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執筆者:菅原 利康

小売り世界最大手企業の 元グローバル物流トップが描く20XX 年のロジスティクス

小売り世界最大手の某米国企業は、自前の物流インフラを構築する「物流企業」でもある。物流センターではロボットが作業するだけでなく、ドローンによる配送も展開し、すでに全米の1000都市超で即時配送のサービスを行う。2026年までには全米の店舗の65%に自動配送システムを導入する予定だ。


『Logistics is Mathematics(物流は数学)』――。同社では、物流をそう定義しているという。経験や勘に頼るのではなく、数字やデータを起点にするということだ。この考えを実践し、同社のグローバルチームで物流のオートメーション化を推進した人物がラメッシュ・チッカラ氏だ。

物流の効率化を支援するHacobuは、2023年6月にラメッシュ氏を招き、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの田岡佑一郎氏と共に物流の未来とその対策についてオンラインセミナーを開催した。本記事は当日の講演内容を基に、世界的企業で物流トップを務めた人物がいま、どんな物流の未来を描いているかについて紹介する。

2024年問題」を目前に控え、政府が策定した「物流革新に向けた政策パッケージ」によって緊急に取り組むべき対策が明らかになった。
しかし「2024年問題」は、乗り越えれば終わる一過性の課題ではない。社会情勢や技術革新による変化を見据えながら、各社がそれぞれに持続的な戦略を立てる必要がある。
同社を世界的な「物流企業」に育てたラメッシュ氏が描く未来予想図は、多くの荷主・物流事業者にとって、戦略立案の道しるべになるはずだ。

本記事は以下から資料として取得することも可能です。

ドライバー不足の日米比較

ワークライフバランスを重視する若年層

国土交通省の資料によると、日本のトラック業界で働く労働者の約45%は40~54歳と中年層の割合が高く、29歳以下は約10%と全産業に比べ、極めて低い状況にある。
折からの労働者不足に2024年問題が重なることで、2024年は14%(トラックドライバー14万人相当)、2030年度には34%(トラックドライバー34万人相当)が不足し、現状の輸送力を維持できなくなるという推計もある。


「米国でもトラックドライバー不足は深刻です」――。
そう語るのは、2006年から2019年まで小売り世界最大手の米国企業でシニア・ヴァイス・プレジデントを務めたラメッシュ・チッカラ氏だ。インターナショナルロジスティクスチームのリーダーとして、同社の急成長をテクノロジーとロジスティクスの両面から支えた立役者だ。

ラメッシュ氏によると、米国もトラックドライバー不足は課題となっており、その一番の理由は「ワークライフバランス」を重視する労働意識の変化にあるという。
「米国でのトラックドライバーの収入は決して低くなく、年収10万ドルを得ることも不可能ではありません。しかし、国土の広い米国は長距離の運転が必要で、何日も家を離れることが頻繁にあります。


若い世代を中心に長期間、家族と離れ離れになる生活を嫌う人が増え、敬遠される職業になりつつあります」(ラメッシュ氏)。
日本も若年層を中心にワークライフバランスを重視する傾向はあり、その点は米国と同様といえるかもしれない。しかし、日本でのトラックドライバーの収入は相対的に低く、付帯業務や多重下請け構造といった問題を抱える。その分、米国よりもドライバー不足は深刻な課題といえそうだ。

2006年から2019年まで米国小売り最大手企業のITやグローバルサプライチェーンなどを管轄。現在は、米国内の小売業の独立取締役や監査委員会を歴任。

ラメッシュ・チッカラ氏

自動運転トラックとドライバーの未来

20XX年、“運転手”がいなくなる?

ドライバー不足の解決策の1つとして、日米ともに研究が進むのが自動運転車だ。自動運転車の普及は、ドライバーの役割を大きく変える可能性がある。将来的にはドライバーという職業がなくなる可能性もあるのだろうか?


