INTERVIEW
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執筆者:濱﨑 惟

Hacobuが資金調達で成し遂げたい大義【Hacobu CFO濱﨑 惟】

物流「2024年問題」が目前に迫っています。企業の対策が待ったなしの状況下で、Hacobuのビジョンである「持続可能な物流インフラを創る」を実現するために、2023年4月および7月に、合計18億円の資金調達を行いました。

Hacobuのお客様である荷主や物流企業の課題解決と、サプライチェーンにおける輸配送の動きの可視化、その先にあるData Driven Logisticsの実現に向けて取り組みを加速するための一歩を踏み出しました。

物流領域で私たちが成し遂げたい大義とは一体何か、そして資金調達環境が悪化し“冬の時代”と言われる中、どのような点を投資家の方々ご評価いただけたのか、Hacobu CFOの濱﨑 惟にインタビューを実施しました。

荷主・物流企業のサプライチェーン最適化を目指して

───資金調達を行った背景について教えてください。

トラック予約受付サービス「MOVO Berth」のユーザー層が安定的に拡がり、業界内では圧倒的な認知を取れてきていること、また動態管理サービス「MOVO Fleet」、配送案件管理サービス「MOVO Vista」のデータ可視化機能が充実してきたこと、大口ユーザーの層が厚くなってきたことなど、荷主・物流企業双方でエンタープライズを本格的に攻めていくため、営業・開発双方でアクセルを踏んでいきたいと考えたことが資金調達の背景にあります。

───資金調達の全体像を教えてください。

環境としては、2022年内にはクローズさせたいという思いがありましたが、2023年にずれ込んでしまいました。前回資金調達が2021年4月で、2022年から資金調達環境が冷え込み、市場のマルチプルが大よそ半分になった影響もありました。

エクイティ(既存投資家3社、新規投資家4社)およびデット(金融機関2社)を組み合わせた形で、合計18億円の調達を行いました。またエクイティ投資家については、従前のファイナンス同様、事業会社とベンチャーキャピタルの両方から支援をいただくことができました。

事業規模が相応に成長していたこと、当社の成長性を評価いただけたこと、事業会社とのシナジー効果に納得いただけたことから、想定内の評価額で資金調達を実現できたと考えています。

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MOVOの事業成長と物流DXコンサルティングサービスのユニーク性が高く評価された

───投資家からどのような点を評価いただきましたか。

今回のラウンドの検討は2022年の夏頃に開始し、秋頃から本格的に推進しました。前回(2021年)の資金調達以降、トラック予約受付サービス「MOVO Berth」においてUI・UXの改良が順調に進み、ユーザー基盤が安定的に拡大してきたことや、動態管理サービス「MOVO Fleet」において、特に輸配送データの可視化を支える機能に対して複数のお客様から高い評価がいただけていたこと等から、今後数年の継続的な成長に関して、自信を持てる状態を作ることができていました。

加えて、2020年の初リリース後、試行錯誤を続けてきた配送案件管理サービス「MOVO Vista」の新たなPMF仮説が見えつつあったこと、物流DXコンサルティング「Hacobu Strategy」が経営戦略×物流現場×データのいずれにも知見を持つユニークなサービスとして、大手企業(例:キリングループ)から地方公共団体(例:秋田県)まで幅広いお客様に価値を感じていただけていたことなど、成長スピードを加速させる二の矢、三の矢のシナリオの説得材料が揃ってきていました。

2021年末以降、資金調達環境が冷え込んだ影響で、投資家のマルチプルに関する見方は前回よりも厳しいものとなっていましたが、上記の様な実績や今後の成長性に関する評価、2022年12月にはMOVO Berthが国内のドライバーの2人に1人が使うサービスに成長したことなども後押しになり、結果的には満足のいく形でクローズすることができました。

また、2023年2月に公表したBIPROGYとの資本業務提携に関しても、4月のエクイティクローズまでの間にフォローいただく投資家の皆様にとってはポジティブな評価をいただけたものと思います。

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Hacobuならではの強みを武器に物流領域の課題解決を目指す

物流DX領域でHorizontalな拡がり

Hacobuは創業以来、企業間物流の最適化を一貫して目指してきました。そのため、「物流業界向けのSaaS企業」=「Vertical SaaS」である、という評価をいただく事も多いですが、「半分正しいが、半分そうでもない」という感覚を持っています。

なぜなら、荷主(製造業・卸売業・小売業など)と物流事業者の双方が物流最適化のステークホルダーであり、「物流DX」の領域は「物流業界」に留まらないHorizontalな市場の拡がりを持っていると言えます。

2023年6月2日に公表された「物流革新に向けた政策パッケージ」では、物流事業者に加えて荷主が物流最適化に向けた役割を担う事が明示されたことや、当社の現在の売上も荷主向け、物流事業者向けのどちらかに偏る事はなく、双方からバランスよく収益あげる事業構造となっていることなども、これを裏付けていると言えます。

MOVOネットワークの拡大に向けたストーリー

MOVOは輸配送に関わる課題をワンストップで解決するクラウド型物流ソリューションであり、共通認証を通じて、1つのIDを使って様々な機能を利用できるサービスプラットフォームですが、その中で主にBerth、Fleet、Vistaという3つのサービスを提供し、それぞれ物流拠点の入出荷管理、車両の動態管理、配送案件管理という形で、物流現場の異なるシーンにおける課題解決(可視化・効率化)を担っています。

