公開日 2025.02.07
更新日 2025.02.07

生産管理システムとは?ERP・MESとの違いや主な機能、選び方を詳しく解説

近年、製造業のDXにおいて、生産管理システムの導入は一般化しています。本記事では、物流DXパートナーのHacobuが生産管理システムの基本的な概念から、ERPやMESとの違い、主な機能、選定のポイントまでを詳しく解説します。

なお、Hacobuでは物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援する物流DXコンサルティング「Hacobu Strategy」を提供しています。物流業務の改善にお悩みがありましたら、以下をクリックしてご覧ください。

生産管理システムとは?

生産管理システムとは、製造業において、原材料の調達から製品の出荷までの生産プロセス全体を効率的に管理するためのシステムです。生産計画の立案や工程管理、在庫管理、品質管理など、多岐にわたる業務を統合し、生産性を向上させることを目的としています。

生産管理システムと他のシステムとの違い

生産管理システムは、企業が導入する様々なシステムの中で、生産活動に特化したシステムです。他のシステムとの違いを具体的に見ていきましょう。

生産管理システムとERPの違い

ERPは企業全体のリソースを統合的に管理するシステムで、生産管理システムはその中で製造部門に特化しています。

ERPが財務や人事、物流など幅広い業務を対象とする一方、生産管理システムは製造現場の効率化や品質向上を目指します。また、ERPが全社的な在庫状況を把握する役割を果たすのに対し、生産管理システムは原材料の調達から製品完成までを詳細に追跡します。このように、ERPは全社的な最適化を担い、生産管理システムは現場の具体的なプロセスに焦点を当てています。

生産管理システムは、ERPの一部として機能する場合もありますが、近年では、より専門的な機能を求める企業が増え、独立したシステムとして導入されるケースが増えてきています。

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生産管理システムとMESの違い

MES(製造実行システム:Manufacturing Execution Systemの略)は生産現場の作業をリアルタイムで管理するシステムで、生産管理システムとは補完関係にあります。MESは作業指示や進捗管理を即座に行い、生産管理システムは計画的な視点で機能します。

MESと生産管理システムを連携させることで、生産計画から現場実行までを一貫して管理できます。MESが現場での作業を指示する一方、生産管理システムはその進捗を分析し、全体の生産効率を高めます。

生産管理システムの主な機能

生産管理システムは、製造業の生産活動を総合的に支援するため、多岐にわたる機能を備えています。ここでは生産管理システムの一般的な機能について解説します。

生産計画機能

生産計画機能は、受注情報や需要予測に基づいて最適な生産計画を立案する中核的な機能です。販売計画や在庫状況を考慮しながら、製造ラインの稼働率を最大化し、納期遵守を実現する生産スケジュールを作成します。この機能では、生産能力や設備の制約条件を加味した計画立案が可能となり、計画変更に柔軟に対応できるものもあります。

所要量計画機能

所要量計画機能は、生産計画に基づいて必要な原材料や部品の数量と発注タイミングを算出することに利用されるのが一般的な機能です。製品のBOM(構成情報:Bill Of Materialsの略)と在庫データを基に、必要な資材の正確な所要量を計算し、過不足のない調達を支援します。この機能により、在庫の最適化とコスト削減、さらには資材の欠品による生産停止リスクの低減を実現できます。

販売管理機能

販売管理機能では、受注から出荷までの一連のプロセスを一元管理します。顧客からの注文情報を即座に生産計画に反映し、納期回答の精度向上や、受注生産と見込み生産のバランス最適化を実現します。また、出荷実績データの蓄積により、需要予測の精度向上にも貢献するものもあります。

仕入管理機能

仕入管理機能は、原材料や部品の発注から入荷までを管理します。所要量計画と連動して機能するものもあり、適切な発注タイミングを判断し、取引先ごとの納期や最小発注ロットを考慮した発注管理を実現します。また、仕入実績データの分析により、調達コストの削減や取引先評価にも活用できます。

製造管理機能

製造管理機能は、製造現場での作業進捗や実績を把握し、生産活動の効率化を支援します。作業指示の発行から、進捗管理、実績収集まで、製造プロセス全体をカバーする機能を持つことが一般的です。リアルタイムでの進捗状況の可視化により、問題発生時の早期対応や、製造リードタイムの短縮を実現します。

BOM管理機能

BOM管理機能は、製品の構成情報を管理する重要な機能です。完成品を構成する部品や原材料の階層構造を管理し、正確な所要量計算や原価計算の基礎となります。この機能を通じて製品のバリエーション管理や設計変更への対応が効率的にできるものもあります。