ラメッシュ氏は「米国では3~5年以内に自動運転トラックが公道を走るようになると思います。それは主に長距離輸送から導入が進み、最終的に短距離やラストワンマイルにも広がっていくでしょう」と予想したうえで、「自動運転トラックが完全に機能する10年後、20年後にはドライバーの仕事は、なくなっている可能性もあります」と話す。

その代わりに登場するのが、自動運転トラックの運行を管理する役割だ。遠隔地のコントロールセンターで監視しながら、円滑な物流を実現する。「米国には、すでにそうしたコントロールタワーの機能を自前で保有している企業もあります」と補足するのは、Hacobu執行役員CSOの佐藤健次だ。佐藤は、2012年から2019年まで米小売り最大手企業の日本法人の物流責任者として、ラメッシュ氏をはじめ、各国のリーダーと連携しながら物流革新を推進してきた。

Hacobu
執行役員CSO 佐藤 健次

「こうした施設では物流データを一元管理し、全米中の配送状況をリアルタイムで監視し、ドライバーに指示しながら、最適な物流を実現しています」と佐藤は話す。自動運転トラックの普及とともにこうした“制御棟”の役割はますます高まっていくだろう。しかし佐藤はこうも語る。「遠い未来の話でいえば、ドライバー自体がいなくなる可能性もあるかもしれません。しかし顧客接点でいえば、やはり人間は必要です。その意味で、制御棟で自動運転トラックを管理するようになっても、ドライバーは必要と考えています」

一方、EYストラテジー・アンド・コンサルティングで運輸・物流業界を担当する田岡祐一郎氏は、「自動運転トラックの実現は、日本においてもドライバーの役割を劇的に変化させるでしょう」と指摘する。「輸送中に運転手が製造や梱包の最終段階を担うようになるかもしれません。日本におけるトラックドライバーのイメージが大きく変わることで、ドライバーになりたいという意欲を持つ人が増える可能性もあると期待しています」と未来を展望する。

EYストラテジー・アンド・
コンサルティング
公共・社会インフラセクター
アソシエートパートナー 田岡 佑一郎氏

物流倉庫の将来像

単独ではなく「連携」がキーワード

米国にはディストリビューションセンター(DC)の自動化を推進し、ドローンによる配送を実施している企業もあり、こうした流れは、日本にも広がりつつある。これからのDCの従業員の役割や輸送手段の選択肢について、ラメッシュ氏はどのように考えているだろうか。


「全ての作業をロボットが行うDCでの従業員の役割は、より運用管理に焦点を当てたものになるでしょう。もはや倉庫にいる必要はなく、遠隔地の制御棟でロボットをコントロールしたり、スケジュールを管理したりする作業がメインになります。データ駆動型の高度な技術を要する業務になるかもしれません」(ラメッシュ氏)。


ドローンによる配送も次の3~5年でさらに普及し、欠かせない輸送手段になるとラメッシュ氏は考える。自動運転トラックと自動化されたDC、そしてドローンの組み合わせが近い将来、米国の物流の主流になるのかもしれない。


日本でもDCの自動化は進んでいる。田岡氏は「DCの自動化によって制御棟での管理業務が増えます。遠隔によるモニタリングや制御の技術が、労働力不足の解決策の1つになるでしょう」と指摘する。とはいえ、それには莫大なコストが必要になる。そこで佐藤は、「日本は1社単独ではなく、複数の企業が連携して物流の最適化を目指すのが現実的」と話す。

■物流DXツール MOVO(ムーボ)

経済産業省と国土交通省が進める次世代物流システム「フィジカルインターネット」は、日本企業が目指すべき物流の仕組みといえるかもしれない。これは倉庫やトラックなどを企業間でシェアすることで、持続的な物流を構築する取り組みだ。規格化や標準化、情報の電子化が必要とされ、ドローンなど自動化技術も組み合わせて荷物がスムーズに行き交う物流網の構築を目指す。この取り組みでもデータの活用の存在が重要な役割を果たす。


ラメッシュ氏もこう強調する。「製品が顧客の元へ移動する際のエコシステム内では、製品と一緒にデータが移動し、それがリアルタイムで共有される必要があります。しかし米国でも有効活用されているデータはまだ限られているため、より効率的な方法でデータを採取し、エコシステム内で連携することが今後の課題となります。自社内だけでなく、ホリゾンタル(水平)な視点でデータを管理することが重要です。」

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「政策パッケージ」のポイント

荷主・物流事業者の4つの課題

ラメッシュ氏が見据える物流の未来は、Hacobuが掲げる「データ・ドリブン・ロジスティクス®」と極めて親和性が高いといえそうだ。そして日本政府も持続可能な物流の構築に向け、データ活用の重要性を明確に打ち出してきた。


