更新日 2026.05.28

CLO体制の作り方|CLO室の組織設計と人材像をタイプ別解説

CLO体制の作り方|CLO室の組織設計と人材像をタイプ別解説

CLO室の設計は、2026年4月に施行された改正物流効率化法に対応する荷主企業にとって、CLO選任の次に立ち上がる最重要テーマです。各社でCLOの選任は着実に進みました。しかし、CLOの役割は法対応から経営アジェンダ化、データ分析、全社横断の調整まで広範に及び、1人ではやり切れません。次に必要なのは、CLOを支える補佐組織の設計です。本記事は、CLO選任後の組織設計について物流DXパートナーのHacobuが解説します。

この記事でわかること:

  • CLO室に必要な2つの機能(「目」と「手足」)の全体像
  • CLOの3タイプ別に最適な補佐組織と人材像
  • 新体制の発足直後に着手すべき3つのアクション

なぜCLO単独では物流改革が動かないのか

CLOへの期待は法対応にとどまらず多岐にわたるため、CLO単独では推進力が不足し、補佐組織であるCLO室の設計が不可欠です。

物流統括管理者・CLOの役割や責務の基本はこちら

CLOに寄せられる期待は法対応だけではない

2026年4月、改正物流効率化法の施行により、特定事業者にはCLO(物流統括管理者)の選任が義務づけられました。特定事業者は5月末までに届出を行い、国の指定を受けてCLOを選任した上で、10月末までに中長期計画を提出します。Hacobuの調査によれば、CLOへの期待は「法規制対応」「物流の経営アジェンダ化」「データに基づく現状把握」「物流コストの最適化」と幅広く、特定の領域に偏らずに分散しています。つまりCLOは、コンプライアンスの担い手ではなく、物流を経営レベルで変革するリーダーとして期待されているのです。

1人で全てを担うことの構造的な限界

CLOに寄せられる期待は、いずれも単独で完結できる性質のものではありません。経営層との調整、現場データの収集と分析、関連部門との連携、戦略の立案と実行を1人で全て担うのは現実的ではありません。実際に「1人で全てをやり切るのは難しい」というお声を、私たちは多くの荷主企業から伺っています。だからこそ、CLOの推進力を最大化する仕組みとして、補佐組織であるCLO室を設計する必要があります(CLO制度の概要を改めて確認する)。

CLO室に必要な「目」と「手足」の2つの機能

CLO室は、実態を捉える「目」と、戦略を実行する「手足」という2つの機能を併せ持つ必要があります。

実態を捉える「目」の機能(データ・現場把握)

CLO室の1つ目の役割は、CLOに代わって物流の実態を捕捉する「目」の機能です。データを継続的に収集・分析し、現場のオペレーション状況を可視化することで、CLOが意思決定する際の判断材料を整えます。輸配送・庫内・在庫・コストといった複数の領域を横断的に把握できる体制が、CLOの経営判断の精度を高めます。

戦略を実行する「手足」の機能(推進・調整)

2つ目は、戦略を実行に移す「手足」の機能です。施策の立案、現場との調整、他部門との連携、効果測定までを実務として推進します。「目」で捉えた実態を、CLOが意思決定し、CLO室が実行する。この役割分担があって初めて、CLOの構想は現場の改革として動き出します。

CLOのタイプ別|CLO室の設計と人材像

CLOは大きく3タイプに分かれ、タイプに応じてCLO室が補完すべき機能が変わります。

Hacobuが調査したCLOの選任状況では、3つのタイプが浮かび上がりました。最多は従来の物流部門トップ型(36.4%)、次いで経営企画など全社横断部門のトップ型、そして主力事業のトップ型(約13%)です。それぞれのCLOが持つ強みと弱みを踏まえ、CLO室で補完すべき機能を整理します。

【タイプ①】物流部門トップ型|経営接続とデータ分析を補完するCLO室

物流部門トップ型のCLOは、現場知見と物流業務の理解で群を抜きます。一方で、従来のミッションが物流コスト削減に偏っていたため、目先のコスト削減に注力しがちで、組織横断や経営アジェンダ化に踏み込みづらい傾向があります。CLO室は、経営層との接続、全社横断の調整、データ分析の3機能を補完する設計が有効です。

