物流BIとは?ダッシュボード構築の注意点と失敗しない進め方を解説
物流部門でBI(Business Intelligence)ツールを作る目的は、きれいなダッシュボードを並べることではありません。荷待ちや配送遅延、庫内の作業負荷、委託先の品質、物流コストなどの情報を、意思決定に使える形で素早く共有し、改善を回すための「道具」を作ることです。
一方で、物流はデータの発生点が多く、例外も多い領域です。指標定義やデータ整備、現場オペレーションの設計を甘く見ると、BIは作ったのに使われないという事態になりがちです。
本記事では、業界を問わず共通するBI構築の注意点に加えて、物流ならではの落とし穴を整理し、最後に失敗しない進め方と支援活用の考え方まで解説します。
なお、物流BI構築を自社だけで進めることに不安がある場合は、ロジスティクス領域に特化したBI構築支援サービスを活用する方法もあります。物流DXパートナーのHacobuが提供する Hacobu Solution Studio では、目的設計から指標定義、データ統合、ダッシュボード構築、運用定着までを一気通貫で支援しており、物流現場の実態を踏まえたBI設計が可能です。
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この記事でわかること
- 物流BIを「使われるダッシュボード」にするための設計の考え方
- 物流データ特有の落とし穴(KPI比較・マスタ整備・例外処理・コスト配賦)
- 失敗しないスモールスタートの進め方と支援活用の選択肢
目次
物流データ分析の前に押さえるべきBI構築の基本
物流に限らず、BIがうまくいかない理由は似ています。まずは土台となる注意点を押さえた上で、物流特有の論点に進むのが近道です。
そもそもBIとは
BI(Business Intelligence)とは、企業が蓄積したデータを収集・統合・分析し、経営や現場の意思決定に活かすための仕組みや手法の総称です。具体的には、売上や在庫、コストなどのデータをダッシュボードやレポートとして可視化し、傾向の把握や改善の判断材料にします。物流領域では、荷待ち時間や配送遅延、拠点ごとの作業負荷といったオペレーションデータをBIで整理することで、属人的な勘や経験に頼らない、データドリブンな改善サイクルを回せるようになります。
物流ダッシュボードの目的を「可視化」ではなく「判断」に落とす
最初にやりがちなのが「とにかくデータを集めて、ダッシュボードを作る」進め方です。しかし、可視化の目的が曖昧だと、見栄えは良くても意思決定につながりません。
おすすめは、「このBIで何を決めたいか」を文章で言える状態にしてから設計に入ることです。例えば次のように、意思決定の形で置くと具体になります。
- どの拠点の荷待ちを優先改善するかを決める
- どの運送会社・レーンを重点的に見直すかを決める
- 波動が来たとき、庫内人員をどこに再配置するかを決める
- 物流コストの増減要因を分解し、次月の打ち手を決める
この段階で「見る指標」はまだ確定していなくて構いません。先に「決めたいこと」を置くことで、必要なデータ、粒度、更新頻度が自然に決まっていきます。
ユーザー(現場・管理者・経営)を分けて設計する
同じ物流データでも、見る人によって必要な情報は違います。1つのダッシュボードで全員の要望を満たそうとすると、項目が増えて読みづらくなり、結果として誰にも使われません。
例えば、次のように利用者を分けて設計するのが現実的です。
- 現場:当日〜翌日の運用判断に必要な情報(アラート、滞留、波動、遅延兆候)
- 物流管理者:週次の改善に必要な情報(原因分類、拠点比較、委託先評価、改善の効果)
- 経営・他部門:月次の意思決定に必要な情報(サービスレベル、コスト、投資判断の材料)
「誰が・いつ・何を決めるために使うか」を先に切り分けてから、画面や指標を設計しましょう。
データ定義を先に揃える(指標の辞書化)
BIの議論が噛み合わない原因の多くは、指標の定義が揃っていないことです。物流では特に、同じ言葉でも会社・部署・現場で意味が変わりやすい傾向があります。
例:
- 「遅延」:予定時刻との差なのか、納品期限との差なのか
- 「荷待ち」:到着〜接車なのか、指示時刻〜接車なのか
- 「欠品」:出荷欠品なのか、入荷の検収差異なのか
対策はシンプルで、指標の辞書(データ定義書)を用意することです。
- 指標名
- 計算式(どの項目からどう計算するか)