予算管理機能

予算管理機能では、生産活動に関わる予算の計画と実績管理を行います。一般的には材料費、労務費、経費などの予算を設定し、実績との差異分析を通じて、コスト管理の精度向上を支援します。また、予実管理データは次期の予算策定にも活用され、より精度の高い経営計画の立案を可能にします。

原価管理機能

原価管理機能は、製品ごとの製造原価を正確に把握し、収益性の向上を支援します。一般的には材料費、労務費、製造経費などの原価要素を製品に割り当て、実際原価の計算と分析を行います。この機能により、製品別の収益性分析や、原価低減活動の効果測定が可能となります。

ロットトレース機能

ロットトレース機能は、一般的に製品や原材料のロット単位での追跡を可能にします。原材料の入荷から製造工程、出荷までの履歴を管理することで、品質問題が発生した際の原因究明や影響範囲の特定を迅速に行うことができます。食品や医薬品などの製造業では、法規制対応の観点からも重要な機能となっています。

生産管理システムを導入するメリット

生産管理システムの導入による主なメリットをご紹介します。

生産効率の向上と納期遵守率の改善

生産管理システムの導入により、製造工程の無駄を最小化し、生産効率を大幅に向上させることができます。システムによる最適な生産計画の立案と、リアルタイムでの進捗管理により、製造リードタイムの短縮が実現します。また、受注情報と生産能力を正確に把握することで、より現実的な納期回答が可能となり、納期遵守率の向上にも直結します。

在庫の最適化によるコスト削減

正確な需要予測と所要量計算に基づく在庫管理により、過剰在庫と欠品リスクを同時に低減できます。特に、季節性の高い製品や、原材料の調達リードタイムが長い製品を扱う企業では、在庫の最適化による効果が顕著に表れます。適正在庫レベルの実現により、倉庫費用の削減、資金繰りの改善、そして在庫の劣化や陳腐化リスクの低減といった多面的なメリットが得られます。

品質管理の強化と製品トレーサビリティの向上

製造工程での品質データをリアルタイムで収集・分析することで、品質管理の精度が向上します。不良品の発生を早期に検知し、原因究明と対策実施までの時間を大幅に短縮できます。また、ロットトレース機能により、万が一の品質問題発生時でも、影響範囲の特定と顧客への適切な対応が迅速に行えます。これは企業の品質保証体制の強化につながり、顧客からの信頼向上にも寄与します。

データに基づくスピーディな経営判断の実現

生産管理システムで収集された各種データは、経営判断の貴重な基礎情報となります。製品別の収益性分析、製造原価の変動要因分析、設備稼働率の推移など、様々な角度からの分析が可能となり、より戦略的な意思決定を支援します。例えば、製品ポートフォリオの最適化や、設備投資の判断において、客観的なデータに基づいた意思決定が可能となります。

属人化の解消による業務の平準化

熟練作業者の経験や勘に依存していた生産計画や在庫管理の業務を、システムによる標準化された手法で実行できるようになります。これにより、属人化に起因する業務品質のばらつきを解消し、安定した操業体制を構築できます。また、ベテラン社員の退職や異動により知識不足となるリスクも軽減され、持続可能な生産体制の確立につながります。さらに、新人教育の効率化や、多能工化の推進にも効果を発揮します。

生産管理システムの導入形態

生産管理システムの導入形態は、クラウド型、オンプレミス型、ハイブリッド型の3つに分類されます。企業の規模や業務特性に応じて、最適な形態を選択しましょう。

クラウド型

クラウド型は、インターネットを通じてサービスを利用する形態です。初期投資を抑えられ、システムの運用管理の負担が少ないのが特徴です。テレワークやグローバル展開への対応も容易です。一方で、インターネット環境への依存度が高く、カスタマイズの自由度は比較的限定的となります。中小規模の製造業との相性が良い導入形態です。

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オンプレミス型

オンプレミス型は、自社内にサーバーを設置してシステムを運用する形態です。システムの細かなカスタマイズが可能で、製造現場の設備との直接的な連携にも適しています。セキュリティレベルも高く保てる一方、初期投資が大きく、運用・保守の専門人員が必要です。大規模製造業や特殊な製造プロセスを持つ企業での採用が一般的です。

ハイブリッド型

ハイブリッド型は、クラウドとオンプレミスの特徴を組み合わせた形態です。製造設備と直接連携する部分はオンプレミスで構築し、販売管理や在庫管理などはクラウドで利用するといった構成が可能です。セキュリティと利便性のバランスを取りやすく、既存システムからの段階的な移行にも適しています。