メリット-お客様の社内で、様々な方に興味を持ってもらえるフックが多い
-クロスセルによる収益拡大の見込みがある
-将来的にサービス間のデータ連携を進めることにより、更なる価値が生み出せる可能性がある(一部は既に実現)
デメリット  -(特に物流領域の知見がない人にとって)何のサービスか分かりにくい
-営業やカスタマーサクセス、開発のリソースが分散する恐れがある

大前提として、Berth、Fleet、Vistaそれぞれのターゲットと訴求価値を丁寧に説明し、個別サービスでも現場業務の効率化と可視化を通じた最適化の推進という目的は果たせることを説明しました。それぞれが拡大することによって、MOVOネットワークが拡大し、様々なステークホルダーが繋がっている状態をまず作る、という段階に進めるかどうかがポイントになるためです。

加えて、現場で営業のリソースが分散しないための工夫を必要に応じて説明していきました。例えば、それぞれのプロダクトに詳しいメンバーを育成し、必要に応じて商談サポートに入ったり社内ナレッジを充実化させることで、新しく入ったセールスメンバーでも、お客様に対して適切な提案ができる工夫を行っています。3つのサービスがカバーする工程は前後で繋がっているため、個別サービスの提案だとしても、幅広い業務範囲をセールスが理解していることで提案の深みが出るという効果もあります。

Hacobu Strategyの存在も多くの投資家からポジティブに受け取っていただきました。基本的には、独自のコンサルティングサービスとして、MOVO活用を必ずしも前提としない中立的な立場でお客様に関与し、守秘義務を負う中での活動という前提ではありますが、コンサルティングが接点となって大手企業のマネジメント層との関係性が深まること、結果的にMOVOの活用に繋がる場面もあることは評価いただけました。

サービス間のデータ連携が今以上に進み、1つのサービスプラットフォームとして機能している姿のインパクトは比較的分かりやすいのですが、そこに至る道程、特に効率的に収益を伸ばしながらネットワークを拡大できるかどうかについては、今回の資金調達で最も説明・議論に時間を使ったポイントのように感じます。

MOVOの収益の安定性

従前より公表している通り、MOVO Berthの継続率は安定して99%(月次)を超えていますが、MOVOシリーズ全体で見た継続率も遜色ない水準となっています。効果を実感いただいたお客様から、MOVO Berthを複数の物流拠点に横展開いただける事例も多く、アップセルの強さという形で数値として表れてきます。これを支えるカスタマーサクセスのナレッジの強さ・オンボーディングの品質と、カスタマーサクセス・営業が連携して既存顧客に提案する体制の強さについては、多くの投資家に、比較的速やかにご理解をいただけました。

Data Driven Logisticsの実現を支えられる技術基盤の強さ

当社は従前から公表している通り、2019年~2020年にかけて、全サービスの作り直し、フルリプレイスを行っています。当時はData Driven Logisticsという言葉はありませんでしたが、当社が目指す物流ビッグデータを活用した物流領域の最適化のためには、MOVO上で異なるサービスを展開したとしても、裏側で重要なマスタデータやトランザクションデータが統一的な基盤の上で動いている状態が必須であると考え、実行に踏み切りました。

フルリプレイスは苦しい道のりでしたが、これをやり切ったことによって、「プラットフォームと名乗っているが、裏側はバラバラ・ぐちゃぐちゃ」「UIがバラバラで、サービス連携といいつつ現場の使い勝手が悪い」という状態に陥る事を回避し、名実ともに物流ビッグデータ活用の基盤として活用いただける実態を作り上げることができました。

また、技術スタックを当時の最新技術で揃えたことで、サービスの開発効率が高まったことに加えて、Berth、Fleet、Vistaといった異なるサービスでも共通の技術を利用していることから、技術的な知見に関して社内でタコ壺化が起こり生産性が下がるリスクを最小化することもできました。

<参考記事>

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今後の展望

今後は、5月と7月のリリースで公表している通り、今回の調達資金を主に以下の3つの領域に投入し、成長加速を実現していきます。

  • ドライバーにデータとデジタルの恩恵を。スマホアプリ「MOVO Driver」開発
  • 企業との連携強化。データテクノロジーへの投資を加速
  • 社会への「データドリブン•ロジスティクス」の啓蒙。MOVOネットワークの拡大

1つ目のスマホアプリ「MOVO Driver」で目指すドライバーネットワークのデジタル化は、中長期的に当社が社会のインフラとして受け入れられ、物流ビッグデータの蓄積と活用を推進する上で、重要な役割を果たします。これらの取り組みを通じて、物流領域における課題解決のプラットフォームを運営するリーディングカンパニーとなることを目指します。

2つ目の企業との連携強化・データテクノロジーへの投資、3つ目の「データドリブン•ロジスティクス」の啓蒙とMOVOネットワークの拡大についても継続して取り組んでいきます。

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Hacobu Strategyは、皆さまの改革チームの主体性を尊重し、稼働工数を減らすことで費用を抑えながら支援するコンサルティング集団です。皆さまのあらゆる物流のお悩みをまずは受け止め、戦略・戦術の両面から最適解を共に探します。

*1. 出典:デロイトトーマツミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2022年度版】』

著者プロフィール / 濱﨑 惟

濱﨑 惟

株式会社Hacobu 取締役 執行役員CFO
2008年東京大学法学部卒業、2013年IE Business School (International MBA)卒業。野村證券にて、個人向け営業を担当後、グループ財務部門にて連結決算システム導入、グループ組織再編等のプロジェクトに従事。欧州留学を経て、2014年よりA.T.カーニー東京オフィスにて、主に消費財・小売のクライアントに対し、海外進出戦略立案、マーケティングマネジメント、新規事業、中計策定等のプロジェクトに参画。2016年Hacobuに参画。

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