- 対象範囲(拠点、便種、荷主、委託先など)
- 例外時の扱い(欠損、キャンセル、手入力など)
定義を文章で固定しておくと、関係者が増えてもブレが起きにくくなり、BIが「議論の共通言語」になります。
データ品質と更新頻度を設計する(“正しい”より“使える”)
完璧なデータを目指すほど、BIは遅くなります。物流改善の現場では、100%正確な翌月集計よりも、一定の精度で早く見える方が意思決定に役立つことが多いです。
更新頻度は、目的とセットで決めるのが基本です。
- 当日運用の判断:日次、できれば時間単位
- 改善の打ち手検討:週次
- 経営・投資判断:月次
さらに、データ品質の課題(欠損、異常値、手入力のばらつきなど)は、最初からゼロにしようとせず、「何が起きたらアラート」「どの程度の欠損なら許容」といった運用ルールでカバーしつつ、段階的に改善するのが現実的です。
運用(更新・権限・改善サイクル)まで作って初めて完成
BIは作って終わりではありません。更新されない、見る人が増えない、改善につながらない、という問題は、運用設計が欠けていると起きやすくなります。
最低限、次の3点は決めておくと安定します。
- 更新責任:どのデータを誰が担保するか
- 権限と公開範囲:見せる範囲と粒度(個社・拠点・委託先など)
- 改善サイクル:週次会議・月次レビューなど、使う場を固定する
「ダッシュボードがある」ではなく、「会議の判断が変わった」まで落とし込むことが重要です。

物流ダッシュボード構築の注意点|”物流データのクセ”を甘く見ない
ここからは物流特有の論点です。普遍的なBIのコツに加えて、物流データの性質を踏まえないと、誤った結論を導く危険があります。
物流KPIの可視化は”比較可能”にするのが難しい
物流は拠点・商材・物量・便種・委託形態で前提が変わります。単純に拠点同士を比較すると、「条件が違うだけなのに悪い評価になる」といった不公平が起きます。
例えば荷待ち時間は、以下の要因で大きく変動します。
- 車両台数と波動(ピーク時間帯)
- 受付ルールや荷主側の運用
- 荷姿・作業難易度
- 荷役設備や動線
対策として、比較軸を明示しましょう。
- セグメント(同じ条件同士で比較)
- 補正(物量や車両台数で補正)
- 目的別(現場改善用の比較と、経営判断用の比較を分ける)
「比較の前提」を設計せずにランキングを出すと、BIが現場不信につながります。
マスタ(拠点・荷主・車両・運送会社・レーン)整備が最優先
物流BIでは、データの統合(結合)がボトルネックになりがちです。拠点名が表記ゆれしている、運送会社が同一企業なのに別IDになっている、レーンの定義が人によって違う、といった状態では、集計の前提が崩れます。
BI構築に着手する前に、まずは次のマスタを整備するのが効果的です。
- 拠点マスタ(正式名称、コード、住所、運用カテゴリなど)
- 委託先マスタ(運送会社、倉庫会社、協力会社のID統一)
- レーンマスタ(発地・着地・便種・契約条件など)
ここを後回しにすると、後からの修正コストが跳ね上がります。
イベント時系列(受付→接車→荷役→出発…)が揃わないと改善できない
物流の改善はプロセス改善です。そのため「いつ・どこで・何が起きたか」の時系列データが揃っていないと、原因が追えません。
例えば「荷待ちが長い」という結果だけ見ても、改善は進みづらいです。
- 受付が詰まっているのか
- 接車待ちなのか
- 荷役開始が遅いのか
- 荷役自体が長いのか
この切り分けができるよう、イベント定義と取得ルール(打刻のタイミング、欠損時の扱い、手入力の基準)を揃えることが重要です。
現場の「例外」を設計に組み込む(返品・緊急・積み替え・待機など)
物流は例外が多い業務です。例外を無理に通常フローに押し込めると、現場から見て「現実を反映していないBI」になります。
おすすめは、例外を分析可能にする設計です。
- 例外分類(返品、緊急出荷、積み替え、欠損、キャンセルなど)
- 例外時のKPI扱い(除外するのか、別集計にするのか)
例外をきちんと扱えるBIは、現場の納得感が高く、改善に使われやすくなります。
コストは“配賦ロジック”で結論が変わる
物流コストをBIで扱うときは特に注意が必要です。配賦ロジック(どう割り当てるか)で結論が変わるため、前提が見えないと社内の対立を生みやすいからです。
例えば輸送費を、
- 重量で配賦するのか
- 容積で配賦するのか
- 伝票数で配賦するのか
- 車建て(便単位)で扱うのか