生産管理システムを導入する際のポイント

生産管理システムの導入は、企業の生産性を大きく左右する重要な決断です。成功させるためには、以下のポイントをしっかりと押さえておくことが重要です。

導入する目的を明確にする

まずはシステム導入の目的を具体的に定義することが大切です。生産性向上、在庫削減、品質管理の強化など、優先度の高い経営課題を明確にし、導入後の定量的な効果測定の基準を事前に設定することが重要です。目的が不明確なまま導入を進めると、システムの機能過多や現場との不適合などの問題が発生するリスクが高まります。

自社の生産形態にマッチしているシステムか

生産形態は、個別受注生産、見込み生産、組立生産、装置産業など、業種によって大きく異なります。選定するシステムが自社の生産形態に適合していることを確認し、必要な機能が標準で備わっているか、カスタマイズが必要な場合のコストや期間も含めて評価することが重要です。

予算や解決したい課題に合った提供形態か

初期投資、運用コスト、システムの拡張性を総合的に検討し、自社に適した提供形態を選択します。クラウド型は初期投資を抑えられる一方、長期的なランニングコストの検討も必要です。また、システムの機能と自社の課題解決に必要な機能のバランスを見極め、過剰な投資を避けることも重要です。

セキュリティ対策が十分か

生産管理システムは企業の機密情報を扱うため、セキュリティ対策は慎重に検討する必要があります。特にクラウド型を選択する場合は、データの保管場所、アクセス制御、暗号化などのセキュリティ機能を確認します。また、システムベンダーのセキュリティに対する考え方や対策状況も重要な評価ポイントとなります。

導入後のサポート体制が十分か

システム導入後の安定稼働を確保するため、ベンダーのサポート体制を事前に確認することが重要です。システムの保守・運用支援、トラブル発生時の対応体制、バージョンアップへの対応方針などを具体的に確認します。また、自社内のシステム管理体制の整備や、ユーザー教育の計画についても検討が必要です。

生産管理だけでなく物流もシステム化を

生産プロセスの効率化により、製品の製造スピードやコスト削減が実現できます。しかし、出荷・輸送プロセスの最適化が不十分な場合、どれだけ高品質な製品を迅速に生産しても、顧客の元にスムーズに届けることができません。

物流のボトルネックは、納期遅延や在庫過多を引き起こし、結果的にビジネスの成長を阻害します。そのため、生産効率の向上と並行して、物流システムへの投資も不可欠です。配送の可視化、在庫の適正管理、需要予測の精度向上など、物流のDX化に取り組むことで、サプライチェーン全体の最適化が実現します。

持続的な競争優位を確立するために、今こそ物流システムの導入・強化に目を向けましょう。

なお、Hacobuでは「運ぶを最適化する」をミッションとして掲げ、物流DXツールMOVO(ムーボ)と、物流DXコンサルティングサービスHacobu Strategy(ハコブ・ストラテジー)を提供しています。

物流現場の課題を解決する物流DXツール「MOVO」の各サービス資料では、導入効果や費用について詳しくご紹介しています。

トラック予約受付サービス(バース予約システム) MOVO Berth

MOVO Berth(ムーボ・バース)は、荷待ち・荷役時間の把握・削減、物流拠点の生産性向上を支援します。

動態管理サービス MOVO Fleet

MOVO Fleet(ムーボ・フリート)は、協力会社も含めて位置情報を一元管理し、取得データの活用で輸配送の課題解決を支援します。

配車受発注・管理サービス MOVO Vista

MOVO Vista(ムーボ・ヴィスタ)は、電話・FAXによるアナログな配車業務をデジタル化し、業務効率化と属人化解消を支援します。

物流DXコンサルティング Hacobu Strategy

Hacobu Strategyは、物流DXの戦略、導入、実行まで一気通貫で支援します。

著者プロフィール / 菅原 利康
株式会社Hacobuが運営するハコブログの編集長。マーケティング支援会社にて従事していた際、自身の長時間労働と妊娠中の実姉の過労死を経験。非生産的で不毛な働き方を撲滅すべく、とあるフレキシブルオフィスに転職し、ワークプレイスやハイブリッドワークがもたらす労働生産性の向上を啓蒙。一部の業種・職種で労働生産性の向上に貢献するも、物流領域においてトラックドライバーの荷待ち問題や庫内作業者の生産性向上に課題があることを痛感し、物流領域における生産性向上に貢献すべく株式会社Hacobuに参画。

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