役割求められる機能人物像の例
CLO室長経営とのコミュニケーション支援経営企画部門出身で、経営層との調整経験が豊富な人材
改革推進担当現場実務者との連携・施策の実行リード物流部門に在籍し、現場知見とコミュニケーション力を併せ持つ人材
データ分析担当物流の実態把握と改善効果の定量評価データ分析に長けた人材(所属部門は問わない)

【タイプ②】経営企画トップ型|物流専門知識と現場実行力を補完するCLO室

経営企画トップ型のCLOは、全社視点と部門間調整に強みを持ちます。ただし、物流に直接携わっていない場合は、専門知識や現場感覚を補う必要があります。CLO室は、物流専門知識、現場実行力、データ分析の3機能を備えた構成が有効です。

役割求められる機能人物像の例
CLO室長物流専門知識の補完物流部門での経験が豊富で、物流改革の方針策定に携わった人材
改善推進担当現場とのコミュニケーション・施策リード物流部門出身で現場に顔が利き、実務を推進できる人材
データ分析担当物流データの分析と意思決定支援データ分析に長けた人材

【タイプ③】主力事業トップ型|副CLOと他部門連携で支えるCLO室

主力事業トップ型のCLOは、決断力と社内影響力に優れる一方、事業運営との兼務で物流に割ける時間が限られます。CLO室は、日常的な物流統括を担う副CLO的な存在を中心に、戦略立案と他部門連携を加えた構成が有効です。

役割求められる機能人物像の例
CLO室長(副CLO)日常的な物流統括全般主力事業の企画部門や物流部門で、施策の連携・実行を推進できる人材
物流戦略担当物流戦略の立案と改善推進物流部門の経験があり、戦略立案の実績がある人材
他部門連携担当他事業部・本社部門との調整異動経験があり、社内に幅広い人脈を持つ人材

なお、このタイプでもデータに基づく意思決定は欠かせません。必要に応じてデータ分析担当を追加し、CLO室の判断精度を高めましょう。

CLO室を機能させる共通ポイント|「部署」ではなく「機能」で集める

CLO室の成否は、従来の組織にとらわれず、必要な機能を担える人材を組織横断で集められるかで決まります。

ある荷主企業では、物流部門トップがCLOに就任した際に、従来の物流部メンバーだけでCLO室を構成しました。その結果、扱える施策は物流部内のコスト削減にとどまり、本来期待されていた組織横断や経営目線の改革には届きませんでした。一方で、経営企画から1人加えるだけで全社横断の調整が動き出し、改革のスコープが大きく広がるケースも見られます。CLO室に必要なのは「部署の人」ではなく「機能を担える人」です。組織の壁を越えて必要な人材を集めることが、CLO室を機能させるための前提条件となります。

CLO+CLO室で最初に取り組むべき3つのアクション

CLO室の発足後は、100日プラン・パートナー型関係への転換・生産性指標の構築という3つのアクションを起点に動き出しましょう。

① 物流改革の100日プランで早期に実績と信頼を積む

新体制の発足後、まず取り組むべきは100日プランです。短期間で改革の方針を策定し、目に見える施策を打って効果を刈り取ることで、社内の信頼と味方を増やします。最初から中長期の大型プロジェクトに着手するのではなく、まず100日で「この体制は成果を出せる」と社内に示しましょう。短期の成果は、その後の改革モメンタムを大きく左右します。CLOとCLO室で具体的なアクションを検討する際は、CLOに求められる5つのスキルとアクションプランも参考になります。

② 荷主と物流会社の関係を「パートナー型」に転換する

2つ目のアクションは、荷主と物流会社の関係をパートナー型に転換することです。従来は物流会社をコスト管理の対象として位置づけてきましたが、「運べなくなる」「サービス品質を保てなくなる」というリスクが顕在化したいま、関係性の再設計が求められます。荷主と物流会社が一体となって、効率化と生産性向上に取り組む関係を築きましょう。CLO室は、現場の合意形成からKPI共有までを橋渡しする役割を担います。

