【元安全責任者監修】フォークリフトのヒヤリハット事例集|活用方法や書き方、事故を削減する安全対策法まで
「現場からヒヤリハットの報告があがってこない」「他社のヒヤリハット事例を知り、自社での事故対策に活用したい」。こうした不安を抱える物流担当者は少なくありません。
厚生労働省の労働災害統計によると、2023年のフォークリフトに起因する死傷事故は1,989件発生しています。そのうち、死亡事故は22件確認されています。これは、フォークリフトを使用する事業所にとって決して他人事ではない数字です。
参照元:フォークリフトに起因する労働災害の発生状況(厚生労働省労働災害統計より)|一般社団法人日本産業車両協会
重大事故を未然に防ぐには、ヒヤリハットを「なんとなく怖かった出来事」で終わらせず、組織の資産として活用する仕組みが必要です。
本記事では、フォークリフトのヒヤリハット事例集を軸に、事例の活用方法、報告書の書き方、事故を防ぐ安全対策法までを解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、現場の危険を早期に発見し、重大事故を未然に防ぐ体制の構築を実現してください。
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フォークリフトのヒヤリハットを放置できない理由
本章では、フォークリフトのヒヤリハットを放置できない理由について、以下の2つのポイントで解説します。
- 報告にあがらない「隠れたヒヤリハット」の存在
- 労働基準監督署から是正勧告や指導を受けるリスク
報告にあがらない「隠れたヒヤリハット」の存在
ヒヤリハットが報告される仕組みが、適切に構築されていない現場も多いのではないでしょうか。その場合、実際に報告されるヒヤリハットは、発生している事象のごく一部にすぎないと思うべきです。
筆者がいた現場でも、ヒヤリハット報告は形骸化していました。報告をあげると咎められるような雰囲気があり、「自分のミスを報告し、反省するもの」という扱いになっていたからです。報告内容によっては、報告者が管理者から強い叱責を受けるシーンもありました。
もちろん、自分の行動を振り返るという側面自体は間違っていません。しかしヒヤリハット報告の本来の目的は、同様のヒヤリハットの再発を予防し、さらなる事故が発生しないよう対策につなげることです。前向きに活用する仕組みがなければ、ヒヤリハット報告は後ろ向きな行動にとどまってしまい、形骸化します。
ただ、そのままでは重大事故が発生するリスクが高まります。労働災害の発生比率を示す「ハインリッヒの法則」では、1件の重大事故の背景に29件の軽微な事故、300件のヒヤリハットが存在するとされています。

すなわち、ヒヤリハットの発生を防ぐことが、その先にある重大事故の防止につながるのです。
ハインリッヒの法則の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方は併せてご確認ください。
ハインリッヒの法則とは?1:29:300の意味と倉庫の安全改善への活かし方を解説
ハインリッ…
2026.09.08
労働基準監督署から是正勧告や指導を受けるリスク
労働基準監督署は、労働災害が発生した際の調査や定期的な監督を通じて、事業場の安全管理体制を確認しています。ヒヤリハットの記録自体は法的義務ではなく、是正勧告の直接的な対象とはなりません。ただ、その先にある労災事故などが発生した際、法違反などが発覚すれば是正勧告や使用停止命令の対象となる可能性があります。
重大事故が起きたあとの調査では、「過去にも同様の兆候があったのに放置していた」という点が問われます。是正勧告への対応が不十分な場合、書類送検や企業名の公表に至るケースもあり、取引先や求職者からの信頼低下にもつながりかねません。
ヒヤリハットへの対応は、労働者を守るだけでなく、企業自身を守るための取り組みでもあります。
次章では、「実際にフォークリフトの現場ではどのようなヒヤリハットが起きているのか」という疑問にお答えします。
【筆者経験談あり】フォークリフトのヒヤリハット事例集