によって、商品別・得意先別の収益性の見え方が変わります。
重要なのは「唯一の正解」を作ることではなく、
- ロジックを明示する
- 意思決定目的に応じて使い分ける
- 誤解されやすい数値には注釈を付ける
といった設計で、BIを安全に使える状態にすることです。
物流データの統合が難しい(WMS/TMS/配車/受付/請求の分断)
物流データは複数システムに散らばりやすいのが現実です。WMS、TMS、配車、受付、請求などが分かれていると、いきなり全統合を目指すほど難易度が上がります。
対策は段階導入です。
- 最初に“つなぐ範囲”を絞る(例:受付・荷待ち領域から)
- 成果が出たら、次の領域を足していく(例:配車・委託先評価、コスト)
「全部つなげてから使う」より、「使いながらつなげる」の方が成功しやすくなります。
物流BI導入で失敗しない進め方|スモールスタート×現場巻き込みが王道
物流BIは、最初に大きく作ろうとすると要件が膨らみ、データ整備が終わらずに止まりがちです。価値が出る最小単位から始め、運用に乗せながら育てるのが王道です。
最初のユースケースは1〜2個に絞る
例として、以下は成果が出やすいテーマです。
- 荷待ち・荷役のボトルネック可視化と改善
- 委託先評価(遅延、受付遵守、品質など)
- 拠点別の作業負荷の波動把握と人員配置
「これが決められるようになったら成功」というゴールが明確なテーマから着手しましょう。
PoCの評価軸を決める(“見た目”ではなく“改善につながったか”)
PoCでありがちなのが、ダッシュボードの完成度や閲覧数で成功判定してしまうことです。
物流BIの評価は、例えば次のように「改善が回ったか」で置くのが実務的です。
- 週次会議で、原因の切り分けが短時間でできた
- 改善施策が決まり、実行された
- 施策の効果が次週に確認できた
BIは、改善の意思決定を速くするためにあります。
定例の意思決定フローに組み込む(会議体がゴール)
BIが開かれなくなる最大の理由は、「使う場がない」ことです。
- 週次の改善会議
- 月次の委託先レビュー
- 四半期の投資判断
など、既存の会議体のインプットとしてBIを位置づけると、利用が定着しやすくなります。
自社だけで抱えない――要件定義から実装まで外部委託するという選択肢
物流BIの構築を外部に委託する場合、パートナー選びで重要なのは「物流業務の解像度」です。一般的なSIerやBIツールベンダーは可視化技術には強くても、「荷待ちの定義をどう切るか」「拠点間の比較をどう公平にするか」といった物流特有の設計判断まではカバーしきれないことがあります。
その点、自ら物流SaaSを開発・運用している企業であれば、現場オペレーションの実態を踏まえた要件定義が可能です。クラウド物流ソリューション「MOVO」を開発・提供するHacobuは、バース予約・受付・荷待ち計測(MOVO Berth)、配車受発注・実運送体制管理(MOVO Vista)、車両動態管理(MOVO Fleet)などを通じて、多数の物流現場から得たデータ設計・運用ノウハウを蓄積しています。
この「SaaSメーカーとしての実装知」があるからこそ、指標定義の切り方やデータの例外設計、現場が本当に使えるダッシュボードの落とし込みまで、要件定義から実装・運用定着までを一気通貫で委託できます。社内のリソースは改善施策の実行や現場との合意形成に集中し、BI基盤の構築は物流を知り尽くしたプロに任せる。この役割分担が、結果的に「使われるBI」を最短で立ち上げる近道になります。

まとめ|物流BIは“設計”で9割決まる。だからこそ支援活用も選択肢
物流BIは、データ統合や可視化のスキルだけでは成立しません。指標定義、マスタ整備、例外設計、現場運用、会議体への組み込みまで含めて「意思決定の道具」にして初めて価値が出ます。
一方で、物流部門だけで推進すると、要件が膨らんだり、データ整備で止まったりして、長期化しやすいのも事実です。
そこで、ロジスティクス領域のBI構築を支援する Hacobu Solution Studio では、目的設計から指標定義、データ統合、ダッシュボード設計、運用定着までを一気通貫で支援しています。
「まず何から着手すべきか」「最初のユースケースをどう切るか」「データが揃うか」を整理するところから相談できるため、社内の推進負荷を抑えつつ、成果が出る形で立ち上げやすくなります。
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