③ 生産性指標を設定し、改善サイクルを構築する

3つ目は、生産性指標(物流KPI)の設定と改善サイクルの構築です。従来のコスト・品質指標に加え、生産性指標を新たに導入し、荷主と物流会社が共同でモニタリングします。

領域生産性指標の例改善の方向性
輸配送実車率、積載率、車両回転率車両の有効活用度を高め、輸送効率を向上させる
庫内作業1人当たり作業件数、時間当たり処理件数、保管効率倉庫内オペレーションの人時生産性を改善する

指標がうまく改善しない場合は、「なぜ上がらないのか」「何を変えればよいのか」を物流会社と一緒に検討します。会議体を設置して定期的にPDCAを回す仕組みが、パートナー型の関係を定着させる鍵となります。

よくある質問(FAQ)

Q1. CLO室はいつまでに設置すべきですか?

CLO選任の届出と並行して立ち上げるのが望ましいです。2026年5月末の届出と10月末の中長期計画提出を見据えると、CLOが孤立しないよう早期にCLO室の設計に着手するのが現実的です。

Q2. CLO室は何人体制が適切ですか?

最低でも室長+実行担当+データ分析担当の3名規模が目安です。CLOのタイプによって構成は変わりますが、「目」と「手足」の機能を満たせる人数を確保することが重要です。

Q3. CLO室のメンバーは物流部門出身者である必要がありますか?

全員が物流部門出身である必要はありません。CLOのタイプに応じて、経営企画・主力事業部門・データ分析人材など、補完すべき機能を持つメンバーを組織横断で集めましょう。

Q4. CLO室の設置と物流統括管理者の届出に違いはありますか?

はい、両者は別物です。物流統括管理者(CLO)の届出は法定義務ですが、CLO室の設置は法定要件ではなく、CLOが機能を発揮するための任意の組織設計です。

CLO・CLO室の伴走パートナー|Hacobu Strategy

Hacobu Strategyは、CLOの挑戦に伴走する物流DXコンサルティングサービスです。

「法対応に何から手をつけるべきか分からない」「物流コストは高騰しているが根本課題が見えない」「拠点集約・共同配送を進めたいが現実的な進め方がイメージできない」といったCLO・CLO室の典型的な悩みに、戦略構築から実行支援まで一気通貫で対応します。

法対応支援(CLO選任・計画策定・定期報告)、物流管理体制の構築、定性・定量で現状を可視化する物流診断、拠点・輸配送網の再設計、データ活用による輸配送最適化、業務プロセス改革まで幅広くカバー。

ウォルマート・ジャパンで物流責任者を務めた執行役員CSO 佐藤健次をはじめ、戦略・物流・テクノロジーの知見を併せ持つプロ集団が、データを”実行できる戦略”に変える分析力と、改革を”回り続ける仕組み”に繋げる実装力で支援します。

相談内容が固まっていない段階でも歓迎しますので、CLO・CLO室の立ち上げや運営にお悩みの方は、Hacobu Strategyまでお気軽にお問い合わせください。

Hacobu Strategyの資料は以下よりダウンロードいただけます。

まとめ|CLO室の設計が物流改革の成否を分ける

CLOの選任だけでは物流改革は動かず、タイプに応じたCLO室の設計と、発足直後の3つのアクションが成否を分けます。

CLOの選任は各社で進みましたが、それだけでは物流改革は前に進みません。CLOのタイプに応じてCLO室を設計し、従来の組織にとらわれず必要な機能を担える人材を集めることが、改革を動かす起点となります。新体制の発足後は、100日プランで短期の実績を積み、荷主と物流会社のパートナー関係を構築し、生産性指標で改善サイクルを回す。この3つを起点にCLO室を動かしていきましょう。CLO室の設計から物流管理の仕組みづくり、KPIの設定・改善まで一貫した支援が必要な場合は、Hacobu Strategyまでお気軽にご相談ください。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。 >>プロフィールを見る

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