本章では、フォークリフトのヒヤリハット事例として、以下の5つをご紹介します。
- 清掃中にパレットの不意な動きで足を挟まれそうになった
- 合図が届かず高所の作業場から転落しそうになった
- 無理な姿勢での操作でマストに首を挟まれそうになった
- 思い込みによる積載超過でトラック天井に接触しそうになった
- 焦りによる速度超過で旋回し荷崩れしそうになった
清掃中にパレットの不意な動きで足を挟まれそうになった

製品倉庫内を清掃していた作業員のそばで、フォークリフトの運転手がパレットにフォークの爪を差し込んだところ、パレットが前方に動き、作業員が足を挟まれそうになった事例です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 清掃作業員がフォークリフトの近くにいることに気づかないまま、運転手がパレットにフォークを差し込み、パレットが前方に動いた |
| 原因 | ・作業員が清掃に集中し接近に気づかなかったこと ・運転手が声掛けをしなかったこと |
参照:職場のあんぜんサイト ヒヤリ・ハット事例(厚生労働省)
合図が届かず高所の作業場から転落しそうになった

高さ2.5mの作業場でパレットへの積み下ろし作業を終えたあと、フォークリフトの運転手が「バックする」と声を掛けたものの、高所で作業していた作業者に聞こえておらず、転落しそうになった事例です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 2.5mの高所作業場でのパレット荷役後、運転手がバックする旨を声掛けしたうえで後退した |
| 原因 | 声掛け(合図)が相手に届いたかを確認しないまま操作したこと |
参照:職場のあんぜんサイト ヒヤリ・ハット事例(厚生労働省)
無理な姿勢での操作でマストに首を挟まれそうになった

マストを前傾させて高さ5mの荷を受けたあと、荷の状態を確認しようと運転手が窓枠から身を乗り出して首を出したところ、膝がチルトレバーに触れてマストが動き、窓枠との間に首を挟まれそうになった事例です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 前傾させたマストで5m上の荷を受けたあと、運転手が窓枠から身を乗り出して荷の状態を確認しようとした際、膝で誤ってチルトレバーに触れてしまい挟まれそうになった |
| 原因 | ・無理な姿勢を取ったこと ・危険な場所に身を乗り出したこと |
参照:職場のあんぜんサイト ヒヤリ・ハット事例(厚生労働省)
思い込みによる積載超過でトラック天井に接触しそうになった
トラックのウイングを開き、フォークリフトで荷物が高く積まれたパレットを積み込もうとした際に発生したヒヤリハット事例です。
フォークリフト運転手が、荷台の上部よりは低いだろうと思い込み、高さの確認を怠りました。実際には荷が荷台上部より高く積まれており、そのまま進めば接触する状態でしたが、誘導員が危険に気づき停止を指示したため、事故には至りませんでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | フォークリフトで、高く積まれたパレット荷物を積み込もうとした |
| 原因 | 荷台の上部より低いだろうという思い込みで、高さの確認を怠ったこと |
焦りによる速度超過で旋回し荷崩れしそうになった
構内でフォークリフトによりパレットに載せた貨物を移動させていた際、速度を十分に落とさないまま旋回したため荷が傾き、荷崩れを起こしそうになった事例です。荷崩れの直前で持ちこたえたため、事故にはつながりませんでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 構内でパレット貨物を移動中、十分に減速しないまま旋回し、荷が傾いた |
| 原因 | ・焦りによる速度超過 |
| ・運転手の操作の未熟さ |
こうしたヒヤリハットの背景には、組織的な安全管理体制の不備が潜んでいるケースも少なくありません。自社だけで振り返ると、原因や対策が属人的な視点に偏りがちです。第三者目線での意見を取り入れながら、体制を再構築するのも有効な手段です。
