小売業では「店舗ごとの納品時間指定への対応」などが課題となっています。これらの業種別の特性を踏まえ、自社の具体的な課題を特定することで、より効果的なTMS選定が可能になります。

サポート体制とアフターフォローの重要性

TMSの導入成功には、システムの機能だけでなく、ベンダーのサポート体制とアフターフォローが決定的に重要です。チェックすべきポイントとしては、まずサポート対応時間が挙げられます。物流業務は早朝から深夜まで、また土日祝日も動いていることが多いため、365日対応可能なサポート体制があるかどうかは重要な判断材料となります。また、担当者の専門性も確認すべきです。単なる操作方法の案内だけでなく、物流業務に精通したスタッフが対応してくれるかどうかで、問題解決の質が大きく変わります。

アフターフォローが不十分な場合のリスクは想像以上に大きいものです。ある食品メーカーでは、TMSの導入後にシステムエラーが発生し、その日の配送計画が作成できなくなったこともあるようです。しかし、ベンダーの対応が遅く、結局その日は手作業での配車対応を余儀なくされ、多くの配送遅延が発生しました。このようなリスクを回避するためには、導入前にベンダーのサポート体制を詳しく確認するとともに、実際に導入済みの他社の評価や口コミも参考にすることが重要です。

TMS(輸配送管理システム)サービス6選

配車計画システム

LYNA 自動配車クラウド

AI搭載の自動配車システムで、配車業務の効率化が可能です。6時間かかっていた日々の配車計画を30分に短縮できるため人件費の削減を行えます。また正確な配車計画を誰でも行えるため、人災不足も解消するシステムです。

Loogia

誰でも簡単に最適なルートを作成することで配送業務を効率化できるシステムです。高精度な経路探索で「計画通り」に配送でき、配送コース数の削減や、稼働時間の圧縮を実現します。

配車管理システム

LogiSTAR配車管理簿

LogiSTAR配車管理簿は、曜日時間帯別の走行速度(VICS統計)搭載で、時間指定や車格指定などの多様な接車条件にも対応可能なシステムです。多数の運用実績を製品に反映させることで、常に情報をアップデートできます。

MOVO Vista

MOVO Vistaは、貨物や車両、ドライバー情報を一元管理できるシステムです。配車業務をデジタル化して、配送依頼から請求までの事務作業を一気通貫で効率化し、配車のムリとムダを解消します。

車両管理システム

MOVO Fleet

MOVO Fleetは、車両管理の効率化で、荷主と運送会社双方のコスト削減を支援します。配送計画をダッシュボード上で可視化することで、車両位置把握や着荷の自動記録などが可能です。また拠点を跨いでリソースを一元管理できるため、大きく輸送効率化を実現できます。

TMS(輸配送管理システム)の導入事例

TMSの導入がどのような効果をもたらすのか、実際の企業の事例を通して見ていきましょう。

1つ目の事例は、関東圏を中心に展開する食品卸売業A社です。同社は配送車両50台を保有し、1日あたり約500件の配送を行っていましたが、配車計画の属人化や配送コストの増加に悩んでいました。TMSを導入した結果、配送ルートの最適化により燃料費が月間約18%削減され、配車計画作成時間も1日あたり5時間から1時間に短縮されました。さらに、リアルタイムの配送状況把握により、顧客からの問い合わせ対応時間が60%減少し、顧客満足度が向上しています。

2つ目の事例は、全国に工場と配送センターを持つ製造業B社です。同社は多品種少量生産への移行に伴い、配送の小口化と頻度増加が課題となっていました。TMSの導入により、複数の配送先を効率的に組み合わせる共同配送が可能となり、積載率が平均65%から82%に向上しました。また、配送データの分析により季節変動の予測精度が向上し、繁忙期のドライバー残業時間が前年比25%削減されています。

3つ目の事例は、地方を拠点とする中小運送会社C社です。ドライバーの高齢化と人手不足に悩んでいた同社ですが、TMSを導入したことで配送効率が向上し、同じドライバー数で10%多い配送件数を処理できるようになりました。また、車両の稼働状況をリアルタイムで把握できるようになったことで、急な配送依頼にも柔軟に対応できるようになり、新規顧客の獲得にもつながっています。さらに、労務管理機能により、ドライバーの労働時間管理が適正化され、コンプライアンス違反のリスクも低減しました。

車両管理の効率化ならMOVO Fleet

車両管理の効率化をお考えなら、「MOVO Fleet」がおすすめです。MOVO Fleetは、単なる車両位置管理システムにとどまらず、荷主と運送会社双方の業務効率化とコスト削減を同時に実現する総合的な車両管理ソリューションです。MOVO Fleetの最大の特徴は、ダッシュボード上での配送実態の可視化です。配送の進捗状況をリアルタイムで把握でき、遅延や問題が発生した場合も迅速に対応することが可能になります。

また、車両位置の把握だけでなく、走行ルートや稼働時間、積載率の可視化も可能で輸配送の実態把握を大幅に効率化できます。さらに、複数の拠点にまたがるリソースを一元管理できるため、企業全体での輸配送効率の最適化が可能になります。

MOVO Fleetについて詳しく知りたい方は、こちらからお問い合わせいただけます。専門のコンサルタントが、貴社の課題に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。 >>プロフィールを見る

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