それが2023年6月2日に取りまとめられた「物流革新に向けた政策パッケージ」だ。
その中では、効率的な物流を実現するためには、発荷主事業者、物流事業者(運送・倉庫等)、着荷主事業者が連携・協働して、現状の改善を図るための取り組みを実施することが必要であると明記されている。この「連携・協働」の実現にはデータの活用が不可欠となる。


そして、「政策パッケージ」では、荷主事業者・物流事業者の取り組みとして、主に次の4つを挙げる。

  • 荷待ち時間・荷役作業等にかかる時間の把握
  • 物流管理統括者の選定
  • 運送契約の書面化
  • 下請取引の適正化

「荷待ち時間・荷役作業等にかかる時間の把握」に関しては、物流センターでの待機時間を最小化する必要があり、例えばトラック予約受付システムの導入などが効果を発揮するだろう。


Hacobuのトラック予約受付システム MOVO Berth なら入場時間の事前予約システムと入退場受付システムによって、待機時間を解消し、物流拠点での作業の効率化を支援する。これにより集荷便がいつ到着するか事前に把握できるため、計画的な業務運営が可能になる。


また、今回の政策パッケージでは、荷主・元請の監視強化などを含む体制の強化が盛り込まれている。MOVO Berthを導入することで、単に待機時間の解消を支援するだけでなく、コンプライアンス対応としても機能することが期待できる。

■トラック予約受付サービス MOVO Berth

「物流管理統括者の選定」には、物流DXコンサルティングの Hacobu Strategy が対応する。企業の垣根を超えた物流改革のための戦略策定からテクノロジーを活用した実装まで、一気通貫でソリューションを提供してくれる。

■Hacobu Strategyの領域

「運送契約の書面化」の対応をする場合、これまで口頭での伝達などで内容が不明瞭だった契約を付帯業務、運賃等が明確に記載された運送契約に変更する必要がある。さらにドライバーの勤務状況を正しく把握し、契約にない付帯業務などをやらされていないも把握する必要がある。
それには動態管理サービス MOVO Fleet や配送案件管理サービス MOVO Vista が効果的だ。MOVO Fleetは、5秒に1回のリアルタイム位置情報取得により、精緻に車両の状況を把握でき、MOVO Vistaは配送案件の受発注や管理をデジタルで可能にする。


「下請取引の適正化」は、主に運送会社の多重下請け構造の解消を指すが、これもMOVO Vistaの導入によって解決の糸口が見つかるはずだ。「『政策パッケージ』への対応は1社単独で対応できる話ではなく、荷主と物流事業者が連携して取り組む必要があります。業界を超えた形での連携が問われており、すでに複数の業界から当社に相談が寄せられています」と佐藤は打ち明ける。

明日から実践できる物流DX

現状を把握し、愚直に取り組む

データを起点とした物流「データ・ドリブン・ロジスティクス」の重要性が高まる中で、荷主・物流事業者が明日からやるべきこととして、佐藤はこんなアドバイスをする。
「まずは自社の物流の現状を把握することがスタートです。それによって具体的な課題が見えてきます。課題解決の優先順位をつけ、あとは解決に向け愚直に取り組み続けること。これが『2024年問題』だけでなく、その先の物流課題の解決にもつながっていくのです」。先述した小売り世界最大手の米国企業も小さな改善策の一つひとつに愚直に取り組み、継続してきたからこそ、巨大な物流網を自前で構築するまでになったのだ。


日本の物流課題は、非常に複雑で構造的な問題であり、テクノロジーやシステムの導入で、たちどころに解決するわけでもない。一つひとつの改善策を愚直に継続することが欠かせないのだ。「政策パッケージ」で、荷主事業者・物流事業者が取り組むべき喫緊の課題は明らかになった。そしてHacobuのMOVOシリーズやコンサルティングは、各社の愚直な取り組みを強力にサポートしてくれる。荷主事業者・物流事業者が明日からやるべきことは、もう明らかなはずだ。

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著者プロフィール / 菅原 利康

株式会社Hacobuのマーケティング担当

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