自社の安全対策を根本から見直したい方は、「Hacobu Strategy」にご相談ください。物流改善のプロが、データを元に貴社の課題解決をサポートします。
詳しくは以下より概要資料をダウンロードしてご覧ください。
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次章では、「これらの事例を、どのように現場の安全対策に活かせるのか」という疑問にお答えします。
ヒヤリハット事例を現場の安全対策に活かす方法
本章では、ヒヤリハット事例を現場の安全対策に活かす方法について、以下の3つのポイントで解説します。
- 危険予知(KY)活動の教材として活用する
- 報告者・安全担当を交えて原因を分析し対策を講じる
- ヒヤリハット報告をあげやすい環境を整備する
危険予知(KY)活動の教材として活用する
ヒヤリハット事例は、危険予知(KY)活動の教材として、そのまま活用できます。
【危険予知(KY)活動とは】
作業前に潜む危険を洗い出し、対策を話し合います。そして、現場として具体的な対策や、行動目標や指差呼称項目を設定し、実行していくプロセスのことです。
抽象的な注意喚起よりも、自社や同業種で実際に起きたヒヤリハットを題材にするほうが、作業者は「自分にも起こり得る」と捉えやすくなります。事例の状況を提示し、「この場面で何が危険か」「自分ならどう防ぐか」を話し合うことで、危険感受性が高まります。
事例集は、作って終わりにするのではなく、KY活動の教材として繰り返し使うことで初めて資産になります。
報告者・安全担当を交えて原因を分析し対策を講じる
ヒヤリハットが発生した際は、報告者一人に対応を任せず、安全担当を交えて組織的に原因を分析することが欠かせません。
報告者と安全衛生担当者が状況を確認し、以下のような原因を多角的に洗い出します。
- 作業環境
- 設備
- 作業方法
- 自分自身の問題 など
そのうえで具体的な再発防止策を立案し、現場全員に共有する仕組みをつくることで、一つのヒヤリハットが組織全体の学びに変わります。
月次の安全衛生委員会や、社内の安全パトロールといった定例の場を設けて仕組み化するのも有効です。ヒヤリハットへの対応を個人の反省で終わらせず、組織のPDCAに組み込む視点が求められます。
ヒヤリハット報告をあげやすい環境を整備する
ヒヤリハット報告が活性化するために、報告があがる仕組みをつくることを心掛けましょう。
具体的には、以下のような取り組みが有効です。
- 朝礼や終礼でヒヤリハット報告を書く時間を設ける
- 管理者やベテラン従業員が率先して報告をあげる姿を見せる
- 報告をあげた人を称賛する
報告をあげやすい環境を整えるには、現場全体、特に管理者の意識を変えることが重要です。
ヒヤリハット報告は、本来、現場の安全を守るための資産です。しかし「自分のミスをさらすもの」という後ろ向きなイメージが定着していると、報告はあがってきません。報告することは罰ではなく、自分や仲間が気持ちよく働くための行動だという認識を、現場全体で共有する必要があります。
次章では、ヒヤリハット報告書の書き方の一例をご紹介します。
ヒヤリハット報告書の書き方
ヒヤリハット報告書は、決まった書式に沿って項目を埋めるだけで、状況の整理から対策の検討まで進められる仕組みです。特別な文章力は必要なく、次の項目を埋めていけば、報告として十分に機能します。
- 基本情報(所属・氏名/発生日時/場所/作業内容)
- ヒヤリとした・危険を感じた時の状況(あらまし)
- 原因の分析(作業環境/設備機器/作業方法/自分自身の問題)
- 発生時の心身状態(該当項目のチェック)
- 今後の対策
- 安全管理者の確認欄
原因の分析欄は、「作業環境」「設備機器」「作業方法」「自分自身の問題」の4つに分けて記入します。一つの原因に絞り込まず、複数の要因を洗い出すことがポイントです。
以下は記入例のイメージです。自社のヒヤリハット報告書作成の参考にしてください。

次章では、「フォークリフトのヒヤリハットを未然に防ぐには、どのような対策を講じればよいのか」という疑問にお答えします。
ヒヤリハットを防ぐ!フォークリフトの安全対策法3選
本章では、ヒヤリハットを防ぐフォークリフトの安全対策法について、以下の3つのポイントで解説します。
- 歩行者とフォークリフトの動線分離
- 「だろう運転」の禁止
- フォークリフトの安全対策ツールの導入
歩行者とフォークリフトの動線分離
まずは、人とフォークリフトが交錯する場面をなくすことが、最も根本的な対策です。
例えば、通路にライン引きや柵を設け、歩行者用の通路と車両通路を物理的に分けます。やむを得ず交差する箇所は、ミラーや警報装置で互いの存在を知らせる工夫が必要です。
動線を分ける設計は、現場のルール遵守に頼らず、構造そのものでヒヤリハットの発生条件を減らせる点で効果的です。
「だろう運転」の禁止
次に、「相手が止まってくれるだろう」「この程度なら大丈夫だろう」といった思い込みでの運転を禁止します。ヒヤリハットの典型的な引き金になるからです。
筆者自身、多くの事故処理に携わってきましたが、事故を起こした作業員の多くが、この「だろう運転」をおこなっていました。そしてそのほとんどが「もっと注意していればよかった」「危険予知が甘かった」と後悔していました。
後悔しないために、フォークリフト運転時は「危険かもしれない」の意識を徹底します。常に最悪の可能性を想定して速度と注意力を保つことが、ヒヤリハットの芽を摘みます。
フォークリフトの安全対策ツールの導入
最後に、AIカメラによる接近検知や、死角を知らせる警報装置は、ヒヤリハットの発生を機械的に抑える手段です。人の意識に頼る対策には限界があるため、設備による補てんは有効です。
導入コストはかかりますが、事故対応や労災補償にかかるコストと比較すれば、投資として十分に見合います。
また、庫内フォークリフトのヒヤリハットは、トラックヤードの混雑やイレギュラーな入出庫による焦りから生まれるケースも少なくありません。入荷車両が集中し現場が慌ただしくなるほど、フォークリフト作業も雑になりがちです。
そこで有効なのが、「トラック予約受付システム」です。トラックの入退場を平準化できれば、ヤードの混雑そのものを減らし、庫内作業の焦りを抑えることにつながります。
中でもおすすめなのが、「MOVO Berth」です。業界シェアNo.1、累計80万人を超えるトラックドライバーが登録する実績を持ちます。ヤードの混雑を可視化し、入退場を平準化することで、庫内フォークリフト作業の安全性向上にもつながります。ご興味のある方は、以下のリンクをクリックし詳細をご覧ください。
資料「【シェアNo.1】3分でわかる トラック予約受付サービスMOVO Berth(ムーボ・バース)」をダウンロードする
なお、以下の記事ではフォークリフトの安全対策についてさらに詳しく解説しています。気になる方は併せてご覧ください。
【プロが解説】フォークリフト事故の安全対策7選|現場目線での原因から成功事例まで
「現場でフ…
2026.10.07
まとめ
フォークリフトのヒヤリハットは、報告にあがらないだけで日常的に発生しています。事例を知ることが、対策の第一歩です。
本記事では、以下のような事例を紹介しました。
- 清掃中にパレットの不意な動きで足を挟まれそうになった
- 合図が届かず高所の作業場から転落しそうになった
- 無理な姿勢での操作でマストに首を挟まれそうになった
- 思い込みによる積載超過でトラック天井に接触しそうになった
- 焦りによる速度超過で旋回し転倒しそうになった
これらを他の現場の事例として終わらせず、日々の安全対策やKY活動に活かすことが、重大事故を防止することにつながります。
ただし、こうした仕組みづくりを自社だけで進めるのは、決して簡単ではありません。日々の業務に追われるなかで、原因分析や再発防止策の運用まで手が回らない担当者は少なくないはずです。
そういった現場におすすめしたいのが、「Hacobu Strategy」です。物流改善のプロが、データを元に貴社の課題解決をサポートします。
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